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2011年2月18日 (金)

最近ちょっと気になった「それ安すぎるだろう」という話題

先日一般紙などでも取り上げられたのがこちらのニュースですが、ひと頃話題になった偽医者騒動などからするとずいぶんとグレードダウンしたものですよね。

「自分は医者だ」、実はうそ 病院で入浴、侵入容疑(2011年2月15日47ニュース)

 京都府警上京署は14日、医師を装い京都府立医大病院(京都市)の職員用浴場に無断で入ったとして、建造物侵入容疑で同市左京区下鴨宮崎町、無職石田茂樹容疑者(63)を現行犯逮捕した。

 同署によると「金がなく、近くに銭湯もない。これまで5、6回入った」と容疑を認めている。逮捕容疑は14日午後9時45分ごろ、同病院地下1階の浴場に入った疑い。

 同署によると、石田容疑者は1人で入浴していたが、後から入ってきた警備担当の男性職員と鉢合わせ。「自分は医者だ」と名乗ったが、下着を洗濯していたため、職員が不審に思い、部署を問い詰めたところ「実は医者じゃない」と認めた。その後、急いで服を着て逃げようとしたため、職員が取り押さえた。

 同病院は24時間出入りできる状態だった。入り口の防犯カメラに約40分前に、傘を差し風呂おけやシャンプーを抱えた石田容疑者が写っていた。

思わず「医者も安くなったもんだなオイ…」と感じてしまいますけれども、この問題の背景にあるのが病院のセキュリティーの甘さであることを考えると、例えばひと頃盛んに言われていたテロ対策などの面でも業界全体の問題意識の欠如がうかがわれる話ですよね。
一部の病院では建物に入るのにセキュリティーキーを要求するようになっていますけれども、これも普通に考えるとそのままタイムカードとして使えばよいのに時間外勤務簿は手書きのままであったりとか、逆に勤務時間が正確にチェックされてしまうからとタイムカード制の導入を渋ったりとか、何だかなあという業界独自の慣行もそろそろ改められていい頃だと思います。
同じく安いと言えば先日地方紙などを中心に取り上げられていたこちらの話題もそうなんですが、まずは記事を紹介してみましょう。

遊山箱:徳島市の徳島大学病院で、難易度が高い外科手術を… /徳島(2011年2月9日毎日新聞)

 徳島市の徳島大学病院で、難易度が高い外科手術を美波町などの2病院に生中継する取り組みがありました。映像だけでなく、音声のやり取りも含めた双方向システムの活用は四国初だそうです。

 早期胃がんに施される腹腔鏡下(ふくくうきょうか)手術で、腹部に穴を開けて入れた腹腔鏡を通し、内部の映像を遠隔地の医師の間で共有しました。狙いとして手術の普及だけでなく、「都市部の病院の専門的な助言を受けながら、地方の医師が地域の病院で手術に臨む」という将来の医療の形も見据えているそうです。

 地域医療の崩壊が叫ばれる中、検討に値する方策のようですが、関係者からは気になる指摘もありました。映像を通して手術の助言をする医師には、診療報酬が支払われないそうです。情報通信技術の発達が生んだ、制度上の新たな問題と言えるでしょう。賛否も含め、議論の進展を期待します。【井上卓也】

こういうハイテクを用いた手術支援のシステムと言えば、海外などでは前立腺などを中心にしてすでにロボット手術なども結構やられるようになっていますし、その延長線上で遠隔治療なども今後どんどん普及していくことになるんだと思いますが、今回の記事を見ても判りますように報酬支払いをどうするのか、そして何より何かあったときの責任は誰が取るのかという問題がありますよね。
今回は実験的な取り組みということもあって、助言をする医者には診療報酬も設定されていない(おそらく病院からは某かの謝礼はあるのかも知れませんが)となると、わざわざ時間を割いてただ働きをしたがるほど暇な医師がどれほどいるのかという話ですから、早急に制度的にも体制作りをしていかなければ日本の医療が時代遅れになってしまうでしょう。
私見ですが外科医などは指先や視力などの問題もあって比較的寿命が短いと言われますけれども、例えば引退した老医であっても大画面モニターなどであれば肉眼よりよく見えるでしょうから、こうした支援の仕事であれば十分サポート役として仕事になるのでしょうし、将来的には手術場においても視力補助のシステムが活用できるようになればいいと思いますね。
同じく医者にとってあまりメリットがないとして忌避されているのが開業助産師に義務づけられた提携医療機関の問題ですけれども、まずはこちらの記事を紹介してみましょう。

