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2011年4月 6日 (水)

大震災を契機に崩壊する医療の危機

表題にあるような本日の本題に入る前に少しばかり脱線しますけれども、新学期の開始を前にして先日は珍しく空気を読んだと言っては失礼ですが、こんな通達が出ていたことが報道されました。

文科省が学生ボランティアに単位 全国の大学に通知(2011年4月1日47ニュース)

 文部科学省は1日、東日本大震災でボランティアに参加した学生の活動は単位として認めることが可能との通知を、全国の国公私立大などに出した。

 通知は、ボランティア活動が授業の目的と関係あれば単位を出せるとしており、ボランティア論や福祉を学ぶ学生が参加した場合や、被災地の学校ボランティアを教育実習の単位として認めることなどを想定している。

 また、学生が参加しやすい環境をつくるため、休学中の授業料を免除したり、ボランティアと関係ない授業を欠席した場合でも、追試やリポートで単位を認めることなども求めた。

 震災当初は混乱を避けるため被災地入りの自粛を求める大学も多かったが、徐々にボランティアの受け入れ態勢が整備されており、文科省は学生の積極的な参加を後押しすることにした。

もちろん人手が必要な仕事も沢山あるのでしょうし、学生にとってはこれも今後につながる社会経験となるだけに、制度面からこうしてバックアップしていくということは非常に有意義なことだと思いますね。
ただ余計なことにまで気を回してみるとこの通達、どこまでを震災に関連するボランティア活動とするかがいささか曖昧なようで、例えば間違っても昨今話題の義援金詐欺なんてものに関わった挙げ句に単位だけ持ち逃げしようなんてケシカランことを考えないように、学生の方々にも自覚というものが求められるのだと思います。
その一方で空気を読まないと言いますか、こちらは実際にそういうことを経験された先生方も少なからずいらっしゃると思いますけれども、正直地震とは無関係に平素からそれはどうよ?と思われるようなレベルの方々もいらっしゃるのは困ったものだと思います。

大震災後に医療機関からMRに苦情- 教育センターが指導を通知(2011年3月29日CBニュース)

 医薬情報担当者(MR)教育センターは3月29日、東日本大震災の発生後、医療機関からMRの行動について苦情が寄せられたことを重く見て、会員の製薬企業などに対し、医療の一端を担うMRがふさわしい行動を取るように指導することを求める通知を出した。

 同センターによると、東京都内の病院から、▽供給が滞っている医薬品への対応や計画停電の対応に追われ、忙しい最中でも、相変わらず自社の医薬品についてのみの宣伝をするなど、状況を把握していないMRがいた▽ガソリン不足で医師・職員も自転車通勤に切り替えているが、MRは皆、相変わらず車で訪問していた-との苦情が寄せられた。

正直世の中薬に限らず情報に満ちあふれているという今どきのご時世に、医局の外にMRが立ち並んでいるという光景に何の意味があるのかとも思うのですが、そういう様式美?を期待している医者も中にはいるということなんでしょうかね?
ま、そうした余談はともかくとして、震災関連の対応は急性期から慢性期へと移行しつつあり、今後は震災という現実を受け入れた上で被災者に日常生活を取り戻してもらわなければならない時期なんですが、その中でも厄介な問題の一つに医療の問題があります。
宮城県などからは「引き続き避難所への医師派遣を続けて欲しい」という要望も出ているようですし、実際に派遣してもらわなければとても回らないのも事実なのだと思いますが、いつまでもそうした非常時向けの一時しのぎでやっていくわけにもいかないのは当然ですよね。
特に福島などでは例の原発事故現場からもほど近いということで、あの大野病院事件で有名な県立大野病院が閉鎖に追い込まれたなんて話も伝わってきていますけれども、同院に限らず福島県内の医療機関は地震被害とそれに続く放射線問題とで非常に困難な対応を強いられているようで、これは後々にまで大きな影響を残すのではないかと懸念されるところです。

