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2011年4月29日 (金)

ようやく公の議論に登り始めた勤務医の負担軽減 それでも日医はやはり日医だった

今頃になって何を言ってんの?と感じる話は昨今少なからずありますが、先日出ていたこちらのニュースも今さら感は相当なものですよね。

日本医師会会長が民主政権批判 「菅降ろし」の憶測も(2011年4月25日産経ニュース)

 日本医師会(日医)の原中勝征(かつゆき)会長が24日の日医代議員会で「こんな政府でいいのかと大変憤りを感じている」と菅政権の東日本大震災への対応を批判していたことが25日、分かった。もともと、自民党支持だった日医を民主党支持に転換させた原中氏の政権批判は「菅降ろしではないか」との臆測も呼んでいる。

 原中氏は「もう二度と私の生まれたふるさとが再興されることはない。要するに、ふるさとを失ってしまった」と言葉を詰まらせながらに訴えた。

 さらに「現場からの声がまったく政府に届いていない。慣れていないということでは決して許されない」と述べ、菅政権に厳しい言葉を並べた

 茨城県内の病院長を務めている原中氏だが、出身は福島第1原発事故の影響で全域が「警戒区域」と「計画的避難区域」に入った福島県浪江町。ふるさとに立ち入りできなくなったことへの不満をぶちまけた格好だ。

 しかし、原中氏は民主党の小沢一郎元代表と良好な関係にあり、昨年9月の党代表選では水面下で小沢氏を支持した。

 今回の菅政権への批判は「今までたまっていた不満のマグマを一気に噴き出した」(日医幹部)との見方も出ている。

世間的には長年の伝統から脱却して民主党支持を明確に打ち出したとして有名な原中会長ですが、実のところは民主党シンパというよりは小沢一郎シンパであったことは周知の事実で、会長にはなってみたものの肝腎の小沢氏が政権から干されてしまっている現状が何とも歯がゆいということなのでしょうか。
とはいえ、公的には小沢氏支持ではなく民主党支持ということで会長選に勝ったわけですから、今さら「こんな政府でいいのか」なんて言われたところで「お前が言うな」と言われて終わりというものですよね。
いったいに日医と言う組織は昨今妙に自らの過去に自責の念でも駆られているということなのか、あちらこちらで「お前が言うな」としか言いようのないことを公言して回っているようですけれども、こちらの話なども一体どの口が喋っているのかと疑問の余地なしとしません。

勤務医支援「院内のルール作成が効果的」- 日医委員会(2011年4月6日CBニュース)

 日本医師会は4月6日の定例記者会見で、日医の「勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会」(委員長=保坂隆・東海大医学部教授)が取りまとめた報告書を公表した。報告書では医師の働き方について、「週に1日は完全休日にする」など分かりやすいルールを院内で作成することが「効果的」と指摘している。

 昨年度の同委員会の活動は、▽勤務医の労働時間ガイドラインに関する現場実証調査研究▽医師の職場環境改善ワークショップ研修会の開催―の2本柱。
 報告書では、現場の管理者らを対象に、医師の労働時間や残業の取り決めなどに関する調査を行ったところ(3府県75人が回答)、医師の労働時間について何らかの「取り決めがある」との回答が30.7%だったことなどから、「就業規則や働き方のルールなどが未整備の診療所・病院もあり、(整備を)促進する必要性が確認できた」としている。

 同委員会は調査結果などを基に、労働時間ガイドラインの作成に向けては、月当たりの残業時間の上限や一回当たりの最長勤務時間、勤務間の最低休憩時間、休日の取り方などのルール作りが必要と指摘。同時に、診療体制の見直しや医師の業務軽減、健康管理体制などについても検討する必要があるとしている。その上で、院内で運用する際は、「分かりやすい働き方に関する自主ルールを作成することが効果的」とし、そのルールを施設の責任者の下で明文化することを提案している。

