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2010年12月29日 (水)

今年の話題を振り返っての雑感

年末もこの時期になりますと今年一年の回顧系の記事があちこちで出てきますけれども、そう言えばそういう話題があったなと思い出されたのがこちらの記事です。

2010回顧 宮古ニセ医者 確保急ぎ失態 /岩手(2010年12月27日朝日新聞)

 約3年間外来を休診していた宮古市の県立宮古病院の循環器科に、新しく採用された女性医師。彼女が無資格なのに医師をかたったなどとして医師法違反で逮捕された事件は、宮古市民にとどまらず、全国にも驚きを与えた。

 女性が逮捕された5月、盛岡市内から県立宮古病院まで国道106号を車で約2時間かけて走り、取材に向かった。循環器科が休診している宮古病院はこの道を通って、心筋梗塞(こうそく)の発症者らを救急車で盛岡市内まで運んでいる。「この距離と時間、『死を覚悟してください』と言われているようなものだ」。医師不足の深刻さを物語っているように感じた。

 病院の取材はもちろん、女性がどんな人物なのか知りたくて、彼女が住む大阪まで出向いた。近所の人に話を聞いていると、「岩手の人がなぜあの人にだまされたのかわからない」と度々聞かれることがあった。取材できた限りでは、女性の地元での言動や行動は明らかに異様に見えた。病院側は医師確保を急ぐ余りそれを見抜けなかった。やっと見つかった常勤医。女性の気分を害さないよう、医師免許確認を強く求めなかった事情は同情の余地もある。

 厚生労働省が今年9月に初めて実施した「必要医師数実態調査」で、全国で約1万8千人の医師が不足していることがわかっている。医師不足は岩手のみならず、全国的な課題だ。各地で、医師確保合戦が繰り広げられている

 県医療局によると、県内では今年4~12月までに13人の医師が関係者の人脈や県のリクルートで岩手に赴任した。県内で勤務する臨床研修医も増える傾向にあるという。

 だが、辞めたり県外に移ったりする医師が年間約90~100人いるのも事実。県内で医師を育てる中核機関となっている岩手医大の地元出身者は約2割と少なく、卒業すれば県外に出てしまう人も多い。「地元出身の医学生をもっと増やして、この土地に残ってくれる医師を増やさないと医師不足は解決しない」と話す宮古市内の住民もいた。

 朗報は、宮古病院の循環器科に1月から待望の常勤医が赴任することだ。ただ、外来を再開するめどはたっていないという。地元で充実した医療が受けられるよう、病院や市をあげて医師をサポートしてもらいたい。

 女性の動機が判然としないまま盛岡地検は9月に不起訴処分(起訴猶予)とした。処分の理由は「処罰を求めるまでの判断には至らなかった」からだ。他の地検関係者の中には「このような判断が続けば検察不信になる人もいるんじゃないか」と疑問を投げかける人もいた。私自身、記者として、1人の岩手県民として、なぜ女性を採用するまでに至ったのか、どのように県費が使われたのか、公判の場で知りたかった。

この事件については以前にも何度か取り上げまして、記事にもありますように医者として通用するような知識なりを持っている人物には到底見えないらしいのに騙されてしまうというのが、いかに宮古病院が追い詰められているかという証拠なんでしょうね。
この短い記事だけでも地域医療への人材提供を期待されているはずの地方公立医学部で県外出身者ばかりというのはどうなのかとか、少なくない額の公費を浪費していながら問われるのは医師法違反(医師の詐称)だけなのかとか、色々と興味深い話題を提供してくれそうな事例ではあったのだなと今見直しても思えます。
この事件のみならず地域医療の問題ということが近年大きな話題となっていて、医療問題というマイナーだった話題にようやく世間の目が向くようになったというのも、こうした地域医療崩壊という現象が契機であったとも言えるわけですが、それだけにこうしたキャッチーな事件をとっかかりにして地域医療のみならず、現在の医療現場の抱える諸問題を利用者たる国民が我が事として考えていくようにしていかなければならないはずですよね。