妊婦の県外転院相次ぐ…福島・いわき(2011年4月2日読売新聞)

 東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、福島県いわき市の産婦人科医院に通院する妊婦が相次いで県外などに転院し、出産することが分かった。

 この産婦人科医院は原発の半径30キロ圏外にあり、避難指示の対象地域に入っていない。長距離の移動で母体への負担は少なくなく、医師らは「遠方の病院に移っての出産が必要なのか、冷静に判断してほしい」と指摘している。

 いわき市の「村岡産婦人科医院」では、通院していた妊婦の半数にあたる約30人が県外や市外に転院。村岡栄一院長によると、転院した妊婦の多くは放射能の影響に不安を覚えているようだったという。

移動中に破水した妊婦もおり、電話相談を受けた同院マネジャーの村岡真理子さんは、最寄りの病院へ行くよう指示して事なきをえた。「状況によっては流産する恐れもある」と気をもむ。

 一方、先月11日の東日本大震災発生以降、同院で約20人が無事に出産している。26日に長女梨杏(りな)ちゃんを産んだ同市の根本美幸さん(32)は「安心して産める場所を選んだ」と話す。夫の勝さん(32)も「環境が変わるストレスを考えると、母体にとって避難が必ずしも良いとは思わない」と語った。村岡院長は「30キロ圏内で屋内退避指示が出ていれば、通院できないのでやむを得ないのだが、必要性が低ければ、今まで通りの場所で産む方が母体にもいい」と話している。

 受け入れる側の医療機関も心配する。福島総合病院(福島市)は震災後、南相馬市などから移ってきた3人の妊婦を受け入れた。いずれも無事に生まれたが、母子手帳のない妊婦を受け入れれば、母子の情報が不足する中で診察することも考えられる。同病院では「元々の場所で出産できるのなら、母子の安全面からも移動はできる限り避けるべき」(事務部長)としている。

原発の状況はどう楽観的に見ても数ヶ月やそこらで元通りになるとは言えないわけですから、地域によっては事実上恒久的に居住が難しいことになりそうですし、そうでなくとも妊婦さんなどにとってはあまり近寄りたくないというのは正直な気持ちでしょうが、その結果何がどうなるかということです。
すでに久しく以前から産科医不足が叫ばれている中で、全国的に見てもあちこちの地域で里帰り出産の自粛要請なども出されているわけですから、そこに被災地からの妊婦が押し寄せると考えるとこれは大変な問題にもなりかねないですよね。
もちろん押し寄せるのは妊婦に限ったことではなく、福島以外にも宮城県や岩手県といった被災地の総人口は少なく見積もっても600万人以上にはなると思いますが、こうした地域から脱出した人々が各地に疎開してくる中で、当然ながら引き受ける自治体側にしても大都市の真ん中よりは郊外や田舎に来て貰うことになるでしょうから、そうした地域の医療需給バランスが大きく変わっていくのは当然です。
各地の医療資源も破壊されたところも多い中ですぐに従来通りの診療を再開できる見込みもない、となれば他地域への医療需要負荷は大きく高まると考えられるだけに、避難所で当座の薬をといったレベルではない恒久的な医療体制の再構築が早急に、しかも全国的な支援協力のもとで求められているわけです。
そんな中で非常に気になるニュースが先日出ていたのですが、こちら「赤旗」の記事から紹介してみましょう。

被災患者受け入れ医療機関 診療報酬のしくみ見直しを(2011年4月2日しんぶん赤旗)

支援するほど不利益に

 各地の医療機関で東日本大震災の被災地からの患者の受け入れが進められるなか、受け入れた病院に不利益をしいる診療報酬のしくみが問題になっています。被災者支援の長期化がいわれるもと、改善を求める声があがっています。

