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2011年4月 4日 (月)

大相撲八百長問題 その解決法は意味があったのか?

隠岐の島の相撲では必ず一勝一敗で終わるというしきたりになっているとは最近すっかりTVCMでもおなじみですけれども、思いやりにあふれた日本の国技においても七勝七敗で千秋楽を迎えると必ず勝たせて終わるというしきたりがあるのでは?などと揶揄されてきたものです。
その大相撲の八百長問題というものが最近とうとう公になってしまった結果、これは単に八百長力士を処分すればすむといった簡単な問題ではないのでは?という問題提起は以前にもさせていただきましたが、どうも思った通り話をこじらせて面倒なことになってしまったようです。

八百長問題:23人角界追放 協会初めて認定(2011年4月1日毎日新聞)より抜粋

 大相撲の八百長問題で、日本相撲協会は1日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、特別調査委員会(座長=伊藤滋・早稲田大特命教授)から関与を認定された23人の力士や親方に対する処分を決めた。72年に施行された「故意による無気力相撲懲罰規定」を初めて適用、関与を否認した幕内・徳瀬川(27)=朝日山部屋=ら力士19人に引退、谷川親方(37)=元小結・海鵬、八角部屋=に退職を勧告した。引退・退職届の提出期限は5日で、提出がない場合は解雇する方針。関与を認め、調査に協力した十両・千代白鵬(27)=九重部屋=ら3人は処分を軽減され出場停止2年となった。3人は引退・退職する意向で、23人が角界を追放される。

 ◇北の湖ら3理事辞任

 弟子が関与認定された師匠17人の監督責任も問い、北の湖(57)=元横綱▽九重(55)=元横綱・千代の富士▽陸奥(51)=元大関・霧島=の3人は調査委の提言に従い、協会理事を辞任した。

 北の湖、九重両親方は役員待遇に1階級降格、弟子4人が認定された陸奥親方は委員に2階級降格した。他の14人の師匠には降格などの処分を言い渡した。

 さらに、役員は2カ月間の月給自主返納を決め、最高の放駒理事長(元大関・魁傑)は30%を返納する。

 一方、協会役員を除く親方で構成される年寄会は1日、全親方らによる評議員会の開催を協会に要望した。処分見直しを求める方針。【大矢伸一】
(略)

処分の力士ら怒りと不信感露わ…八百長問題(2011年4月1日スポーツ報知)

 前代未聞の大量処分が決まった日本相撲協会の臨時理事会が行われた東京・両国国技館で1日、処分を通告された力士や親方は一様に調査に対する怒りや、処分の重さへのショックを隠し切れない様子だった。

 巨漢の人気力士、山本山は「話も聞かずに引退勧告っておかしいと思いませんか」と不信感をあらわにし、谷川親方(元小結・海鵬)は「こんなばかな話はない」と憤慨。将司は相撲協会を提訴することについて「それは当たり前でしょ」と吐き捨てるように言った。

 霧の若は特別調査委員会の聴取を担当した弁護士に苦言を呈した。「幼稚だとかいろいろなじられた。このままうそをつき続けるなら、この先の人生も駄目になると言われた」と証言。携帯電話や預金通帳の任意提出にも応じたが、「全部協力したのに、結局処分はみんな横並び。何の意味があったのか」と強い口調でまくしたてた。

 九重親方(元横綱・千代の富士)は弟子の千代白鵬が八百長関与を認めた。「こういう力士を出したんだから」と自ら理事を辞任し、降格処分を受け入れたが、引退する弟子については「残念でしょうがない」と険しい表情で話した。

処分親方怒り爆発「この調査が八百長だ」(2011年4月2日デイリースポーツ)

 処分を受けた力士・親方のうち、八百長への関与を認めていなかった20人の大半は処分に怒りを爆発させた。中でも谷川親方(37)=元小結海鵬=は「この調査こそが八百長だ」とぶちまけた。谷川親方を含む、複数の処分対象者が協会や調査委を相手どった訴訟を明言した。処分に不満を持った親方衆は理事会後に年寄総会を開き、評議員会の開催を要望した。
  ◇  ◇
 自分の主張がまったく聞き入れられなかった谷川親方は、報道陣を前に不満をぶちまけた。
 「おれの言ったことは全然、聞いてくれないじゃないですか!!調査をする前に、(弟子に)携帯電話を替えておけと言った親方がいた。それこそ八百長だよ!!」とまくしたてた。谷川親方によれば、八百長の嫌疑がかかった力士の中に、師匠を通じて便宜をはかられた者がいるという。
 調査委側は理事会後の会見で、「その様な例は聞いていない。(聴取でも)聞いていない」と取り合わなかった。事実とすれば、調査結果への不満が爆発するのも無理はない。また、谷川親方は「携帯電話を出したのに調べてもない」と憤った。
 調査委は解析中の携帯電話は、霧の若、十文字、旭南海の3人のものと発表した上で、谷川親方の携帯を解析していない理由を説明。携帯電話を機種変更した時期により、解析しても無意味なものがあると説明。また、「やすやすと従ったものの中には怪しい情報はない」(村上委員)と反論した。
 山本山は処分が書かれた紙を報道陣に渡し、「一生懸命やっているのに何も見てくれない」と嘆いた。春日王は「やっていないものはやっていない。けがをして力が出なくても八百長ですかね?」と、けがを理由にした。
 放駒理事長(元大関魁傑)は5日までに引退勧告に従わなければ、解雇もやむなしとする姿勢を見せている。退職届を出すのかと問われた谷川親方は「ないですよ。あるわけがない」と完全拒否。弁護士を立てるかとの質問には「そうですね」と答えた。力士・親方と協会・調査委とのドロ沼の法廷闘争に発展する可能性が出てきた。

