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2011年5月26日 (木)

大きく羽ばたく人もいる一方で、半世紀前にとどまる人達もいるようです

セリエA最終節では不慣れな右サイドで出場した長友選手がゴールまで決める活躍ぶりだったばかりか、今や世界ナンバーワンSBと言われる先輩マイコンまで追い出すんじゃないかなんて話まで出ているようで、「それはいったいどんな漫画の世界だよw」と驚くしかないのですけれども、そうした余談はともかく先日はこういう記事が出ていたことを御覧になりましたでしょうか。

医療費:窓口で100円程度、別徴収 難病対策財源--厚労改革案(2011年5月20日毎日新聞)

 厚生労働省は19日、税と社会保障の一体改革に関する政府の集中検討会議(議長・菅直人首相)に医療・介護保険制度改革案の概要を提示した。医療分野では、外来患者の窓口負担(原則3割)に一定額を上乗せする「定額負担」を導入し、難病患者らの自己負担を軽くする財源に充てるとした。一方、介護では「能力に応じた負担」を打ち出した。事業主と40~64歳の従業員で分担している保険料を、健保組合の加入者数でなく、従業員の平均年収に応じて決める「総報酬割り」に変更することを念頭に置いている。

 同検討会議は5月30日に社会保障改革案の全体像をまとめる予定だった。だが、与謝野馨経済財政担当相は会議終了後の記者会見で「6月2日はどうかと検討している」と述べ、首相のサミット日程を理由に延期する考えを示した。

 医療制度改革では、自己負担が一定の上限を超えると払い戻しを受けられる高額療養費制度を、低所得者や、治療が長期化して負担がかさむ難病患者らを対象に拡充する。その費用を調達するため、一般外来患者の定率窓口負担に一定額を上乗せする仕組みを取り入れるとした。厚労省は一律100円程度の上乗せを想定している。

 また、雇用形態変化を踏まえ、非正規労働者も企業の健康保険に加入できるよう適用範囲を広げることを明記。課題に「世代間の一層の(負担の)公平化」を挙げ、70~74歳の医療給付費に税金投入する考えをにじませた。

 介護保険の改革は、制度の安定性を確保する観点から「被保険者の範囲拡大の検討」を盛り込み、40歳未満からも保険料を徴収する方向性を示した。さらに「能力に応じた負担と低所得者への配慮」をうたい、年収の高い人が多い企業・団体ほど保険料率もアップする総報酬割りへの転換を示唆し、低所得の高齢者には負担軽減を図る考えを示した。

 このほか、来年度に予定されている医療の診療報酬と介護報酬の同時改定をにらみ、医療・介護の役割分担や連携強化などを打ち出した。具体的には病状に応じて医療機関の役割を分け、在宅での医療や介護体制の整備を図る。【山田夢留】

受診時に100~200円の定額負担導入 厚労省が医療・介護改革案(2011年5月19日産経新聞)

 厚生労働省は19日、社会保障と税の一体改革を検討する政府・与党の集中検討会議(議長・菅直人首相)に対し、外来受診時の窓口負担に一定額を上乗せする定額負担制度の導入などを盛り込んだ医療・介護制度改革案を提示した。定額負担は100~200円とする案を軸に検討している。介護保険制度では平均収入が高い企業のサラリーマンの保険料を値上げする案を盛り込んだ。政府・与党が5月末までにまとめる社会保障改革案に反映させることを目指す。

 定額負担制度は平成27年度の導入を目指す。現在の医療制度では小学生から70歳未満が医療費の3割を窓口で自己負担しているが、これに加えて初診時に200円、再診時に100円程度を支払うよう求める方向で調整する方針。

 制度導入により数千億円の財源が確保される見通し。浮いた財源は、医療費の自己負担が一定額を超えた場合に払い戻しを行う高額療養費制度を見直し、がん患者など長期重症患者の負担軽減策の財源に充てたい考えだ。

