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2010年12月20日 (月)

はや頓挫しつつある高齢者医療改革案

新たな高齢者医療制度については先日ようやく骨格が決まったような話を紹介したところですけれども、まともな議論も経ないうちから早々と先送りにされてしまったらしいというのはどういうものなのでしょうね。

高齢者負担増の厚労省案、民主WTが「反対」(2010年12月14日読売新聞)

 民主党政策調査会の高齢者医療制度改革ワーキングチーム(主査・柚木道義衆院議員)は14日、厚生労働省が来年の通常国会に関連法案提出を目指す制度改革案について「法案作成、提出までに政府・与党間で更なる調整が求められる」とする提言をまとめた。

 

70~74歳の窓口負担を1割から2割に引き上げるなど、負担増の内容が含まれているためだ。

 党側が厚労省案に反対する姿勢を示したことで、関連法案提出は来秋の臨時国会以降にずれ込む可能性も出てきた。

<後期高齢者医療>新制度1年遅れも…通常国会法案見送りへ(2010年12月17日毎日新聞)

 厚生労働省は75歳以上の後期高齢者医療制度に代わる新制度の改革関連法案について、来年の通常国会への提出を見送る方向で検討に入った。高齢者らの負担増を盛り込んだ同省の改革案に、民主党内に来春の統一地方選への影響を懸念する声が出ているほか野党の反発も強く成立の見通しが立たないためだ。同省は新制度を13年3月にスタートさせる意向だったが、最短でも1年程度ずれ込む可能性が高まっている

 厚労省の改革案のうち、民主党が最も問題視するのは(1)現在1割の70~74歳の医療費窓口負担割合を2割にアップ(2)最大9割となっている75歳以上の低所得者への保険料軽減措置を最大7割に縮小--の2点だ。

 70~74歳の窓口負担割合は現在も制度上は2割で、低所得者への保険料軽減も最大7割だが、政府はともに予算措置(年額計約2500億円)で特例的に負担を軽くしている。(1)(2)案は特例をやめるだけなので法改正は不要だが、野党から「なぜ軽減措置をやめるのか」と追及されるのは必至。また、法案の柱となる市町村の国民健康保険(国保)の都道府県への移管に対しては全国知事会が反発し、調整がついていない。

 このため厚労省は、来年秋に想定される臨時国会への法案提出を視野に、与野党双方と調整を進める考えだ。【鈴木直、山田夢留】

結果としてこのまま何もしない方がいいんじゃないかという話はさておき、この高齢者医療制度改革と言うもの、あちらでもこちらでも反対の声ばかりが聞こえてきますけれども、それぞれ反対の立ち位置というものが全く違うということには注意しておかなければなりませんよね。
以前に後期高齢者医療制度というものが出来た時には、海外の識者からは「日本はうまいことを考えた」と好意的に捉えられたものであるし、実際に長期的な社会保障の行く末を考えていく上でも高齢者の医療制度というものは抜本的に変えて行かざるを得なかったはずなのですが、何かしら姥捨て山だの年金天引きが気に入らないだのと本質を外れた議論でさんざん叩かれたのは記憶に新しいところです。
その叩く側の主体であった民主党が中心となって新政権が出来たわけですから、当然ながらこういうトンデモナイ制度はさっさと廃止しなければという話になることは当然なんですけれども、現政権も実際にいざ廃止をと検討してみるとあれれ?これはもしかして大変なことになるんじゃないの?と気づき始めているのではないかと言う気配があるのが昨今の状況に思えます。

今回の厚労省案にしても正直かなり不完全な内容に留まっている印象ですが、この上さらに民主党が主張するように高齢者の医療はただ同然という状況を維持したいということであれば、これは言葉を変えればその分は現役世代が負担するべきということと同義ですから、万一にも若い世代が「年寄りの医療の話なんて関係ないし」などと考えているのだとしたら誤解の最たるものということになりますよね。
このあたりは一体今の時代にあってお金を持っているのは誰かというところにも話が戻ってきそうではありますが、日医なんて組織の現状を見ても判るように今の時代一番政治力を発揮しているのはお年寄りだとも言えますから、黙ってみていれば社会の実態とは無関係に話が進んでいくのは必然であって、今どき声なき声なんてものは誰の耳のも届かないということです。
ま、この場であまり世代間闘争じみたことばかり煽っても仕方がありませんけれども、単純に政治向きの話として考えてもこういう流れはどうもうまくないんじゃないかとは誰しも感じるところなのでしょう、先日はこういう記事も出ていました。