恐らく当事者の相撲協会としては厳正な処分によって一罰百戒の効果を狙ったというつもりなのかも知れませんが、失礼ながらこと八百長根絶ということに関しては全くといっていいほど効果がないのでは?という気がしてなりません。
この八百長問題、やっていることは道義的に見ても悪いこととしか言いようがないだけに、世間やマスコミとしては好き放題叩きたくなるのも判るのですが、少なくともこういう解決方法をしてしまった以上は、今後同様の問題が発生したとしても誰一人まともに協力しようとする人間は現れないでしょうね。
以前にも書きましたようにこの八百長問題の背景に横たわる報酬制度であるとかいった根本的原因を放置していることは今後の課題としても、見ていて一番よくなかったのは調査に協力した人間に対しても全く横並びの処分が行われている一方で、隠蔽工作を行った側には結局逃げ得になってしまっているんじゃないかという疑念を抱かせている点でしょう。
現場の人間に対して「調査に協力したところでメリットは何一つない。デメリットばかりじゃないか」というメッセージを強力に発信してしまったことは、結局小ずるく立ち回った方が得だと言う話にもつながるわけで、こういう話を見ますといわゆる事故調問題との関連をどうしても考えずにはいられません。

かつて責任追及には使用しないという大前提で行われている航空事故調の調査結果を、日航706便の乱高下事故に関わる公判に証拠採用して世界的に大騒ぎになったという一件がありましたけれども、世界的に見ても「真実の解明と個人の責任追及とは両立しない」ということが常識とされています。
真実を話す代わりに個人の責任は問わないという約束があるからこそ人は自己保身を図ることなく本当のことを証言できるわけで、それが担保されない、むしろ本当の事を言えば単に自分の首を絞めるだけであるとなれば、誰でも必死で嘘をつこうとし、隠そうとするのは当然ですよね。
それでも今回の八百長問題に関する落としどころが「八百長に関わった当事者の処分」であったのだとすれば(相撲協会としてはそれを目指していたのかも知れませんが)まだしも、少なくとも世間で求められていたのは八百長の根絶と再発防止であった以上、いったいこうしたやり方そのものが最適解だったのかという疑惑があります。

今回の八百長問題も結局のところ八百長根絶を目的としたものであるとすれば、何故八百長が発生するのか、それはどのようなやり方で行われているのかを徹底的に解明し、今後そうしたことが行われない、行い得ないような対策を講じていかなければならなかったはずですが、実際に相撲協会の行ったことは大規模な証拠隠滅をむしろ推奨しているかにも思えるやり方だったわけです。
今回儲けられた特別調査委員会にしてもいったい何を目的にこうした調査を進めるのかコンセンサスが今ひとつ明確でなかったのかも知れませんが、結局のところ調査結果がこうして責任追及に用いられているわけですから、仮に元々の目的が再発防止とか八百長根絶であったとしても(そうであってくれなければ意味がないわけですが)、これは調査結果の目的外への流用ですよね。
医療の世界においてもそうなんですが、例えば東京女子医大事件においては大学内部で作成された「大学組織を守るための」調査報告書が人工心肺を操作した医師の個人的ミスが原因と結論づけた結果同医師が訴えられる騒ぎとなったり、あるいは大野病院事件においても「保険金支払い目的の」調査報告書が担当医起訴のおおきなきっかけとなるなど、およそ調査というものを目的外に使用してろくなことはありません。
結論として今回の処分は現場力士に大きな不平と不満の芽を植え付けた挙げ句、八百長をやってでも星を稼がなければ食っていけない状況には何一つ変わりがないわけですから再発防止の目的は全く達していない、むしろ今後もっとうまくやらなければと決意させるだけに終わったとすれば、ますます真相究明を難しくしてしまったように思います。

世間の人々もそのあたりのことはよく判っているようで、身近な相撲ファンの声を聞いてもこれで八百長がなくなるなどとは誰も思っておらず、むしろ「いっそ真剣勝負なんてタテマエはやめてしまって、プロレスのように最初からこれは筋書き通りですということにした方がいいのでは?」なんて冷め切った声ばかりなのが印象的ですよね。

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コメント

プロ格闘技としてはヤヲかどうかよりも、ヤヲに見えるかどうかの方がずっと重要だよ
出来もしないヤヲ根絶目指すくらいなら無気力相撲根絶を目指せよ

投稿: | 2011年4月 4日 (月) 22時09分

引退勧告に従わないで解雇になった力士にも退職金を出すらしいですね。
本当に相撲協会が何をやりたいのかわからなくなってきた。

口止め?温情?解雇力士に退職金満額
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/headlines/20110415-00000020-dal-fight.html

投稿: KAN | 2011年4月15日 (金) 13時19分

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