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2011年2月23日 (水)

「変わらなきゃ」はどちらの側にも言える話で

先日こういう記事が出ていまして、これ自体はよくある話ではありますが割合に長期間同じことを繰り返していられたという点では少し珍しいですよね。

娘の入院費支払わず病院転々 詐欺容疑で72歳母親逮捕(2011年2月17日47ニュース)

 支払い能力がないのに体が不自由な長女(44)を病院の個室に入院させたとして、警視庁大森署は17日、詐欺の疑いで東京都三鷹市、無職長倉玉枝容疑者(72)を再逮捕した。「後で支払うつもりだった」と否認している。

 逮捕容疑は昨年3月からの約2カ月間、長女を文京区内の私立病院の個室に入院させ、個室と一般病室との差額ベッド代を支払わなかった疑い。

 大森署によると、長倉容疑者は昨年1月からの1年間、長女を都内18カ所の病院の個室に入院させ、差額ベッド代だけでなく入院費用も支払わずにいなくなることを繰り返していたという。

身体障害者の入院費用は行政側が負担することになっており、同署は負担対象に含まれていない差額ベッド代について詐欺容疑で立件した。

 逮捕容疑だけでの差額ベッド代は約265万円。これまで入院した病院での差額ベッド代は計2千万円を超える可能性があるという。

「後で払うつもり」というのが単なる弁解であったのか、失礼ながらかれこれお歳もお歳なだけに天然でそう思っていたということなのかは判りませんが、記事の書き方からするとかなり確信犯的に入院と脱走を繰り返していた気配ですから犯罪性は濃厚な様子で、普通であれば各病院に情報が回っているでしょうに何故これだけ長期間被害が続出していたのかが少し謎ですよね。
ただ記事を素直に読みますと一年間の差額ベッド代だけで2000万円(一日あたり約5.5万円)というのはいくらなんでも高額すぎる印象で、記者の勘違いなりでないとするといわゆる特室と呼ばれる贅沢な個室ばかりを渡り歩いていたということなのでしょうか、何にしろ詰め所界隈でちょっと普通じゃない患者と噂されるような行動ではあったのかなと思えます。
公費医療が受けられるのなら素直に自己負担なしの大部屋ででも済ませておけばわざわざ詐欺で捕まることもなかったのではないかと考えると、単純に社会保障の不備がどうこうといった話にまとめてしまうのもどうかなという印象を受ける事件ですが、むしろ程度の差こそあれこういう患者が珍しくないあたりに医療業界の経営感覚というものが問われているのかも知れません。
ひと頃から社会的にも大きく取り上げられるようになった未収金問題などもそうですが、未払いや踏み倒しなどはどこの業界でもあることとは言え、常習犯に対しても相変わらず同じような医療をしているだとか、未払い続出にも関わらず夜間時間外の一時金すら取らないというのは、これは世間一般の感覚からするとちょっと変な話ですよね。

「1%の顧客が10%のリソースを消費し、0.1%の利益にしかならない」という言葉があるそうで、まさにこれなどは経営的視点から見たモンスター顧客の定義そのものではないかと思いますが、残念ながら医療業界ではこうした視点が薄く、単に大騒ぎする人、文句ばかり付けてくる人といった程度の認識で終わっていたのも事実だと思います。。
近頃はモンスターだとかクレーマーだとか言われる顧客が増えてきたとはどこの業界でも感じていることでしょうが、とりわけ医療と教育がそのターゲットとしては二大巨頭なんだそうで、どちらも共通して言えるのは今まで現場の人間に金銭や経営の感覚が希薄であった、お金を受け取った代価として相応のサービスを提供するという意識が薄かったということではないかと思います。
サービス業においてよく言われる逆説に、普通に考えれば高い料金を払った顧客ほど堂々と良いサービスを受ける権利があるはずなのにむしろ逆で、客単価が極めて高い店などでは店員は偉そうでむしろ顧客の方が恐縮していたりする、一方で大衆向けの安い店などでは過剰なサービス要求が突きつけられやすい傾向があると言うことですが、その点からするとただ同然で受けられるサービスほど顧客の要求水準が高くなる道理ですよね。