【河合雅司の「ちょっと待った!」】本気度が疑われる民主党の社会保障改革(2010年12月19日産経新聞)

 民主党政権は、社会保障制度改革に本気で取り組むつもりがあるのだろうか。

 政府は14日、社会保障の機能強化と財政健全化を同時に達成するために、税制との一体改革の具体案と工程表を来年半ばまでに策定することを閣議決定した。菅直人首相が本部長を務める「政府・与党社会保障改革検討本部」が決めた基本方針に沿ったものだ。

 5年後には団塊世代がすべて高齢者となる。社会保障制度を超高齢化社会に耐えうるものに変えるのは、時間との戦いである。民主党政権発足から1年以上も経過しており、あまりに遅い着手ではあるが、取り組み始めたことは歓迎したい。

 ただ、問題はその中身だ。閣議決定された基本方針には、肝心の「消費税」の文字が見あたらない。

 社会保障費は現行制度を維持するだけでも毎年1兆円を超すペースで膨らみ続ける。社会保障給付費も100兆円を超え、15年後にはさらに40兆円以上膨らむとの試算もある。

現役世代の負担は限界に近付きつつある。もはや消費税率を引き上げるしかないことは、多くの国民が理解していることだ。基本方針で消費税を前面に出さなかったのは、政権の覚悟と意欲が疑われる。

 そもそも、菅首相は参院選直前の6月の記者会見で、今年度内に消費税率の引き上げ幅を示すと約束し、自民党が提案した「10%」を参考にするとも明言していた。

 参院選での大敗によって消費税議論そのものを封印してしまったことから、今回、基本方針をまとめただけで、あたかも一歩前進したかのように錯覚する。しかし、こうして6月の発言と比べてみると、実際には後退しているのだ。
(略)
 選挙を優先するなりふり構わぬ姿勢は、菅首相に限った話ではない。

 厚生労働省が介護サービス計画(ケアプラン)作成費の自己負担化や、介護の必要度の低い人の負担の2割への引き上げなどを盛り込んだ介護保険制度の改革案をまとめたが、民主党のワーキングチームから批判が相次ぎ、法案化に向けた作業は進んでいない

 高齢者医療制度の見直しも同様だ。「自爆テロのような案だ。民主党に任せたら医療は安心だと思ったのに何なんだ、ということになる」(柚木道義衆院議員)といった声が代表するように、民主党の部門会議では、70~74歳の窓口負担の2割への引き上げや、75歳以上の低所得者向け負担軽減策の縮小を示した厚労省案に反対する方針を決定した。

 それどころか、来年の通常国会への関連法案提出自体を先送りすべきだとの意見まで出ている

民主党は後期高齢者医療制度の廃止を政権公約(マニフェスト)の目玉の一つに掲げ、すぐにでも公約を実現するかのように語ってきた。これでは、言っていることと、やってることが違うと言わざるを得ない。

 財源のめども立たないのに、「利用者の負担増には反対、サービスの拡充は行え」では、うまくいくはずがない。いまだに野党気分が抜けきらないのではないのか。
(略)
 社会保障制度というのは、現役世代の「仕送り」によって高齢者の年金や医療保険、介護保険の財源を支える仕組みになっている。この「仕送り方式」というのは、現役世代が多く、高齢者が少なかったからこそ成り立ってきたシステムだ。

 かつては10人ほどの現役世代で1人の高齢者を支えていたが、現在は3人で1人の高齢者を支えなければならない。マンツーマンで支えなければならない時代がやってくることを考えると続かない。

 もちろん、高齢者が増えることが悪いわけではない。むしろ多くの人が元気で老後を迎えられるというのは、日本がすばらしい国であることの証だ。

 批判されるべきは、人口の年齢構成が大きく変わることが分かっていながら、なんら対策を取ってこなかった政治家である。

 もっと早い段階で、国民に実態を説明して負担を求めていれば、いま取りうる選択肢はもっと多かったであろう。目先の一票を気にして、政策効果に疑問が残るバラマキ政策を繰り返し、国債発行という将来世代へのツケ回しを漫然と続けてきた。

