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2010年12月 8日 (水)

まさか適当な思いつきでやっているというわけでは…?

今のところソースが朝日だけというのがどうなのかですが、先日こういう予想されたような話が記事として出ていまして、さてどの程度具体化してきているのかと見てみればこれがなかなか興味深いのですね。

千葉・成田市に医大誘致構想、医師増加狙うが、地元では慎重論も(2010年11月19日朝日新聞)

 千葉県成田市が医科大誘致に向けて動き始めた。鈴木寛文部科学副大臣に市長らが誘致の意向を伝え、シンポジウムなどで発信し始めた。だが、地元医師会幹部は「現実的でない」と慎重で、今後議論を呼びそうだ。

 「医科大の拡充などについて文科省の中で検討が始まった。候補地として成田もぜひ検討いただければ幸いだ」

 10月17日、市役所で開かれたシンポジウム「国際都市成田の将来と新しい医科大学構想」で、医療を担当する関根賢次副市長はこう発言し、数日前に鈴木副大臣にその意向を伝えたことを明かした。

 成田商工会議所の諸岡孝昭会頭も「商工業発展の立場から、医療ツーリズムや医科大の誘致には、もろ手をあげて賛成申し上げたい」と賛同。会場から意見を求められた小泉一成市長も「(医大が)あれば成田としてもクオリティー(質)が上がるなと思う」と前向きな姿勢を示した。

 このシンポジウムは、政策シンクタンク「医療構想・千葉」(竜崇正代表)と市が共催した。文科省が医学部新設の是非を検討する会議を年内にも設置する方針を出したことを受け、竜代表は「千葉大だけでは千葉県の医療を支えられない。豊富な土地と資金力、国際的ブランド力がある成田に医大を誘致すべきだ」と力説した。会場は医大誘致に前向きな意見であふれた。

 市内には、救命救急センターを備える成田赤十字病院がある。だが、医師不足に悩まされ、常勤医師が確保できずに呼吸器内科を2009年度から、同外科を今年4月から休診している。市は同病院の負担を減らすため、09年度は8500万円、10年度は1億7千万円の負担金を出し、夜間に初期救急医療に当たる医師の手当などにあてている。10月から内科の常勤医師が4人増えるなどの効果は出ているが、いまだ医師の負担は大きいという。

 だが、地元からは慎重な意見も漏れ聞こえる。成田市医師団の真鍋溥団長は「住民にとってはありがたいことで、千葉県の医者を増やそうという発想はいいが、実際の可能性としては無理がある」。医大を造れば付属病院も同時に造ることになるが、研修医が自由に研修場所を選べる現在の制度下では、医師や看護師の確保が難しいという。成田市役所近くの富里市日吉台には徳洲会グループが病院(285床)を建設予定で、「成田地区で病院が足りないわけではない」とも言う。

 シンポジウムを傍聴していた一部議員からも慎重な意見があがっている。共産・馬込勝未市議は「初めて聞いた。いざそうなれば地元負担の問題が出てくる」と話し、26日に開会する市議会12月定例会で質問する予定だ。成田赤十字病院は医大誘致構想について「今の時点では感想を述べる段階ではない」と推移を見守っている。

よくよく記事を読んでいただければ判る話なんですが、市長らが医大を誘致したいと発言し、地元の商工会議所がそれはいいと賛同した、言ってみればそれだけの話であるということに過ぎないのであって、いきなりこんな思いつきレベルの話が飛び出したのでは「初めて聞いた」と市議が首をかしげるのも当然ですよね。
しかもその誘致というのが単に「医大があれば成田のクオリティーが上がる」なんて次元の発想であって、しかも地元にはすでに立派な病院がちゃんと揃っていて今後も更に新設予定であるということですから、この上医大病院までと言うのであれば成田市はどこまで医療資源を求めれば気が済むのかとも思われそうです。
当然ながら医大が降って湧くような話でもなく、地元にも応分の負担が求められる可能性が高いでしょうに、持続的な財政支出をそこまで増加させて市政は大丈夫なのかと人ごとながら心配になりますが、市長としてはそれが問題になる頃には自分はどうせいないし…とでも考えているのでしょうか。

成田市の今後についてはともかくとしても、国としては引き続き医学部定員増加を推し進めるという方針には変わりがないようで、先日は三年連続で記録更新というこんな記事が出ていました。

医学部の入学定員、23年度は77人増 総定員は3年連続最多を更新(2010年12月6日産経新聞)

 深刻な医師不足の解消に向け、文部科学省は6日、平成23年度の大学医学部入学定員を国公私立の26大学で合わせて77人増員すると発表した。増員後の総定員は、国公私立79大学で計8923人と3年連続で過去最多を更新。大学設置・学校法人審議会の審議を経て年内に正式決定する。

 増員の内訳は国立が18大学で50人、公立が1大学で5人、私立が7大学で22人。22年度に引き続き、奨学金を活用して地元学生を優先的に受け入れる「地域枠」を設けた大学▽複数大学と連携して研究医を養成する大学▽歯学部と医学部の両学部を持つ大学で、歯学部の入学定員を削減した大学-の3つの枠組みで、増員を認めた。ただ、10月の中間集計段階に比べ、「地域枠」での増員ができなかった大学があり、見通しよりも10人減った。

 文科省では「医師不足の解消には中長期的な取り組みが必要」とし、24年度以降の定員数などは有識者会議を設置して検討予定。

世間では大学生の就職内定率が過去最低を更新したなんて話も出ている中で、こうしてみると医療業界というのはずいぶんと人気なのかと思ってしまいそうですけれども、よくよく見てみますと定員増を認める条件の一つとして歯学部の定員を削減した場合というものが入っていることに気がつきますよね。
当「ぐり研」においても何度か取り上げているように、すでに歯学部界隈では私立大歯学部の17学部のうち11学部で入学者が定員を下回ったなんて話も出ていまして、司法同様に急激な定員増加から業界内バランス崩壊、そしてワープア化という昨今の国家資格職の多くが辿っているコースを一足早く達成していることが知られています。
さすがに国としてもそろそろ定員を絞った方がよさそうだと考え始めていることが判る話ですが、逆にいえばひとたび国がそうと決めればシステムが完全に崩壊するまで一気に突っ走ってしまうということがよく判る事例ではないかと思いますね。

こういう話を見ますと定員増だ、もっと増やせと言う行動の主体が文科省であることが判ると思いますけれども、医療行政全般を司っているのはご存知の通り厚労省、そして先日も話題に出ましたような自治体病院などを取り扱っているのは総務省といった具合に、およそ医療に関わる役所だけでもあちらこちらに分散しているというのはどうなのかですよね。
噂に漏れ聞くところによれば、厚労省内部では文科省がどんどんと医学部定員を増やし続けていることに不満を感じている人もいるということなんですが、教育を所轄する組織ではあっても医療を云々する組織ではない文科省の中で、一体どういう人たちが医師不足の解消を云々しているのか、よもや某大先生のような声の大きい人の言いなりになっているだけなのではないかと不安にもなるところです。
単独の省庁がやっていることでも小回りが効かず困ったことになる場合が多いというのに、これだけ複雑に絡み合った各省庁の絡む医療行政の中で、医療の未来絵図を思い描きながらきちんと制度設計をしている責任者となるべき人間が誰かいるのかと疑問に感じるのは自分だけではないと思いますが、過去の事例から推察するに少なくとも将来何がどうなっても責任を取ると言う事だけはないことは確実なんだろうと思いますね。

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