 定額負担制度は民主党の「社会保障と税の抜本改革調査会」(会長・仙谷由人党代表代行)でも検討が進められているが、幅広い層に負担を求める内容には民主党内で慎重論が根強い。長妻昭前厚生労働相を中心に見直しを求める動きもあり、実現には難航も予想される。

 一方、介護保険制度では、サラリーマンが加入する健康保険組合(健保)に割り振られる保険料について、人数割から総報酬割に見直す。この結果、平均収入が高い健保に加入するサラリーマンには、より重い保険料負担を求めることになる。また、現在40~64歳から徴収している保険料について、40歳未満も徴収対象とすることも検討課題とした。

 厚労省は昨年11月に同様の制度を盛り込んだ介護保険制度改革案を示していたが、負担増を嫌う民主党からの反発を受けて今国会に提出した関連法案では見送っていた

 このほか、集中検討会議で示した厚労省案では、医療分野でパートなど非正規労働者でもなるべく健保に加入できるよう見直す案や、高額療養費制度の見直しなどを盛り込んだ。また、介護分野では予防事業の強化による給付抑制策や、介護職員の処遇改善などで効率化・重点化を図るとした。

総合的にはお金を持っている人にはより一層の負担をしてもらうという方向性で話が進んでいるようですが、そんな中で今回目玉になっているのがより広く薄くという外来受診時の定額負担金の導入ということです。
今回の場合医療費の高い患者の支援に回す財源確保のためという名目ですから、金額的には100円~200円とごく控えめなものになっていますけれども、ひとたびこういうものを導入しますと幾らでも値段の変更は効きますから、後々いろいろと応用が利きそうな話ですよね。
特に現在問題になっているのが医療現場の疲弊、特に一部医療機関への患者集中の問題で、救急時間外などに関しては追加負担をお願いするということはずいぶんと多くの病院で行われるようになり相応の効果を上げていますけれども、受診するたびに余計な負担が必要となればひと頃話題になった病院外来のサロン化などにも一定の抑制がかかりそうです。

ごく例外的に出来高算定込みで契約している先生は別として、一般的な勤務医は患者が多かろうが少なかろうが給料にほとんど関係ありませんし、そもそも多くの基幹病院では多忙過ぎて息も絶え絶えと言う状況に追い込まれていますから、基本的に患者はなるべく少なくしたいという願望を持っているものです。
特に入院が必要な重症患者やそこでしか診療できない特殊な疾患の場合はともかく、どうでもいいような(失礼)common diseaseの外来対応で時間を取られることを嫌う専門医は少なくありませんから、むしろその程度ではなくもっと高い金額を取ってもいいだろうという声もあがるかも知れませんね。
要するに急性期医療の現場にとっては相応にメリットがある話なんですが、逆に外来の数をこなして稼がなければ食べていけないという人達もいるわけで、とりわけその代表格と思われる開業医などにしてみれば患者の受診抑制は収入減に直結しかねない話ですから反対の声も多かろうと思うのですが、予想通りに開業医の声を代弁する日医からはこんなコメントが出ているようです。

厚生労働省「社会保障制度改革の方向性と具体策」に対する日本医師会の見解(第一報)(2011年5月18日日本医師会)より抜粋

● 「医療保険の担うべき機能の重点化・集中化」(11 頁)

重点化・集中化に「保険免責制」の考えが含まれているとすれば、日本医師会は反対である。すでに、日本の患者一部負担割合は、公的医療保険がある先進諸国と比べてかなり高い。これ以上患者負担が増加すれば、受診を控え、重篤化するケースも必ずや生じる

民主党が、外来 1 回当たり100 円程度を上乗せすることを検討しているとの報道もあった。報道には「受診時定額負担制度」とあり、医療費にかかわらず、まず1 回100 円を支払った上で、医療費の一部負担を支払う制度であると推察される。しかし、これでは、患者一部負担以上の負担をすることになる。公的医療保険である以上、必要な財源は、広く公費や保険料に求めるべきであり、日本医師会は、どのような形であれ、これ以上の患者負担増には反対である。

