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2011年2月 9日 (水)

外国人医師規制緩和 やはり日医はそう言った

先日はかつて医者余りを予測したことで有名な長谷川敏彦・日本医科大教授が、文科省主催の医学部定員検討会で反省の弁を述べたという一件を紹介しましたが、この際に長期的な需給予測などそもそも不可能なのだから、医師不足問題には短期的対策でとりあえず手当するべきであると発言していた点が気になっていたものです。
長谷川教授はこの短期的対策として当座即効性が見込めるものを幾つか取り上げていましたけれども、その中にチーム医療推進や歯科医師の再教育と並んで「中国医科大日本語課程の卒業者を招聘する」なんて話が唐突に出てきていたことが注目されたわけですが、どうもこの発言も政府の意向を受けてのものであった可能性がありそうですよね。

外国人医師らへの規制緩和含む11年成長戦略を閣議決定(2011年1月26日CBニュース)

 政府は1月25日、医療・介護を含む分野の今年の成長戦略を描いた「新成長戦略実現2011」を閣議決定した。外国人医師らの国内診療を可能にする臨床修練制度を利用しやすくする規制緩和を4月までに実施することや、介護人材の評価基準を11年度中に策定することなどが盛り込まれた。

 新成長戦略実現2011では、昨年6月に閣議決定された「新成長戦略」が掲げる施策について、今年の成長戦略の基本的な考え方と共に、環境・エネルギーや金融などの7分野において見込まれる今年の主要な成果と課題を示した。

 医療分野では、▽外国人患者とその付き添い人に対する「医療滞在ビザ」運用などの1月からの開始▽先進医療の評価・確認手続きなどの運用を改善するための結論を3月までに出し実施▽外国人の医師や看護師の臨床修練制度に関して、許可申請書類を簡素化するための省令改正などを4月までに実施▽新型インフルエンザ流行時に約半年で全国民分のワクチンを製造できる体制整備の推進―などが盛り込まれた。

 また介護分野では、介護人材の実践的な職業能力を評価する基準を11年度内に策定する方針を示している。

 医療・介護分野にまたがる課題では、EPA(経済連携協定)で来日する外国人の看護師候補者と介護福祉士候補者が受ける国家試験の受験機会の在り方などについて、6月までに基本的な方針を策定するとしている。

外国人医師の入国審査期間を短縮 厚労省、来日促す(2011年2月8日日本経済新聞)

 厚生労働省は高度な医療技術を教えるために来日する外国人医師を対象に、入国手続きを緩和する方針を固めた。入国審査の期間を短縮したうえで、国内で手術などを実施する場合に必要な提出書類も減らす。外国人医師が日本を訪れやすい体制を整え、国内の医療技術の向上を目指す

 厚労省は4月に省令を改正する。外国人医師が来日してから5日以内で臨床の許可を出せるようにするのが柱だ。

 外国人医師は日本の医療機関を通じて厚労相の許可を得れば、特例で2年以内の滞在が認められる。ただ厚労相の許可を得るには2カ月程度かかるうえ、提出する書類も医師免許証の原本など幅広く、外国人医師の大きな負担になっていた。

 厚労省は医師免許証についてコピーでの提出も認めるなど、提出書類を簡略化。さらに入国前でも書類を提出できるようにして、短期間で厚労相の許可を出す。がんや難病など高度な治療技術を持つ外国人医師を日本に招き、日本の医療技術の高度化を進める

今どき医師免許確認をコピーで済ませるというのも医師詐称で大騒ぎになるような時代に逆行しているようにも思えるのですが、かねて政府が推進を主張しているメディカルツーリズムに続いて、今度は医療スタッフに関しても大々的に国内外での興隆を進めていく方針であるということがよく判りますよね。
しかし実際にやってくるのが言う通りに「高度な治療技術を持つ外国人医師」だったとして、恐らくそうした高度な技術を活用するには日本の皆保険制度の縛りは多すぎると思われますから、何をするにも研究費による持ち出し診療ということにもなりかねませんし、本気で高度な治療技術云々を言うのであれば何をもってそうした技術を持つと認定するのかも問われることになりそうです。
逆に日本への留学で箔を付けたいといった新進気鋭の外国人医師などが、とりわけ近隣アジア諸国などから来る可能性もあるわけですが、先の長谷川教授の発言にもあるようにこうした外国人医師が医師不足の即効性ある対策として便利遣いされるようですと、また新たな国際関係における火種にもなりかねないですよね。
いずれにしても国の方針でこうして外国からスタッフも呼びますということになった以上、そのための方法論は今後色々と工夫していくということになるのでしょうが、そうなると何にでもとりあえず反対しておかなければ気が済まない方々にとっては不愉快だ、気分が悪いということにもなってくるのでしょうね。

日本の医療が危機に 日本医師会がTPPに懸念表明(2011年2月7日農業協同組合新聞)

