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2010年11月 5日 (金)

崩壊を続ける公立病院 その分水嶺は?

上野原市の新市立病院問題と言えば、以前にも当「ぐり研」で取り上げさせていただいたお得意様ですけれども、迷走していた産科再開問題が何やら急転直下の解決をみたようです。
しかしこれは、いったい何があったのかという唐突感を覚えざるを得ない幕切れではありますよね。

産科設置 市長が撤/山梨(2010年11月3日読売新聞)

上野原新市立病院対立終結目指す?

 上野原市の新しい市立病院の設計を巡り、休診している産科の診療スペースを設けたい江口英雄市長と、医師確保の難しさなどから反対する病院側が対立していた問題で、江口市長が、自らの主張を撤回する考えを同病院の両角敦郎院長らに伝えたことがわかった。小俣幸三・市総務部長は、理由について「2012年のオープンまでに、産科再開に向けた態勢作りが困難なことが判明した」と説明している。

 新病院は、同市上野原の旧上野原中学グラウンド跡地に、約20億円をかけて建設される。鉄筋コンクリート3階建てで、江口市長は、市長選の公約に「産科再開」を掲げて当選し、新病院3階に産科の診療スペース設置を提案していた

 しかし、病院側は「産科診療には最低でも3人の医師の確保が必要。採算面からも病院経営に重大な影響を与える」と反発。両者の協議はこれまで、平行線をたどっていた。

 ところが、両角院長によると、江口市長は10月28日、指定管理者として市立病院を運営する「地域医療振興協会」の吉新通康理事長に電話をし、主張を撤回。さらに翌29日には、市長自ら病院を訪れ、両角院長にも直接、同じ考えを伝えたという。ただ、撤回の理由については明確に説明しなかったという。

 市は近く、「地域医療振興協会」関係者に出席を求めて病院管理運営協議会を開き、正式な了承を得たい考えだが、両角院長は「理由を明確に説明してもらい、病院側の案を採用することを約束してもらわない限り、最終合意はできない」と話している。

 また、市側は、同じく病院側が設置に反対していた心臓カテーテル検査機能を備えた血管造影室も設計から外す方針だ。

いやしかし、オープンまでに産科再開に向けた態勢作りが困難なことが判明したからって、一体何なんですかその超消極的な理由はという感じですが、こんないかにも弁解的な理由で勘弁してくれと言うくらいですから当の病院側も寝耳に水でしょうし、一方でほっと胸をなで下ろしたとも言える話なんでしょうね。
この問題、例によって経営破綻していた病院を指定管理者となった社団法人地域医療振興協会が何とか再建の軌道に乗せつつあった、そこへ新市長は「市長選の公約なんだから産科を再開しろ。心カテだって出来るだろう」と口を突っ込んできたものだから「いや人もいないし無理。どう考えても元が取れないし絶対無理」と断固拒否の構えで状況がフリーズしていたことは既にお伝えした通りです。
せっかく行政の手を離れて何とか立て直しつつあった病院を、わざわざまた行政の口出しで元の木阿弥に戻すということであれば心ある市民にしても困った話だったでしょうが、この急転回の背景としていったい市長の中で何がどう変わったのかには興味が湧くところで、続報なりとあればまた紹介していきたいと思います。

上野原の例はそれとして、最近では労基法無視が状態化していた公立病院にもようやくお上の手が入るようになってきたということで、各地でそうした報道がにわかに相次ぐようになりましたけれども、背景にはこうした行政側の過剰な要求というものも存在していたのではないかと推測されるところですよね。
公立病院と言えばたいがいスポンサーである市民様には失礼がないようにと各種ローカルルールが設定されているところも多いやに聞きますが、むろん他の病院にしても設立母体によってそれぞれVIP顧客の設定はあるにせよ、その対象が市民ともなりますと原則として来る患者全員ということになりかねません。
「真夜中の不要不急の来院でも支払いをされない方でも気持ちよく診察させていただきなさい」だの「市民様の負担を考慮してお産費用は据え置きなさい」だの好き放題口出しするのはよいのですが、当然現場で働くスタッフにとってはストレスをため込む大きな原因となることであるし、ひとたび逃散でも招こうものなら残るスタッフの過剰労働から崩壊一直線というのが昨今の公立病院崩壊の一つの黄金パターンでしょう。

