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2010年12月21日 (火)

見方を変えれば思い切って長期戦略を練り直す好機?

最近どうも大丈夫なのか?と思うような話も多いのですけれども、本日はこちらの話から見て頂きましょう。

医学部定員に関する検討会を設置―文科省(2010年12月16日CBニュース)

 文部科学省は12月16日、大学医学部の入学定員に関する有識者検討会を設置すると発表した。医師不足を受けた医学部の新設や定員の上限撤廃を含め、2012年度以降の中長期的な医師養成の在り方を議論する。22日に初会合を開く。

 「今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会」は、将来の医学・医療ニーズに対応した医師養成を図るため、医学部の入学定員の在り方について、過去の定員増の検証などを含め、調査・研究を行う。委員は、国公私立の大学や市中病院、自治体、産業界、患者会などの代表20人で構成。厚生労働省医政局と総務省自治財政局がオブザーバーとして加わる。

 鈴木寛文科副大臣は同日の記者会見で、「これまでは地域医療の充実を中心に、短期的な在り方を議論してきた。(検討会では)これからの10年、20年の医療需要などを見据えた上で、中長期的な観点から、そもそもの医学部定員について議論していきたい」と説明。検討の視点として、▽高齢化をはじめとする将来の人口動態の変化などを踏まえた医師確保、地域医療の立て直し▽イノベーションを支える基礎研究の人材確保▽国際的な医療交流を担う人材確保―などを挙げた。

 スケジュールについては、「来夏くらいに中間的な取りまとめがあり、だいたい1年をめどに一定の結論を出すのが一般的ではある」としながらも、「予見を持たずに、しっかりと意見を伺いたい」と述べた。

 検討会委員は次の通り。(敬称略)
 安西祐一郎(慶応義塾学事顧問)▽今井浩三(東大医科学研究所附属病院長)▽片峰茂(長崎大学長)▽木場弘子(キャスター)▽栗原敏(日本私立医科大学協会副会長)▽黒岩義之(全国医学部長病院長会議会長)▽桑江千鶴子(都立多摩総合医療センター産婦人科部長)▽坂本すが(日本看護協会副会長)▽妙中義之(国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長)▽竹中登一(アステラス製薬代表取締役会長)▽丹生裕子(県立柏原病院の小児科を守る会代表)▽永井和之(中央大総長)▽中川俊男(日本医師会副会長)▽中村孝志(京大医学部附属病院長)▽西村周三(国立社会保障・人口問題研究所長)▽浜口道成(名大総長)▽平井伸治(鳥取県知事)▽森民夫(新潟県長岡市長)▽矢崎義雄(国立病院機構理事長)▽山本修三(日本病院共済会代表取締役社長)

ちょうど先日はその鈴木寛副大臣の口から「医学部の定員増はもう限界」というコメントがあったばかりという状況で、医学部の新設はともかく「定員の上限撤廃を含め」議論するとはずいぶんと思い切ったことを言い出したなと思いますが、文科省としては医学部定員がどれだけ増えようが国試の足切りライン調節で医師数は自在にコントロールできるでしょ?という含みもあってのことなのでしょうね。
中長期的な観点から医療需要などを見据えた上で医学部定員を議論すると言うのは当然ではあるのですけれども、このあたりはデータの収集から現場の声のフィードバックに至るまでことごとく厚労省の領域になってきそうなのが気になりますし、そもそも文科省が医療現場に詳しい筋にどの程度のコネクションがあるものかと思いますよね。
実際に検討会委員の顔ぶれを見てみますと情報科学が専門の安西祐一郎氏、元スポーツ番組キャスターの木場弘子氏、商法学者の永井和之氏などは一体何を期待して参加してもらうのかよく判らない人選ですし、医学畑のメンバーにしてもいかにも文科省人脈らしく明らかに臨床というより研究寄りの人材に集中している印象で、正直これで何をどう議論するつもりなのかと疑問にも感じられるところです。

考えて見れば日本の医師国家試験というのもなかなか面白いもので、受験するには文科省が所轄するところの医学部医学科で六年間勉強しましたという資格が必要である一方、実際に試験をするのは大学教育とは関わりない厚労省ですから、このあたりは阿吽の呼吸で省庁間のバランスを取っていたということが言えそうです。
実際に国試合格率の推移を見ていますと、このままでは医者余りになる!と医学部定員が一斉に削減され始めた昭和末期から平成時代初め頃の受験者数ピークの時期では合格率は8割台前半が普通であったものが、医師不足が叫ばれ始めた近年は軒並み9割前後をキープしていますから、かなり恣意的な基準で運用されているのではないかと推測されるものではありますよね。
仮にこうした場で医学部定員はまだまだ増やせという結論になったとして、その通りに各大学(おそらく私大が中心になるのでしょう)が定員を増やしたとして、法科大学院や歯学部といった先行例に見られるように遠からず増やしすぎた、定員割れだなんて話になるでしょうし、一部法科大学院のように高い学費を取ったのに合格率が限りなくゼロに近いという「学費詐欺」紛い(失礼)の大学も出てくることになるでしょう。