自宅で自然なお産を 奈良市の高橋律子さん(2011年02月15日朝日新聞)

◎妊婦の思いに応え180人

 2006~07年に産科医不足などで妊婦の死亡や死産が相次いだ県内で唯一、自宅出産を専門にする助産師がいる。奈良市に住む高橋律子さん(60)。県内の分娩(ぶんべん)できる医療機関は減少傾向にあるなか、「自然なお産を実感したい」という妊婦の思いに応え続けている。

 「おなかが張ってきたわね。いよいよねえ」。1月下旬、高橋さんはサポート役の助産師とともに、3人目の出産を間近に控えた三郷町の川上知宏(ちひろ)さん(36)の実家へ定期検診に訪れた。

 川上さんは04年に次男を出産する際、当時住んでいた京都府内の助産院から高橋さんを紹介された。「病院出産と違って実家での出産なら入院もなく、当時1歳だった長男とずっと一緒にいられると思って

 自宅出産を望む妊婦は、初めての病院で出産した際、家族の立ち会いが禁止されたり、人数制限されたりした経験を持つ人が多いという。川上さんは今回も前回と同じく実家で、夫と子どもたちが見守る中、2月8日に無事、三男を出産した。

 川上さん自身、次男の出産後に仕事復帰の相談にも乗ってくれた高橋さんにあこがれ、3年前に助産師になった。高橋さんは「妊婦さんは遠い親戚みたい。似たもの同士になるのかもね」と笑う。

 高橋さんは1988年から県内の診療所で勤務。95年に海外のお産事情を見学したイギリスで、家庭分娩を専門とする助産師に出会って衝撃を受けた。「日本の分娩台での出産と異なり、母親が起きた状態で出産していた。母親に子どもを産み落とす実感が湧くようにサポートしていた」

 ◎母親の体験「ノート」4冊目

 翌年から自宅出産専門の助産師となった。県内での自宅出産はわずか年十数人で、県内全体の出生数約1万人の1%にも満たない。それでもこれまでに取り上げた赤ちゃんは180人にのぼる。

 出産場所は妊婦がいつも使っている布団の上やお風呂場など様々。04年からは妊婦が事前に心構えができるように、出産を終えた母親に体験をA4判の「お産ノート」につづってもらっている。現在で4冊目だ。「産まされたのではなく、産んだという感覚が味わえた」「近所の人たちも気遣ってくれた」。次男を実家で出産した川上さんも「陣痛後にドライブに出かけたことが気分転換になった」と書き込んだ。

 ◎病院と連携取り決め目指す

 ただ、自宅出産には不安もある。高橋さんと県内に8カ所ある助産院は、緊急時に対応してくれる医師と医療機関を指定している。だが、県内には分娩可能な医療機関が病院9カ所、診療所18カ所の計27カ所。05年に比べ8カ所減った。このうち助産師と連携しているのはいずれも手術ができない診療所。妊婦が重症になれば、救急病院に急きょ飛び込まざるを得ない。

 高橋さんは昨年末から、病院側と事前に連携方法の取り決めができないか交渉を始めた。「妊婦さんにいろんな出産の選択肢を持ってもらいつつ、安心して出産できる態勢を築きたい」(島脇健史)

ま、今日日「自然なお産」なんて言葉が出てきただけでも強烈にフラグ立ちまくりという感じなんですが、こういう開業助産師の方々の一番基本的な問題点というのは、何より取り上げる症例数が圧倒的に少なすぎることですよね。
この高橋さんも60歳と言いますからこの業界では相当なベテランの部類なんでしょうが、それでも過去の症例数はたったの180例と言いますから1~2年目の研修医と同レベルの経験のみ、それも難症例はなく通常の経過を辿っての正常分娩ばかりだったはずですから、何か異常があったとしても気づきもせず見逃す可能性も高いでしょうし、そもそも何をどうしていいのか判らず適切な対処が出来ない可能性が高いわけでしょう。
こういう方々がまともな仕事をこなすにはきちんとしたバックアップ(あるいはそれは尻ぬぐいという言葉に置き換えられるものでしょうか?)をしてくれる医療機関の存在が欠かせないはずですが、記事を見ているだけでも大丈夫かそれは?と思えるような話が出てきているのが気になりますよね。