県立2病院に是正勧/長野(2010年11月3日  読売新聞)

労基署、超過勤務など指摘

 県立須坂病院(須坂市)と県立こども病院(安曇野市)が、医師を時間外労働協定に定めた限度時間を超えて超過勤務させていたなどとして、労働基準監督署からそれぞれ2007年と09年に、是正勧告を受けていたことが2日、分かった。都内在住の男性が県に情報公開請求し、判明した。

 県立病院機構本部事務局によると、須坂病院では07年1~3月、院内に設置した複数の委員会を夜間などに開いたにもかかわらず、2割5分以上の割り増し賃金を支払わなかったと、中野労基署から指摘された。未払い賃金は、医師や看護師ら延べ150人分の計約95万円で、08年度に支払った。こども病院では09年2月、〈1〉複数の医師の超過勤務が、労働協定で定めた限度時間(月45時間)を上回り、月100時間を超えていた〈2〉産業医選任に伴う報告書が未提出〈3〉院内の衛生委員会を月1回以上開いていない――の3点で、大町労基署から是正を求められた。

 同事務局は「須坂病院では、認識が薄かった。こども病院では、医師をはじめ、職員不足から業務が集中してしまい、超過勤務となった。いずれも是正した」としている。

県立こども病院:静岡労基署、是正勧告 「残業代一部未払い」 /静岡(2010年11月3日毎日新聞)

 静岡労働基準監督署が08年5月、医師に労使で定めた上限を超える時間外労働をさせ、残業代の一部を支払っていなかったとして県立こども病院(静岡市葵区)に労働基準法に基づく是正勧告を行っていたことが2日わかった。

 こども病院を運営する県立病院機構(同区)は「医師の時間外労働の実態が把握しにくく、残業代を全額支払うと予算が厳しいこともあって、ある一定の割合で残業代をカットしていた」と認めた。

 こども病院の医師らは09年11月、同機構が未払いの残業代を支払うよう静岡簡裁に調停を申し立てた。今年9月、同機構が医師15人に計1630万円を支払うことで調停が成立した。

 こども病院は、勧告を受けるまで非常勤医師に残業代を支払っていなかった。非常勤の自治体職員に残業代を支払う規定が地方自治法になかったことを根拠にしたという。

 勧告を受けて同機構は常勤、非常勤にかかわらず、残業代は申請通り支払う仕組みに改めた。これに併せ、医師には勤務実績を上司の医師に書面で報告するよう義務づけた。【平林由梨】

勤務体制など是正勧告、新たに10病院 本社調査/静岡(2010年11月3日静岡新聞)

 県立3病院が時間外手当の未払いなどで労働基準監督署から是正勧告を受けていた問題で、静岡新聞社は2日、県内公的病院に聞き取り調査を行い、少なくとも10病院が過去に労基署から是正勧告を受けていたことが分かった。ほとんどの病院が勧告を受けた背景として医師不足を挙げた
 県立総合、こども両病院と静岡がんセンターを除く医療法や県の基準で定められた地域の拠点・総合病院など43病院のうち、41病院から回答を得た。
 過去10年間(2000年以降)に労基署から何らかの是正勧告を受けたことがあるか聞いたところ、共立湊病院(南伊豆町)、市立伊東市民病院、沼津市立病院、静岡市立静岡病院、市立島田市民病院、藤枝市立総合病院、榛原総合病院、掛川市立総合病院、菊川市立総合病院、浜松医科大医学部付属病院の10病院が「勧告を受けたことがある」と答えた。
 10病院のうち、人員不足などを背景にした医師や職員の労働条件や勤務体制に関する勧告を受けたのは7病院。このほか沼津市立病院と静岡市立静岡病院は労働協定の締結を求められた。
 市立伊東市民病院は「勧告の内容は答えられない」としている。

