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2011年4月 8日 (金)

被災地での医療 お金もやっぱり大事なんです

今日の本題に入る前に記事タイトル通りに「思わぬ影響」というものですが、意外な面で震災が医療に影響を及ぼしているというニュースを一つ紹介しておきます。

福島第一原発事故の思わぬ影響?関東でコンピュータX線撮影の画像に黒点が頻出(2011年3月24日日経メディカル)

 関東周辺の医療機関から、「コンピュータX線撮影(CR)の画像に黒い点が認められる」という報告が相次いでいる。黒点は、東京電力福島第一原子力発電所から放出された微量の放射性物質の影響を受けたものとみられ、CR装置を販売する各社は対応に乗り出している。

 CRでは、X線フィルムの代わりに再使用可能なイメージングプレートを使う。イメージングプレートは、人体に影響のない宇宙線やわずかなX線などの放射線も検出できるほど感度が高い上、放射線のエネルギーを蓄積して記録する機能があるため、放射線の強さと照射時間に比例して、記録量が増加する。イメージングプレートを装填するカセッテに放射性物質が長時間付着すると、微弱な放射線が蓄積して画像上に黒点となって現れる

 CR画像に黒点が頻出する現象は、これまで埼玉県や茨城県、東京都などの医療機関から報告されている。富士フイルム メディカルは問い合わせを受け、ウェブサイトで同現象の原因や対処方法について告知。黒点が現われた場合は、カセッテおよびイメージングプレートの裏表のクリーニングやCR装置撮影面側の全面クリーニングを実施し、長時間使用していないカセッテやCR装置については撮影前に一次消去するように呼び掛けている。同社の担当者は、「一次消去は、毎朝実施すればいいのではないか」と話している。

ちなみに富士フイルムからのお知らせ通り、まめにクリーニングを行っていれば問題ないというものですけれども、こういう話を聞くと食品汚染なんて話よりも原発事故の影響が身近に感じられる気がするから不思議なもんですね。
医療関係者の中には「あっちもこっちも放射線だ放射線だと大騒ぎしてるけど、普段検査室で被爆してる量と比べたら全然大したことなくね?」なんて妙にのんびり構えている方々も多くて、そういう向きにはCR装置のクリーニング作業をしながら今一度気を引き締めていただくには良い機会になったのかも知れません。
そうした余談はともかくとして、被災地では今も医療体制が崩壊したままであるということは非常に困った問題だと認識されていますが、先日はその被災地で診療に従事する先生が大奮闘中という本当に頭の下がるようなニュースがでていました。

孤軍奮闘医師の元に患者送るバスが運行開始(2011年4月4日日テレニュース24)

 東日本大震災の被災地域で一人で診察を続けている医師の元に患者を送り届けるバスの運行が始まり、診察を待つ長い列ができた。

 岩手・宮古市田老地区の避難所に併設する「グリーンピア三陸みやこ」に4日朝、避難生活を送っている人たちを乗せたバスが到着した。この避難所では、田老地区で唯一の医師・黒田仁さんが臨時の診療所を開設していて、歩いて診察を受けに来られない患者のために4日からバスの運行が始まり、診察を待つ長い列ができた。

 長引く避難生活で健康に不安を抱えている高齢者も多く、久しぶりに掛かり付け医に診察してもらい、ほっとした表情を浮かべていた。

ちなみにこの「グリーンピア三陸みやこ」というのは診療所でも何でもない風光明媚なリゾート施設で、当然ながらまともな医療機器はおろか下手すると医薬品すらろくに存在しないという状況のようで、そんな「診療所」であってもバスに乗って患者が列をなしてやってくるという事実に現地の状況がしのばれます。
先日はこうした震災被災者の診療活動について、診療報酬面で早急に配慮をしなければ大変なことにもなりかねないという問題提起をさせていただきましたが、ちょうど相前後して国の方からもこんな話が出てきているようですね。

支払い猶予分、被災者の医療費を負担…政府方針(2011年4月6日読売新聞)

 政府は6日、東日本大震災の被災地で特別に支払いを猶予されている病院での窓口負担や介護サービスの利用料、医療保険や介護保険の保険料などを、国が原則として全額負担する方針を固めた。

 月内に国会に提出する2011年度第1次補正予算案に1000億円余りを計上し、必要な法律上の措置を行う。

 青森県や岩手県、宮城県、福島県、茨城県などで災害救助法が適用されている市区町村で、住宅が全半壊したり、家計を支えていた人が死亡したり、行方不明になったりした人などが対象になる見通しだ。

