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2010年12月27日 (月)

南の島の公立病院も結構すごい

先日出ていた記事ですけれども、本日まずはこちらから紹介させて頂きましょう。

公立病院の独法化広がる 高まる自由度、課題は医師確保(2010年12月24日朝日新聞)

7割が赤字とされる全国の公立病院で「地方独立行政法人」に移行する動きが広がっている。患者増を狙って医師や看護師らを積極的に採用して成功した病院がある一方、慢性的な医師、看護師不足のあおりを受け、つまずく病院も出ている。

 「何かお困りですか?」

 大阪市住吉区の府立急性期・総合医療センターで、紺の制服姿の女性が入院手続きに来た車いすの高齢者に声をかけた。9月から導入された「ホスピタルコンシェルジュ」で、ホテルの接客係のように来院者の案内や受付機械の操作などを手伝う。

 同センターを含む府立5病院は、約66億円の不良債務を5年以内に解消することを条件に地方独立行政法人への移行が認可され、2006年4月に府立病院機構となった。4年目の09年度決算で債務を2.5億円まで圧縮。期間内での目標達成はほぼ確実だ。

 独法化のメリットは人の配置や予算のつけ方で自由度が高まる点だ。同機構では事務職員を100人減らして、府よりも給与体系の低い機構採用の職員に切り替える一方、独法化前には定員の枠があって不可能だった医療スタッフの増員に着手。診療科ごとの評価をボーナスに反映させるなどの待遇改善を図り、5年間で医師36人、看護師208人を増やし、その結果、患者も約7千人増となった。

 総務省によると、08年度で全国936ある公立病院のうち7割が赤字で、負債総額は1845億円に上る。救急医療を抱えるなど高コスト体質も原因とされるが、同省は自治体に対し、経営の効率化を求める一方、病院の統合・再編や経営形態の見直しを求めている。選択肢の一つが地方独法で、今年4月には全国で21病院が移行し、現在42病院に広がる。

 しかし、独法化すれば必ず成果が出るとは限らない。05年4月に日本で初めて地方独法化した長崎県佐世保市の北松中央病院(旧江迎町)では医師不足が足を引っ張る。今春、外科医2人が派遣元の大学病院に戻り、常勤医が9人に減った。現在は5階建て病棟の4階部分を閉鎖。入院患者数はこの5年で約1万人減ったという。

 府内では昨年、赤字が続く府南部の公立3病院(泉佐野、貝塚、阪南市)と府立泉州救命救急センターの経営統合による独法化が頓挫した。あてにしていた国の特例交付金が予算見直しで大幅減額され、協議がストップ。07年に内科医が一斉退職した阪南市立病院は特に影響が大きく、市は単独で来年度から指定管理者に運営を委ねる「公設民営」の導入を進める

 地域医療に詳しい城西大の伊関友伸(ともとし)准教授は「独法化で経営の自由度が高まれば、収益改善につながる可能性は高い。ただ、無理な形で導入すれば医師や看護師がやる気を失い、大量退職につながる危険性もある」と指摘する。(石木歩)

独法化がどの程度収益改善につながるのかは単に独法化という行為自体の問題ではなく、その結果何をどう改善するのかという部分によるところが大きいはずですが、とりあえず上層部がやる気がある病院にとっては運用上の自由度が増すというのは何かと良い局面は多そうですよね。
また公務員体質そのものの公立病院一般事務職なんてものが淘汰され外注になっただとか、ふんぞり返っていたコメディカルがきちんと動くようになったなんて話も聞かれるところで、それまでが酷かった公立病院ほどこの独法化による改善の余地も大きいということは言えそうに思えます。
もちろん記事にもあるように独法化したところで何もよくならなかったという場合もままあるわけですが、とりあえず全国的な傾向として公立病院独法化ということが一つのブームとなっているという現状を把握した上で、こちらは南の沖縄県八重山から以前にも一度紹介させて頂いた一年前の記事をもう一度紹介させて頂きます。