超過労働:徳島労基署など、3病院に是正勧告 慢性的な医師不足 /徳島 (2010年10月28日毎日新聞))

 医師らの労働時間が労使協定で定めた上限時間を超えているなどとして、県立中央、三好、海部の3病院が06年4月~今年7月に計6回、徳島労働基準監督署など各地域の労基署から、労働基準法に基づく是正勧告を受けていたことが27日、分かった。各病院では慢性的な医師不足が課題になっており、県病院局は「患者を診療しないわけにいかず、時間外労働が発生する状況になっていた。負担軽減のため引き続き改善を図る」としている。
 同局によると、勧告は、中央が3回▽三好が2回▽海部が1回。06、07年の2回は時間外労働に関する労使協定がない点を指摘。09年以降の4回は、協定で定めた各病院の上限時間を超えていると指摘された。
 三好病院では、09年に宿直扱いされた検査技師6人について、必要な届けを労基署に出さなかったため夜間勤務とみなされ、宿直手当との差額計72万5000円を勧告後に支払った。
 各病院では、三好で09年3月から分娩(ぶんべん)を休止、海部も今月から3年ぶりに一部分娩が再開されたばかりで、産科などを中心に医師不足が続いている。【井上卓也】

まあしかし不謹慎ながら、こういうことが起こる度に普段使わない頭を一生懸命悩ませてトンデモな言い訳をひねり出してくるの眺めているのも、当「ぐり研」的にはまた楽しではあるんですけれども(笑)、こういう労基署の勧告がどんどん入るようになったのも省庁再編の一つの副産物ではあるのですかね。
今の時代病院経営をうまく回そうと思えばまずは医者の数をそろえることというのは定説になっていて、そのためには他よりも待遇なりで優遇してでも医者集めに精出さなければならないはずですが、公立病院と言えば何と言っても客層が悪いということで嫌われている現実がある、それに加えて待遇面でも労基法?何それ食べられるの?状態だとすれば、一体公立の良いところなどどこにあるのかですね。
保険診療の制約も無視で好き放題やらせてもらえるナショナルセンタークラスならまだしも、今どき地方公立病院など下手すると緊急用のカテのストックを購入するだけでもお上のお伺いが必要というくらいに制約が厳しいところも多いですから、熱心に先端的な医療をやりたいという医者ほど公立は避けておいた方が良いということになりかねません。
医者にすればそんなこんなで公立病院勤務をするべき理由など探す方が難しいくらいで、もちろん労基署からおしかりを受けるような地雷病院など今さら誰も行きたがらない、となればそんな病院に永年勤続でいつまでも居座っている先生ってどんな…?と思われても仕方がないということですよね。

全国的に病院経営の才能がないことが立証されてしまった行政側が余計な口出しをしてくるなどというのは論外にしても、医者の間ですっかり定着してしまった公立病院の悪いイメージを何とかしないことには今後再び公立病院が浮かばれるとも思えませんが、その方法論としてどんな手段があり得るのかということです。
今どき「3000万円も出せば助教授クラスが飛んでくる」なんて夢想している人間はさすがにいないでしょうが、結局のところ人が来ない以上は限られた供給側のマンパワーに扱える範囲に需要側を制限していくしか根本的な解決策はないと言うことは明白ですから、住民自らであれ行政主導であれ「地域で医者を大事にする」という文化が根付いているかどうかが分かれ目になりそうですよね。
「うちは公立ですからDQNでも何でもどうぞお越しください」なんてのは論外としても、地域の自発的な民度向上が一朝一夕で進むものではないはずですから、せめて行政主導であっても何かしらのリアクションを起こしてポーズだけでも見せていかなければ、またぞろ「我が町には何故か全く医者が来ない!国が強制的に送り込むようにしてくれないと困る!」なんて叫ぶしか能がないということになってしまうでしょう。
むろん、実際にどの方法が正解にもっとも近いのかは将来の検証に委ねるしかありませんけれども、まずは医者も一人の人間であると認め尊重する姿勢を示すことが最低限の人としての倫理ではあるだろうし、その程度のことも出来ないようでは他人に何かを求める資格はないと言われても仕方がないのではないですか。