今年の話題と言えば例の医療ツーリズムがいよいよ稼働に向けて動き始めたということも上げられると思いますが、一般紙も特集記事を出すなど徐々に世間的にも滲透してきている様子です。
もちろんどの程度の需要があるのか、そしてその経済効果はどうか、何より国内の逼迫する医療受給に悪影響を与えないかと様々な疑問や懸念もあるわけですけれども、そんな中で先日はこんな記事が出ていましたので紹介してみましょう。

「ドクタープロモーション」で顔の見える訴求を―観光庁研究会(2010年12月24日CBニュース)

 観光庁は12月24日、「インバウンド医療観光に関する研究会」(座長=上松瀬勝男・日大名誉教授)の5回目の会合を開いた。会合では、同庁から医療観光に関するマーケティングとプロモーションについて委託を受けているコンサルタント会社2社が、それぞれの調査結果を報告した。このうち海外でのプロモーション活動については、医師自身が海外に出向いて日本の医療の技術力などをPRする「ドクタープロモーション」が提案された

 医療観光をめぐっては、来年1月から治療目的での外国人の訪日を促すための医療滞在ビザが創設されるなど、国内での医療観光の促進に向けた取り組みが加速している。

 会合では、マーケティングを委託されたみずほ情報総研の担当者が、医療観光に関連した渡航者の動向などを報告。全体的な傾向として、隣接した国・地域の間でGDP(国内総生産)が高い国から低い国への動きが顕著であることや、フライト時間で4-6時間以内での移動が一つの目安になっていることが報告された。

 プロモーションを委託されたアクセンチュアの担当者は、日本の医療水準などの認知度が諸外国で低いため、まず日本の医療の優位性を確立する必要があると指摘。その上で、海外に日本の医療を訴求する手段として、医師自身が海外に出向いて現地の医療関係者などと交流しながら技術の高さや質の良さをPRする「ドクタープロモーション」を提案した。
 既に数人の医師の協力の下、来年1月から3月にかけて中国や台湾、米国に出向き、現地の旅行会社などを対象に、試験的なプレゼンテーションと商談会を実施する計画が進んでいるという。

 委員の意見交換では、丁野朗委員(社団法人日本観光協会総合研究所長)が、ドクタープロモーションを評価しつつ、「医療観光を進めていく上では地域、都市間の連携も進んでいる」とし、医師個人の連携にとどまらないプロモーションの展開への期待を示した。
 また高見裕一委員(高見裕一事務所)は、外務省が医療滞在ビザの創設を発表した際、来年の発給目標を1000件としたことについて、「国が目指す医療観光の渡航者数と大きく懸け離れた数字。医療観光を進めていくとしても、大使館サイドの考えを乗り越えていかないと、掛け声だけでは難しいのでは」と指摘した。

先日も競争激しい海外の目から見ると日本が顧客を集められるはずがないなんて厳しい声を紹介しましたが、そういう商業的な観点から見るとまさしく海外に出て積極的にアピールする必要があるというのは非常に正しいという話になりますよね。
何しろ医療関係者にはあまり良い評判を聞かないこのメディカルツーリズムであるだけに、とりあえず動き出したからにはきちんと投入したリソースに見合うだけの成果、あるいはより具体的に言えば支出に見合っただけの収入が保証出来るようなものにしてもらわなければならないわけです。
ただ問題は今の医療の状況からしておいそれと外国にまでプロモーションに歩いて回れる医者がいるのか、いたとしてその医者が出かけてしまった場合に医療現場は回るのかという懸念は当然にあると思うのですが、これもものは考えようということなんだと思いますね。
退官した大学教授など語学も弁舌も達者だけれども、現在の第一線臨床に従事するにはいささかどうかと言う人々は国内にもそれなりにいて、大抵が関連病院の院長職などをやっていたりするわけですが、そういう人材の有効活用という面ではこういう作業も案外いいんじゃないかと思いますし、何より病院に顧客を呼び込むという意味ではまさにこれは経営側の仕事でもあるように思います。

先日も文科省の研究会の話題を紹介しましたように、医者をどの程度まで増やすかということに関しては今だ確固たるコンセンサスが得られていないという状況ですけれども、同じ国家資格ということでしばしば語られるのが先行して大幅な人員増を行った歯科や弁護士といった諸業界の崩壊ぶりです。
歯科医ワープア化など一昔前であれば考えられなかったようなことが起こる時代にあって、これは近年社会問題化している医療訴訟を始めとして弁護士過剰問題が悪い影響を及ぼさなければいいがと懸念する人も多かったのでしょうが、やはりと言いますかこういう話もあるようですね。