最後の一文が恐らく日医のスタンスを集約しているものと考えられますが、公費や保険料とは言っても元々は国民が負担しているものですから、一見すると窓口負担をするか窓口外で負担をするかの違いでしかないようにも思えますよね。
ただし実際の意味を考えて見ると保険料や税金は収入などによって支払額に格差がありますが、外来での患者負担金は受診をすればするほど支払額に差がつくということであって、保険料を高くし受診時負担を安くするということは医療を利用すればするほどお得になる、要するに日医としては患者はなるべく医療機関に受診すべしという旧来のスタンスを固守しているということが判ります。
そもそも日医の長年の主張として日本は国民皆保険制度によっていつでもどこでも誰でも安く気軽に医療機関にかかることが出来た、その結果何かあればすぐ病院へという国民の意識が定着し疾患の早期発見につながり、重症化を防ぎ国民の健康増進に貢献してきたというシナリオがあるわけですが、果たして今の時代にその路線を続けることが是か非かということになると思うのです。

そもそも皆保険制度が導入された半世紀前と言えば、特に地方の貧しい地域などでは「医者にかかるのは死亡確認をしてもらう時だけ」なんてことが普通にあった時代で、そういう時代であればとにかく病院にかかりましょうというやり方も正当化されていたことでしょう。
しかし今は国を挙げて医療費抑制が急務になっている、そして何より多忙な現場がもうこれ以上は無理と悲鳴を上げていて、当の患者側も救急受け入れ不能や三時間待ちの三分診療に不満たらたらという状態で、相変わらず病院に少しでも多くの患者を呼び込むことが正義という拡大路線を続けることが果たして支持を得られるのかどうか疑問ですよね。
日医方式では不要不急の軽症受診を好むような患者層ほど「高い保険料を払っているのだから元をとらなければ」とばかりに病院に殺到し、外来は混雑し本当の重症患者はますます医療を受けにくくなる、そして医療費はさらに高騰し医療現場は今以上に疲弊すると、まさしく現在進行中の医療崩壊を一層加速しかねないという話にもなってしまうでしょう。
そして昨今では低所得層の無保険問題が盛んに言われるようになっていますけれども、金も暇もないので気安く病院にかかれるわけでもないけれども、いざという時のために保険証だけは維持しておきたいという方々にとって、日医方式で高い保険料を要求されては保険証の維持も困難になり、「使いもしない医療に何故こんな高い保険料を」と不満が募る一方でしょう。
要するに日医の主張が実現して喜ぶのはどうでもいいような病気でしょっちゅう病院にかかりたいようなタイプの、まさに長年日医会員の主要顧客となっていたような方々ばかりではないかとも言えそうですが、多忙な医療現場の支持も得られ、多くの国民も納得出来る保険診療の方向性としては到底正しいものとも思えません。

今や医療はコスト的にもマンパワー的にも「今日は暇だから病院に来ました」という人々を排除して、本当に苦しんでいる病人だけが受診するようにしなければ保たないわけですし、生活保護受給者と待遇が逆転しているなどと言われるマジメな低所得労働者のためにもなるべく保険料は引き下げるべきだろうし、高額医療の自己負担額はなるべく低めにする一方で不要不急のコンビニ受診にはそれなりのペナルティ的な料金徴収も必要でしょう。
その結果「薬も出さずに患者を満足させるのが医者の腕だ」と長年軽症患者相手にムンテラマイシンを研ぎ澄ませてきたベテラン開業医の先生方は顧客が減るということになるかも知れませんが、もちろん医療資源窮迫の折に医者を遊ばせるなどととんでもない話で、今度はいかに病院の外来を縮小し開業医に誘導させるかという施策とセットで考えていかなければならないでしょうね。
しかし日医も一見すると国民のための医療を追求しますなんて顔をしていますけれども、相変わらずその実態を見てみれば業界圧力団体の域を出ていないわけで、しかもその目指すところが何一つ変えることはまかり成らぬという旧世紀の遺物的発想そのものとなれば、いったいどこまで時代の流れに取り残されていくのだろうかと妙な興味をひかれてしまいますね。

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