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2011年2月 4日 (金)

お久しぶりとは言っても喜ばしい気持ちは全くないのですが

少しばかり寄り道というわけでもありませんが、先日久しぶりにその名を拝見したという思いがしたのがこちらのニュースです。

適正で迅速な裁判環境づくり進める 長野地裁・家裁の貝阿弥所長会見(2009年1月29日)

 長野地裁・家裁所長に19日付で就任した貝阿弥(かいあみ)誠氏(59)は、長野地裁で会見し、2009年5月の施行から2年近くになる裁判員制度に「適正で迅速な裁判を行うための環境づくりを進めたい」と抱負を述べた。

 貝阿弥氏は「裁判官からは、裁判員の意見にはっとさせられ、勉強になったことも多いと聞いている」とも語り、市民感覚を反映させる制度を評価した。

 印象に残る担当事件は、2003年から4年間、東京地裁で手掛けた数々の医療過誤訴訟を挙げ「患者が高水準の医療を期待する一方、医師はわれわれが思う以上に一生懸命で、両者の調整が悩ましかった」と振り返った。

 貝阿弥氏は岡山県出身。1978年に東京地裁判事補に任官し、法務省大臣官房訟務総括審議官や東京高裁判事などを歴任した。 (妹尾聡太)

貝阿弥氏についてちょっとググってみますと、ちょうど一年前には和歌山地裁の所長として赴任しているということのようなんですが、かつては医療訴訟のエース級の活躍をされていた貝阿弥氏も定年を間近に控え、黙々と地方周りをしているということなんでしょうかね?
やはりご本人としても医療訴訟の第一線で活躍されていた時代が印象深いようで、貝阿弥氏と言えば例の東京女子医大のペースメーカーに絡んだ裁判を始め、あちらでもこちらでもその筋には有名な判決がてんこ盛りなんですけれども、思うにこの人の関わった医療訴訟で医療側が勝ったという事例が果たしてあったのでしょうか?(医療訴訟以外ですと原告の請求を棄却という判決が沢山あるようですが)。
この貝阿弥氏だの、「国破れて三部あり」とまで言われた藤山氏だのといったビッグネームとトンデモ判決とは切っても切り離せない関係にあるとまで言われたくらいですから、ご本人としても存分に名を全国にとどろかせたことで本望であったということなのでしょうが、その影響がこれだけ大きなものとなれば後世彼らの存在がどう評価されるかでしょう。

貝阿弥氏らのご活躍もあって医療の世界にも司法判断というものが大きな影響を与え得るということが立証され、EBMならぬJBM(Judgement Based Medicine=判例に基づいた医療)という考え方がすっかり定着した結果、医療のあり方そのものが大きく変わってきたのが近来の流れであるわけですが、特にいわゆるハイリスクな診療科では一気に人材難が進行していることはようやく世間にも知られるようになってきました。
とりわけその影響著しいとも言われるのが今や絶滅危惧種とも呼ばれる産科医なんですが、先日は産科学会でこうした調査が行われたようで、見てみますと「さもありなん」と頷くしかないという結果なんですよね。

産婦人科医の1割、気分障害や不安障害に悩む 学会調査(2011年1月30日朝日新聞)

産婦人科医の8.4%が気分障害や不安障害を抱えている可能性がある。医療事故や紛争などを経験した産婦人科医は8割いた。30日開かれた日本産科婦人科学会のフォーラムでそんな調査結果が報告された。

 同学会は2009年末から10年春にかけ、会員の産婦人科医を対象に労働環境や私生活などを調べた。1300人から回答があった。

女性医師の7.7%、男性医師の8.9%が、臨床的に問題になるほどの気分障害や不安障害があると判定された。職業を限定しない日本人一般を対象にした同じ検査では1.8%で、それよりも高率だった。

 気分障害や不安障害は、年収の少なさ、勤務時間や当直など労働量の多さのほか、仕事で自己決定ができない、子どもが少ない、といった項目と相関関係があった。仕事への満足感とは、逆の相関関係があった。

 このほか、医療事故や紛争を経験して悩んだことがあると回答した医師はほぼ8割。裁判経験がある医師は女性13%、男性26%だった。(大岩ゆり)