「高橋さんと県内に8カ所ある助産院は、緊急時に対応してくれる医師と医療機関を指定している。だが、県内には分娩可能な医療機関が病院9カ所、診療所18カ所の計27カ所。05年に比べ8カ所減った。このうち助産師と連携しているのはいずれも手術ができない診療所。妊婦が重症になれば、救急病院に急きょ飛び込まざるを得ない。」

いやあの、それって連携しているって意味がないんじゃないの…と誰しも突っ込むところでしょうが、国によって開業助産師に嘱託医療機関との連携が義務づけられてからと言うもの、こういう名前だけ借りて未だに旧態依然の営業を続けている開業助産所がどれだけ残っているのかと考えると、何とも怖い話だなと言う気がしてきませんか。
根本的にはこの嘱託医義務づけというもの、医療機関側にとっては他人のミスの後始末と訴訟リスクを負わされるだけで何らのメリットもないわけですから、まともな医療機関ほどやりたがるはずもないものであって、特にマスコミが大好きそうな「自然なお産」派のカリスマ助産師など近づきたくもないというのが世の産科医の先生方の本音ではないでしょうか?
そうした事実を知った上でそれでも「自然なお産」を選ぶというのであれば、それはもちろん「お産は病気ではない」以上は消費者としての自由だということですけれども、その結果異常分娩という「病気」になって病院にかかった場合に周囲の目線はともかく自分自身が納得できるものなのかどうか、ご家族も含めてよくよく考えた上で決断された方がいいんじゃないかと思いますね。
いささか脱線しましたけれども、極めつけの安売りとも言えるのがこちらの話題なんですけれども、まずは黙って記事を紹介させていただきましょう。

日医会長「6割以上の会員、小選挙区で民主に投票」(2011年2月16日朝日新聞)

 日本医師会(日医)の原中勝征会長は16日の医療関係団体による集会で、政権交代を果たした2009年衆院選について「医師会の調査によると、小選挙区では6割以上の会員が民主党に投票した」と述べた。日医はもともと自民党寄りだったが、自らが親密さを強調する民主党へのすり寄りぶりをアピールした。

 昨春の会長選で、民主党政権とのパイプを強調して当選した原中氏は「民主党が掲げた『人を大切にする』ところに一筋の光明をみた」と称賛する一方、「マニフェストは一体どうなったんだと心配している」と苦言も呈した。

 なお、原中氏が取り上げた「医師会の調査」は、日医事務局によると「そんな調査はしていない。専門誌の調査を勘違いしたのではないか」。

ま、今さら日医会員が何をどう投票しようが知ったことではないのも確かなんですが、問題は死に体の民主党政権に対して今の時点でこういう親密さをアピールするようなコメントをわざわざ出してくる、この会長さんの意図がどこにあるのかですよね。
さらに泣けてくるのが当の日医事務局からも「は?何言ってんの?単に会長の勘違いでしょ?」なんて平然と言われてしまうあたり、会長としてよほどに求心力がないということなのかも知れませんけれども、率直に見れば本当に大丈夫かこの人?と色々な意味で心配したくなってくるような話です。
本来であれば医療崩壊だ、医師不足だと世間の関心がようやく医療に向いている中、国としてもさすがに医療費削減政策を続けるわけにはいかないとようやく言い出したタイミングなのですから、言ってみれば医者の発言力というものは近来になく世論の後押しを受けて強くなっているはずなのですが、よりにもよって業界団体のトップがこのタイミングでこういう方ですからね(苦笑)。
「医者はとにかく増やせ!OECD平均目指してどんどん増やせ!」が何とかの一つ覚えな某大先生などもそうですが、この時期にそうあるべきでない人達ばかりがまるで業界の表看板のように取り上げられているというのを見ていると、何かしら背後に何者かの意図があって行われていることであれば大変良くできましたと褒められていいくらいの成果なんじゃないかという気がします。

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コメント

なんかコントみたいで笑えるんですが、話を聞く限りセキュリティーがどうこう言うレベルじゃなさそうですね。
模倣犯の心配をする以前に、こんなんじゃ備品だろうが貴重品だろうが持ち出し放題だったんじゃないですか?