「事故で寝たきり」とウソ、賠償請求 東京の弁護士懲戒(2010年12月27日朝日新聞)

 第一東京弁護士会は27日、依頼人の交通事故の後遺症を誇張したとして、加茂隆康弁護士(61)を業務停止4カ月の懲戒処分とし、発表した。

 同弁護士会によると、加茂弁護士は2001年12月、交通事故の後遺症があるという都内(当時)の男性から損害賠償請求の依頼を受けた。東京地裁に提訴する際、男性の介護は必要ないと知りながら「ほとんど寝たきり状態」と主張し、本来請求できない「将来の介護費(6400万円)」を盛り込んだという。

 訴訟では後遺症の程度が争点となり、加茂弁護士は、実際は同居していない男性の母親が介護に専念しているよう装う書面などを提出。ところが、被告の保険会社側から、男性と母親が歩いて買い物している様子を撮影したビデオが証拠として提出され、うそが発覚した。

 加茂弁護士は交通事故の損害賠償請求に関する著書が多く、ホームページには「弁護士がつけば、賠償金額が数倍になることもまれではありません」と記している。最近では裁判員裁判と死刑をテーマにした小説も執筆した。

例の貸金業者の過払い金問題でちょっとそれはどうなのよとトラブルになっている弁護士も多いそうですが、この「弁護士がつけば、賠償金額が数倍になることもまれではありません」といったうたい文句にも典型的に見られるように、昨今弁護士業界においても何事もお金優先という考え方が広がっているらしいと懸念する声があるようです。
医療訴訟なども一昔前は「待合室に弁護士が待機していて、暗い顔で診察室から出てきた患者にそっとすり寄っていく」なんて話はジョークで通じましたけれども、近頃の弁護士過剰時代ともなるともはや案件を選んではいられない、とにかく少しでも多くの報酬を得たいと言う弁護士が出てくる、そうなると当然ながら損害賠償などにおいてもより大きな金額を求めてくるという流れになってきますから、損害額が大きい=報酬も大きい医療訴訟は今後増えていくのでは、なんて予想もあるようです。
もちろんこの加茂隆康弁護士のようなベテランともなればそれなりの顧客もあれば収入もあるでしょうから、金に追われてと言うよりこれは単に個人の資質の問題であると言う言い方は出来るのでしょうが、医学の追究のためにはモラルを超越することが当然あり得るという社会的コンセンサスすらありそうな(苦笑)医者稼業と違って、それなりに正義の味方的イメージの強かった弁護士業界でもこういう話が出てくるのが世間的にどうなのかです。

こうした事件は今後ますます増えてくるんじゃないかとも予想してしまうのですが、ちょうど先頃ちょっとした話題になったトンデモレーシック眼科医などの問題と照らし合わせて考えた場合に、この事件は業界内での処分のあり方という問題についても考えさせられるところがありそうですよね。
ご存知のように弁護士という仕事に就くと皆かならず弁護士会に入ることになっていて、それが弁護士という人々に対する弁護士会の強制力発揮の根拠にもなっているわけですけれども、医療の世界では日医あたりが「全ての医者は日医に加入しましょう!その方が大きな政治力を発揮できます!」なんてピント外れの主張をしているばかりで、同様な強制力を発揮出来るような全国的・全科横断的な組織は存在しません。
かつて不妊治療などと絡んで産科医が学会から除名されたなんて話がありますけれども、別に学会から除名されようが日々の仕事になんらの不都合もないという事実を考えた場合に、医療業界でも将来の医師大増員時代に備えて今から何らかのモラル担保のシステムを、なんて声が出てきても不思議ではないですよね。

日医と言うものが出てきたついでに、その日医がかねて強固に反対しているのが混合診療問題ですけれども、公認会計士資格を持つ評論家として主に経済畑を中心に活動を続けている勝間和代氏が毎日新聞に連載をしていまして、先日はこういう記事が出ていました。

患者本位へ、混合診療解禁を(2010年12月22日毎日新聞)