 厚生労働省は震災後、こうした人に原則3割となっている病院窓口での医療費負担や、医療保険の保険料の支払い猶予などを行うよう、保険の運営者に通知した。また、介護サービスの利用料や介護保険の保険料の支払い猶予や減免についても同様の通知を出した。

 政府は、負担軽減をすでに通知したこれらの費用を原則としてすべて肩代わりする方針だ。ただ、財政面でゆとりがある健康保険組合には、政府の負担割合を減らす方向で調整している。

 今回の特例措置の対象となっている人が病院で診察を受けて窓口負担を猶予されると、病院には本来支払われる収入が入らない。このため、病院側は窓口負担を含めた医療費を、患者が加入している健康保険組合に請求する。このままでは、健保組合の財政負担が重くなるため、政府は健保組合に対して窓口負担分を財政面で支援する。

とりあえず患者側から見ると当座の窓口負担や保険料負担がなくなるわけですから非常に助かったという話なんですが、問題は医療機関側にとってこの制度だけで十分な救済となり得るかということです。
先日紹介しましたような入院中患者の他医療機関への受診制限や母子手帳のない妊婦の避難出産問題などもそうですが、例えば地震や洪水で保険証も無くしてしまった場合には自己負担分だけを担保してもらうことで話が済むのかということがあります。
例えばこれだけの大規模震災ですと身元不明の被災者の方も幾らでもいらっしゃいますが、そうした方々に対して救命救急処置を行ったが不幸にも亡くなってしまった、通常であれば後日身元が判明次第精算をという流れになるわけですが、今回はご家族もそろって被災された方々も大勢いる、それどころか顔見知りのご近所もいらっしゃらない、役所などのデータベースも消えて照合のしようもないということが多々あるわけです。
そうした方々がそもそも誰なのか、どんな保険に入っているかが判らないとなると保険者に請求のしようもないわけですから、それでは一体誰の責任で身元不明者の保険情報を確認すべきなのか、確認出来なかった場合は病院側の全額持ち出しとなるのかと、今から問題が出てきそうな予感がありますよね。
もちろん震災全体の被害からすればそんなものは微々たると言っていい範疇じゃないか、小さな事をいちいち言うなという意見もあるでしょうが、診療報酬がコンマ何パーセント増えた減ったで大騒ぎしているような今の医療業界には、そんな微々たるものを無視出来るような余裕もなくなってしまっているのも事実なのです。

先日も紹介したように各医療機関は決して患者を受け入れないわけではない、むしろ何とか病床をやりくりしてでも積極的に受け入れようと頑張っている中で、それでも「努力して被災者を受け入れれば受け入れるほど病院経営が傾く」という現実があるとすれば、受け入れを制限しないという施設であっても気持ちの面で釈然としないものはあるはずですよね。
もともと皆保険制度が導入されて以来、日本の臨床医というものは金勘定には非常に大雑把であったという現実があって、それが「医療が所得や資産で差別されるなんて間違っている!」なんて大まじめな顔で浮世離れしたことを言う、ひどく世間知らずな医師像を形成してきた側面がありました(今でも日本で一番いい医療を受けられるのは金持ちではなく生活保護受給者であると、一部で揶揄される所以でもありますが)。
それが「医者の常識は世間の非常識」とさんざんバッシングされるようになり、医者ももっと経済観念を持って貰わなければ困る、医療だけがコストマネージメントの聖域であるなどとんでもない話だ、医療費はまだまだ無駄遣いが多すぎると世知辛い話ばかりになってくるようになると、やはり現場の人間にしても「医療の利用者である国民の皆さんがそう言うのなら」と考え直さざるを得なくなってきたわけです。

もちろん平時においてコスト意識をしっかりと持つことは重要なことだと他ならぬ管理人自身も考えますが、それと同時にコスト意識を持った上でいざ必要となればコストを度外視する思い切りもまた必要であるし、職場の上司や経営者、あるいは社会や国もそうした果断な判断を受け入れ、必要に応じてバックアップしていくようでなければ、「目立たず騒がず、ルールに外れたことは何もしないことが一番安全」という後ろ向きな萎縮社会になってしまいますよね。
今回も医療に限らず原発事故しかり、被災地のインフラ再建しかり、どこの現場でも採算度外視で頑張っていらっしゃる方々が大勢いらっしゃるわけですから、その尊い努力によって後日彼ら自身の首を絞めるということのないよう、被災者だけでなく周囲でサポートする方々にも公的に十分な手当てを行っていくことも、復興にとって何よりの大きな鍵となってくると思います。

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