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2010年12月 3日 (金)

田舎は小さな都会ではない

いささか風邪が長引いていて調子が出ないんですが、無理のない範囲でちんたらとやらせていただいております(苦笑)。
さて、本日まずは先日北の北海道から出ていたこういうニュースをお伝えしてみましょう。

経営難の自治体病院 道、再編の調整役に 道議会一般質問(2010年12月1日北海道新聞)

 高橋はるみ知事は30日の道議会一般質問で医師不足や経営難にある道内の自治体病院を再編する道の「広域化・連携構想」の具体化を促すため、各地で難航している自治体間協議の調整に道が乗り出す考えを明らかにした。

 民主党・道民連合の稲村久男氏(空知管内)への答弁。知事は「道と市町村などが一体となって協議するとともに、よりスピード感を持って進展するよう努める」と述べた。

 同構想は自治体病院の経営改善などを図るため、道内を30区域に分けて自治体病院を再編するもので、2008年に策定された。これまでに26区域で地元市町村や病院関係者、住民などによる検討会議が設置されたが、病院の統廃合への住民の不安感などは強く、協議は進んでいない

 道は従来、検討会議では各地の保健所が事務局を務めるだけだったが、今後は本庁の担当者が加わって自治体間の意見の調整を行い、病院経営の専門家などの助言も仰ぎながら、再編の具体化を目指す。しかし、地元の反対などは依然根強く、道の調整によって協議が進展するかどうかは未知数だ。

今の時代、総務省や厚労省が一生懸命旗振りを務めるまでもなく地方自治体病院の再編というのは喫緊の課題になっていることは、かねて当「ぐり研」でも繰り返しお伝えしてきた通りですが、記事中にもあるとおり「地元の反対などは依然根強」いという状況であることも、これまた変わらない事実ではありますよね。
こうした地方公立病院再編と言えば決まって新たなハコモノ建設が云々という話になりがちで、またぞろ土建屋行政がと批判の声数多なのはお約束ですけれども、実際にそうした病院というものはすでに築何十年も経過しているということの現れでもあるわけです。
地域に根付いてウン十年と言えば聞こえはいいですけれども、その間の日本の社会構造の変化を考えれば人口移動や過疎化といった環境の激変があるわけですから、昔からこれこれの規模の病院がここにはあるのだからこれからもずっとあってもらわなければ困るなどと、地域住民もいたずらに既得権益ばかりを主張したところでどうなのよと言うことでしょう。

医療は労働集約型産業であると同時に技術集約型産業でもあって、スタッフや施設の能力的に一定レベル以下になってしまうともうその施設では出来ることは限られてしまうという現実があり、単純に人口比で均等に医者割りをしていけばいいと考えていると、とりわけ地方ではどこの施設も何も出来ない半端なものばかりが散在してしまうことになります。
しばしば言われるのは距離や人口を勘案して一定の地域ごとに医療圏を作り、その中で高度医療を担当する基幹病院と初診やバックアップを担当する関連病院を整備していくというやり方がいいとは言うのですが、これまたいざそうした再編を目指そうとすれば「それなら基幹病院は我が町内に」「いやいや我が町にもちゃんとした病院は必要です」と地域エゴがぶつからずにはいられないのも現実ですよね。
結局のところ岡目八目的に、限られた医療資源を地域住民にとっても一番いい形で分配していくことが出来れば、例えひと頃の恨みを買っても後で感謝される美談にもなるのでしょうが、その分配する側もまた何かしらのエゴに縛られずにはいられないというのがこうした問題の難しいところでもあります。

以前に何度か紹介した岩手の県立病院再編問題などは、そうした点でトップダウンでかなり強権的に地域医療を再編してしまったという稀な例ですけれども、とにかく田舎病院の医者にとってはいざというとき紹介先がないというのが一番困るだけに、きちんと受け皿を作ってもらうことは何にも増してありがたいものです。
実際に岩手でも報道で見る限りやってみれば案外うまく回っているようなのですが、理屈が通っていることに対して反対論が未だ根強くあるとすれば、一体誰が何のために強硬に反対しているのか、それは単なる地域エゴの一言で終わらせていいのかということにも目を向けておかなければならないわけですね。
ちょうどいい例題として先日こんな記事が出ていましたが、面積1100平方キロを超える市域に人口わずか3万人余りという旧郡部合併で誕生した北秋田市の、wikipediaの産業欄にも何一つ記載がないという田舎町の光景を想像しながらお読みいただけたらと思います。

