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2010年12月17日 (金)

実は意外なところに意外な抜け道があったようで

医薬分業以来何かと面倒が増えたという患者さんの声は根強いようですが、先日はこういう記事が出ていまして、なるほど確かにこういう問題があったかと目から鱗ですよね。

個人薬局から悲鳴 大手ストアで処方薬にポイント(2010年12月15日夕刊フジ)

 大手ドラッグストアがポイントの適用範囲を拡大させている。今秋あたりから、ドラッグストアの調剤薬局で医療機関から受けた処方薬を受ける際、患者負担分の代金に応じてポイントが得られるようになった。たまったポイントは各ストアの医薬品や日用品に代えられるため利用客からウケがいい。だが、個人や小規模薬局は「患者を奪われかねない」と猛烈に反発している。

 「ポイントカードをお持ちですか?」

 先日、千葉県内の女性会社員(30)が大学病院で治療を受けた際、ドラッグストアに処方箋を持参したところ、会計時にこう告げられた。処方薬でポイントがつくとは思わなかっただけにかなり得した気分になったという。

処方薬でポイントを付ける薬局が急速に増えている。ドラッグ最大手のマツモトキヨシホールディングスでは主力店「マツモトキヨシ」のうち、調剤部門を持つ約80店などで処方薬のポイントサービスを始めた。ツルハホールディングスでも「ツルハドラッグ」など調剤部門を備える全国約200店で導入。グローウェルホールディングスでは傘下の「ウエルシア関東」をはじめ関西のグループなど約420店でスタートさせている。

 各ストアともに通常の商品と同様、購入金額の1~3%分をポイントで還元する仕組み。たまった分は保険が適用される処方薬の購入以外なら使えるため「正直、利用者のウケはいい」(都内の大手ストア)。

 だが、黙っていないのが個人の調剤薬局。患者を奪われがちで死活問題に直面しているからだ。

 日本保険薬局協会は「健康保険法では治療代金を過不足なく支払うことが義務づけられている。ポイント制度は支払い時に減免していないとはいえ間接的に減免している」(担当者)。日本薬剤師会も「処方薬の公定価格制度は処方箋のサービスを均一に受けるためのもので、ポイントによる過剰な商業サービスは理念に反する」(広報)と指摘し、「結果的な値引き」に危機感を募らせる。

 監督する厚生労働省はこの事態をどうみているのか。ポイント範囲の拡大について「特に規制はない」との解釈を示唆しており、静観の構えのよう。業界内は紛糾するものの、ポイントに慣れた消費者からすれば当然の流れの側面も。もはや止められないか。

この問題については二つの解釈があって、一つは記事のタイトルにもなっているように小資本の個人調剤薬局が経営的に成り立たなくなるのではないかという懸念がありますが、この種の問題は調剤薬局に限らずどこの業界でも見られる話で、今の時代むしろ薬局業界は昔ながらの個人商店が温存されてきた方だと言えそうですよね。
顧客からすれば今どき大手ドラッグストアでポイントが付かない方が違和感があるというくらいですが、反面こうしたところはそれだけ経営にもシビアですから、将来的に長年地域でやってきた小薬局が廃業した後でやはり経営的に成り立たないと大手が撤退してしまえば、後日の利便性はかえって低下してしまうのではという危惧もぬぐえません。
また門前薬局ならずとも地域の薬局はおおむね近隣の医療機関での採用薬は常備しているものですが、こうした大手は大規模店に大きな駐車場を用意して広範囲に顧客を集めるという手法をとっていますから、行ってみたはいいがいつもの処方薬が取り寄せになった、なんて話もこれからは増えそうですよね。

もう一つは全国どこでも同一内容の医療は同一価格でという国民皆保険制度の建前上、各店舗が好き勝手に値引き販売をしていいものなのかという疑問があるわけですが、面白いことにこういう方面でいつもうるさい印象のある厚労省がこの問題を静観しているということです。
ちょうど先日11月19日に開かれた国会で、自身も薬剤師資格を持ち日本薬剤師連盟副会長を歴任した自民党参院議員の藤井基之氏からこの問題に関する質問が出ていまして、こちらを見てみますと静観というよりもむしろ容認している?という印象すら受けるような答弁になっているようなのですね。

保険調剤におけるいわゆる「ポイントサービス」の提供に関する質問主意書(2010年11月19日第176回国会)

 最近、一部の多店舗展開している保険薬局において、保険調剤を行った際、患者から徴収する一部負担金に対し、その金額に応じて、いわゆる「ポイント」を提供するサービスが行われている。
 保険診療及び保険調剤に係る一部負担金については、健康保険法第七十四条において規定されており、療養の給付を受ける者は、定められた金額を保険医療機関又は保険薬局に支払わなければならないとされている。また、一部負担金の減額については、健康保険法第七十五条の二において、災害等特別の事情がある場合以外は認められていない
(略)
 そこで、以下のとおり質問する。

