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2011年2月25日 (金)

崩壊の危機の中で次の時代の医療が動き出している予感

先日もお伝えしました沖縄県の救急医療崩壊の話題ですけれども、その後も改善する様子もなく続いているようですね。

県立北部病院 深夜の内科救急制限 /沖縄(2011年2月23日琉球新報)

 【名護】慢性的な医師不足に悩まされている県立北部病院(名護市、大城清院長)は22日、これまで24時間態勢で実施していた内科の救急診療を、救急車搬送を除き3月1日から午後10時~翌朝午前8時まで受け付け停止にすると発表した。外科、小児科の救急診療は24時間態勢を維持する。同院は「医師の過重負担を緩和するための措置。医師が確保できれば解除できる」として暫定的な対応だと説明。医師確保に向けて努力する方針を示したが、北部地域の救急医療の厳しい現状があらためて浮き彫りになった。
 内科の救急対応で適正な体制を整えるには12人の医師が必要だが、現在は7人。月の当直回数が5、6回に上るほか、緊急時の呼び出しや入院患者への対応で休日を返上して出勤することもある。当直の日は朝出勤して当直に入り、翌日もそのまま出勤するため、36時間以上の連続勤務も頻繁にあるという。
 北部病院にはここ数年、約2万3千~2万6千人の救急患者が来ている。内科には2010年に9713人の救急患者が訪れたが、入院が必要な緊急性の高い患者は約2割の1908人。午後10時~翌午前8時の時間帯の患者の9割以上が入院を必要せず、緊急性が低いと同院は説明する。
 このような現状が医師の負担増となる原因となっており、それを解消するために深夜のウオーク・イン(救急車搬送以外の患者)を制限することで負担軽減を図るという。また、同時間帯の内科救急は北部地区医師会病院と連携することでカバーする。
 同院は「患者も昼に来られる人は昼に来てほしい。コンビニ受診を控え、民間のかかりつけ医を持ってほしい。これが住民を守ることにつながる。スタッフが疲弊し、救急医療ができなくなると、結局住民にとって痛手となる」と患者側への理解を求めた。

いやまあ、36時間以上の連続勤務云々は日本全国ほとんどの病院でそうなんですけれども、しかし夜間救急というものは純然たる内科、外科と分けられないものも多いですから、小児科はともかく外科は維持していながら内科だけというのは患者制限という点でどれくらい実効性があるものなのか、むしろ今度は外科医が疲弊するということになるのではないかと心配ですね。
今どきこんな地雷じみた病院で一気に何人も内科医が集まってくるとも思えませんから、「暫定的な対応」というのもあくまでも表向きの名目ということなんだと思いますが、特に全国的にも問題になっているように深夜やってくる患者のほとんどがいわゆるコンビニ受診じみた軽症患者ばかりというのは、これは従来からの患者(あるいは住民)教育にも問題があったと言うことなんでしょうね。
これに対して「深夜のウオーク・イン(救急車搬送以外の患者)を制限する」というのが対策なんだと言うのですが、そうなりますと自ずから別な問題が発生するだろうことは明白ですから、根本原因を解消するためにも早急に「患者側への理解」を進めていく必要があるのではないかと思います。

救急出動最多546万件 緊急性低い要請も一因 10年(2011年2月19日朝日新聞)

 昨年1年間の救急出動件数は546万件を超え、過去最高になったことが18日、総務省消防庁のまとめでわかった。高齢化が一因だが、緊急性の低い救急要請も多く、同庁は救急車が必要なケースかの判断に役立ててもらうマニュアルを作成する。

 同庁によると、2010年の救急車の出動は546万件を超え、前年より34万件余り増えた。63年に救急出動を始めて以降、これまで最高だった07年の529万件を超えた。前年と比べた増加率は6.7%で、95年の7.6%以来、15年ぶりの高い伸びとなった。搬送人数も497万人で過去最高だった。

 増加した748の消防本部に原因を聞いたところ、8割が「高齢の傷病者の増加」と答えた。昨夏の猛暑を受け、5割余りの消防本部は「熱中症傷病者の増加」を挙げた。一方で、4割近い消防本部は「緊急性が低いと思われる傷病者の増加」を指摘したという。