 日本は膨大な累積債務を抱え、これ以上の問題先送りは許されない。社会保障制度の改革の方向性は、自公政権下の社会保障国民会議や安心社会実現会議など専門家の議論によってすでに示されている。いまさら議論を長々と繰り返している暇はない。

 いま民主党政権に求められているのは、団塊世代の大量退職に間に合うよう改革を実現させる決断力と実行力だ。

 15年後の平成37年には高齢者人口が約3500万人とピークを迎える。現役世代はもちろん、高齢者にも支払い能力に応じた負担を求めない限り、社会保障は維持できないであろう。

 言いづらいことであろうとも、国民に負担の協力をねばり強く求めていくのが、政権政党の責務である。(論説委員)

民主党にしても医療や介護方面に強いという自負でやってきたからこそ日医を始め医療関係者の支持を取り付けたわけですし、今さら手のひら返しも出来ないのは当然ですけれども、何しろ社会保障関係と言えば金額も半端でないものですから、漫然と選挙協力いただいた方々にばらまきを続けるなんてことだけはあってはならないはずですよね。
社会保障の中でもとりわけ伸びが予想される医療費だけに、こういう時代ですから財源には誰しも頭が痛いところではないかと思いますが、かつてにように企業におんぶにだっこという姿勢は通用しない、また国保はどこも青息吐息ということになれば、少なくとも受益者にも応分の負担をという話の流れになるのは当然ではあるでしょう。
ちょうど先日は日医が高齢者は別立ての保険でという従来の方針を大転換し、民主党の掲げるところの医療保険一本化にすり寄るという方針を発表したばかりですけれども、興味深いのは「税収によって社会保障費が抑制される」と消費税の目的税化には反対しているということで、正直日医ももう少し社会の現実を見ろと言いたくもなる話に思えます。

現役層は全員が一定の収入があり、極端な貧困者もそうそういなかったという時代と違って、今は国民総中流というかつての制度の前提自体が崩れているわけですから、昔ながらの制度にいつまでもしがみついていても仕方がないのは当然で、現在は元よりこれからの時代にあった新制度を組み立てていかなければ国が保たないという時代であるわけです。
純粋に消費税増税がベストの答えであるという考えの人もそう多くはないのでしょうが、現状で取り得る現実的な手段は限られている中でタイムリミットだけは刻々と近づいていることを考えるならば、実際にあるのかどうかも判らない「正解」を探してただ延々と議論のための議論にのみ時を費やすということだけは避けなければならないということなのでしょう。
もちろんその議論にあたって念頭にあるのが国の行く末を考えてということではなく、単に次の選挙での得票がどうかといった視点であるとしたら論外ですけれども、少なくない確率でそういう可能性がありそうだから怖いんですよねえ…

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コメント

子ども手当なんてものをやめれば全て解決しそうな気がする

投稿: | 2010年12月20日 (月) 22時35分

これなんてあまりに地味すぎる医者いじめで笑ってしまうよ

細川律夫厚生労働相は12月17日、来年度予算をめぐり、
野田佳彦財務相、玄葉光一郎国家戦略担当相と折衝を行い、
所得水準の高い国民健康保険組合への国庫補助金を廃止する方針で合意した。
医師国保や歯科医師国保、薬剤師国保などが対象となる見通しだ。

この補助金は、11月に行われた政府の行政刷新会議による「事業仕分け(再仕分け)」で、
▽現行の定率補助(32%)を所得水準に応じて5段階に見直す▽このうち所得水準の高い
国保組合に対する定率補助は廃止する―と判定された。
 この日の基本合意では、「保険者間の給付と負担の公平を図るため、事業仕分けの
結論に沿って見直しを行う」と決定。2012年4月の廃止を念頭に、見直しに必要な
国民健康保険法改正案の次期通常国会への提出を目指す。
また、政省令の改正は、来年度当初から着手する。

 厚労省の試算によると、廃止した場合の国庫補助の削減額は年間420億円程度。
加入者1人当たりの削減額は、医師国保が約4.9万円、歯科医師国保が約3万円、
薬剤師国保は約3.3万円と見込まれている。

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/31531.html

投稿: | 2010年12月21日 (火) 07時50分

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