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2011年1月 5日 (水)

久しく叫ばれ続けてきた地域医療再編問題 今年はついに実行の段階へ?!

昨年末に社保審の医療部会から出ていました話がこちらなんですが、まずは記事から紹介してみましょう。

地域の実情に合った医療圏を-社保審医療部会(2010年12月22日CBニュース)

 社会保障審議会医療部会(部会長=齋藤英彦・名古屋セントラル病院長)は12月22日、医療計画や在宅医療などをめぐって議論し、都道府県ごとに設定する二次医療圏について、委員から「地域の実情に合っていないところがあり、見直すべきではないか」などの指摘があった。医療提供体制など総論の議論はこの日で一巡し、年明けからは各論の議論に入る。

 この日の会合では、▽医療計画▽救急医療▽周産期医療▽在宅医療▽外国人臨床修練制度-について意見を交わした。

 二次医療圏は、「地理的条件等の自然的条件」や「日常生活の需要の充足状況」などを考慮し、都道府県ごとに設定している。今年4月1日現在、全国で349医療圏があるが、人口、面積の最大格差が共に約100倍の開きがあるなど、医療圏によって多くの面で差が見られる。

 相澤孝夫委員(日本病院会副会長)は、二次医療圏間の格差が大きい点を指摘した上で、「地域をどのように設定するかによって医療計画は異なってくる」と述べた。これを受け、横倉義武委員(日本医師会副会長)は、「(医療圏は)地域の実情に応じているかどうかを加味して考えるべき」と主張。西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)は、「それぞれの実情に合わせた医療圏の設定を各都道府県が自発的にするように促すことも検討すべき」との見解を示した。
(略)

一般論として地域医療の現状も一昔どころか二昔も前の状況をそのまま引き継いでいるようなところが多々あるわけでもあり、早い話が各地の公立病院が出来た昭和の時代と比べると人口分布も交通の状況も全く別世界と言っていいくらいに変わっている中で、単に「昔からここに病院があったんだから今後も有り続けるべき」という考え方もどうなのかでしょう。
当然ながらそうした現状を前提として検討されている医療計画も、到底その後の社会情勢の変化に対応出来ているとは言い切れないところはあるわけですから、抜本的な地域医療再編を目指すという話であるなら、この際その前提条件から見直しをしてきちんとした議論をしていく必要があるとは言えそうですよね。
そもそも二次医療圏と言っても単に人口だけ、地理的要因だけでなく、歴史的背景や現在の医療の実情まで考慮して設定しなければ実効性のある医療圏設定など出来るはずもないんですが、その決める主体としてどこが一番ふさわしいのか、国よりは都道府県の方が適任だとしても県境を越えた医療圏の仲立ちをするために国の存在も不可欠ではないかと、考えるべきことは多々あるわけですが、言ってみればそれは医療問題を語る上での地域とは何か?という問いかけにもつながる話です。
この点で興味深いのはちょうど先日ロハス・メディカルさんが中医協の慢性期分科会でのやりとりを掲載していて、この中で厚労省における地域というものは一体どのようなものなのかということが問われているということなんですね。

「地域」って、何?(2010年12月22日ロハス・メディカル)より抜粋

(略)
 今後の議論の進め方について厚労省が示した資料の中に「地域特性」という言葉があったため、高木安雄分科会長代理(慶應義塾大大学院教授)が質問した。

 「地域って、47都道府県なのか東と西なのかという議論をやると、『地域って何だ?』という話になる。『地域特性』とはどういうイメージで考えているんですか? 例えば、『地域包括ケア研究会』(の報告書)だと、(おおむね30分以内に必要なサービスが提供される圏域として)『中学校区』とある。医療圏って、(地域保健法で)『一次医療圏は市町村単位』って言っている。(医療法では)『医療圏は二次で考えましょう』というアプローチ。しかも、精神病床は医療計画では都道府県単位で三次です。『地域特性』って、どの辺をイメージしてるのか」

 厚労省保険局医療課の鈴木康裕課長はこう答えた。

 「例えば、かなりの規模の都会であれば一定程度、病床が機能分化している余地がある。例えば、『急性期』『亜急性期』『慢性期』です。ところが、地域によっては、医療機関の数があまりなくて、恐らくは1つの病院なり病棟で、かなり多種な患者さんに対応せざるを得ないという所がたぶんあるのではないか。とすると、あまり病棟単位でカチッと構造的に支払いなりを認定してしまうと動きづらい部分があるとすれば、そういう所にはどうしていくか、我々(医療課)の問題意識と中医協総会の問題意識もあると思います」

 「医療機能の分化と連携」が叫ばれて久しいが、鈴木課長は「施設完結型」の医療にも理解を示しているように聞こえる。とすると、病院同士が連携を図る地域はどこか、施設内で完結する地域はどこか?

■ 「地域特性」とは?