 消防庁の分析では、高齢化の進展によって2030年までは出動件数は増加し、年間608万件に達するという。一方で、搬送患者の半数余りは入院の必要がない軽傷者。119番を受けてから病院に搬送する時間は09年で全国平均で36.1分。10年前より9分遅くなっている

 同庁は「このままでは搬送時間がさらに遅くなり、重篤な患者に影響がでかねない」として、「家庭でできる救急マニュアル」を年度内に作成する。「子供に熱やけいれんが出た」「おじいちゃんのろれつが回らなくなった」など、すぐに救急車を呼んだ方がいい場合と、急いで病院に行かなくても大丈夫なケースなどをホームページで紹介する。(大久保泰)

近頃では全国どこでもそうですが、先日も香川県の記事を紹介しましたように夜間救急などでも行列待ちをしていますと「俺の方を先にみろ!」なんて大騒ぎし始める輩が必ず出るもので、特に救急車到着でウォークイン患者を後回しにするなんてことになると「救急車で来ればすぐみるんだな!」なんて捨て台詞を吐く連中がいるわけです。
実際に救急搬送がこれだけうなぎ登りに増えている、そして増えているというその実態が搬送の必要もないような軽症患者ばかりということが明らかになってきていて、しかもそれによって本当の重症患者の搬送に支障を来たしているということも判っているわけですから、それじゃ何故何の対策も取らないまま放置しているんだ?という声があがらない方が不思議です。
諸外国並みに救急車は有料化すべしとは以前から言われていることですし、東京都などでは消防庁が軽症患者に対しては救命認定運転手の乗務するタクシーを紹介するといった制度も始めていますが、逆にこれだけ全国的に救急搬送が問題化しているにも関わらず、未だに何らの対策も取っていないように見える自治体が多々あるのはどういうことなのかですよね。
限られた医療資源を悪用する民度が低い市民が多いほど健全な市民は迷惑を被るわけですから市民全てが当事者ですし、搬送一件ごとに5万、10万と出費を強いられる自治体としても単なるマナー向上などという曖昧な呼び掛けに終始するのみならず、そろそろ救急搬送の明確なルール策定と不正利用に対するペナルティーくらいのことは言い出してもいいんじゃないかと思います。

救急に限らず財政が厳しい上に今後劇的な改善が見込めない情勢であるだけに、今までのように「医者を増やせ!医療費を増やせ!」でひたすら供給側のキャパシティーを向上させるばかりでなく、医療の需要側の抑制ということも国民的課題としてもう少し真剣に考えていくべきだと思うのですが、もちろん一方では供給側の問題というのも少なからず存在するのは明白です。
とりわけ近年では市町村合併が盛んに行われた結果あちこちの合併新市で旧町立病院が林立するという事態になっていますけれども、こうした中小地方公立病院というものはマンパワーの観点から見ても非効率極まりないだけに、近年どこも医師やスタッフの確保に苦心しているということは周知の通りですよね。
むろん公立病院ですから経営効率などは目をつぶるという判断もあるのでしょうが、そろそろ国としても本腰を入れて再編に取りかかるつもりであるらしいという話を先日のニュースから取り上げてみましょう。

公立病院再編を支援 厚労省方針、救急・高度化に対応(2011年2月22日日本経済新聞)

厚生労働省は公立病院の再編を3年程度で加速するため、2011年度から新たな財政支援に乗り出す。公立病院は地域内での重複など非効率ぶりと赤字体質をかねてより指摘されている。都道府県に最大120億円を交付して集約し、これを中核拠点として地域の救急や高度医療の体制を再構築する。ただ補助金で再編をやる方法にはばら撒きに終わる懸念もある。

公立病院はへき地での医療や救急医療など民間病院が参入しにくい分野で地域医療を担う存在。市町村合併が進んでも再編は遅れがちで全国に900以上ある。隣り合う市町村で医療サービスが重なり非効率といった批判は多い。総務省は07年に「公立病院改革ガイドライン」を作成したが、09年度の累積欠損は2兆 2000億円と10年で約2倍に膨らんだ

