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2010年11月 8日 (月)

またも朝日新聞 問われるその責任の所在

先日こういう記事が出ていましたけれども、言う主体が誰であるかということを考え合わせてみるとなかなか含蓄のある言葉ですよね。

患者塾:医療の疑問にやさしく答える スーパー細菌と闘う/下 /福岡(2010年10月26日毎日新聞)
より抜粋

 ◇記者の一言

 「『この病院はまじめにやっているから院内感染が出てしまった』と受け止めて」と医師から話があった。
 何度か院内感染を取材したことがあるが、病院の話を聞いて、「大騒ぎする話ではない」との結論に達したケースがほとんどだ。
 でも病院が事実を正確に説明しようとしないと、記者心理として「何か隠しているのでは」と勘ぐってしまい不信感が生まれる
 耐性菌発生を防ぐには「薬をしっかり飲んでしっかりたたく」と説明があった。院内感染の誤解を防ぐにも「しっかり説明、しっかり報道」だと思っている。【佐藤敬一】

全く、記者心理なるものはどれほど厄介なのかと改めて思い知るという内容ですけれども、根拠のない不信感に由来する勝手な妄想から他人を一方的に「しっかりたたく」となれば、これはペンの暴力と言うしかない社会的な反正義ではないかと言う気がしますね。
先日以来すっかり「またアサヒったか!」と話題の朝日新聞の癌ワクチン記事ですが、腐っても天下の朝日であるだけに社会的影響力は相応に大きかったようで、全国数多の人々が大いに迷惑をしているという状況になっているようです。
そのうえ朝日の記事を受けて緊急シンポジウムまで開かれたということになれば、過去にも数々の社会的重大捏造事件を演出してきた朝日にしてもしてやったりということでしょうが、彼らも時には他人の被る迷惑ということにも思いを致してみた方が、記者として以前に人間としてより一段階の成長を遂げられるかも知れませんね。

がんワクチン緊急シンポジウム(2010年10月31日ロハス・メディカル)
より抜粋

首都圏が台風に直撃された30日、日本がん免疫学会の緊急シンポジウム『がんワクチン治療の現状と臨床』を聴講してきた。急な開催で、しかも悪天候だったにも関わらず200人入る会場は9割方埋まり、いかに患者さんたちの関心が高いかを改めて痛感した。簡単に再現する。(川口恭)

冒頭に今井浩三・日本がん免疫学会理事長がシンポジウムの趣旨を説明。
「なぜ今なのかと言えば、先日朝日新聞で事実関係にかなり間違いのある記事が報道され、患者さんが心配され不安に思われているので、日本がん免疫学会という、15年近く免疫治療、特に『がんワクチン』を追究している学会が、緊急にシンポジウムを開くことにした。日本癌学会のご後援もいただいており、記事に関しては両学会から抗議声明(会場で配布)を出した。患者会41団体も連名で抗議声明を出しているし、日本医学会の高久史麿会長も抗議声明をMRICに掲載(会場で配布)している。記事の中で一番困ったのは『知らせるべきなのに知らせなかった』と』書かれたことで、グループは皆で情報共有していたし何カ月も前に十分に討論してきたことだった。東大医科研病院の臨床研究はワクチンも違うし、出血もワクチンとは関係ない。そのようなことを記者には何度も書簡で返事しているのに、あのように書かれてしまった。私どもが一番恐れるのは、患者さんに誤った理解が広がること。これから使っていただきたいと夜も寝ないで研究してきた方々にとってはマズいことだし、せっかく使っていただきたいと思って使えるかもしれない患者さんたちが離れるのは悲しい。この記事を見過ごすわけにはいかないので、きちんと正しい知識を皆さんにお知らせしたいと、緊急に全国でがんワクチンの臨床研究をやっている方々、全員ではないけれど選りすぐって来ていただいた」

その後で、河上裕・日本がん免疫学会総務理事が、「がんワクチンの総論と世界の現状」を解説。

さらに、実際にがんワクチンを臨床で使用している全国の医師のうち以下の5人が、それぞれのタイトルでそれぞれの研究の報告をした。淡々と科学的に正確に説明しようとする姿勢が印象的だった。
(略)
5人の話を聴き、正直「そんなに実績があるのか」と驚いた。解説や発表の内容を知りたいという方は多いだろうし、お知らせできるとよいには違いないのだが、かなり専門的な内容でとてもではないがメモを取りきれなかったのと、不正確なことを書いてもマズいので、そこは学会自ら広報するということに期待して、第3部の「患者さんからの要望と討論」の部分を簡単に再現する。

実際のシンポジウムの大半は、例によって朝日によりアサヒられた内容に対して各方面の第一人者が事実を元に誤解を訂正していくという、過去に幾度となく繰り返された後始末の繰り返しであったということですが、特に記者氏も注目しているのがその後の質疑応答の部分です。
患者側からは情報をもっと欲しいという声が日々続いていて、これに対して広報の重要性を認識しながらも研究者の側では時間的にも難しい、さてどうしたものかと言う問題点が会場で共有されつつある中で、当然ながらその隙につけ込むような朝日の行為に関しても言及がないというわけにはいきません。
ここで注目していただきたいのが前述のような状況にあって、治療を提供する側と受ける側との間に情報量のギャップがある、そして今回そこを朝日に突かれたのだという認識があるということで、逆にいえばそのギャップを埋める存在として朝日のような既存のメディアは全く信用もなければ期待もされていない、あるいはむしろ有害無益なのではないかと言う見方も広まってきているようにも感じられます。