一 一部の多店舗展開している保険薬局において、保険調剤に係る一部負担金の支払に当たって、いわゆる「ポイント」を提供していることについて、政府は把握しているのか。

二 保険薬局を利用して「ポイント」を提供された者が、当該保険薬局又は関連保険薬局において、保険調剤に係る一部負担金の支払に当たって当該「ポイント」を充てて減額を求めることは認められないと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 保険薬局において保険調剤に係る一部負担金の支払額に応じて「ポイント」を提供された患者が、当該保険薬局又は関連保険薬局を次回以降利用した場合に、保険調剤に係る一部負担金の支払以外の支払に当たって当該「ポイント」を使用することは、患者にとって費用負担の減額の効果を与えることになり、結果として保険調剤に係る一部負担金の減額に当たると考えられ、認められないと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 保険薬局において保険調剤に係る一部負担金の支払に対する「ポイント」の提供が認められる場合には、保険薬局に対する個別指導や共同指導などにおいて不適切であるとされている過剰な景品類の提供など経済的サービスの提供という行為にも繋がり、健康保険法第七十四条の規定が形骸化することにもなりかねないと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 保険調剤に係る一部負担金の支払に対する「ポイント」の提供は、「ポイントサービス」の多寡による保険薬局の選択に繋がり、保険医療の質の低下を招く恐れがあると考えるが、政府の見解を示されたい。

六 保険調剤は健康保険法等に基づく療養の給付であり、一般的な商取引ではない。従って、保険調剤に係る一部負担金の支払に対する「ポイント」の提供は、公的医療保険制度の根幹を揺るがすことに繋がると考えられる。政府はこれを認めることがないよう対応を取るべきと考えるが、見解を示されたい。

藤井議員の質問の要旨としてはさすがに個人薬局圧迫ケシカランとは表だって言えませんから「ポイントサービスの多寡による保険薬局の選択に繋がり」云々と曖昧な表現に留まっている一方で、医療保険制度の趣旨に反するのではないかという内容となっています。
これに対する菅総理の答弁書がこちらなんですが、少なくともどこからどう見てもやってはならんと言っているようには見えませんよね。

答弁書(2010年11月30日第176回国会)

   参議院議員藤井基之君提出保険調剤におけるいわゆる「ポイントサービス」の提供に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねのような事例があることは承知している。

二から四までについて

 健康保険法(大正十一年法律第七十号)等の医療保険各法においては、御指摘のような「ポイント」の提供又は使用自体を規制する規定はないが、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十六号)第四条第一項等において、保険薬局は健康保険法第七十四条の規定による一部負担金等の支払を受けるものとされ、その減額は許されないことから、「ポイント」の提供又は使用が一部負担金の減額に当たる場合があれば、これらの規定に違反することとなると考える。

五及び六について

 保険薬局が担当する療養の給付については、健康保険法等に基づき、その適正な実施を確保しているところであり、御指摘のような「ポイント」の提供が、直ちに「保険医療の質の低下」を招いたり、「公的医療保険制度の根幹を揺るがすことに繋がる」とは考えにくいが、今後とも、健康保険法等に基づき、保険薬局に対する適正な指導に努めてまいりたい。

「ポイントの提供又は使用が一部負担金の減額に当たる場合があれば、これらの規定に違反することとなる」と言うのであれば、今回の質問に出たような状況は違反なのか違反ではないのかはっきりしろと言いたくなるところですが、その後段においてポイント制度自体に対して必ずしも否定していないらしい様子がありありですから、要するに違反ではないと言っているのと同じ事なのかと受け取れる内容です。
菅総理の答弁から勝手に解釈してみますと、要するにポイントを付けるということ自体は禁止するつもりはない、そしてそれを保険調剤以外の部分に使うことも認める用意があるが、もし保険調剤の値引きに使うということがあればそれは駄目ですよということを言いたいのでしょう。
法令上はポイント制度などというもの自体への言及がない以上は、何とも玉虫色のこうした解釈になるのもやむなしなのかとも思えるのですが、そうなりますとこれは自ずから別な問題をはらんできますよね。

法律の条文上ポイント制度への言及がないということは調剤に限らず医療の現場においても同じことですから、例えば来院一回につき何ポイント、検査一つで何ポイントといった形で医療機関がポイントを付けていくということも、法律の条文上は禁止されていないということになってしまうでしょう。
そしてこれまた国の解釈によれば、そうして付与されたポイントを保険診療以外の部分で用いるということも別段禁止されるものではないということですから、例えば保険診療外の人間ドックなどでこうしたポイントの還元を行っても許されるという解釈は成立しそうですよね。
さらに裏技的に言えば、例えば今の保険診療制度では特定のドクター個人を指名して受診するということは制度上の規定がありませんけれども、例えばポイントが幾ら以上あれば院長先生の外来に予約が優先して入りますとか、救急でご来院の場合は優先して診させていただきますなんてことも、法律の条文を文字通りに解釈する限りは出来ない話ではなさそうですよね。

実のところ以前にも紹介しました通り、順天堂大学あたりでは会員制の「リフレッセクラブ」なんてものを運用していまして、基本的にはドックや日常的な健康管理が目的なんですが、「疾病の治療のため、予約診察室を用いて速やかに診察を行い、疾病内容により、適切な専門医を紹介して、診察を受けることができます」なんて規定があるのは、まさにこうしたお得意様優遇のための制度と言えそうです。
入会金が百万円(別に預託金百万円)に年会費が三十万円余と言えば庶民がおいそれと利用できるようなものでもありませんが、二年ほど前にこの話が出てから今日まで変わらず(つまり、お上の指導を受けることもなく)運用されているという現実を見るに付け、なるほど確かに国としてはこういうのは有りとしているのだなと考えさせられる話ですよね。
こうした事情を総合して考えると国としては混合診療紛いのことも決して無碍に否定しているわけではなく、むしろ黙認という形であってもやりたきゃやればと認めているわけですから、これは影響力低下の著しい「混合診療絶対反対!」の日医あたりはますます立場がないということになってきそうです。

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