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2011年2月15日 (火)

ますます逼迫する介護業界 それもまた国策?

世の不景気を反映して就職難という時代ですけれども、そんな中でも新卒に限らず普通の主婦であっても圧倒的に求人の引く手数多という業界があるというのがこちらのニュースです。

R40主婦の再就職 介護職の採用率は事務職の10倍以上(2011年2月13日NEWSポストセブン)

家計のプラスになれば、と再就職を望む主婦も多いが、大学生さえ就職内定率が過去最低の68.8%というこの時代、希望の仕事に就くのは至難の業だ。

本誌は30代以上で仕事(パート含む)を見つけた女性100人にアンケートを実施した。「どこで仕事を探しましたか?」という問いに対する答えは、「新聞広告・折り込みチラシ」と「ハローワーク」が並んで1位。地道にコツコツ探すのが近道といえる。ただし、職種の探し方にはコツがあるようだ。

京都府の青木美恵さん(49・仮名)は、働くお母さんに代わって子供の世話や家事を行う会社『マザーネット』の募集に応募した。

「子育てや家事の経験は立派なキャリアという募集メッセージを見て、これなら自分もできると思ったんです」

面接後すぐに採用され、現在、病気の子供のケアや夕食準備の代行を週2回ほど行っている。月収は5万円ほど。『ハナマルキャリアコンサルタント』代表の上田晶美さんはこういう。

採用されやすい業界は、介護、医療、保育です。介護・医療は高齢化のため、保育は子供を預けて働く母親が増えているため、需要が増えています」

都内のハローワークの求人倍率を見ると、訪問ヘルパーや家事手伝いなど介護・家庭支援を行う職種には、希望者10人に対して50人分以上の求人があった。一方、競争率の高い事務職は、希望者10人に対して3~4人分。つまり、介護の方が10倍以上採用されやすいのだ。

一般的に中高年主婦と言えば求職活動でさほど良い条件とは思えませんが、それでもこれだけ求人が来るというのはもちろんそれだけの需要があるということでもある一方で、かねて言われるような「3K職場」の典型例として人材が定着しないという背景事情もありそうですよね。
以前にもハローワークに通う失業者からも「介護業界だけは勘弁して」と忌避されるなんて話を紹介しましたが、その背景にあるのが激務でありながら薄給であるという待遇の悪さであるのは明らかですから、政府としてもいつまでもこれを放置していたのでは新成長戦略の実を問われるというものでしょう。
ちょうど先日から介護報酬改定に向けた社会保障審議会の分科会が始まり、この場においても介護スタッフの待遇改善という話が当然ながら出てきているようですが、見てみますと例によって突っ込むべきところも多そうなのですね。

介護報酬改定:論議スタート 「地域包括ケア」具体化へ 職員待遇改善も(2011年2月8日毎日新聞)

 12年度の介護報酬改定に向けた議論が、7日の社会保障審議会介護給付費分科会(会長・大森弥東京大学名誉教授)で始まった。介護が必要になっても住み慣れた地域で暮らせる体制「地域包括ケア」のための環境整備や、介護職員の待遇改善などが焦点だ。分科会は、政府が6月にまとめる税と社会保障の一体改革に議論を反映させたい考えだ。【山田夢留】

 介護報酬改定は3年ごとに行われるが、12年度は医療の診療報酬改定(2年ごと)と時期が重なる。高齢者医療と介護はサービスの重複が以前から指摘されており、大森会長は分科会で「医療と介護の役割分担や連携が必要だ」との基本的考え方を強調した

 今回の改定の最大のテーマは、在宅でも必要な医療・介護サービスを受けられる「地域包括ケア」の構築だ。そのための環境整備として、厚生労働省は12年度から「24時間地域巡回型訪問サービス」などの新たな制度の導入を検討しており、分科会で制度の詳細を詰める方針だ。

