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2011年1月24日 (月)

改革は逆境を呼び、逆行は改革の好機ともなり得る?

先日アメリカの銃乱射事件で下院議員が重症を負った件は記憶に新しいところですが、その背景にはオバマ大統領の進める医療保険制度改革への不満があったという意見が広まっているようです。
テロに対する是非とはまた別として、国民の間では医療保険制度改革に対する根強い反発があるのは事実であるようで、与野党逆転の下院ではついに廃止法案が可決されたということなのですね。

米国:アリゾナ州銃乱射 背景に政治対立激化 医療保険改革巡り、脅迫・襲撃頻発(2011年1月11日毎日新聞)

 【ワシントン小松健一】米アリゾナ州トゥーソンで8日、民主党のガブリエル・ギフォーズ連邦下院議員(40)の政治集会で銃が乱射された事件は、医療保険改革や移民問題などを巡り、深刻化する政治対立と社会的価値観の分断が背景にあるとの見方が広まっている。乱射事件の動機は不明だが、連邦議員を狙った銃撃事件は過去30年以上例がなく、オバマ政権と議会の民主、共和両党は衝撃を受けている。

 ギフォーズ議員は今も集中治療室に入っているが、「手を握って」などという指示に反応し、コミュニケーションが可能だという。

 オバマ大統領は事件後に声明を出し、10日午前11時(日本時間11日午前1時)に犠牲者を追悼し、ギフォーズ議員の回復をともに祈ろうと国民に呼びかけた。大統領は11日に予定していたニューヨーク出張を取りやめた。

 下院多数派の共和党指導部は8日、医療保険改革法撤回法案の採決(12日)を含む当面の審議日程を延期することを決めた。

 米国では、オバマ政権が推進した医療保険改革を巡って09年夏以降に論争が過熱。賛成派の議員には脅迫状が送りつけられたり、議員事務所の窓ガラスが割られる事件が頻発した。ギフォーズ議員も狙われた一人だ。

 テレビでは保守系とリベラル系の二分化が進み、非難の応酬を展開する。75~87年に民主党上院議員を務めたゲーリー・ハート氏は米メディアに「政治を巡る発言がどんどん過激になっている。それが事件を招いた」と憂慮した。

 事件を受けて、民主党内ではギフォーズ議員を非難してきた茶会運動への反発が強くなっている。特に、茶会運動の人気政治家であるペイリン前共和党副大統領候補がやり玉に挙がる。ペイリン氏は、ギフォーズ議員ら20人の民主党議員を公職から排除すべきだと主張。ウェブサイトで各議員の選出州の地図に銃の照準器(スコープ)をデザインした「攻撃マーク」を付けて批判していた。対立をあおる言動が目立つペイリン氏については「政治的なダメージは避けられないだろう」(議会スタッフ)との指摘も出ている。

 一方、共和党は事件が政治的逆風とならないよう議会運営を図りたい意向だ。ベイナー下院議長(共和党)は「一人の議員に対する攻撃は、我々議員全員への攻撃だ」との非難声明を出し、民主党との連帯を強調した。

米下院:廃止法案を可決 医療保険改革法(2011年1月20日毎日新聞)

 【ワシントン古本陽荘】米下院は19日、オバマ大統領が内政上の最優先課題として昨年3月に成立させた医療保険改革法を廃止する法案を賛成245、反対189の賛成多数で可決した。

 改革法の廃止は、下院で多数党となった共和党が昨年11月の中間選挙の公約として掲げていたもの。象徴的な意味合いはあるものの、与党の民主党が過半数を握る上院で可決される可能性はなく、廃案となる見通し

 採決では共和党全員に加え、民主党議員3人も賛成に回った

 ベイナー下院議長は「廃止は我々の公約だ。この法律は財政支出を拡大し、増税につながり、職を奪うものだからだ」と訴えた。

 一方、オバマ政権側はホワイトハウスのホームページなどを通じ、「廃止された場合は保険料の高騰につながる」などと反論している。

アメリカのように巨大な医療費を要するようになっている社会で公的な皆保険制度を導入することは財政上極めて危険な行動であるとも思えるのですが、本当に医療が必要な有病者ほど民間保険では排除されやすい中で、医療費による個人破産が社会問題化するというほど先進国らしからぬ暗い一面もあるアメリカ社会での医療というものに対して、公的救済の道筋をつけたいという大統領の意志も理解はできるところです。
これに対して日本と違って人の生死に関わる問題においても自己責任による自己判断というものが重視されるアメリカ社会だけに、巨額の公費を注ぎ込んで強制的に公的保険制度を整備することに対する反発は文化背景上も根強いのでしょうが、インテリ層(すなわち、高所得者が多い層)ほど健康意識が高く結果として有病率も低くなるという現実も関係あるのでしょうね。
ご存知のようにアメリカでも特にジャンクフードと呼ばれるものはカロリーとボリュームにばかり特化していて、自炊率の低さと相まって低所得者ほど世界一の肥満率がさらに悪化しやすい環境であるわけですが、一生懸命食事や運動に気を遣っている知識階級の人々にとっては「なぜ不健康な生活の果てに体を壊すような連中の医療費を自分達が負担しなければならないんだ」と不満も大きいでしょう。
そう考えると世界一の医療保険制度を持つとも言われた日本と言う国は、もともと日本食が健康食として注目されるくらいに基本的な生活習慣が良かったことに加えて、まだ医療費が安く済んでいた時代に国民皆保険制度を導入出来たという世界的に見ても非常に恵まれた、言葉を換えればかなり例外的な事例であったとも言えるのかも知れませんね。