美祢市医療守る条例検討県内初、市民にも責務 /山口(2010年10月15日読売新聞)

 山口県美祢市は、市と市民、医療機関が医療充実のために果たす責務などを定める「地域医療を守る条例」(仮称)制定の検討を始めた。

 医師不足などで崩壊が進む地域医療を、安心して受診できる体制に立て直す目的。早ければ、来年3月議会に提案する。県によると、こうした条例は県内では初めて。

 市によると、条例には、市民の責務として、〈1〉かかりつけ医を持つ〈2〉安易な夜間、休日の受診を控える〈3〉医療関係者に信頼と感謝の気持ちを持つ ――などの明文化を検討している。市については「市民の健康長寿を推進する施策を実施する」、医療機関については「医療の担い手の確保に努める」などの目標を盛り込む方針。

 美祢市は2008年3月の合併以降、人口約3万人の自治体には珍しく二つの公立病院を抱える。ただ、人口1000人当たりの医師数は、県内13市の中で最低の1・43人(08年末現在)で、県平均の2・48人を大きく下回る。

 新人医師が2年間、研修先を自由に選べるようになった新医師臨床研修制度(04年度スタート)などの影響で、二つの公立病院に勤務する医師は、06年の22人から10年は14人にまで減少。一方で、外来患者は毎年10万~12万人で推移しており、医師の負担は年々増しているという。

 市が2月、医師らを対象に実施したアンケートでは、8割が「今の職場を辞めたいと思ったことがある」と回答。軽症で夜間・休日に気軽に来院する「コンビニ受診」による疲労蓄積や、高圧的な態度を取る患者がいることなども、医療従事者を悩ませているという。

 市は条例案を協議する「市地域医療推進協議会」を設置。14日に第1回会合を開き、市民や医師ら18人の委員が地域医療の課題などについて意見交換した。

 市健康増進課の古屋勝美課長は「行政や医療機関だけでなく、市民も地域医療を守り育てる意識を高めるきっかけにしたい」と話している。(鶴結城)

伊賀市議会:「地域医療条例制定を」 勤務医の負担軽減に /三重(2010年10月27日毎日新聞)

 深刻な医師不足が続く伊賀地域の救急医療問題を受け、伊賀市議会で「地域医療を守る条例」の制定を目指す動きが出ている。勤務医の過重な負担を軽減するため、市民に安易な時間外受診を控えるよう求める努力義務を課すことなどを想定しており、伊賀地域で安心して医療を受けられる体制を目指すという。【伝田賢史】

 26日に開かれた同市議会政策討論会で、中井洸一市議(爽風ク)が提案し、既に制定されている宮崎県延岡市や広島県尾道市の条例を紹介した。両市の条例では、市と市民、医療機関が一体となって地域医療を守ることを要請。▽市民は「安易な時間外受診を控え、感謝の気持ちをもって受診する」▽市は「地域医療を守る施策を推進する」▽医療機関は「医療の担い手を確保する」--などの努力義務を定めている。

 中井市議は「制定されたからといってすぐに効果が出るわけではないが、改善に向けた議会としての姿勢を示す必要がある」と述べた。他の市議から目立った反対意見は出ず、条例制定に向けた検討が始まる見通しとなった。

 伊賀市立上野総合市民病院の常勤医は、今年8月現在で計11人、うち内科医はわずか1人(健診センターを除く)と深刻な医師不足に陥っている。


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