 現場を支える介護職員の処遇改善も大きな論点となる。菅政権は潜在的な需要の大きい介護分野で雇用創出を目指しているが、処遇改善がなければ新たな雇用を生み出すのも難しいからだ。

 現在は11年度末までの暫定措置として、介護職員1人あたり平均1万5000円相当の処遇改善交付金が事業主に支給されている。それでもヘルパーの平均月給(09年)は約20万円と、全産業平均(32万円)と10万円以上の開きがある。12年度以降、介護報酬を引き上げて恒久的に給与を引き上げるのか、交付金による暫定措置を続けるのかが焦点だ。

 ◇訪問看護など利用者少なく

 厚労省は7日の分科会に、在宅サービスの利用額が介護保険の支給限度額を超えている利用者の実態調査(対象約4700人)の結果を示した。訪問看護など医療系サービスの利用が少ないことや、利用者の8割以上が1種類か2種類のサービスしか利用していないことが判明した。

 「医療サービスが高額で限度額を超えてしまう」として支給限度額引き上げを求める声があるのに対し、同省は、引き上げの必要性はないとみている

しかしこの職員の待遇改善の話もずっと以前から言われている割には劇的に改善したという実感もないのですが、今回の議論を見ても全業種平均との圧倒的格差を埋めるには甚だ不十分な範囲での議論に終始しそうな気配で、実のところ国としては劇的に報酬引き上げをやる意志もないのではという印象を受けますよね。
医療サービスの限度額引き上げをしない意向を示しているなど、要するに介護においても医療と同様にお金をかけたくないという意志があるのでしょうが、地方では申し込み殺到で介護認定が追いつかない!なんて騒ぎが起きるほどに需要が急増しているこの介護領域にお金を使わないというのは、巨大な内需拡大の好機をみすみす見逃していると言う考えも出来そうです。
ところが国の方ではとにかく公費をこれ以上投入するのは避けたいということの一点張りで、その結果あちらこちらにひずみが顕在化しつつあるのが現状ですが、例えば今後更に状況が悪化しそうな問題としてこんな話もあるのですね。

特養老人ホーム待機者は42万人 専門家「10年後はもっと酷い」(2011年2月13日NEWSポストセブン)

 特別養護老人ホーム(特養)には長蛇の列ができている。厚労省の調査によれば、2009年12月時点の入所希望者は42万人。10年後、特養ホームの行列は解消されているのだろうか?

 今はまだ元気な高齢者や、そうした親を持つ家庭では、今よりもむしろ10年後に、施設介護がどういう状況になっているか気になるところだろう。厚労省は 2009~2011年度までの3年間で、全国に特養などの介護保険施設を16万人分整備するという目標を掲げている。だが、2010年度までの2年間で確保されたのは8万7000人分と、目標の半分にとどまっている。社会保障論が専門の結城康博・淑徳大学準教授が指摘する。

「これから団塊の世代が介護される時代を迎え、要介護の高齢者は増え続けるので、抜本的な待機者解決策は難しい。10年後には、現在よりも深刻な状況になる可能性が高い」

 厚労省は現在、在宅介護のサービス拡充を検討しているが、そこには「在宅介護が増えれば、施設を増設する必要が少なくなり、その分、公費負担が減る」(厚労省関係者)という狙いがある。

「導入が検討されている24時間訪問介護にしてもヘルパーが四六時中来てくれるというわけではありません。やはり施設と在宅は、同時に整えることが必要です」(前出・結城氏)

 では、どのような備えをしておけばよいのだろうか。高室成幸・ケアタウン総合研究所所長がいう。

「捻出できる介護費用を計算した上で、在宅介護か施設介護か、施設なら特養か有料老人ホームかなど、どういうスタイルで介護を受けたいか、もしくは自分の親に受けさせたいかを明確にしておきたい。準備は早いに越したことはありません