「産婦人科医であることが結婚や婚活の妨げになった!」 女性医師43.3%!(2011年1月31日CBニュース)

産婦人科医であることが結婚や婚活の妨げになったと感じている女性医師が43.3%に上り、男性医師の24.5%を大きく上回ることが、日本産科婦人科学会の「次世代を担う男女産婦人科医師キャリアサポート委員会」の調査で分かった。

 調査は同学会員の医師を対象に、2009年12月から昨年1月にかけて主に実施したほか、昨年4月に同学会の学術集会で追加調査を行い、男性777人、女性517人から回答を得た。平均年齢は男性が53.9歳、女性が42.5歳だった。

 調査結果によると、結婚歴は、男性が「結婚あり」93.8%、「離婚または死別」3.1%、「未婚」3.1%だったのに対し、女性ではそれぞれ68.0%、8.9%、23.1%。男性に比べ、女性は未婚や離婚の割合が高かった
 配偶者の職業は、女性では医師が63.9%で最も多く、14.0%は同じ産婦人科医。一方、男性では専業主婦が53.7%を占めた。医師は15.1%で、産婦人科医は4.8%だった。

 上司や同僚から子どもをつくるのを先送りするよう言われた経験がある割合は、男性の4.1%に対し、女性では34.6%だった。同委員会では「妊娠の高齢化によって不妊症、流産、妊婦死亡が増加することを熟知している産婦人科医師であれば、同僚の女性医師へのこのような発言は慎まなければならない」としている。

しかし「生きていることは健康に悪い」はジョークで済むかも知れませんが、失礼ながら今や「産科医でいることは健康に悪い」、それどころか「一人の人間として終わっている」と言っても過言ではないということなんでしょうか。
調査結果は他科の医師と比較したものではありませんから何とも言い難い部分もありますけれども、実際訴訟経験のある産科医が一割超とはかねて言われる産科の訴訟リスクの高さもうかがわせるような話でもあり、しかもその場合待ち受けているのが貝阿弥氏やら藤山氏やらの魑魅魍魎ともなれば、それは正直気持ちも萎えると言うものですよ(苦笑)。
医療の世界でも先祖代々医者の家系という方々がいて、地道に地域の医療を支えてきた側面が多々あるわけですけれども、こういう現実を前にすればただでさえ稀少な産科医は今後まともに子孫も残せないなんて話にもなりかねませんし、それ以前に我が子にだけは間違っても産科などという修羅の道に足を踏み入れてくれるなと熱望せざるを得ないでしょうね。

人生も晩年に差し掛かった貝阿弥氏などにとっては今さら産科の行く末などどうでもいい話でしょうし、後はのんびりと悠々自適の隠退生活を楽しめばよろしいのでしょうが、産科医は元より国民がその遺産の歴史的影響をどのように受け止めていかなければならないのかと考えると、人一人の命が関わる医療と比較しても司法の影響力というのは桁違いに大きいとも言えるかも知れませんね。
新司法試験導入による混乱でかの業界も昨今大変な騒ぎになっているということですが、こうして考えて見ると医者の大量養成でレベルが下がる!なんてリスクはまだ可愛い方で、国民にとっては司法の信頼性が崩壊した時こそがはるかに大きな問題となるのかという気がしてきますが、誰がその質を担保するのかという責任の所在が今ひとつ見えてきませんよね。
ロースクールを乱立させ大混乱を招いた果てに、今度はどんどん潰しましょうなんてことを言っている国があまり深くそのあたりを考えているようにも見えませんから、業界内の良心的な人々の手になる自助努力こそが大いに求められるのでしょうが、外から見ていると司法崩壊と言われてもどういう状態なのか判断しにくいとも思われますから、何かしら素人にも分かりやすい客観的な指標でもあればいいのにと思います。

しかしそう考えて見ると医療の世界も徒弟制度とも言うべき伝統的な縦の関係が国民世論の後押しを受けて崩壊して以来、医者個人が個人事業主的に好き勝手に仕事をしているという状態がどんどん広まっているわけですから、今のしがらみから解き放たれて自由になった医者達が中心になってくる時代には何がどうなっているのか、なかなか想像するのも難しそうではありますよね。

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