しかし老人は自宅で看取ることが普通であった当時と比べればほとんどが病院内で亡くなる時代となり、世界一の長寿国と言われるようになった今の日本においては当時とは比較にならないほど高齢者の医療費がかかるようになっている、そして右肩上がりの経済成長が終焉を迎え非正規雇用層を中心にワープア化が進み、メガ食ブームなどと若年貧困世代の生活状態もアメリカ同様悪化しつつあるわけです。
これらの人々のほとんどが国保の対象になっているということを考えると、今後その行く末はずいぶんと暗雲立ちこめていることを覚悟しなければなりませんけれども、こうした将来予測に国としても対応を進めている最中ということで、国保の都道府県単位への移行といった話と同時にその保険料負担のあり方についても変化が見られるようなんですね。

旧ただし書きに一本化 25年度から国保料・税所得割/厚労省方針(2010年09月10日国民健康保険中央会)

 厚労省は国保料・税の所得割算定方式について、25年度から住民税方式と本文方式を廃止し、旧ただし書き所得方式に一本化する方針を固めた。税制改正が国保料・税へ与える影響を無くすとともに、25年度の高齢者医療制度改革で国保の高齢者部分に旧ただし書き方式が採用される見通しであることも見据え、算定方式の統一を図る。同時に全保険者を対象に、保険者独自の国保料・税の減免(条例減免)費用を、賦課総額に上乗せできる「新賦課総額」の仕組みを導入。法定外の一般会計繰入ではなく、国保料・税で減免分を賄うことが可能な仕組みとし、旧ただし書き方式への移行が円滑に進むようにする。一般会計繰入を減らし、国保の都道府県単位化に向けた環境を整備する狙いもある。

高齢者医療制度改革に対応

 国保税は来年の通常国会で地方税法を改正、国保料は今年度中に政令改正する。
 今年度、住民税方式を採る保険者は37区市町、世帯数は合計約333万世帯。うち国保料方式を採用するのが東京23区(23年度に旧ただし書き方式に移行予定)や横浜市、名古屋市など36区市町で、国保税採用保険者が愛知県豊橋市となっている。
 住民税方式を巡っては、24年度の扶養控除等見直しによる国保料・税への影響を無くすことが課題になっていた。政府税調のプロジェクトチームの方針を踏まえ、厚労省は、(1)24年度に扶養控除廃止の影響を緩和する「税額調整控除」を新設(2)25年度から旧ただし書き方式へ移行―という2段階で見直す方針を決めた。
 広く薄く保険料を賦課する旧ただし書き方式へ一本化で、負担の公平化を図る狙いだが、25年度の高齢者医療制度改革で国保の高齢者部分(65歳以上か75歳以上。年末までに決定)の所得割算定方式に旧ただし書き方式が採用される見通しであることも踏まえた対応だ。
 厚労省は将来的に若人部分の国保も都道府県単位化したい考え。若人部分の算定方式を高齢者部分と同じにすることで、「若年国保と高齢者国保の統合がし易くなる」(同省)とみている。

 ただ住民税非課税となる場合や多くの控除がある住民税方式と異なり、基礎控除33万円のみの旧ただし書き方式では低所得層を中心に負担が重くなる
 このため保険者の多くは旧ただし書き方式に移行する際には激変緩和措置を導入し、独自に保険料を減免するとみられるが、現在の条例減免制度ではその費用は法定外の一般会計に頼るしかない。一般会計からの繰入が困難な保険者からは「保険料でも賄えるようにしてもらいたい」との要望が挙がっていた。
 そこで同省は、条例減免の費用を賦課総額(基礎賦課額)に含めることができるよう所要の規定を改正することにした。この「新賦課総額」の採用は住民税方式から旧ただし書き方式へ移行する保険者だけでなく、全保険者が対象。「できる規定」のため、実施するか否かは各保険者の判断となる。
 新賦課総額の導入は、高齢化に伴う医療費の高騰などで上がり続ける国保料・税に「減免圧力」がかかることも想定したもの。低所得者の保険料負担を軽くし、その分を賦課総額に含めれば結果的に高所得者に負担を求めることにつながる
 同省ではこれまで賦課・課税限度額の引き上げを通じて高所得者から低所得者への制度内(被保険者間)の所得再分配を進めており、この政策とも整合性のある改正となる。
 一般会計繰入は国保被保険者以外の住民が国保の費用を負担することになるため、厚労省は「望ましくない。本来あるべき姿に戻していく必要がある」との姿勢。同省は全年齢の都道府県単位化を実現するまでの「環境整備」期間で法定外一般会計繰入の原則廃止をめざしており、今回の措置も通じて繰入額を減らしたい考えだ。