 今回は政府の規制改革会議でも大きなテーマとなっている「混合診療」の問題を取り上げます。現在の日本の医療保険制度では、保険診療と保険外診療(自由診療)を併用する混合診療が原則禁止されています。私たちが治療を受ける時、保険の適用が認められていない保険外診療が診療内容に加わった場合、患者は保険外診療の分だけでなく、本来、保険で賄われる分も全額自己負担になります。

 一部の先進治療は「評価療養」や「選定療養」という制度で保険診療との併用が認められますが、大変限られた分野です。現在の制度は、私たちに保険の適用範囲内での治療にとどめることを期待しているわけですが、それで国民本位の制度と言えるでしょうか。

 厚生労働省は混合診療の解禁に慎重な理由として(1)医療格差の拡大を招く(2)保険治療範囲の縮小につながる(3)患者が医療事故に遭うリスクが高まる--の三つの懸念をあげています。具体的には(1)は混合診療が一般化すれば、経済力によって受けられる医療に大きな格差が生じるという理屈です。高度先進医療を行える病院とそうでない病院で提供するサービスに格差が生じるとも指摘します。(2)は混合診療が一般化すると、新薬や新しい治療法を保険の適用対象にするインセンティブが薄れ、多くの患者は結局、保険適用外の高い自己負担をしないと、満足な治療が受けられなくなる可能性があるとの意見です。また、(3)は安全性・有効性が確認されていない治療が横行し、患者に悪影響が及ぶというものです。そのうえで、厚労省は先進的な治療法の取り扱いについて、安全性や効果を確認した上で保険対象に加える手順を踏むべきだとしています。

 これに対し、混合診療の解禁派は、混合診療が認められれば、患者の負担が現在より減り、より幅広い層が充実した医療を受けられると反論。厚労省の理屈とは逆に、「医療格差は縮小する」と主張しています。また、混合診療で治療期間が短くなれば、医療保険の給付が節約されるとも指摘します。さらに、がんなどの生死に関わり、治療の時間が限られる病気の場合、患者は先進的な治療法が保険適用になるまで待つ余裕はないと訴えています。混合診療解禁の是非は裁判でも争われ、東京地裁は07年11月「保険外診療の併用により、保険対象の診療分まで給付が受けられなくなる根拠は見いだせない」と混合診療禁止に疑問を示しました。一方、控訴審の東京高裁は09年9月、国の混合診療禁止を適法とし、現在、最高裁で係争中です。

 このように意見は分かれていますが、私は混合診療の原則解禁を求めます。理由は、現在の医療保険制度が医師や患者の実態に合致せず、医療の発展を妨げていると考えるからです。外国で承認済みの先端医療や薬品が日本で保険の適用対象になるまでにはかなりのタイムラグがあり、患者本位になっていません。また、古い医療技術を使って長い時間をかけて治療するよりも、新しい医療技術で短期間で病気を治す方が保険医療全体のコスト節約にもなるはずです。病院は新しい治療法を導入し、切磋琢磨(せっさたくま)すれば、医療サービスの向上も期待できます。

 

日本医師会は混合診療の解禁に慎重ですが、現場の医師には解禁賛成派も多くいます。高齢化が進む中、公的医療保険制度の見直しが不可欠ですが、中でも混合診療の解禁は最優先で検討すべきです。みなさんのさまざまな角度からの意見をお待ちしています。(経済評論家)

記事自体は経済系の評論家氏が考えるとまあそんなもんだろうなという内容で特に新味はないのですが、この記事で興味深いのは同時に実施されている記事への賛否を問うアンケートの結果、そして記事に寄せられたコメントの内容なんですね。
アンケートによれば「賛成」45%、「だいたい賛成」24%と実に7割が記事の賛成に回っているのに対して、「反対」21%、「どちらかと言えば反対」11%と反対派はわずかに3割ほどにしかならず、医療系でも何でもない毎日という一般紙による結果としてこれをどう考えるのかです。
寄せられているコメントも興味深いのですが、一般人の目線から見てこういう風に見えているのだなと参考になりそうな内容でもありますので引用させていただきましょう。

国民の大半が貧しかった昭和後半までは「何時でも、何処でも、誰でも同じ内容の医療を受けられる制度」は必要でした。しかし、現在のように成熟した自由主義経済下では、支払う金額に応じてサービスに差がある方が公平ですし、医療技術などの進歩も格段に進むと思います。旧ソ連と米国の医療、どちらが優れているかは素人でも分かります。