もちろん業務に対する意識が一般のサービス業と異なるからこそ顧客満足度ということにあまり留意してこなかった、それだけ顧客から突っ込まれる余地が大きかった部分もあるのでしょうが、医療や公的教育といった「ただ(同然)であってしかるべき」という社会的認識が蔓延している業界こそ、もっと現場も当たり前の経営感覚を持っていくことがモンスター対策の第一歩なのではないかという気がします。
そうした点で考えると客観的指標の乏しいモンスターというものに対して、「儲かるかどうか」という視点を持つことも相応に意味のあることではないかと思いますし、一見遠回りなようでも最終的に大きな利益をもたらす経営の方針を探ることもこれからの医療経営陣には必要なのでしょうね。
その場合の正しい経営感覚というものは単に「もっとコストを減らせ!顧客を増やせ!」なんてハッパをかけるだけではダメで、逃散だ崩壊だと言われる今の時代であるからこそ病院の収入を稼ぎ出している医者を始めとするスタッフに気持ちよく働いてもらうことこそ、実は経営安定への最善解の一つなのかも知れません。

重体患者より「先に診ろ」…院内暴力が深刻化(2011年2月20日読売新聞)

 香川県内の医療機関で、職員が患者から暴力や暴言を受ける被害が深刻化している。先月には県内で、傷害や暴行の疑いで逮捕される患者も相次いだ

 これらの「院内暴力」に対処するため、ここ数年、専門部署を設置したり、警察OBを常駐させたりする病院も増えている

 県も今年度、暴力の予防に重点を置いたマニュアルづくりに乗り出しており、医療現場での対策強化が進んできている

 ◆深刻化

 「何で俺を先に診察せんのや」。先月初旬、ある病院の救急処置室。路上で倒れ、救急車で運ばれてきた男が声を荒らげ、男性医師に突っかかった。病院には当時、心肺停止状態の別の患者がおり、その処置を優先したことに激高した。

 職員や看護師6人が取り押さえようとしたが、男は医師の胸を数十回突き飛ばし、病院が警察に通報。男は暴行容疑で逮捕された。

 別の病院でもその数日後、「質問が気に入らない」と、職員の顔を殴った男が傷害容疑で逮捕された。

 「早く処置をしろと言って胸ぐらをつかんだり、備品を蹴ったりするのは日常茶飯事」「看護師の首を絞め、殺すぞとすごむ患者までいる」……。複数の病院の担当者がそんな現場の現状を明かす。ある病院が職員約100人を対象に院内で調査したところ、4割が「患者から、身体的暴力を受けた」との結果が出た。

 県によると、県立の4医療施設では、2~3年前から医師や看護師への暴言が目立ち始め、次第にエスカレートしているという。最近では、被害に悩んで辞職した看護師も出ている。担当者は「理不尽な暴力にじっと耐えている職員も多く、把握できているのは氷山の一角。本当の被害は計り知れない」とため息を漏らす。

 ◆対策

 院内暴力の深刻化を受け、ここ数年、対策を本格化させる病院が出てきている。県立中央病院では2008年、マニュアルをつくった。騒いだり、必要のない治療を強要したりした患者には、院長が退去を命令できることなどを盛り込んだ。昨年には初めて、警察官を講師に、院内暴力の対処法講座も開いた

 高松赤十字病院は05年、院内暴力などのトラブル対策を担う「医療安全推進室」を設けた。各科の待合室には「脅迫的言動をした患者は診療を断る」などと書いたポスターを張り出した。

 両病院と、香川大医学部付属病院では、3~5年前から、県警OBの職員が常駐。警察とも緊密に連絡を取れる態勢を整備した。

 ◆予防へ

 県は今年度、予防に重点を置く県立病院共通のマニュアルづくりも進めている。「見せる警備」を行う▽待ち時間を短縮し、待合室を静かにして、患者をいらだたせないようにする――といった内容で、3月末までに完成させ、来年度から県立の各医療施設で運用することを目指している。県立病院課は「院内暴力がこれ以上ひどくなれば、医療が崩壊しかねない。先手を打ち、食い止めたい」としている。

