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2010年12月 9日 (木)

目先の指摘の背後にある大きな問題

近頃では各地の公立病院などでは「うちは新臨床研修制度のせいでお医者さんが来ないんです~」なんてすっかり社会的弱者のような顔をしていますけれども、その実態はあまりにトンデモな労働環境が放置されている結果医者が逃げ出しているだけだと明らかになってきているわけです。
近年は医療崩壊ということが社会的にも問題視される流れにあるためでしょうか、こうした公立病院の反社会的行為に対してようやく労基署あたりも重い腰を上げた結果、あちらこちらの公立病院が是正勧告を受けるという報道が相次いでいるわけですが、この流れがとうとう大学病院にまで及んできたようですね。

京都府立医大 残業代3億円支払わず(2010年12月07日スポニチ)

 京都府立医大(京都市上京区)が付属病院の医師ら約500人に、大学法人化以降の残業代計約3億円を支払っていなかったとして、京都上労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが7日、大学への取材で分かった。

 大学によると、医師と同病院の間で時間外労働に関する協定がなく、2007年12月と09年10月に当直手当以外の賃金が支払われていないとして是正勧告を受けた。大学側は08年4月の法人化以降の時間外労働のうち、約1億6000万円をすでに支払い、残りも本年度中に支払うという。

 大学は「09年12月に時間外労働に関する規約をつくり、現在は適正に支払っている」としている。

是正勧告:医大病院と分院、超過勤務手当支払わず 08、09年に受ける /和歌山(2010年12月7日毎日新聞)

 県立医大付属病院(和歌山市)と紀北分院(かつらぎ町)が、医師ら365人分の時間外・深夜労働の割増賃金など計6030万円を支払っていなかったとして、和歌山・橋本両労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが分かった。いずれも支払いは終えたという。

 付属病院総務課によると、勧告は09年10月15日。同年6~8月の医師と技師283人分、計5616万円を支払っていなかったと指摘された。当直勤務中、救急外来患者が何度も来た場合は当直とはいえず、超過勤務手当を支払うべきだと労基署に指摘されたという。同課は「すべて超過勤務手当を払うと経営が成り立たない」と懸念を示している。

 一方、紀北分院への勧告は08年11月27日。08年中の看護師や医師ら82人分、計414万円を支払っていなかったと指摘を受けた。衛生管理者や産業医の未選任、定期健康診断結果の未提出も指摘された。同課は「(提出などを)認識していなかった」と釈明した。【山下貴史】

残業代未払い 東大に是正勧告(2010年12月8日NHK)

東京大学が、医学部附属病院などに勤務する看護師や事務職員らに対し残業代を支払っていないなどとして、ことし3月までの6年間に8回にわたって労働基準監督署の是正勧告を受けていたことが分かりました。

是正勧告を受けていたのは、東京大学医学部附属病院や医科学研究所など大学にある4つの組織です。大学によりますと、附属病院に勤務する医師や看護師、それに大学の事務職員ら、延べ、およそ700人に対して、残業代の割り増し賃金を支払わなかったり、規定を超えた時間外労働をさせたりするなど、労働基準法に違反しているとして労働基準監督署から是正勧告を受けていたということです。是正勧告は、大学が法人化して労働基準法の適用対象となった平成16年度以降、ほぼ毎年行われ、ことし3月までにあわせて8回にわたっています。このうち残業代などの未払い賃金は、総額でおよそ9700万円に上り、大学は是正勧告を受けて全額を支払ったとしています。東京大学本部広報課は「故意に残業代を支払っていなかったわけではなく、時間外勤務の一部を自己研さんの時間と考えるなどしていたため結果的に未払いになった。勧告を受けるたびに会議などの場で再発の防止を呼びかけてきたが、徹底できていなかった。今後はこのようなことがないようにしたい」と話しています。

残業代の規定すらないという時点でどうなのよですが、全国同時多発的にこうして同様の話が出てくるということは、さすがにかなり上の方からの統一意志に基づいた行動であると理解するしかありませんけれども、問題は大学病院医師の労働問題が単に時間外労働に対する代価を払えば済むというレベルのものではないということです。
わずか月6万円で過労死するまで酷使され続けた挙げ句、「過労死?単に自発的に働いてただけでしょ?だいたい研修医は労働者じゃないし」と強弁したという伝説の関西医大研修医過労死訴訟などを見るまでもなく、ありえない低賃金どころかしばしば無給で、その上医局費や研究費などという名目で上納金すら取り上げらて過酷な労働を強いている大学の現実をスルーするのはどうなのよですよね。
「嫌なら大学なんていかなけりゃいいじゃん」というのは確かに正論ですが、問題は当の大学は元よりマスコミや公立病院が中心になって、医療崩壊の原因は新臨床研修制度の結果大学の人手が足りなくなった、そのために各地の関連病院からスタッフを引き上げざるを得なくなったからだというシナリオが、未だ何の検証もなく既定の事実として語られ続けているということです。

かねて言われていることには、自分の支配下にある大学の権威を高めたい文科省としては大学病院の権限が低下することは望ましいことではなく、何とかその復権を目指して画策している一方、大学から医師の派遣機能などといった権限を奪って自分達のシマである各地の基幹病院にその代替をさせようとしている厚労省とすれば、今さら白い巨塔の復活などあり得ない話ということになりますよね。
しかしそうした暗闘の中にあって当事者である医者達の労働者としての権利擁護などという視点があったかと言えば、正直単なる数合わせの駒としか見られていなかったという側面が否定できないと思いますね。
昨今では大学医局においても医者の嫌がる病院には一切派遣はしませんと公言するなど、結果として労働環境の改善が進んできた部分もあるにせよ、それらはあくまで教授や医局長といった医者同士の配慮の中で行われてきた話であって、組織としての大学が改革されているわけではないことは留意しておかなければなりません。

近頃では公立病院にしろ大学にしろ独法化ということになっていて、国立の大学病院においても「ナースが点滴をしてくれるようになった!」「三時を過ぎても指示を受けてくれるようになった!」なんていじましい環境改善の報告(苦笑)が相次いでいますけれども、民間と公立との医者当たり労働生産性の差というものを考えて見れば、こうした改善とはすなわち医療の質の向上に結びつく話だと知れますよね。
医療現場の中でもとりわけ高度な専門職である医者が薬局に薬を取りに行く、患者さんの車椅子を押すといった専門性のかけらもない仕事に忙殺された結果、「医者が足りない!国の強権で何とかしてくれ!」なんて言われたところで、まともな人間からはお前ら頭に悪い虫でも湧いているのかと正気を疑われるのがせいぜいでしょう。
地域においてもっとも高度な医療を担う建前の大学病院で、実際に働いているのは過労でふらふらの医者ばかりということになれば、国民にとっても自らの生命と健康に危機感を覚えずにはいられないはずなのですから、単に表面的な体裁を整えてそれでよしとするのではなく、これを契機に社会常識の通用するまともな職場環境構築へ向けての抜本的改革を推し進めていくのが社会的責任というものではないでしょうか。

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