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2011年5月27日 (金)

閉鎖的な医療業界にとって異業種との連携は基本的に良いことだと思いますが

マスコミと言えば官僚の天下りなどにはずいぶんと厳しいことを書き立てているわけですが、そんなマスコミが最近何故か妙に良い扱いをしているというのがこちらの再就職の話題です。

警官OB、病院でモテモテ 不当要求・院内暴力対応で /長野(2011年5月10日朝日新聞)

長野県警OBが医療現場に再就職するケースが増えている。県警警務課によると、県内の12病院が元警察官を採用。この春は新たに3人が病院職員として再スタートを切った。患者やその家族からの不当なクレーム、院内暴力……。頭を抱える医師や看護師が求めているのは、事件事故の現場で培った警察のノウハウだ

 全日本病院協会が2007年12月から08年1月に、2248の会員病院に行った調査(有効回答1106病院)によると、52.1%(576病院)が過去1年間に身体的・精神的な院内暴力を経験。うち警察への届け出は5.8%にとどまっている

 長野市内のある病院職員は「他の人の診療の邪魔になってはいけないし、警察に被害を届け出ると捜査に時間がかかるので、相談すべきかどうか迷うことが多い」と話す。

 県警OBの主な業務はトラブル発生時の現場職員へのアドバイスだ。刑法の知識などを生かし、その事案が「どんな罪にあたるか」「こちらの主張を相手にどう伝えるか」といった対応の仕方を指導する。自ら現場でトラブルの矢面に立つこともあるが、いわゆる「用心棒」ではない。普段から近所の署や交番に顔を出すなどして、警察と病院のパイプ役を担う。

 元警察官の非常勤職員1人を採用している松本市内の病院は「トラブルがあると、私たちはオドオドしてしまう。元警察官の方はそういう現場にも慣れているので安心です」と話す。

 県警警務課は「10年前には病院への再就職なんてなかった。ここ3年で急激に増えており要望も多い」という。刑事、生活安全など再就職したOBの現役時代の専門分野は様々。病院側から分野の指定はないが、同課は「地域性や適性を見て、『この人なら』という人を送り出している」。

 長野市の長野赤十字病院は09年春、県警OBの東川保幸参事(62)を臨時職員として迎えた。同病院の医療安全推進課によると、10年度は医師や看護師、事務職員が、患者やその家族から暴力を受けるケースが5件発生した。

 「患者さんが安心して治療に専念できる環境を整えたい」。そう話す東川さんは2009年3月に退官した。柔道6段の腕前や、がっしりとした体格以上に新しい職場で生きたのが、主に生活環境畑を歩いて培った「いざというときの知恵や雑学」だという。

 これまで同病院では不当と思われるクレームや暴力に対しても「何とかその場でおさめようとしてきた」(吉田祥男・医療安全推進課長)。だが、東川さんに「暴力や暴言には毅然(き・ぜん)と」と助言を受けたという。例えば、救急搬送されてきた酔っぱらいへの対応。診療の結果、異常がなかったにもかかわらず、病院に居座った場合は「不退去、不法侵入などの容疑にあたり、警察に通報することができる」と東川さんは話す。

 東川さんは平日、院内を巡回し、職員の相談にのったり、トラブル対応マニュアルを作成したり。病院の職員向けに研修会も年1回開いている。

 吉田課長は「すぐに相談できる知恵袋。精神的な心強さが大きい」。とはいえ「まだ手探りの状態」と東川さん。「こういう対応でよかったかや」。迷ったときは他の病院で働く警察仲間に電話をする。「知識を生かせて、やりがいもある仕事。患者と職員、警察の潤滑油になれれば」と話している。(小林直子)

話を聞くところによると警察なども医療などと同様マジメに仕事をしようとするほど多忙な割に待遇面では恵まれないんだそうで、とりわけ昨今では積極的に動けば「権力の横暴だ!」と叩かれ、慎重になれば「無能!給料泥棒!」と叩かれと、職業上のものに加え社会的なストレスも重なるという点でも少なからず医療と共通点があるという状況のようですね。
幾ら医療現場が荒廃しているとは言っても警察業務と比べればこういう仕事の方が気楽にやれるでしょうし、病院側にとっても何かと心強いということから双方メリットのある関係だと思いますが、当然ながらそのメリットと言うことに関しては病院と警察とのコネクションという事も含まれているのは言うまでもありません。
もちろん病院側にとっては何かトラブルがあった時に警察が気安く動いてくれるというのは望ましいことでしょうが、とりわけ地方などにおいては警察にとっても検死などで地元医療機関への依頼を要する状況はままあるもので、案外お互いに仲良くしておいて損はない関係であったにも関わらず今まで付き合いが浅かった方が不思議であったと言ってもいいほどでしょう。
その背後には医療機関側に「患者は救済されるべき弱者であり、患者の件で警察に関わらせることはよくないこと」という漠然とした共通認識があったのだろうと思いますが、別に医療に限らず世の中がモンスター顧客問題で苦労をしている時代にあって、こうした医療機関側の曖昧に事を納めようとする態度が事態を一層悪化させてきた側面は否定できないと思いますね。
そうしたわけで医療機関と警察との関係が深まるということはこのところずいぶんと肯定的な側面ばかりが取り上げられてきたわけですが、どうも必ずしもそんな話ばかりでもないらしいということが先日の報道からも判ってきました。

