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2011年3月28日 (月)

原発からの退避範囲がさらに拡大?

原発の状況は相変わらず一進一退という中で、避難の範囲は20kmと言っていたものが30kmになりそうだとか、結局何kmまで避難すればいいのか未だにはっきりしない状況のようです。
とりあえず一部で高レベルの放射線が検出されたという30kmあたりまではなるべく立ち入らないでもらいたいというのが政府としても本音ではあるのでしょうが、待避圏の半径が大きくなるほど影響を及ぼす人口もどんどん増えていくわけですから、避難先はおろか現地からの移動手段も限られている現状ではなかなか判断も難しいところでしょうね。

住民に判断“丸投げ” 屋内退避、一転自主避難(2011年3月26日東京新聞)

 屋内退避から一転、自主避難へ-。政府が福島第一原発の半径二十~三十キロ圏内の住民に自主避難を促したのを受け、福島県内の自治体は二十五日、急きょ戸別訪問や防災無線で避難を呼びかけた。屋内退避の患者のために区域内にとどまる医療関係者は、住民に判断を丸投げする政府に対し「責任逃れだ」と憤る。物資不足に悩む付近の住民からは「この先が不安」などの声が交錯した。

 「ふるさとを離れられない患者さんがいる以上、私も離れるわけにいかない」。福島第一原発から約二十五キロにある南相馬市の原町中央産婦人科医院。院長の高橋亨平さん(72)は二十五日も二人の妊娠を確認するなど、高血圧や糖尿病の患者ら五十~六十人の診察を続けた。

 自主避難を促す政府の対応には「国も原発の今後に自信がないのだろうが、責任逃れ的な予防線を張っているようにしか見えない」と語気を強める。

 高橋さんは、職員の避難を促そうと、いったんは同県猪苗代町に避難したが、「医者としての人生を総括するのは今だ」と思い直し、二十二日から診察を再開した。患者から「先生、よく帰ってきてくれた」と握手を求められ、うれしさが込み上げた。「外来患者がゼロになったら、私も出ますよ」と話した。

 病父の負担を考慮して遠方に避難せず、家族四人で区域内の知人宅に身を寄せる南相馬市内の男性会社員(57)は「パニックになって逃げてもしょうがない。強制的な避難になるまでここに残る」と冷静に話す。自宅は原発から二十キロ圏内の避難指示区域だが、屋内退避区域に移った。区域では食料品店などの閉店が相次ぎ、物資不足が深刻。約二時間待って車に給油し、三十キロ圏外で買い物をしている。ただ、男性は「一週間前に比べれば、物流はだいぶ良くなった」と前向きだ。

 「今朝、市が用意する避難者用のバスの最終便が出た」。原発から三十キロ圏内の南相馬市内に住む電気設備業者の男性(61)によると、市は二十四日、残っている住民を地域ごとに学校などに集め、二十五日午前に群馬県草津町に向けて出発する最後のバスに乗るよう促した。

 男性の住む地域では住民が百人ほど集まり、「いつ帰れるのか」「今後の生活の保証はあるのか」などと職員に詰め寄った。大震災まで、福島第二原発で働いていた男性は「原発から呼び出しがあったら、すぐ手伝いに行けるように」と、残ることを決めた。

 バスが出発して間もなく、自衛隊員が訪ねてきた。「自衛手段はあるかと聞かれた。後は自分の身は自分で守れということだ」。

 残った住民には家の電気設備の修理が必要な人もいる。「本当は不安でよく眠れない。でも、できることがある限りはとどまる」

退避圏内から避難している人々に対しても荷物を取りに帰るなどの一時帰宅は良いのではないかと検討されていることからも判る通り、今後原発の状況が劇的に悪化でもしない限りは短期的、一時的な影響ということに関しては、20kmだろうが30kmだろうがそう大きな影響はなさそうだとは大方の同意を得られそうですけれども、もちろん問題は定住者にとってどうなのかですよね。
ようやく国が公表に踏み切った「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」による飛散予測によれば、原発から半径50kmあたりまではヨウ素が飛散する可能性があるということですから、生殖年齢以下の若~中年世代の人々に関してはアメリカ並みに80kmとは言わずとも、50km圏内くらいまでは当面(離れていられるものなら)離れていた方がいいのかなという気もしています。
一方でもちろん東京などから大挙して避難しますなんて話は明らかな過剰反応ですし、20kmから30kmあたりであっても生殖年齢を超えた高齢者などにとっては絶対緊急に避難を急ぐという状況でもなさそうですから、最終的にはやはり各人で自主的に判断するしかないというのも仕方がないところなのかなという気がします。