 費用などを検討し、もし特養を希望するのであれば、新設される施設の情報収集をする。新設であれば短期間に60~100床の高齢者を受け入れる。また、「最初から要介護度の高い人ばかりだと大変だから、要介護度の低い人も受け入れる」(特養で働くケアマネジャー)という。

先の記事と合わせて考えて見ると、安上がりな在宅サービスで何とか済ませたいという国の意図が見える、しかもその在宅サービスにしてからが実際的には給付の制限が厳しくてろくに利用できそうにもないという、いったいこれは何のサービス拡充なのかという悲惨な将来像が見えてきますが、これも結局は金の問題ということでしょう。
特養という施設は自費の老人ホームなどと違って介護保険の使える入所介護型施設という位置づけですから、当然ながら特養に入る人間が増えれば増えるほど介護保険の支出は増えるとあって、金を出す側である国および自治体としては出来るだけ在宅や介護保険の使えない施設への入所を望んでいるわけですよね。
逆に利用者の側からすると施設サービス費が一割負担で済むだけ他の施設より安上がりですから是非とも利用したいということですが、そうなると困る国側としては様々な規制を設けてこの特養というものに対する敷居を高くしてきたわけです。
特養の入所の順番は現在申し込み順から介護の優先度順に変更されていますが、その運営は自治体と社会福祉法人とに限定されていて誰でも参入できるわけではない上に、建設費用の3/4をまかなっていた国の補助金が2005年から打ち切られて施設の新設が滞っている上に、その施設認定が都道府県によって規制されているなど、とかく無闇に増やさないようにというブレーキがかかっているとも言えるのですね。

ついでに言えば有料老人ホーム等の特定施設に関しても2006年から総量規制が始まっていて、要するに国や自治体としてはとにかく介護保険の給付対象となる施設そのものを規制することによって支払額を抑制したいという意図はわかるのですが、その結果どういうことになっているのかというのが前述のような膨大な入所待機者数に現れているわけですよね。
先日はようやく限定された特区内に限って特養を民間事業者にも運営させてはどうかという話とともに、この施設数の総量規制を撤廃してはどうか改革案が出てきましたけれども、当然ながらと言うべきか全国自治体からは「総量規制撤廃などとんでもない!」と反対の声が上がっているというのですから、お金の問題を前にしては住民福祉の向上も何もあったものではないというのが現実です。

介護施設の総量規制「堅持を」-政令市などの担当課長が要望(2011年2月7日CBニュース)

 全国19の政令指定都市と東京都の介護保険担当課長でつくる「大都市介護保険担当課長会議」は2月7日、自治体が介護保険施設などの整備数を定めた「総量規制」を堅持するよう求める要望書を、内閣府と厚生労働省にあてて提出したと発表した。提出は4日付。

 要望書では、総量規制の効果について、「適正な場所に適正な事業所を配置することが可能となり、バランスの取れた計画的な施設整備を促進するためには不可欠」と指摘。政府の行政刷新会議「規制・制度改革に関する分科会」のライフイノベーションワーキンググループが改革の検討事項として示している総量規制の撤廃による影響を懸念している。

 大都市介護保険担当課長会議への参加自治体は次の通り。
 東京都▽札幌市▽仙台市▽さいたま市▽千葉市▽川崎市▽横浜市▽相模原市▽新潟市▽静岡市▽浜松市▽名古屋市▽京都市▽大阪市▽堺市▽神戸市▽岡山市▽広島市▽北九州市▽福岡市