新制度の財源には「地域医療再生基金」の2100億円を使う。基金はすべての都道府県と一部地域に救急医療の強化費として一律15億円を配分。そのうえで公立病院の再編を再生計画に盛り込んだ場合に、再編数など規模に応じて65億~105億円を上積みして交付する。最大120億円を受け取れる計算だ。

支援を希望する都道府県はまず、市町村や民間病院、地元の医師会などと調整して11~13年度の「地域医療再生計画」を作成。5月中に厚生労働省に提出する。これを有識者会議で議論し、地域医療の再生につながる青写真があるとみなした地域に交付金を支払う。

この再編は地域医療の効率化とともに、公立病院をテコに地域の医療全体を立て直す策と位置づける。再編する際にはベットの合計数を再編前より原則10%削減することなども条件にする。日本の人口1000人あたりのベット数は14床前後と英国(約4床)やドイツ(約8床)などに比べ多く、合理化の余地が大きい

課題は都道府県の調整力だ。5月までに関係者と利害調整し、地域医療をどう立て直すか具体案をまとめる必要がある。

補助金によってどこまで地域医療が再生するか。ある県では県立病院と市立病院の統合で県と市が主導権争いを繰り返し、新病院を建築したものの医療サービスは低下したという。「基金がどのように使われたのか検証する仕組みを作らないとどんぶり勘定の公立病院に補助金を配るだけになりかねない」との指摘もある。

ある県というと先日統合新病院の初代院長が収賄で医業停止になったあの県の事なんでしょうが(苦笑)、つい昨年末にも「国立病院の再編・統合については一年を目処に結論を出す」なんて宣言していたのも記憶に新しいところですから、厚労省としてはこの際一気に同時進行で話を進める決意がうかがわれるし、無論自治体病院を管轄する総務省にしても思惑通りで願ったり適ったりの話であるわけです。
いろいろとポイントもあるのでしょうが、特にポイントとなるのが再編された病院を中心として「地域の救急や高度医療の体制を再構築する」とうたっているところで、現実問題として医者数人の小病院が幾らあったところで救急の搬送先としてどれほど役に立つのかという話ですから、医療に対する要求水準が年々厳しくなる時代の趨勢をみてもこれは必須の作業ではあると思います。
ただ記事にも「課題は都道府県の調整力」「関係者と利害調整し」などという文言が並ぶように、当然ながら集約化する一方で廃止や縮小、診療所化される施設は多いわけですから、「オラが町になんで病院がなくなるんだ!」「近所に入院できる病院がないと不便で困る!」なんて地域住民のエゴをどうあしらうかが一番の問題ですよね。

このあたりは先に出てきた医療の需要側の抑制ということとも大いに絡む話ですけれども、田舎のお年寄りが肺炎をこじらせて入院させる病院が多少遠くなろうが多少不便なだけで済みますけれども、息も絶え絶えになった患者を搬送する病院がないということになれば不便どころでは済まない話だという現実をまず理解してもらわなければなりません。
全国どこでも歩いていけるような場所に専門医多数を取りそろえた高次医療機関が揃っている、なんて幻想はあり得ない話である以上、医療と言うものに対してどこかで妥協をしていかなければなりませんけれども、その妥協の内容として生き死にが関わる局面で妥協するよりは、病院が少し遠いだとか不要不急の時間外受診は断られるといった日常のちょっとした妥協で済む方がいいんじゃないですか?ということですよね。
実のところこのあたりは今まで医療の供給側が一番心得違いをしていたところで、何しろ医療の需要が天井知らずに増大していく中で間違った経営努力の名の下にその要求を増長させることに荷担してきた、その結果が現在のコンビニ受診だ、モンスターだという騒ぎになっていることを思えば、どこかで日本の医療は商売というより公共サービス的なものであるという現実をきちんと患者にもわきまえさせなければならないはずです。
医療崩壊だと世間も騒ぐようになっている今の時代こそ、この医療需要の抑制ということを図っていくには絶好の好機であるわけですから、供給の側も「俺がもうちょっと死ぬ気で頑張ればいずれ何とかなるんじゃないか」なんて無茶なことばかり考えていないで、「駄目なものは駄目!」とはっきり言った方が長い目でみれば国民のためになるということでしょう。

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