直撃!病院風呂に週1ペース「大人5人でも…モホー犯心配」
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110216/dms1102161620009-n1.htm
 病院の職員専用風呂に無断入浴していた京都市内の無職男(63)が、建造物侵入容疑で京都府警に逮捕された。逮捕された男は週1ペースで“自家用”のごとく、この風呂を愛用していたという。行状の詳細を、府警上京署幹部に聞いた。

 ――要は、銭湯代わりに通っていたわけですね

 「自宅の風呂が故障し、近所の風呂屋も相次いで廃業したため思いついたそうです。金も節約できることから、2~3カ月前から計10回、洗面器にタオルやら石鹸やらを入れて、約1キロを自転車で通っとりました。明らかに確信犯ですな」

 ――風呂は誰でも侵入可能だったのですか

 「入り口は地下駐車場に直結した1カ所だけ。一般の方はなかなか見つけづらい場所ですが、ドアに『職員浴室(男子)』と書かれており、以前から地元に住んでいる容疑者はこれを知っていたのでしょう」

 ――なぜ御用に

 「後から入った48歳の警備員が、風呂場で下着を洗う容疑者を見てピンときたんですわ。宿直の医師や職員には専用の洗濯機があり、風呂場で洗濯する人などおるはずないからね。『職員ですか?』と聞いたら『ハイ』と答えるものの、所属部署や名前はダンマリやから、これは部外者やと確信。すぐに風呂を出て同僚と一緒に戻って取り押さえた、とのことです」

 ――そんなに入り心地の良い風呂なら、模倣犯の出現も心配ですね

 「大人5人が入っても十分な広さ。入り口に警備員を常駐させたり、何百人ものスタッフに鍵を貸与するのも不可能やろから、『部外者は110番通報する』といった張り紙をするなりして、模倣犯を防ぐことやろね」

投稿: 通りすがりのただの人 | 2011年2月18日 (金) 12時44分

「医師は被害者意識を捨てよ」の名言で御高名な信友先生、今度は「自然なお産」を主張されてますな。

糸島産家プロジェクト
自殺、児童虐待、いじめ、DV、少子化など社会問題は多様化し、増えるばかりです。
問題だけを見つめると悪いのは誰か、犯人探しだけに終わってしまいがちです。

私たちはさまざまな問題をひたすら紐解くと、人が人として誕生するとき「お産」で大きく変わると思うようになりました。
命がけで日々お産と向かい合っている産科医、助産婦との出会い、話をすればするほど、それは間違いないという思いになりました。
人(医師)に任せきった不自然なお産ではなく、自分らしい自然なお産。
生まれようとしている子どもによりそったお産。
そこにしか生まれない親子の絆。
未熟で前向きに進むことしかできない私たちですが、同じ思いの人たちがつながることで、間違いなく「日本を変える」と日々まじめな顔して熱くなっています。
そんな私たちにしかできないことをこれから少しずつ、楽しくやっていきます。
一人でも多くの女性が、自分らしく自然なお産を経験し、本当の「女」になること、
そして、何より私たち自身が本当の「女」として私らしい生き方をしていくことが
日本を平和でしあわせにする!!
『「幸せなお産」が日本を変える』
こんなことを考えている私たちです。
http://www.itoshimaubuya.com/about
発起人
信友 浩一
http://www.itoshimaubuya.com/staff

投稿: 匿名希望 | 2011年2月19日 (土) 08時20分

こういうのを見ると信友先生って単に医療現場に疎いだけではなくて、相当に情弱というか空気を読めない御仁なのかなとも思ってしまうんですが、直接面識のある方はどう感じていらっしゃるのでしょうね?

投稿: 管理人nobu | 2011年2月19日 (土) 19時12分

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