 同委員会では今後、研究などを踏まえたガイドライン案を作成して病院などで試行・実績評価し、年度内にガイドラインをまとめる予定だ。

 同委員会は昨年6月に原中勝征会長から勤務医の健康支援策の推進について諮問され、今年3月まで4回にわたり議論を重ねて報告書を取りまとめた。

日医と言えば、かつて2010年度の診療報酬改定に向けた中医協の席で、勤務医の勤務状況に関して日医委員が「これで本当に病院の勤務医師が逃げ出すほど忙しくなっているのか、疑問を感じる」などと素晴らしい卓見を披露されたことがありますが、さすが「勤務医が楽をするには週一完全休日にすればいい」などと、今さらこんな分かりやすいお話ありがとうございますと言うしかありませんよね。
もちろんその週一回の完全休日日には、日医会員である諸先生がお開きになっている地域の開業医からの患者受け入れも停止してよいし、もちろん会員の方々には決して患者を送ってはならないと周知徹底していただけるものと確信しておりますが、まさか分かりやすい行動は省いて言うだけで終わりなどと言うことはないのでしょう。
ま、日医の発想のレベルが分かりやすいお話はともかくとして、ちょうど4月20日の中医協で厚労省から「病院医療従事者の負担軽減について」などというタイムリーなお話が出ていたようなんですが、この資料その1を見ますと基本的な考え方としてこんなことが書いてあります。

・ 病院医療従事者の負担軽減策(その1)として、平成 23 年3月2日中医協総会において、病院勤務医の負担軽減について検討を行った。病院勤務医の負担軽減のための取組みとしては、これに加え、他職種との役割分担等、病院内での取組みと、他の医療機関間の役割分担など地域での取組みについて、検証・検討を進める。

要するに現場のことには全く無関心であるようにも見える厚労省でさえ、勤務医の負担軽減のための取り組みとしては単に他職種との役割分担などといった病院内の取り組みにとどまるものではなく、地域医療機関との役割分担といった院外との連携が欠かせないということを明確に打ち出しているわけなんですよね。
幾ら院内で加重負担にならないよう業務内容を工夫をし、休日をきちんと取れるように仕事の割り振りも見直したところで、連休前になると決まって「それじゃ先生、僕はハワイに行ってくるんで後よろしく」なんて勝手に患者を押しつけてくる地域医療機関との連携無くしては、所詮絵に描いた餅に終わるということがどうやら日医のお偉い方々にはお判りになっていない(判りたくない?)ご様子です。
今回の厚労省の資料提示では勤務医負担軽減に関して、院内においてはチーム医療ということをキーワードにして、いかに効率よくスタッフを働かせ医師の負担となっていた諸業務をシェアしていくかということが中心的課題になっているようで、これに加えて近隣医療機関に協力してもらいたい項目というのも幾つか挙げられています。

[厚労省保険局医療課・鈴木康裕課長]
 医療機関の間での役割分担。特に、病院と診療所の役割分担です。具体的に今まで「退院調整」、それから「地域連携パス」というようなものについて、スライド36にあるようなことについて診療報酬上の評価をさせていただいているということでございますが......。

 スライド37、それからスライド38をご覧いただきますと......。

【スライド37】

 37で、お医者さんに外来について協力してほしい内容をおききしますと、かなり多いのがやはり「近隣の診療所を受診してほしい」と、それから「軽症の場合に夜間、休日の受診は避けてほしい」というのが多く挙がっています。

【スライド38】

 それから、お医者さんの業務ごとの負担感を見ても、夜勤ほどではない場合もありますけれども、やはり外来診療というのが負担感として一定の割合を占めているということになろうかと思います。

 それから、スライドで言いますと39でございますが、これはもともとは「社会保障国民会議」に出ていたものでございますが......。

【スライド39】

 かなり大きい、拠点となるような病院についてはなるべく入院に特化をしていただいて、入院も機能強化・分化を図っていただいた上で、外来も専門的なものに強化をしていただいて、分化をしていただいて、その部分を診療所等で訪問診療を含めて強化をしていただくというような役割分担がやはり必要ではないかということでございます。