医師5人が時間外勤務拒否 県立八重山病院(2009年3月11日八重山毎日新聞)

2月分以降手当支給停止で
なお拡大すれば 医療サービスに影響

 県立八重山病院で2月分以降の時間外勤務手当の支給が停止され、数人の医師が当直を含めた時間外勤務を拒否していることが10日、関係者の話で分かった。これまで不払い分は次年度の4月に遅配という形で支給されてきたが、今回は県病院事業局が予算措置しないと通知してきたため。関係者によると、すでに時間外勤務を拒否している医師は5人。拒否者が増えると残った医師に負担がかかり、過重労働によって「優しい気持ちで仕事ができなくなるのではないか」との懸念も出始めている。住民への医療サービスが低下するおそれもあるだけに、一刻も早い解決が求められそうだ。

 時間外手当は午後5時15分から翌午前8時半までの時間外と土日の勤務に支給される手当。事業局によると、これまでは病院経営の厳しさから、時間外手当は繰り延べされ、次年度予算で支払いをしてきたのが慣例。関係者によると、八重山病院の場合は10月以降の分が翌年度に支給されてきた。
 事業局によると、2008年度はこれまでと違い、時間外手当などの経費を含めた予算編成を行い、通年予算として各病院に執行させたという。八重山病院では今年2月から時間外手当の執行額が当初予算額を超過、3月4日付で事業局と調整を終えるまで時間外手当を停止すると職員に通知した。
 形式上は院長の命令で時間外勤務をしているが、手当がないということは業務命令ではないとして医師の間では「ボランティアで仕事をしていることになる」との批判が出ている。
 事業局は「08年度は時間外勤務手当などを含めて予算措置したが、なお足りないというのであれば、特殊な要因があるかないか精査し、病院側と調整した上で検討していく」としている。

公立と言えば親方日の丸という言葉があるくらいに、赤字だろうが何だろうが取りあえず給料は出るということが良くも悪くも特徴のようなところがありましたが、こちら八重山病院では県当局が予算も付けないと言ってきたわけですから、それは県の意志として医者に無駄な餌は与えない方針であるという解釈になるのでしょうかね?
実のところ先日も紹介しましたようにこの沖縄という土地では、県立病院の医者のボーナスはもっと減らそうだとか、保健所で働く医者には医師手当を廃止しようだとかなかなか香ばしい話題が近年相次いでいるという状況なのですが、それ自体は県の方針であるわけですから粛々と遂行して頂くしかなかろうという話ですよね。
実はこの八重山病院にしても前述のような流れに沿って独法化してはどうかという話が出ているのですが、これに反対する八重山毎日新聞曰く「独法化で八重山の医療が良くなるとの「絶対安心の担保」が県から示されない限り八重山郡民は断固反対を貫き、独法化を決して許してはならない」と言うことで、当面は県立病院のままで存続するという状況になっているようです。
さて、そういう八方ふさがりの県立八重山病院においてこういう話が出てくるのをどう解釈するべきなのかですが、まずは記事から紹介させて頂きましょう。

待遇改善など指摘も 中山市長ら八重山病院医師確保を要請(2010年12月25日八重山毎日新聞)

 【那覇】中山義隆石垣市長と松本廣嗣八重山病院長は24日、県病院事業局を訪ね、伊江朝次局長に八重山病院の医師確保協力を要請した。また琉球大学や中部病院、南部病院へも医師派遣を依頼したが、人材確保のための勤務体制、待遇改善などの課題も指摘された。

 八重山病院は来年3月、内科医9人のうち8人が退職することになっており、医療体制の縮小が懸念されている。このため県病院事業局は、県立病院の人事ローテーションで人員を確保することにしているが、同数の人員を確保できるかは分からないという。

 中山市長らの要請に伊江局長は、「できるだけ協力をしていく」としたうえで、「人材確保のためには待遇改善などを含め、地域や県で互いに知恵をしぼっていかなければならない」と理解を求めた
 中山市長は「地域医療を守るためにも、行政としてサポートできる体制を作りたい」と説明、松本院長は「研修を多く受け入れ、八重山病院の良さを研修医から各病院のスタッフへ伝え、医師の派遣受け入れにつなげたい」と話した。

