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2011年2月10日 (木)

不景気真っ盛りだからこそ?意外によかったメディカルクラーク

先日出ていまして、まあそんなものなんだろうなと誰しも感じただろうデータがこちらです。

医師の3割に有給休暇なし(2011年2月5日サーチナ)

  医師コミュニティサイトを運営するメドピアが医師の有給休暇消化実態調査を行った結果、3割の医師が有給休暇を1日もとっておらず、5日未満が約4割と、有給休暇を5日未満でくくると7割の医師が該当することが分かった。

  調査は昨年11月から12月にかけて実施し、2244人から有効回答を得た。その結果、有給休暇をとったとする理由でも病欠や忌引き、学会出席などやむを得ないものが多かった

  また、有給がとりにくい理由として「人員不足により、代診してくれる医師がいない」「休めるような雰囲気じゃない」「休むとその分、仕事が山積みになる」などが上位に挙がるなど、調査にあたったメドピアでは「勤務実態がいかに過酷かが分かった」としている。(編集担当:福角やすえ)

ちなみに日本人は世界主要国の中でも最も有給休暇の消化率が悪い国として知られていますが、全業種平均で見ると有給取得0日の人は8%、1~5日が31%ですから、明らかに国民平均値と比べて顕著に医師の有給消化率は低いということが言えそうですよね。
こういう結果が出てくる背景事情には日本の悪名高い主治医制度なるものが大いに関係していると思えますが、恐ろしいことに病院機能評価なるものにおいては「個々の患者について、主治医・担当医をはじめとする責任体制が確立している」だの「主治医(担当医)との連絡が常に保たれている」だのが機能評価の評価項目に上げられていて、医者をもっと病院に縛り付けなさいと言う運動を一生懸命展開しています。
現場からは病院機能評価にご執心な病院すなわち地雷病院などと言われる所以の一つですけれども、単なる厚労省の天下り団体であるといった批判は別にしてもこの評価機構なるもの、自分達のやっていることが確かに医療の向上につながるのだと自ら立証する責任はあるように思いますね。

いささか脱線しましたけれども、昨今世間的にも不景気の中で休みなど到底取れない!と言っているのとはいささか趣が異なっている点には注意が必要で、世間で言っているのは「休んだら解雇されるんじゃないかと思うと休めない」と言う恐怖からのことですけれども、医者の場合は多忙でとても休んでいられない、あるいは自分が休むと迷惑がかかるといった事情によるものであるわけです。
この場合の迷惑というのは主に患者であったり、あるいは同僚のスタッフであったりはするのですけれども、一方で職場である病院そのものに迷惑がかかるなんてことを遠慮している医者はまずいないわけですから、そうまで多忙であるならまず業務量削減のために自らも動く必要がある、あるいはすでに動いている人達も多いというのが今の時代であるわけですよね。
もちろん巨大な公立病院などですと末端の医者、とりわけ直属の上司を持っていて言われるままに仕事を片付けるしかないような下っ端の医者になるほど自由度も低いものですが、「案外自分で動いてみたらうまくいった」という成功体験も今や珍しくないわけですから、やはり「医者が自分の待遇を云々するなどもってのほか!」といった長年の呪縛を離れて、労働者として主張すべきところは主張していく必要であるということでしょうか。

そうは言ってもなかなか言えない、難しいという人が多いからこそいきなり燃え尽きて逃散という事例が多々見られるわけですが、社会の側としてもほどほどに生かさず殺さずで医者を保護していかなければかえって後が困るという認識が出てきたということでしょう、昨今ようやく医者の業務を周囲がもっとサポートすべしという動きが実際に出てくるようになりました。
もちろん非専門職に出来ることをわざわざ高コストの専門職にやらせるなんて馬鹿げている話で、配膳やシーツ交換は看護師でなくヘルパーさんがやればよいことだし、患者の呼び込みは検査技師ではなく一般職がやれば済むことであるのと同様、病院収入にとって一番の律速段階になる医者の業務効率を極限まで高めることが経営改善の第一歩であるのは当然ですよね。
増える一方の医者の事務仕事を軽減すべくメディカルクラークをという話も昨日今日出たことではありませんけれども、実際に導入してみると思った以上に仕事はあったというのがこちらの実例ですが、正直こういう皆がハッピーになりましたという話は昨今珍しいんじゃないかと思いますね。

保険会社用診断書や紹介状返書… 県内医師事務に大忙し/徳島(2011年1月22日徳島新聞)

 医師が一日に行っている事務作業は平均2時間57分-。東京医療保健大学の瀬戸僚馬助教(医療福祉経営学)の研究班が徳島県内の医師を対象にアンケート調査したところ、こんな結果が出た。瀬戸助教は「予想以上に事務に追われている実態が明らかになった」と指摘。診断書作成などを代行する医師事務作業補助者(医療クラーク)の必要性や医師の作業軽減を訴えている。

 アンケートは全国で初めて、昨年10月下旬から11月にかけて実施。緊急入院患者数が年間100人以上の県内7病院(非公表)の医師187人を対象に事務作業について質問し、63人から回答があった。

 一日の平均事務作業で最も時間を費やしているのは「外来カルテの記載」で23・2分。「退院サマリー(医療行為の総括)の作成」20・1分、「紹介状の作成」19・5分、「紹介状の返書の作成」17・7分、「保険会社様式の診断書の作成」12・6分と続いた。

 医師が最も負担と感じている作業については「保険会社様式の診断書の作成」が25・8%で最多。次いで「紹介状の返書の作成」が12・9%、「紹介状の作成」が11・3%だった。医療行為とは直接関係のない業務への負担感が大きいことがうかがえる。