 現在、病院のベッドは患者の状態に応じて「一般病床」「療養病床」などに区分されており(医療法7条)、看護師の数などによって入院料が違う。看護師を多く確保できれば高い診療報酬を得られるので、もともと看護師が不足している地域の病院は経営が苦しいとの指摘もある。

 平成22年度改定に向けた議論の中では、看護師不足の地域にある病院に救済措置を講じるよう医療側の代表から意見が出されたが、診療報酬を支払う側から「同じサービスなのに地域によって料金が違うのは一物一価に反する」などの反論があり、最終的に合意できなかった

 今年2月、中医協が改定案を厚労大臣に答申した際の附帯帯意見には、「地域特性を踏まえた診療報酬の在り方について検討を行う」と書かれ、「地域特性」の論点は継続審議となった。しかし、「地域」の範囲はもちろん、「地域特性」をどのような観点から考慮するのかもまだ議論されていない

 都道府県の医療計画では、「二次医療圏」を1つの範囲として必要なベッド数(基準病床数)などを定めている。また、急性期病院と回復期病院などの連携(地域連携クリティカルパス)や災害拠点病院の配置なども「二次医療圏」を1つの目安にする。(東京都の「二次医療圏」はこちらを参照)

 しかし、例えば埼玉県内の病院から千葉県内の病院に転院する場合もある。患者の居住地が県境の場合など、「二次医療圏」の中で医療が完結するわけではない

 また、「医師不足」とか「医師の地域偏在」という場合、具体的にどの地域で不足しているのか分からない。例えば、75歳以上の高齢者しかいない離島に産科の病院がなくても、「産科医不足」とは言えない。
 全国のどの地域にどのような疾病が多いのか、患者の特性がどのように違うのか、それらを分析するデータが不足していることも問題になっている。

 こうした中、「医療と介護の連携」や「地域特性」といったフレーズが中医協の資料にたびたび顔を出すが、厚労省は「地域特性」をどのように考慮するのか、まだ明らかにしていない

 ただ、1つのヒントになるだろうか、診療報酬改定の基礎資料とするために実施する「医療経済実態調査」のスケジュールなどを審議した11月26日の中医協・調査実施小委員会で、厚労省は「国家公務員の地域手当に係る級地区分」を示している。

 「医療経済実態調査」は、開業医が勤務医よりも収入が多い根拠として使われるため開業医らの不評を買っている。次回も、「開業医と勤務医の収入比較」に関心が集まることは必至だが、新たな分析手法として「全国を国家公務員の地域手当における級地区分の6区分とその他の地域に分類し、この区分によって行う」としている点が注目される。

 鈴木課長は12月21日の慢性期分科会が閉会した後、記者らに対しこう語った。

 「コストを全体的に見たときに、田舎が安いかというと、医師だったら絶対的に地方の方が高い。かつ、介護と違って医療の場合には医師が占める人件費の割合が結構高い。6割が人件費として、半分ぐらい、3割ぐらいが医師。これが高いか低いかは結構大きい。物品はどうかと言うと、都会の方が安い。サプライがたくさんある。そう考えると、田舎の方が本当に安いのかというと、必ずしもそんなことはない。むしろ、田舎の特性というのは、『うまく分化ができない』とか、『従業員を集めにくい』という所にある可能性はある」
(略)

医師の人件費に関しては恐らく多くの人に異論のあるところでしょうが、とりわけ田舎の公立病院などでは圧倒的に医師以外の人件費の方がかかっているんじゃないかという印象も受けるわけですけれども(少なくとも人件費の半分が医師というのは無床診療所くらいしかないのでは?)、ここで注目すべきは厚労省としても医者の世界においては田舎の方がコストがかかるという認識を持っているらしいということですよね。
田舎の方が土地代が安いとは言っても「診療報酬では購入を見ません(鈴木課長)」と言い、物品の納入コストに関して言えば明らかに田舎の方が割高であるし、搬入に時間的遅れが出る分どうしてもデッドストックを多めに抱え込むことになってしまう、加えて人件費も高いということになれば、医療の集約化不足からくる非効率によるコスト高を差し引いても田舎の方が医療は高く付いて当然ということになります。
世間では一般に都市部の方が何かとコストが高くつくということで、給料などをみても都市部の方が高いということになっているわけですが、こと医療の世界においてはこの逆になっていることに加えて、保険診療のルールによって全国一律公定価格ということになっているわけですから、それは医者のみならず経営的な面で戦略を持つやる気満々の医療機関ほど田舎は避けようという気になるのも当然ですよね。