かつての医学部定員削減の原動力となったとも言われる日医なども昨今ではさすがに医者余りだとも言いませんが、相変わらず医師不足だ医師不足だと拙速に医学部定員を増やすべきではないとは主張していて、「医者は足りないのが問題なのではなく、偏在しているのが問題なのだ」という、どこかで聞いたような主張を盛んに繰り返しているようですよね。
もちろん今の調子で医学部定員を際限無しに増やしていけば、早い遅いの差こそあれいずれはどこかで医者余りということが問題になってくるとは多くの人間が感じているところでしょうが、結局はどの時点をもってこれでいい、これ以上は要らないと決めるのかという社会的コンセンサスがないことの方がよほど問題なのかも知れないと近頃考えているところです。
僻地医療や救急・周産期といった忌避される領域に医者が回ってくるまで漫然と増やし続けるというのであれば、世の中医者がだぶついて大変な状態になるだろうなとは想像出来るでしょうし、そうであるからこそ医者の進路は国家権力によってコントロールされるべきだという人々が少なからずいるわけですが、難しいのはそうした臨床領域の事ばかり考えていると思わぬ足下をすくわれかねない現実というものもあるわけですよね。

近年ますます重要性を増しつつある病理医なんてものは年中不足だ不足だと言っていますし、テレビなどでは結構格好良さげに描かれている法医学領域なんて崩壊目前のような言われようですし、法的に必要とされている保健所長刑務所内で働く医者なんてのも常に絶讚募集中ですし、今後重要性を増すばかりの医学研究に従事する医者も減る一方だと騒ぎになっています。
以前に留学中の先生から聞いたところによると、なんでも中国あたりでは医者の進路というものは国によって決められるのだとかで、それは向き不向きもあるでしょうに色々と大変ですねと言いますと「だから留学した」なんてことを言うのですけれども、医師強制配置絶対反対なんて反発を抜きにしても国としてそういう方向性が果たして正しいのかと疑問には感じる話ですよね。
どう考えても保健所の管理業務に向いている人間や研究職に適正がある人間と、救急の第一線でバリバリ働くのにふさわしい人間が同じだとは到底思われませんから、計画配置を推し進めるなら推し進めるで単純に定員がいっぱいだから他に回ってください式のやり方で良いのかですし、単に20万余人の多様な人間が集まった集団を医者というひとくくりで扱うのが正しいのかどうかでしょう。

もちろんこの国の現状を見た場合に、そういうはるか以前の段階で何かしら大丈夫なのか?と心配になってくるような話が多いのも確かなんですが、そうであるからこそ目先の事ばかり継ぎ接ぎで対応するばかりなのが良いことなのかどうなのか、医療崩壊などと言われるどん底の時期であるからこそ「これ以上悪くはならないだろう」と皆で腹をくくって、とことん議論してみるのも良いように思うのですけれどもね。

【中医協】事業仕分けに不満噴出‐遺憾意見提出へ(2010年12月16日薬事日報)

 政府の行政刷新会議の事業仕分けで、医師確保、救急・周産期対策向け補助金について、診療報酬による手当てと重複する事業の廃止を含めた見直しを行う判定が出たことに、15日の中央社会保険医療協議会総会で不満が噴出した。

 口火を切った国立がん研究センターの嘉山孝正理事長は、中医協として遺憾の意を表明すべきと主張。健康保険組合連合会の白川修二専務理事は、国費削減の理由に診療報酬が使われることに、「本末転倒はなはだしい」と不快感を示したものの、意見提出の実効性を疑問視して慎重姿勢を示したが、京都府医師会の安達秀樹氏は「補助金と診療報酬は性格が違う」「「遺憾であるとストレートに申し上げておかないと、政権与党の腰骨が定まらない」と強調した。

 普段は中立的な立場で診療報酬論議に参加している公益委員の小林麻里早稲田大学大学院教授も、「医療費は国家的な優先順位が高く、社会保障の問題は避けて通れない国家の重要課題。それを事業仕分けの対象にするというのは、政府の見識が問われる」と批判した。

 最終的に遠藤久夫会長が、「次回、皆さんに諮って、中医協としてメッセージを作成する方向にしたい」と収拾した。

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