 アンケートの対象になった7病院は昨年10月から半年間、医療クラーク普及に向けた県の社会実験として、1人当たり上限200万円の人件費補助を受けている。研究班は3月にも同じ医師に事務作業のアンケートを行い、医療クラークの導入効果を検証する。

 瀬戸助教は「今まで実態を表すデータがなかったので、アンケートは今後の研究に役立つ。医療クラークの必要性は十分に立証されたと思う」と話している。

 県医療政策課によると、昨年5月時点では県内10病院で約60人の医療クラークが勤務。10月以降の社会実験で、21病院45人の医療クラークが新たに雇用されている。

医師事務補助60人配置 雇用創出と医師負担軽減目的 県方針 /栃木(2011年1月21日下野新聞)

 病院勤務医の負担軽減と失業者の雇用創出を目指し、県は新年度に医師の書類作成などを代行する「医師事務作業補助者(メディカルクラーク)」の人材育成に乗り出す方針を固めた。新年度予算に約1億7235万円を計上する予定。県内病院が就職希望者計60人を雇用、研修費や人件費は県が負担する。

 過酷な労働環境を強いられて勤務医が次々に現場を去り、病院にとって医師確保が困難になっている中、同補助者の果たす役割は大きいという。

 受け持つのは、診断書や診療報酬請求書、介護保険審査の意見書の作成補助など。医師はこれらの作業を肩代わりしてもらうことで、診察や手術に専念でき、医療の質向上にもつながる

 県医事厚生課によると、国家資格は不要だが、32時間以上の基礎講習が必要だという。

 事業は、県が約20の病院を公募で選定、1病院当たり3人の就職希望者を配置する。ハローワークを通じて主に若年失業者を募集する。県の助成期間は1年間。財源は「緊急雇用創出事業臨時特例基金」を活用、研修費のほか、人件費(月18万円程度)を助成する。

 同基金を使った緊急雇用対策事業は、景気が急激に悪化した2008年末から実施。公園清掃などの単純な作業が多く、失業者が望む「安定雇用」に必ずしも結びついてはいないとされる。

 今回の事業は必要な知識や技能を習得しながら働けるため、同課は「病院にとっても必要な人材となり、県の助成が終了しても、継続して雇用してもらえるはず」と期待を寄せている。

 県の実態調査によると、10年6月現在、県内144施設のうち、同補助者を雇っているのは28施設。

医師の補助と並んで雇用対策云々が時代を反映しているのでしょうか、こういう話を聞くとまた公務員を増やすのかと顔をしかめる人も少なからずいるわけですけれども、一日中椅子にふんぞり返って新聞を読んでいるしか能がない事務職を多数抱え込むくらいなら、do thisで汗水垂らして働かせた方が税金泥棒と言われずにすむ可能性ははるかに高いんじゃないかと思います。
今のところ社会実験という扱いで自治体の補助が出ていますから助かっているわけですが、公定価格のワンプライス制度でやっている以上はメディカルクラークの人件費でどこまでペイするかという損益分岐点の評価が欠かせませんよね。
現場の医者の士気維持という無形の効果に対する評価も関わってきますけれども、少なくとも医者が夜なべ仕事で文書作成をやっているような急性期の施設ではどんどん導入した方が良いだろうし、その結果医者が専門職としての業務量を増やせるようにまでなってくれば、むしろ病院としての収益は改善してくるようになるんじゃないかと思います。

日本人の半数が高等教育を受けているような時代にあって、事務仕事をこなせるような人材は幾らでもいるわけですし、若年失業者にとっても公園清掃などをやるくらいなら、これから国を挙げて成長産業にしていきますと大号令をかけている医療現場で働いた方がよほど安定雇用に結びつくと歓迎されそうですから、確かに雇用対策上も費用対効果は高そうな一石二鳥の政策とは言えるのでしょう。
自治体にとっても医者誘致のための少なくない費用まで計上した上で、高い割り増し賃金まで払って医者の確保に奔走するくらいなら安い一般職を入れた方がはるかに効率的でしょうから、財政上もむしろお得なんじゃないかと思いますけれども、今後こうした補助によって現場が一応の安定を見た後がどうなるかですよね。
昨今ではどこでも経費削減だ、仕分けだと鵜の目鷹の目でチェックされているわけですが、「こんなもの自治体が補助金を出すべきものじゃないだろう!無駄遣いだ!」なんて声が出た時に「いや、結局この方が安くつきますから」と突っぱねることの出来る自治体がどれほどいるのか、むしろ記事を見るだけでも「いやあれは一時的な対策で、もう来年度からはやめにするつもりでした」なんてことになりそうな気配が濃厚ですよね。

その意味では助成金がなくなってからの方が本当の勝負であるわけですが、この場合医者がいないと大騒ぎしていたような場合と違って、病院側は一般職相手の雇用主としては決して弱者ではないということは覚えておかなければなりませんよね。
「なに今後はお金が出ない?それじゃもうやめます」とせっかくのメディカルクラークを一斉解雇なんてことになれば、また事務仕事に追われるようになる医者は元より、国民からも批判されて当然ですから、ひとたび雇った以上は病院の側にも責任というものがあることは当然承知しておかなければならないでしょう。
病院は黙って医療をやっているだけでも十分社会貢献をしているという見方もあるのでしょうが、これから医療が本当に国を牽引するような産業になっていくのだとすれば、雇用の場としてもトヨタなどと同様に一定の社会責任が問われるようになってくるという、これは一つの先行事例になってくるのかも知れませんね。

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