医療現場がこれだけ経営的に逼迫した状況になってくると、厚労省としても今まで何となくで決めてきた(ように見える)こうした医療コストというものに対する配慮を、きちんとしたデータと現場の実情を元に行っていかなければならないという考えは持っているらしいとは思われるのですが、それを診療報酬などにおいてどのように還元していくかとなるとまた難しいところですよね。
同一医療サービス同一価格の大前提からすれば患者の支払額に跳ね返ってくるような加算は無理でしょうし、仮に施設単位で加算を行うにしても実際に金を出す側の保険者側から「なぜ田舎だけそんな余計なコストを要求されるんだ!」と反発は必至でしょうし、そもそもこうした地域の患者となれば国保が多いでしょうから財政的に可能なのかということにもなりかねません。
仮に社会的に田舎の医療は高くつく、そうであるからこそ社会的に応分の負担と補助をしていくべきだという結論になったところで、今度はどこからを田舎と認定するのかという争いが勃発しそうですから、そもそも公平な前提条件ではないものを平等に扱うという制度そのものの設計が現状に即していないとは言えそうですよね。

まず田舎での医療は非効率かつ不経済であるという前提を認めた上で考えられる解決策の一つに、コストも余計にかかる田舎での医療を可能な限り縮小するというやり方があるわけですが、要するに医療全体のパイからみて田舎の取り分が限りなく小さくなるのであれば、多少の特権的な優遇も「まあ全体から見て誤差の範囲だし、仕方がないか」で済ませられるようになってくる可能性がありそうです。
もともと医療需要の小さい田舎では医療機関は原則無床の診療所だけにする、それも場合によっては週二ないし三日の巡回診療スタイルにすれば、常勤医が三人の僻地公立病院一つを解体して単純計算で六カ所から九カ所の地区で医療を継続出来るということになってきますから、地域の住民にとっては日常診療の利便性はむしろずっと向上するということになりそうです。
当然そうやって稼ぎ出した浮いた医療資源は基幹病院に集約化し、少しでも何かあれば病院に搬送するというルールを徹底するということになるわけでしょうが、まさに厚労省が長年主張してきた医師の再編、医療機関の統合という方向性に、今まで叫ばれてきた医者不足による必然性といった側面のみならず、財政面からもその必要性を強調するデータが今後続々と集積されていくことになるのでしょうね。

ちょうど昨年末に厚労省の有識者会議である「独立行政法人・公益法人等整理合理化委員会」において、国立病院や労災病院の統合や再編・整理のための検討会設置を求める報告書がまとめられ、これを受けて厚労省は「一年後には結論を出す」と言う大方針を固めたと言うことです。
自治体病院を統括する総務省なども、すでに以前から地方公立病院はさっさと統廃合しろとせっついているわけですから、後は地域の既得権益との絡みでどう落としどころを見つけてくるのかというだけの話なんですが、現実問題として小さな田舎町の公立病院に行きたがる医者などいない以上、経営的にもマンパワー的にもこうした小さな公立病院が淘汰されていくのは時代の趨勢だということなのでしょう。
日医の原中会長などは「過疎地域に行った医師にポイントを与えて、将来、都市部で開業したい時には、ポイントを持っている人の開業を優先できるような方法が取れればいい」なんて、すでに開業している医者の権益を確保し競合相手の新規参入を規制するような虫の良い主張をしているようですが、この状況下で医療行政における存在感を回復したい日医からの秋波と考えると、これもなかなか意味深な発言にも受け取れる内容ですよね。

こうして多方面から何重にも包囲網を敷かれた状況で、むしろ注目すべきは「実際に行われるのかどうか」ではなく「いつ行われるか」に移り変わりつつあるというのが、2011年の地域医療を取り巻く状況であるとも言えそうです。
先に光明の見えない負け戦においても、最後まで陣地を死守して玉砕というのもまた一つの考え方かも知れませんが、一方で少しでも良い引き際というものを模索すべき時期が近づきつつあるように感じられるのは自分だけでしょうか。

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コメント

 実態として、もう稼働していないベッドや診療科は復活させるだけのマンパワーもないわけで、やはり統廃合に着手している訳です。あとは名前を病院の看板から診療所につけかえて当直の負担を少なくして・・・まぁ、逆にいうと、終わるのはいつか?だけですな。
 ある意味、人口が過密している東京周辺部などの医師不足がこれからクローズアップされる訳で、いつまでもぐずぐずしていられないというのがスタンス。まぁ、高齢化の波が押し寄せるのが早いか遅いかだけ。地方は早かった上に流出が予め多かったので、病院がフルに稼働していなくても犠牲者は少なかった。
 次は大都市ですね。これは・・・どうなるのやら。

投稿: skyteam | 2011年1月 7日 (金) 07時45分

結局手を広げすぎたということですから、きちんと戦線を整理して身の丈にあった体制にしていくべき時期なのでしょう。
その過程で医療に対して上がりすぎた世の中の期待値を、きちんと適正レベルにまで押し下げていけるかどうかが今後に大きく影響するんでしょうね。

投稿: 管理人nobu | 2011年1月 8日 (土) 09時54分

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