 東京都北区にある王子生協病院。震災で透析の機器に支障をきたした茨城県内の病院から、3月13~14日に急きょ6人の患者を受け入れました。

 王子生協病院の透析のベッドは2床あります。しかし、透析室が狭く、元々入院していた患者の透析で手いっぱいの状況。6人は入院しながら、同じ法人の生協北診療所の外来透析に週3日通って透析を受けることになりました。

 ここで問題になったのが、昨年4月の診療報酬の改定で実施されたしくみです。入院中の患者がさらに専門的な医療が必要になるなど他の医療機関を外来受診せざるをえない場合、入院している病院に払われる入院基本料が3割ないし7割減額されます。

 同病院の酒井孝志副事務長は、「当病院の場合、患者さんが外来を受診した日の入院基本料(1日1万5500円)は3割削られます。どの医療機関もやりくりして被災者を最大限受け入れています。被災者を受け入れれば、病院経営にも響いてしまうというのは、一体どういうことでしょうか」と疑問を投げかけます。

 この問題では、全国保険医団体連合会や東京保険医協会などが「入院中の患者の他医療機関受診の規制の凍結」を、首相と厚生労働相に求めています。

 日本共産党の田村智子参院議員は3月24日の厚生労働委員会でこの問題をとりあげ、政府に是正を求めました。また、被災地で療養病床に急性期の患者を受け入れざるを得ない場合、かかった医療費ではなく定額分しか病院に払われず、病院の持ち出しになる場合があることもあわせて指摘。「積極的に被災者の支援をおこなうほど医療機関が不利益を受ける事態がおき始めています。減額につながる規制を緊急に見直すべきだ」と強く求めました。

公定価格である日本の医療システムというのは非常に厳密にシステムが組み上げられていて、要するに何をやっても儲かる抜け道などないようにがんじがらめになっているわけですが、それだけに外因などによって一つ足を踏み外しただけであっさりこういうことになってしまうのだなとつくづく思い知らされますよね。
こういう話を聞いて思うのが、日本でもアメリカ式のERをなんて声は以前から少なからずありますけれども、いざ本当に大規模災害ということになれば医療側のキャパシティー以前に制度的に成立し得ないんじゃないかと言う心配が少なからずありそうで、こうした制度設計を見るだけでもつくづく日本と言う国は平和であったんだなと思い知らされます。
せっかく遠くから患者を受け入れた施設にすれば「やってられない」どころの騒ぎではないと思いますけれども、こうした事態を想定した診療報酬体系になって いないということ以前に、今の医療機関に多少の持ち出しでも頑張りますと言えるほどの経営的余力がなくなっていることが一番の大きな問題だと思いますね。

世間的には妙に有名な「赤ひげ」などを取り上げて、マスコミなどは「昔の医者はお金のない患者はタダで診てやっていた!医者たる者この精神が大切なのだ!」なんてことを言いますけれども、一方で赤ひげと言えばお金持ちから徹底的に大金を巻き上げて運転資金を稼いでいたことには決して触れません。
今の皆保険制度下では公定価格以上の料金を頂くということも非常に難しいですし、社会的にもそうしたことが容認されなくなっている中で、「タダで診ていた」の部分だけを取り上げて「お前達も同じことをやれ」では、物理的に施設が維持出来ないはずですよね。
政府としても震災関連の医療で大きな問題が存在していることは承知しているらしく、さっそく厚労省からも震災に関連して各種特別扱いいたしますという通達が出てきているようですけれども、保険証も身元確認の方法もないような状況で最終的に全部きっちり支出分を回収するというのも無理がありそうですから、今後よほどしっかりした救済策を立てなければ医療機関の側が軒並み潰れてしまうということになりかねませんよね。
政府がこのあたりの問題をどの程度の優先順位に捉えているのかは判りませんが、もともと医療の側には経営的な余力など全くなくなってきている施設も多いだけに、早く公的な救済のメッセージを発信しないと各施設としてもやむなく自主的な経営努力を始めざるを得なくなるでしょう。

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