賦課限度額 介護分2万円引き上げ 医療と後期各1万円

 一方、同省は国保料・税の賦課・課税限度額について、23年度から基礎分を51万円(現在50万円)、後期高齢者支援金分を14万円(同13万円)、介護納付金分を12万円(同10万円)にそれぞれ引き上げる方針も決めた。これで基礎・後期・介護の賦課・課税限度額は73万円だったのが、来年度は77万円となる。
 介護納金分は3年に一度の介護保険料改定時期に引き上げてきたが、限度額を超える世帯が医療分に比べ多くなったため、今回初めて改定時期以外に引き上げることにした。

低所得者に国保料増 計算方式全国一本化 負担1.8倍も(2011年1月20日しんぶん赤旗)

 政府が国民健康保険(国保)の保険料(税)の計算方式を、低所得者に負担が重くなる方式に全国的に一本化するため、地方税法や国保法施行令を改定する方針を固めたことが19日までにわかりました。2013年度からの実施をめざして、地方税法改定案は24日に始まる通常国会に提出し、国保法施行令は今年度中に改定する意向です。(3面に関連記事、解説)

 市町村ごとに運営される国保の保険料の所得割額の計算には、主に「住民税方式」と「旧ただし書き方式」があります。政府は今回、「旧ただし書き方式」に統一することを打ち出しました。

 「住民税方式」と違い「旧ただし書き方式」では扶養控除などの各種控除が適用されないため、控除を受けている低・中所得世帯や障害者、家族人数の多い世帯の負担が重くなります。住民税非課税であっても所得割を課される世帯が出ます。

 東京23区は今年4月に同様の計算方式の変更を予定しています。豊島区では年収250万円の4人家族の場合、現行の「住民税方式」では年12万7680円の保険料が、「旧ただし書き方式」に変更すると22万7996円に、1・8倍に上がります。「経過措置」として一時的に軽減をしても15万2759円(1・2倍)に上がります。扶養家族がさらに多い世帯や障害者を扶養する世帯は負担が数倍にはね上がります

 さらに政府は、自治体が低所得者向けに独自の保険料軽減措置を実施する場合、その財源を一般会計(税金)でなく国保財政でまかなえるよう、国保法施行令を改定する方針を示しています。国保財政を悪化させ、保険料水準全体をさらに高騰させる道です。

ちなみに全国ほとんどの自治体はすでに制度移行を済ませていて住民税方式は使っていないということですから、実際には今回新たに影響を被るのは東京や横浜、名古屋など一部地域の人に限られることになるのでしょうが(それでも人口で言えば大きなものですけれどもね)、低所得層にとっては各種の控除等の非適用化によって従来よりも負担増になってくるという場合も確かにあるようですね。
逆に言えば今までよりも広く薄く保険料負担をしてもらうことで、結果として安くなる世帯もあるということなんですが、ごく最近に制度移行をした四日市市の事例などを見ていて興味深いと感じたのは、もともと扶養控除がない単身世帯や高所得層では今までより保険料が安くなるのに対して、控除がなくなる影響で二人以上の低所得世帯だけは負担が重くなるということです。
扶養者がいると余計にお金がかかるということになれば、もともとの収入が少ない国保若年層にとっては結婚だ、出産だと言ってもいられなくなる道理で、一生懸命子ども手当だ、少子化対策だと言っている割には何かしら矛盾した話にも聞こえてきますが、だからと言ってやれ増税だ、そらばらまきだと考えのない方向に走るのもどうかと言う話ですよね。

先頃には与謝野経財相の「年金支給年齢引き上げ」発言が飛び出したりと、今の政権もずいぶんと国民に厳しいことを言うようになったものですが、財政が厳しいということは国民の方でも判っているわけですから、きちんと将来ビジョンを説明をしながら締めるべきところはきっちり締めていくには、案外この逆境こそが政治的な追い風になるのかも知れません。
ただそうは言ってもあまりに締め上げ過ぎますと低所得層は保険料が払えない、高所得層はこれなら民間保険でもかけておいた方が得だと、いずれにしても制度自体の崩壊を招きかねませんから、空気を読みながらの微妙なさじ加減が必要であることは言うまでもありませんよね。
もっともその空気を読みながらということが、どうも昨今一番怪しいんじゃないかという気がしないでもないんですが…

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