このあたりは前述の記事にもある「責任逃れ」なんて声にもあるように、自己責任で自己判断するという文化に乏しい国民性だけに、かねて日本社会に蔓延するゼロリスク症候群や原子力アレルギーなどとも絡めて考えると非常に興味深い学習機会になりそうなんですが、もちろん自分で判断するには正しい情報の提供が最低限必要であることは言うまでもありませんよね。
前述のSPEEDIの試算結果公表に関しても、公開が遅れたのは「混乱を招く」と反対意見があったからだとか、あるいは単に誰が公開を命じるべきかとたらい回ししていたからだとか諸説あるようですが、強制的に退避をさせるのであれば退避の手段を提供するのも国の責任なら、自主的に退避せよと言うのであればその自主的な判断の材料を提供するのも国の責任というものです。
こういう大きな対象を扱う時には「ごちゃごちゃ言わずに黙って○○しろ」と強制的に決めていくのが一番簡単なんですが、今回敢えて自主退避なんて面倒くさいやり方を選択したわけですから、きちんとやるべきことまではやっておいてもらわなければ本当に「責任逃れ」に終わってしまいかねないということでしょう。

ちなみにこの待避に関わる一つの判断材料として、世界各国では相次いで自国民に待避勧告を出してきたことから「日本政府の待避の判断は甘すぎるんじゃないか?」と考えていらっしゃる方々も多いかも知れませんが、あれはあくまでも観光客など一時的な滞在者なら無理な被爆リスクを負う必要もないのだから、さっさと遠くに逃げておきなさいということのようですね。
今問題になっているのは地域永住者の退避範囲をどこまで拡大すべきかということですが、こちらに関してはむしろ「あまり厳しくやりすぎても大変だし、ほどほどにしておくのがいいんじゃない?」と言う見解も出されているようです。

被曝限度量の緩和提案 国際放射線防護委、移住回避促す(2011年3月26日朝日新聞)

 国際放射線防護委員会(ICRP)は、原発事故などが起きた後に周辺に住む人の年間被曝(ひばく)限度量は、2007年の勧告に基づき、1~20ミリシーベルトの範囲が妥当とする声明を発表した。日本の現在の基準は、一律に1ミリシーベルト。福島第一原発事故の影響が収まっても、放射能汚染は続く可能性があると指摘し、汚染地域の住民が移住しなくてもいいよう、日本政府に配慮を求めた形だ。

 ICRPは専門家の立場から、放射線防護に関する勧告を行う組織。声明は、21日付で発表された。

 07年の勧告では、一般の人が年間浴びてもいい放射線量を三つの範囲で設定。緊急時は20~100ミリシーベルト、緊急事故後の復旧時は1~20ミリシーベルト、平常時は1ミリシーベルト以下とした。

 今回の声明はこの勧告を紹介したもので、原発事故の影響を受けた地域に住民が住み続ける場合は、1~20ミリシーベルトの範囲内で検討するという考え方を紹介した。この地域も、長期的には1ミリシーベルト以下にすることが目標だとした。

 ICRPは通常、各国の個別事例については言及しない。しかし今回は、「日本で起きた悲劇的な出来事に、深くお悔やみ申し上げます」と述べる異例の内容となった。

 福島県南相馬市の25~26日にかけての1日の放射線量は計0.028ミリシーベルト。1ミリシーベルトを基準とすると、約1カ月で超えてしまう。現在の線量が続くと仮定すると、年間総量は約10ミリシーベルトのため、20ミリまで引き上げた場合は、移住の必要はなくなる。一般的に放射線の被曝量が100ミリシーベルト以下なら、健康への影響は心配ないとされている。

 日本アイソトープ協会の佐々木康人常務理事は「ICRPの基準はもともと、余裕を持って設定している。日本の基準はさらに、厳しめの数値を取っている。1~20ミリシーベルトという数字なら、健康に全く影響はない」と話している。

もともと地域に長年住み続けてきたという高齢者も多いでしょうし、そうした人々が過度に被爆リスクに過敏になって何でもかんでも退避しなければとまで思い詰める必要はないはずで、実際に地域社会を最低限維持する人々まで全部流出してしまうと、インフラや住環境の荒廃が不可逆的なものになってしまうでしょう。
あまりこういう想像はしたくないですけれども、冒頭の記事でも「自衛手段」云々の言葉が出てきている通り、被災地や近隣地域でも略奪被害などの報告が幾つか届いている中で資産まで即座に退避させられないだけに、いたずらに放射線の危機感ばかりを煽って「とにかく全員退避!」となった挙げ句、とんでもない未来絵図を招くことは住民の誰も望んではいないはずですよね。
土壌汚染に対してもあるいは今後大規模な除染活動なども必要になるのかも知れませんが、まさか福島県一帯がリアル北斗の拳状態になってしまうというのも考えがたいだけに、いたずらにリスクばかりを煽り立てたりパニックに陥ることなく、誰が見ても妥当と思えるような冷静な判断を積み重ねていかなければ道を誤るということでしょう。
しかしロシアという国はこういう方面では先進国なのでしょうが、まさにこのタイミングで放射線作用中和ワクチンなんていかにも胡散臭いような、こんな時だけに早急に投入してもらいたいような…

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コメント

ロシア人すげえ!アメリカの上をいくとは!

投稿: | 2011年3月28日 (月) 14時52分

遺体の放射線量が高すぎて回収を断念したそうですね
海産物も漁港で放置状態というしものすごいことになりそうだ…

投稿: 通りすがりのただの人 | 2011年3月29日 (火) 07時30分

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