 今のわが国で行われている護送船団方式の医療・医療制度は開業医のための医療制度であり、今や国民が信頼し真に必要としている医療を提供する障害ともなっていると思います。

保険財政破綻の前に護送船団方式の医療制度を改め、国民個々に「真に必要とする医療」を提供できる医療制度を構築すべきと思います。

 病院経営や混合診療の導入など医療に市場原理を導入することにより、医療に競争原理が働き、医師には患者に選ばれるため日々の努力が必要となり、日進月歩の医学・医療を学ぶ医師が増え、わが国の医療水準向上に繋がると考えます。

公的医療保険の意義が所得の低い人や病気がちの人も安心できることであることを前提として、今の診療報酬をより学問的、合理的に大幅に改善した上で、当面は患者が正しく評価・選択できる領域や予防医療を先進医療の対象として対応し、その後、一定水準以上の医療機関を対象として混合診療を解禁すれば、安全性などの確保は担保されると考えます。

むしろ、今の自由診療は野放し状態で、安全性が確認されていない治療法や医薬品、医療材料が安易に使われ、根拠に乏しい安全性が担保されていない医療を受ける恐れがあると思います。

今後は、医療の質の向上を目指しての市場原理導入により、より質の良い医療が適正な価格で提供できるような医療制度の構築が必要だと考えます。

問題は、日進月歩の医学・医療技術を学ぶことを避ける医療関係者が、比較され、選択されることを嫌い、市場原理に反対していることだと思います。

まあいちいち突っ込みはしないにしても、当の記事に「現場の医師には解禁賛成派も多くいます」と書いてあるのに医療関係者が反対しているという認識もどうなのかですけれども、個人的な見解としてこれが20年ほど前に提起された話であったとしたら、恐らく今以上に圧倒的な支持を得られていたのではないかとも思うのですね。
ところが今は経済が長期低迷の中にあり今後も劇的な改善は期待出来そうにない、そうなるとかつてのように「普通の医療を受けられる一般人と、特別の医療を受けられる金持ち」という図式で語るのは間違いで、むしろ増え続ける貧困層への医療提供をどうするかということに考えを及ぼさなければならない。
個人的には基本的に混合診療解禁派ではあるのですけれども、そのあたりの社会情勢の変化を考慮せずに昭和の時代の感覚で混合診療を論じていたのでは互いの認識に大きな齟齬を来すだろうし、導入論を推し進めるにしてもまず無保険者、貧困層への対策というものを担保していくのが筋ではないかと思います。

実のところこのあたりにこそ医療従事者と一般人との感覚の相違の最たるものがあって、例えば世間では「お金がないからといって医療に格差をつけるのはケシカラン!」なんて論調がまだまだ大きな地位を占めていますけれども、医療関係者に言わせると例えば「生保(生活保護受給者)には安いジェネリックしか使えないようにするのが当然だろjk」なんて声も根強いものです。
日常的に貧困層に接していて実態を知っているからこその意見というものもあるのでしょうが、それ以上に日本の医療制度において一番いい医療を受けられるのは医療費全額公費負担の生保患者であるという現実に、何かしら釈然としないものを感じている現場の人間も多いということが背景にあるわけですよね。
このあたりは高齢者医療などの問題とも絡んできますけれども、何歳になろうが寝たきりだろうが透析も血液製剤も使い放題という医療をしている国はむしろ世界的には稀少であるだけに、一体国民に等しく保証されるべき医療水準とはどんなものなのか、受ける医療に差があるということは絶対悪なのかという点についてもコンセンサスを求めていくべき時期なのではないでしょうかね。

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コメント

「生保」とは「生活保護」の略ですよね。一読したとき「生命保険(会社)」の意味かと思い,解釈しかねていたのですが,やっと気づきました。医療・社会福祉に縁遠い人は大部分が私と同じ様に「生命保険」と解釈すると思われます。

投稿: とらとら | 2010年12月29日 (水) 10時10分

申し訳ないです。注釈を入れさせていただきました。

投稿: 管理人nobu | 2010年12月29日 (水) 10時17分

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