「適正な」だとか「バランスの取れた」だとかの目的語が「何に対して」かは知りませんが、為政者にとっては非常に使い勝手の良さそうな(苦笑)文言が並んでいるわけですけれども、介護保険からお金が出て安く上がる施設が埋まっているとなれば、お金がある人は自費で負担してでもすぐに入れる施設に入所しようかということになる道理で、実際に都市部を中心として結構高額な有料老人ホームなども人気を集めていると言います。
しかし地方では元々現金収入が少ない世帯が多いという事情もありますから、やはり無闇に自己負担の高くつく施設に皆が入れるわけではないのも当然で、その結果何が起こっているかと言えば何年も施設入所を待っている方々で療養型病床が常時埋まっている、その結果急性期の病院も患者の送り先が見つけられず病床運用が破綻しつつあるということになっているわけですね。
これも保険財政上は区分されることになった医療と介護はかくも一体的なものであるということの一つの証拠ではあるのですが、国や自治体としては公費に頼らず自分でお金を出してもいいと言う人がもっと増えてくれた方がありがたいわけですから、こうした施設不足というものが早急に解消する見込みは全く無さそうだと考えておくべきでしょう。

こういう時代にあって何をどう考えるべきかですが、国が頼りにならない以上は国民それぞれが自助努力に頼るしかないわけで、ではその方法論はということになりますよね。
かつては終の棲家として一戸建てをという夢があった時代もありましたが、今の低賃金が常態化してきた世相にあっては退職間際の年代になるまでなかなか家も持てない、そもそも自前の家なりマンションなりを持つことは損であるという意見もあるようで、それでしたら同じ多額の負債を抱えるにしても家よりむしろ老後の施設入居費に投じた方がいいんじゃないかという考え方もあるかも知れません。
特にこれからちょうど団塊の世代が高齢者の仲間入りをしてくるわけですが、「いやあ、高齢者の急増で施設整備が追いつかないんですよ」と言い訳のネタには事欠かないだけに施設入所がさらに一層厳しくなるのは確実で、しかもこういう世代はしっかり金も持っていますから様々な介護ビジネスの対象としてもうまみがありそうです。
医療、介護分野というものは裾野も広く経済的効果も大きいだけに、国が公費で安く施設を整備するのは民業圧迫だ!という意見もあるのでしょうが、しかし高齢者やその家族にとってはいざ必要という時になっても入る施設がない、これからの時代介護は頑張ってやりますと言っていたのに何かしら話が違うじゃないか?と、今さらながらに感じさせられることも多くなりそうですよね。

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コメント

もう無茶苦茶

老健の半数 救急増 急患受け入れ困難で調査
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-173468-storytopic-1.html

 本島南部の救急病院で病床満床のため、救急搬送受け入れが難しくなったことを受け、県老人保健施設協議会(平良直樹会長)は、
救急搬送について緊急調査し、13日までに結果がまとまった。施設からは「高齢化、医療ニーズの高い利用者が増えている」などの指摘があり、
回答した24施設中12施設が「救急搬送が増えている」と考えていることが分かった。
 背景には「ついのすみか」といわれる特別養護老人ホーム(特養)が満員だったり、療養病床削減の影響で、本来は短期入所で在宅復帰を目指す
老人保健施設(老健)が重症化した人を受け入れざるを得ない状況があるとみられる。
 1月の1カ月間に救急搬送した回数は93回で、1施設当たり3・9回。救急搬送した理由は血液中の酸素の濃さを示す「酸素飽和度」の低下が
25件と最も多く、発熱が19件、誤嚥(ごえん)性肺炎疑い9件、意識レベル低下7件などだった。
 救急搬送が増えたと思う理由は高齢化など以外に「急変時の対処で急性期病院での治療を望む家族が増えている」「90歳以上が増え、
複数の疾患を抱えていて、重篤になりやすいから」などの意見があった。
 そのほかにも「みとりを行っていないため、急変時は救急搬送となるケースが増えつつある」「夜間は1人になる看護師の体制上、
施設では対応できず、救急搬送している」などの声もあった。
 平良会長は「老健は病院と家の中間施設と位置付けられ、安定期に入った高齢者の在宅復帰が目的だったが、
最近では特養ホームに入れないため、利用者の重症化が見られる」と説明している。(玉城江梨子)

投稿: | 2011年2月15日 (火) 11時19分

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