ま、犯罪レベルの方々というのはどこの世界でもいるもので、むしろ俺は患者様なんだから病院相手なら何をやっても許されるという誤解を助長してきた責任も医療側には問われるでしょうし、今後は社会常識に従って適切に対応していくのでなければ、相も変わらず「医療の常識は世間の非常識」と言われ続けることになるということです。
ただこういうことになってきますと世の大多数を占める善良な顧客にとっては、まかり間違うと自分もモンスター扱いされて「診療はお断りさせていただきます」なんてことになるのではないかと、安心して病院にもかかれないということになりかねませんよね。
最初から一見さんで終わるつもりならともかく、やはりある程度長い付き合いをしたいという場合には顧客の側にも自分は真っ当な顧客であるということを示す常識的な努力は必要でしょうし、お互いの信頼関係の中でこそ顧客にとっての最上の利益がもたらされるというのはどこの業界でも同じことだと思います。
となれば、そうした信頼関係を破壊するような行為は結局自分自身のためにならない、あるいは言葉を変えれば定価販売の公定価格である医療においてこそ顧客として一番損をしやすい行為であると思うのですが、どうも案外大勢の人達が自ら望んで損をしているらしいというのはどうしたことなんでしょうね?

あなたは、医師にウソをついたことがありますか?(2011年2月18日日経BP)
より抜粋

【アンケート】医師は「患者の方便、言い逃れ」をお見通しだけど…

 医師に取材していると、患者のウソが話題に上ることがよくあります。処方した薬を飲んでいないのに「飲んでます」、ポケットに入ってるたばこが見えているのに「もうやめました」、性感染症にかかっているのが明らかなのに原因として考えられるような行為は「していません」などなど。こうしたウソは、診療の場では日常茶飯事のようです。

 実は、医師の多くは、「患者はウソをつくもの」と思っています。「食習慣や性生活に関する患者の返答は話半分に聞いておく」と言う医師も決して少数ではありません。ですので、医師にウソをついた場合、皆さんが思っている以上に、相手にはバレていると心しておいた方がいいでしょう。

少々のことでは目くじらを立てないが

 上記のようなよくあるウソの大半は、患者自身の非から生じた気まずさによるもの。また、良い患者を演じたいとの思いから、ついつい口にしてしまうウソも少なくないと思います。医師もそこらへんは十分に分かっていますので、少々のことでは目くじらを立てないのが普通です。

 患者にウソをつかれたと感じた場合の医師の対応は、その内容にもよりますが、大きくは以下のように分かれます。

[1](だまされたふりをして)受け流す

[2]患者の言い分を否定しない代わり、疑問を呈する

[3]事実を話してくれるように諭す

[4]事実を知るために質問を重ね、問いただす

 医師は患者のウソには慣れているとはいえ、上記のいずれかの段階でウソを明かさないと、厳しく注意される羽目になりかねません。場合によっては、医師との信頼関係が崩れ、診療の継続が難しくなる可能性もあります。ウソをついてしまった場合は、せめて医師から疑問を投げかけられた時点で、正直に話す方がいいでしょう。

検査結果などの医学的データからバレる

 医師として一番困るのは、ウソが原因で治療に支障が生じることです。患者がウソをついたとしても、医師が疑問を感じて問いかけた時点で事実を話してくれれば、深刻な問題はほぼ避けられます。よほど悪質な内容でない限り、ウソをついたことを叱ったり怒鳴ったりはしないはずです。

 そもそも、検査結果などの医学的データからバレてしまうウソはたくさんあります。また、医師は、家族や以前受診していた医療機関に疑問点を確認することもできます。

 「診察室で、『お酒はもう飲んでいません』と言い張る患者の横に座っていた奥さんが首を小さく横に振るのを見て、思わず苦笑してしまった」。この種のエピソードは、医師なら多かれ少なかれ持っているものです。医師は、ウソをつくには手ごわい相手なのです。

 メディアで「医療不信」というフレーズが使われるようになってからだいぶ経ちます。この言葉は医療側の悪質なウソや事実の隠蔽を背景に生まれたわけですが、非難されて然るべきそうしたウソは、以前に比べれば減りつつあると言われます。読者の皆さんはどう感じていますか。逆に、患者から医療者へのウソはどうなのでしょう
(略)