結局のところ厚労省の提言としては基幹病院は入院診療に専念し、外来は地域の診療所でという縦の病診再編をさらに推し進めるべきであるということになっているわけですが、究極的に大病院が外来を無くして完全に入院のみになってしまえば、従来の外来中心の勤務体系ではなく看護ら同様の交替勤務制を導入しやすくなるという考えもあるのかも知れませんね。
この厚労省の資料提示と提言に対して各委員がコメントしていて、当然ながら薬剤師会など新たに仕事を引き受ける側では警戒感を感じさせる内容となっているのは理解出来るのですが、日医側の委員がそろってこの地域医療機関との役割分担ということに対して意見を付けているのが注目されます。
京都府医師会副会長の安達秀樹委員はそもそも外来診療の役割分担の元ネタとなったのが前政権時代の社会保障国民会議の報告であって、民主党政権ではこれに対して「前政権の遺物であるから対象にしない」という態度であったのに今それに準拠した議論を行おうとしている、果たしてこの議論は無駄な空振りにならないだろうかといった指摘をしています。
この指摘に対しては厚労省にしても「そうは言っても肝心の民主党政権が新しいビジョンを出してこないんだから仕方がないじゃないか」と言いたくもなるのはもっともなんでしょうが、日医常任理事の鈴木邦彦委員からも全く同じスライドにコメントがついているとなると、なるほどこのあたりが日医的にはキモな部分なのかと勘ぐりたくもなりますよね(苦笑)。

[鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)]

 私は、「病院と診療所」というふうに二分するんじゃなくて、まあ、欧米とかはね、そういう考え方なのかもしれませんけれど、我が国の医療は結果的に非常に低コストで......しているんですが、それはやはり中小病院とか有床診療所の役割が大きいと思います。

 そういったところでですね、かかりつけ機能を持った、そういった所も外来の受け皿でもあると考えておりますので、そこを活用するという視点を我が国の場合は入れるべきだというふうに考えております。

このあたり、日医としての立場がどうなっているのかは推測するしかないんですが、一つには従来診療報酬上の差別化として病院は入院単価を高く、開業医は外来単価を高くというふうに誘導されてきた、それが近年病院勤務医に比べて開業医が優遇されすぎているとか、医療費はもっと削減すべきだといった声を受けて、開業医の外来単価を下げていこうという方向で調整が為されてきたわけですね。
これに対して日医としては「開業医は外来を頑張るからそちらの報酬を高くつけるということになっていたのに、話が違うじゃないか」とひどくおかんむりであった訳ですが、現在のように開業医の外来は安いコストで十分という流れが継続した上で安い外来患者だけを押しつけられ、相対的に儲かる入院患者は大病院に取り上げられるではやっていられないという考えがあるのかも知れません。
日医がこうした厚労省の病診二極化におもしろい顔をしないのは判るとして、日医とはいささかスタンスの異なる前山形大学学長の嘉山孝正委員(現国立がん研究センター理事長)も同じ部分に関してコメントをしていますが、こちらは癌診療の病診連携に関しても調査を加えてはという要望で、特に構想自体には異論を呈している様子ではありません(むしろ、当たり前の事と考えている気配もありますね)。
その他、支払い側である経団連の北村光一委員からは「拠点病院の外来が縮小されることによって、地域社会の反応はどうなのか」と、制度変更で何がどうなるか判りにくいのでもう少し情報が欲しいとか、愛知県津島市長の伊藤文郎委員から「当番医制は探すのが大変という声があり、定点で夜間診療をすべきでは」といった声はあった程度のようですが、少なくとも他に反対意見というものは出ていません。

今回はとりあえずこんな問題提起をしてみましたという厚労省の資料提出を受けて、それぞれの委員が今後の議論のたたき台となるコメントをつけたという段階ですけれども、基本的に厚労省が以前から進めようとしている病院再編の流れに乗ったこの地域医療再編の提案に対して、積極的に反対意見を表明したのは日医だけであるということです。
日医の言っていることは結局のところ、日医会員である既存の診療所の既得権益にも配慮しろということだと受け取れるのですが、少なくともそこには勤務医の待遇改善という今回のテーマに沿った前向きの提言は見られませんよね。
日医執行部にしても勤務医の待遇改善については前述のように各施設の自助努力でやれ、実現性?何それ食べられるの?状態ですから、要するにこの問題について積極的に動くつもりは全くないし、日医会員の既得権益をわずかでも侵害するような気配でもあれば断固阻止するという態度は見え見えです。
今や日医の会員の約半数は勤務医だとも側聞しますけれども、こうした態度をみるにつけ日医の方向性は全く変わっていないなと思えるのですが、ここは変わりゆく世の中で昔と変わらない懐かしい顔に出会ってほっと一安心と、つとめて前向きに捉えておくべきなんでしょうか(苦笑)。

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