県の方針として医者にはアメをしゃぶらせるつもりなど更々ない、そして県立病院であることを止めて独法化するという動きも事実上阻止されているわけですから、それは勤務する医者にしても「それじゃ勝手にさせていただきます」という結論になるのも当然なのですが、そうなりますと今後は内科医9人中8人と言わず全科全医師一斉退職という第二の舞鶴化の期待も高まろうと言うものですよね。
むしろこうまでされて来年三月まで医者が残るつもりであるということに驚きますけれども、残る内科医一人(これは松本院長その人ということなのでしょうか?)では当然ながら今に数倍する過重労働を強いられることは確定的でしょうから、いずれにしても診療体制は激変を強いられざるを得ないというのも、八重山毎日新聞の言うような今以上良くなる担保などというあり得ないものを求めすぎたが故の帰結というものなのでしょうか?
しかしこの状況で「研修を多く受け入れ、八重山病院の良さを研修医から各病院のスタッフへ伝え、医師の派遣受け入れにつなげたい」と言う院長の認識もどうなのかですが、恐らくこういう状況になると各病院スタッフに伝わるのは別な種類の情報になることは確実でしょうから、今後も状況がおいそれと改善することだけはなさそうに思われます。

さて、こういう当然きわまる状況を生み出したのが何であるのか、誰がその行為の主体であるのかと言うことに興味が湧くところですが、前述の記事では医師時間外手当の予算措置をしないと通達してきた県の病院事業局が、『「人材確保のためには待遇改善などを含め、地域や県で互いに知恵をしぼっていかなければならない」と理解を求めた』という表現になっていることが気になります。
普通に考えるならば県病院事務局の医者いじめがそもそもの大きな原因の一つであると思われますから、その局長としては人材確保のために県立病院医師の待遇改善などを「検討する」というのであればまだ判るのですが、何とかしてくれと要求している現地の人間に「理解を求めた」と言うからには当然ながらその前段階として「いやそれは無理ですから」という発言があっただろうことは想像出来ますよね。
となると、八重山の医療体制の改善を阻害している最大要因とは他ならぬ県立病院の地位に留まり続けていることであるとも受け取れるのですが、こうした現状を踏まえた上でなお八重山毎日新聞が独法化反対の立場を続けるというのであるなら、それに代わる対案を示す必要はあるでしょう。

沖縄の場合は以前にも「群星沖縄」という多病院間の研修システムを紹介しましたように、新臨床研修制度導入以来むしろ研修医の希望が増えているという下地があるわけですから、増悪因子をきちんと除外していけば案外うまく回るようになるんじゃないかという期待感はあります。
もちろん地理的には僻地と呼ばれる地域であるのは間違いないですから、単純に完全自立経営でやれでは難しいところもあるのでしょうが、少なくとも県当局がこういう態度を続けるというのであれば独法化であれ公設民営であれ今より悪くはならなさそうに思えますし、無理に県立病院の地位にしがみつくことが得策とも思えないものがありますよね。
地元自治体の中山市長にしても「地域医療を守るためにも、行政としてサポートできる体制を作りたい」と言っているわけですから、市独自の支援の元に現場の理解を得られるような経営体制を模索していくという道もあるのではないかと思うし、現体制のまま何をどうしたところで一度貼られた世間のレッテルはそうそう綺麗に剥がせるものでもないだろうという気がします。

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コメント

沖縄って結構香ばしい人たちが大勢移住してきたりして地域によっちゃかなりなことになってるって話も聞くんだけど、実際のところ現地の雰囲気ってどうなんだろ?
ローカルマスコミが言ってるみたいに今でもヤマトンチュー憎しで凝り固まってるようだったら嫌だなあ…

投稿: a | 2010年12月28日 (火) 17時58分

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