警視庁の情報流出か 捜索先の品川美容外科に資料の写し(2011年5月23日朝日新聞)

 美容整形・美容外科の「品川美容外科」(本社・東京都港区)のクリニックで脂肪吸引手術後に女性が死亡した事件で、警視庁捜査1課が同社を家宅捜索した際、複数の捜査資料の写しが見つかっていたことが分かった。同庁は、現職の捜査員が関与した情報漏洩(ろうえい)の疑いもあるとみて、資料の写しが流れた経緯を調べている。

 品川美容外科の池袋院(東京都豊島区)では2009年12月2日に同荒川区の無職の女性(当時70)が脂肪吸引手術を受け、2日後に死亡した。捜査1課は今年4月20日、施術を担当した堀内康啓(やすひろ)医師(38)を業務上過失致死容疑で逮捕。堀内医師は5月11日に同罪で起訴されている。

 この事件で捜査1課は、09年12月11日以降、4回にわたり、品川美容外科の池袋院や港区の事務所、同区の堀内医師の自宅などを家宅捜索した。

 捜査関係者によると、このうち、今年3月9日と同月23日の家宅捜索の際、複数の捜査資料の写しが見つかり、捜査1課が押収したという。

脂肪吸引女性死亡:捜査資料、警視庁OB通じ流出? 品川美容外科、数人再就職(2011年5月24日毎日新聞)

 警視庁捜査1課の内部捜査資料のコピーが家宅捜索先の品川美容外科池袋院(東京都豊島区)の関係先で見つかった問題で、同外科には捜査1課経験者を含む数人の警視庁OBが再就職していたことが関係者への取材で分かった。現役捜査員と親交があるOBもおり、警視庁は内部情報がこうしたルートを通じて漏えいした可能性もあるとみて、地方公務員法(守秘義務)違反容疑の適用も視野に調べている。

 池袋院では09年12月、東京都荒川区の無職女性(当時70歳)が脂肪吸引手術を受けた2日後に内臓損傷で急死。捜査1課が業務上過失致死容疑で捜査を始めた。

 関係者によると、同外科には警視庁捜査1課幹部経験者など複数の警視庁OBが在籍。医療事故の捜査が始まった後には、捜査1課経験者を含む別のOB数人が新たに再就職していたという。

 こうしたOBの一部は、捜査を担当していた捜査1課員と現役時代から知り合いで親交があったという。警視庁は、現役の捜査員が捜査資料の一部をOBに漏えいした可能性もあるとみて、関係者から事情を聴いている。捜査資料のコピーは、捜査1課が今年3月に同外科の関係先を再捜索した際に発見された。この事件で執刀医の堀内康啓被告(38)が4月に逮捕される直前、同外科に再就職していた警視庁OBの一部は退職したという。

医療過誤事件捜査資料流出問題 担当捜査員と病院に再就職の警視庁OB、複数回会食(2011年5月25日FNNニュース)

「品川美容外科」への家宅捜索で、警視庁の捜査資料のコピーが押収されていた問題で、事件を担当していた捜査員と病院に再就職した警視庁OBが複数回、飲食店などで会い、会食していたことがわかった。
この問題は、東京・豊島区の品川美容外科・池袋院で、女性患者が手術の2日後に死亡した医療過誤事件で、警視庁が2011年3月に行った病院への家宅捜索で、警視庁の捜査資料のコピーが見つかったもの。
その後の調べで、この事件を担当していた捜査員が、品川美容外科に再就職した警視庁OBの1人と、複数回にわたって千葉県内の飲食店などで会い、会食していたことがわかった。
この捜査員と警視庁OBは、携帯電話などで頻繁に連絡を取り合うなどしていて、警視庁は、2人の間で捜査情報が漏えいされた疑いもあるとみて調べている。

個人的にはこうした美容系医療には興味がないもので今まで当該事件の報道などもスルーしていたのですが、この品川美容外科はレーシック最大手をうたう品川近視クリニックと同じ医療法人社団翔友会に属している業界大手として色々と「有名処」だそうで、どちらも以前からなかなか賑やかな話題には事欠かないらしく週刊誌なども含めて内外から様々な噂や怪情報も飛び交っているようですね。
これまた噂によれば結構偉い官僚なども天下りで引き受けていると言いますから、そのあたりの人脈にはずいぶんと気を遣ってきたんだろうと思うのですが、いざその人脈が役立つという時になってこういうよろしからぬ活用をしていたのでは、これはケシカラン癒着ではないかと世間の非難の声もいや増そうと言うものでしょう。
多くの医者は程度の差こそあれこの種の美容系自由診療クリにあまり良い感情は抱いていないもので、多忙な現場から逃げて楽して稼いでいるとか、正道を外れ身を持ち崩した医者が流れつくところだと言った印象があると思いますが、もちろん真面目に美容外科を頑張っている多くの先生方も苦々しく感じているでしょうし、前述のような良好な互助関係を築いている警察や医療機関にとっても冗談じゃない、恥をかかせるなという話でしょう。
以前にもホメオパシー関連の話題で取り上げたように、イギリスなどではこの怪しげな代替医療を野放しにしないように保険診療に組み込んだ上で、患者の健康に関わるような疾患に勝手に使ってはならないと強力な規制をかけているわけですが、日本におけるこの種の自由診療クリに対しても今後何かしらの規制を求める声が強まってくるかも知れませんね。