 日本医師会の中川俊男副会長は1月26日の会見で医療分野の規制改革とTPP(環太平洋連携協定)についての見解を公表した。

 政府がTPP参加に向け情報収集と協議開始を閣議決定した昨年11月の「包括的経済連携に関する基本方針」には、農業改革のほかに、▽看護師などの海外からの人の移動については今年6月まで基本方針を策定、▽「国を開き海外の優れた経営資源を取り込む」ための規制改革については今年3月までに具体的方針を決定する、ことも盛り込まれている。
 日本医師会はこうした政府の方針により、問題が外国人医師の受け入れにも拡大する可能性があることや、海外の経営資源取り込みによる外資による病院経営などの懸念があるとしている。

 外国人医師や外資参入を受け入れると、
 (1)日本の公的医療保険では診療報酬が決まっており営利目的の企業や高額報酬を目指す人には魅力がない→▽病院は高額の自由診療をめざす→▽高額の自由診療はお金がない人は受けられない。
 (2)クロスライセンス(お互いの国の医師免許を認めること)を認めると→教育水準の違いから日本の医療水準の低下が懸念
 (3)高額自由診療の病院が増えると→病院は自由診療でよい、となる→国は公的医療保険の診療報酬引き上げはしない→公的医療保険で診療していた地方の病院が立ちゆかなくなる……などの問題を指摘し国民皆保険制度が終焉することになりかねないとしている。

 日本医師会は医療に市場原理を導入しさらに経済連携の名のもとに外国資本などを受け入れれば、お金がなければ治療を受けられない時代になるとして「日本人の生命を外国を含む産業に差し出してよいのでしょうか」と訴えている。
 TPP交渉では24の作業部会のうち、サービス分野で医療・医薬品などの貿易ルールが検討されているといわれる。国内の規制制度改革については政府は3月に閣議決定する方針だ。

日医の主張にどの程度理があるのかということは見る人それぞれの判断でしょうが、医者ももっと金勘定に明るくなってもらわなければ困ると国からも国民からも厳しく言われている時代に、病院の経営努力というものをこうまで頭から否定してかかるという態度が果たしてどうなのかです。
これだけ大量養成されたぺーぺーの研修医が臨床現場にあふれかえってくるような時代に、今さら少々の外国人医師が参入してきたところでどれほどの医療水準低下が発生するのか、いったいどれだけ大勢の外国人医師がやってくると思っているのかと、どうも日医は定量的な検討など全くやっていないんじゃないかという気がしてくる話ですよね。
今さら地方の病院が立ちゆかなくなるなどと言ったところで、国はとっくの昔から非効率な田舎病院はさっさと統廃合せよと大号令をかけているわけですから、この人達は今頃になっていったい何を言っているのか、あるいはそろそろそういうお歳なのかと疑われかねません。

国が幾ら制度を整えようが当面の医師不足を一気に解消するような大量の外国人医師参入など現実的にまずあり得ないだろうと言うのが多数派の予測であって、それよりも例えば画像診断などの分野で海外委託を進めるといった話の方がよほど即効性と実効性を兼ね備え、なおかつ現場の需要(特に時差の関係で、夜間の診断能力には期待されますよね)にもマッチするんじゃないかと言う気がします。
ところが日医さんの場合はそうした現場にとって有意義な対案を出すより何より、とりあえず何かを変えるということには無条件で反対、特に日医を牛耳るお年寄り方の不利益にわずかでも結びつきそうな話には頭から大反対という姿勢ですから、近頃ではこういうあからさまに為にする議論か、純真無垢な若者を人身御供に差し出して一身の安泰を図るような話ばかりということになるのでしょうね。
これだけ毎年医者がどんどん増えていっている中で、先日はついに日医会員数が初めて減少に転じたというニュースが出ていましたけれども、それはこれだけ現場に背を向けて明後日の方向にばかり向いた話をしていたのでは、現場の先生方にしても支持したくとも支持しようがないということではないでしょうか。

日医さんは医療に市場原理を導入するなどケシカラン!と頭から否定してかかっていますけれども、今全国の医療現場で行われていることはまさしく生き残りのための市場原理にのっとった経営努力の集大成と言うべきものであって、逆にそうした当たり前の経営努力もやっていない田舎公立病院などは軒並み崩壊の危機にさらされているということは既に事実として明らかになっているわけです。
そして何より重要なことは、各種の業務改善を鋭意推進中のやる気のある病院と、どうせどんなに赤字だろうが税金で補填されるんだからと何の努力もしていない病院と、どちらが現場のスタッフにとって働きやすい職場であるかと言うことで、まさしく後者のような病院は片っ端からスタッフが逃散し立ちゆかなくなっている現実が全てを現していますよね。
いつまでも医者が左うちわでいられた武見太郎時代の幻影を追っているのもお年寄りの昔語りで済むなら結構なんでしょうが、今の時代に適応した実効性ある対案を示すこともないまま、目の前の現実を無視した夢物語ばかりを語っているような組織が今後も業界団体を自称する気であれば、世の中からどのように見られているかということもそろそろ自覚しておいた方がいいんじゃないですか。

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