米内沢総合病院:民間移管を断念 4月から診療所に--北秋田市長表明 /秋田(2010年12月1日毎日新聞)

 北秋田市の津谷永光市長は30日の市議会臨時会冒頭で、北秋田市上小阿仁村病院組合運営の公立米内沢総合病院の民間移管案について「条件整備が整わず、残念だが断念せざるを得ない」と説明。同組合解散後の11年4月から、病院を市立米内沢診療所(仮称)として運営することを正式に明らかにした。

 同病院の民間移管案は、大館市の医療法人が申し入れ検討が進められていた。市は療養病床(60床)の維持や医療スタッフ雇用の面から期待を寄せていたが、11月下旬に医療法人側が「経営条件が整わない」などの理由で正式に断念する意向を伝えてきたという。医療法人側は医師の確保の面でも予定通り進まず、民営化の協議が難航していた。

 市によると、米内沢診療所の診療科目は内科、小児科、整形外科、脳外科、心臓外科の5科で医療スタッフは常勤医師2人を含む21人。診療所になれば医療スタッフは現在の85人のほぼ4分の1となる見通し。現在の同病院職員は組合が解散する11年3月末で全員解雇される。【田村彦志】

あらかじめお断りしておきますけれども、当方としても米内沢総合病院の内情は全く存じ上げないのでここから先はあくまで同種地域での一般論ということになりますが、田舎の公立病院と言うともちろん地域住民にとっては「おらが村の病院」として重要な施設である一方、地域にとっての重要な雇用先でもあるという現実にも目を向けなければなりませんよね。
看護師や技師と言った専門職となりますと田舎ではちょいと学のある連中の上がりのパターンですし、様々な補助金が下りてくる役場や県立病院といったお役所筋ともなれば現金収入の少ない田舎においては貴重な「外貨」の稼ぎどころであるだけに、こうしたスタッフの採用に関しては部外者には非常にややこしい「ローカルルール」が設定されていたりするものです。
要するにこうした施設にスタッフとして潜り込むということは地域住民にとって既に大きな利権であるということですが、採用にあたっては特定の一族に偏らないようになんてしきたりすら決められているような閉鎖された経済環境にある土地柄で、それはいきなり病院をなくします、スタッフは各自新しい仕事を探してくださいと言われれば大騒ぎになるのも当然ですよね。

管理人は病院再編論者ですが、日本中が不景気だ、仕事がないと大騒ぎしているような時代ですけれども、それでもなんだかんだで収入を得る手段もまだ残されている都市部と比べれば、田舎というところはこと金銭面では本気で厳しいところも多々あるのが現実で(むろん、田舎だからこそやっていける道もあるわけですが)、そんな田舎に100人近い所帯を誇る「大企業」の存在が持つ意味は何なのかという視点も必要ですよね。
読売などは相変わらず医者の計画配置を推進せよなどと叫んでいて、もちろん東京の高層ビルに本社を構える大新聞社の視点から見れば問題は至ってシンプルに見えているということなのでしょうが、「子供は小さな大人ではない」という有名な格言と同様に「田舎は小さな都会ではない」という現実もまた認識しなければ、医療問題解決以前に余計な軋轢がますます増えるだけではないかと思います。
地域医療問題は一見して医療崩壊だ!田舎者は死ねと言うことか!なんて大騒ぎしている人々も多いが故に、なんだそれじゃあ地域の病院を何とか残そうか、基幹病院まで立派なアクセス道を整備しようかという話にばかりなりがちですけれども、表向きの主張に惑わされてその背後に隠れた声なき声を見過ごしていては、地方の抱える根本的な問題はなんら解決されないままで終わりかねないという気がします。

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