いささか話が飛びますけれども、同じ医療関係ということで報道を見ている限りでは、やはりこの種の自由診療クリというのは相当に営業面での競争も厳しいんだなという点が真っ先に気になったのですが、結局のところ経営的にぎりぎりのところを追求すればするほど医療に求められる「必要な無駄」の部分は削り落としていかざるを得なかったということなのでしょうね。
人間というものは一人一人が異なっているのが当たり前で、同じ診断名がついていても一人として同じ状態ということはあり得ないわけですが、それだけに車を作るような話と違って流れ作業でより安く効率的にという仕事を推し進めるほどに個々の状況に応じた調節を行うためのゆとりの部分が失われ、決まり切った治療に患者の方を合わせるということになってしまいます。
もちろん昨今多くの病院でパスを導入しているように、大多数の患者ではこれでうまくいくという方法を標準化していくことは医療の効率化、水準化のためにも良いことだとされていますけれども、そのパスが一般的な場合には最善解であると同時にそこから外れた人に対してきちんと個別の対応が出来るということが大前提で、単に手抜きと儲け最大化のためのパスなど誰からも支持されるはずがありません。
ところが今や赤字にあえぐ多くの医療機関においても「もっと経営努力を!」と儲けの最大化が追求されようとしているのはまだしも、マスコミが主導する世論にしても「医者はもっとコスト意識を持たなければ」とコスト削減を要求されているというのは、考えて見ると自分達の医療を自分達で安っぽいものにしろと主張しているようでおかしな現象だなと思いますね。
自動車業界などもバブルの頃は開発費も製造コスト贅沢につかって日本車のクオリティーが素晴らしく高まった時期がありましたが、その後は世間の価格破壊要求などもあってとにかくコストダウン至上主義で安っぽいものばかりが作られるようになった、それだけならまだしもきちんとコストをかけて良い物を作るノウハウ自体が失われてしまったと言いますが、日本の医療も同じ轍を踏みつつあるのだとすれば哀しいですよね。

越王句踐の補佐役から後に商人に転じて大成功した范蠡の晩年の逸話で、殺人罪で投獄された次男の釈放工作をさせるために苦労知らずのボンボンである三男を派遣しようとしたところ長男が「いや自分が」と名乗り出た、ところがお金を稼ぐことの難しさを知っている長男はついつい金を使い惜んで父の指示を守らず、結局次男は処刑されてしまったというエピソードがあります。
一部私立医大なども金持ちの子弟しか通えないなどと世間からの評判よろしからぬところがありますが、こうしたところ出身の親子代々医者の家系なんて先生方と話していて時々感じるのは、生まれついたときから金の苦労を知らない先生というのは本当に無邪気に「命の価値はお金の有無によって差別されるべきではない」なんて価値観を持っていることがあるということですね。
奨学金を取りアルバイトに励みながら苦労して公立医大を卒業した貧乏人の小倅などが「そうか医療に回せるお金はもうないのか。それじゃ少しでも出費を減らすよう頑張らなければならないな」と思ってしまうところを、苦労知らずの先生は「いやあ、お金のことなど気にしちゃいけませんよ。体が第一じゃないですかアッハッハ」と実にお気楽だったりしますが、一昔前の医者が左うちわだった時代の先生というのは基本的にあんな感じだったのかも知れませんね。
財政厳しい今の時代に昔の感覚が抜けない医師会などがしばしば浮世離れしたことを言って「これだから医者の常識は世間の非常識と言われるんだよ」と顰蹙をかったりしますけれども、「なに入院中に胃カメラも受けたい?DPCなんだから無理だ!」なんて世知辛い世の中を見ていると、医者が金勘定にルーズでいられるくらいの方が利用者である国民にとっては快適ということもあるのかも…と思わないでもありません。

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コメント

>>「なに入院中に胃カメラも受けたい?DPCなんだから無理だ!」

DPCでも胃カメラとか手術、リハビリなんかは出来高払いなことがあります。
胃カメラはDPCでも出来高なので大丈夫ですよ。

投稿: 浪速の勤務医 | 2011年5月27日 (金) 10時20分

うちの病院でも警察OBを増やすようです。

投稿: べくれる | 2011年5月27日 (金) 13時02分

>胃カメラはDPCでも出来高なので大丈夫ですよ。

検査自体は取れるけど薬も道具代もフィルム代もダメとか、まあ基本やるなということなのかなと言う気もします(笑)。

投稿: 管理人nobu | 2011年5月27日 (金) 15時30分

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