たとえば本当は25cmなのに23cmの靴を買うだとか、ウエストが90cmなのに80cmのズボンを買ってしまうとか、当たり前に考えれば単純に馬鹿げた行為で自分の損にしかならないと言うことが判ると思うのですけれども、何故か一番大事なはずの命に関わる現場で平然と嘘をつく人がいるというのも興味深い現象だとは思いませんか。
アレルギーの既往で嘘をつくといった場合を想像すると一番簡単ですが、単純に治療に対する傷害になるとか言うレベルではなく場合によっては命に関わることも十分あるわけで、しかもそうした嘘つきの顧客というのは何かあった場合にも嘘をつく可能性がある、例えば医者から「○○してはいけない!」とはっきり警告されていたにも関わらず後になって「いや、何も聞いてないですよ」と言い張りそうにも見えるということです。
むろんちょっとしたかわいげのある嘘くらいであればそう事を荒立てるつもりもないにしても、あからさま過ぎる嘘をついて平然としている、そして全く悔い改める様子もないということであれば、これは医者の側からしても潜在的なモンスターとして扱わざるを得ないですから、結局自分自身でわざわざ損をする道を選んでいるということですよね。

ひと頃では医療現場における言った、言わない論争と言えば主に顧客である患者側が医者を責めるニュアンスで使われたものですし、実際マスコミなどもそのシナリオに沿って医療バッシングを繰り広げたことが今日の医療崩壊の一因とも言われていますが、そうした経験を経た今の医者達は基本的に滅多なことでは嘘をつかなくなってきています。
ただ嘘をつかないということと本当のことを言うとの間には果てしない距離があるもので、例えば皆さんが大急ぎで遠くに行く用事がある場合、空港のチケット売り場で「いや、過去の報告によれば飛行機墜落による致死率は限りなく100%に近いのですよ。一方で新幹線は開業以来乗客の死亡がゼロですが、如何なさいますか?」と言われて、乗り物について何も知らなければそれでも飛行機を選ぶという人はまずいないはずですよね。
その結果肝腎の用事には間に合わないという大きな不利益がもたらされるかも知れませんが、売り場のお姉さんは何一つ嘘をついているわけでもない、ただ提示された情報が望ましい最善解に到達するためには不適切なものであったというだけのことです。

航空会社の人がそんな自分達の顧客を減らすようなことを言うはずがない、そもそも我々は飛行機事故のリスクが非常に低いことも知っていると思うかも知れませんが、黙っていても顧客が殺到してもうこれ以上来ないでくれと規制をかけているのが今の医療業界であり、そして医療と言う専門領域において何がどの程度のリスクなのかを体感的に承知している素人さんがどれだけいるかということを考えなければなりません。
つまり知識の偏在がある分野において、全く嘘などつかなくとも素人の考えを誘導するなんてことは専門家からすると簡単なことであり、実際にそうであるからこそ詐欺師なんて商売が古今東西を問わず消えることがないわけですが、一方で医者も金を稼ぐためにそうした行為に走るのかと言えばそれは極めて限定的で、多くの場合はこれ以上仕事を増やせば自分が潰れるとか、モンスターは困るといった単純な事情が背景にあるわけですよね。
そうであるならごく普通の善良な顧客としてはどうすればいいのか、少なくとも言えることはいかにも酒だかド○ッ○だかに酩酊した様子でカウンターに押しかけてみたり、「この人ってもしかしてハイジャックでもするつもり?」と疑われそうな見るからに危険な香りを漂わせるよりは、「私は善良無害な人間です。あなたとの間にwin-winの契約関係を結ぶことを望んでいます」という態度を示しておいた方が得だろうと言うことでしょう。
医療は医者から一方的に与えられるものではなく、患者自らが自分の意志で選んでいくものであると言われてすでに久しいですけれども、そろそろ患者の側でも医療との真っ当な付き合い方を学んでいてもらいたいと思っている医療関係者は多いんじゃないかと思いますね。

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コメント

モンスターはデカい顔した方が得だと経験から学んだ人間とも言えますな
大きく育つ前にきっちりしつけてやるのが本人のためでもあるかと

投稿: 匿名希望 | 2011年2月23日 (水) 20時00分

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