会場
「札幌医大の細川という。我々もすい臓がんに対するペプチドワクチンの臨床研究を行っている。先ほど山上先生はジェムザールとの併用をやっているとのことだったが、我々はその次によく使われるTS-1との併用で第一相試験を行った。結果は、併用することで有害事象は起きていない。すい臓がんは進行が早いので、できるだけ併用したい。大きな副作用はないので、できれば次の段階へ進みたいと思っている。ここで私は患者さんたちに逆にお尋ねしたいのは、どのようなツールを使って発信すると必要な患者さんが私たちの所に到達できるのだろうか。電話で問い合わせを受けているのだが、早すぎたり遅すぎたり対象外だったりして使えないことも多い」

今井
「どなたかないだろうか。ないか。我々の研究は患者さんと双方向で手作りでやっているものではある。製薬会社が入れば、その辺りのことは手放せるが、そこまでは研究者側にも莫大な手間となる」

会場
「冷静に情報提供しようという姿勢は素晴らしいのだが、朝日新聞記事の与えた影響についても少し議論したい。第一報は誤解を招くような書き方だったということは言えるだろうが、当該記者は臨床試験の問題点を指摘したかったんだということのようだ。これに関して、どう思われるか」

今井
「学会としては困った記事と思って抗議した。今発表したように、がんワクチンに関して非常に大きな精力を費やしてここまで来た。やっと世の中、患者さんの元に届くところなのに、あのようなしかも間違いを含んだ記事を出すというのは、患者さんに対して失礼だと思う。それとは全く次元の異なる制度そのものを論じたいというのなら、別個に論じるべき。制度を論じるために、具体的な事例をねじ曲げて書くという手法は信じられない。臨床試験をすべて治験並みの基準にそろえるべきかどうかと言えば現実的でないと思う。基礎の段階から10年も15年もかけてやっと患者さんの元へ行くところまで進む。途中で色々な規制をかけられれば進むはずがない。国がドーンとお金を出すから全部治験のように報告しろというのは、原理的にはあり得るが、今の何十倍も費用がかかるようになる。それが現実的なのか。原理的には分かるが、現実には患者さんがいて困っている。その辺りをどう折り合いをつけるのかは政治が議論すべき問題だと思うが、政治の役割が十分に働いていなかった。そこができれば話も変わってくるかもしれないが、現実問題として久留米大の伊東先生は積み上げると2メートルも3メートルもなるだけ書類を作って、それでようやく先進医療に持っていった。これがノーマルな姿と言えるのか。研究者にそんなことをさせないでほしい。予算が必要だ。ぜひ患者さんからも声を上げていただいて予算を付けさせるようにしていただけると幸いだ」

中面
「朝日新聞は私たちの研究を混合診療だと書いた。しかし混合診療だからやめろと言われたら、臨床研究は全部ストップしてしまう。問い合わせは非常に多いが、ほとんどの方は臨床試験に入れない。医師、サポートする人、お金、研究者、施設、何もかも足りない。国策として我々を支援してほしい」

山上
「治験は企業が薬にする時に主導して行うもの。がんワクチンの医師主導治験は、これまで、すい臓がんで1件だけ、食道と肝臓も1件ずつ加わったところ。治験に行くまでは研究者が研究費を取って手弁当でやる。その段階はリスクが高すぎて企業はコストを負担しない。一方で探索的なものへの税金の投入は非常に少ない。政策コンテストでも、ペプチドワクチンは企業がやればよいということでC判定だったようなことを聴いている。私はこれに個人的には非常に期待しているし、がんの方も期待している。できるだけたくさんの探索的研究をできるよう研究費を投入してほしいし、いいものを早く治験につなぐようにしてほしい」

会場
「がんの患者会の者だ。朝日新聞の記事には大変に驚いた。一連の流れを見ると、患者会と学会との間に何もないところをマスコミに利用されたのだと思う。患者会も色々なものがあるというのは理解しているが、幅広く浅く連携するような形で、患者会をもっと利用していただきたい」

今井
雨降って地固まるとでもいうべきか、学会も発信力の強化が必要だと考えているし、もっとこういう場を設けるようにしたい」

雨降って地固まるとまで言われてしまった朝日新聞もずいぶんな言われようですけれども、こうまで信用がなくなったのも全て自らまいた種ですから、これも積悪の報いとして甘受するしかありませんでしょうね(苦笑)。
さて、その朝日新聞に関して言えば今回の記事は既に単なる誤報や事実誤認のレベルではなく、どうやら明らかな捏造であるらしいという認識が医療側にも患者側にも広まりつつありますけれども、この事に関して当事者である東大医科研から朝日宛てに正式の「抗議及び謝罪・訂正請求書」が提出されました。
「貴社による取材依頼に対し、医科学研究所が貴社の論説委員、編集委員に誠意を持って提供した情報を、部分的かつ恣意的に引用することによって創作された記事」とまで言い切っているわけですから穏やかではありませんが、こうして代理人弁護士名による公式の文書が出たとなりますと完全に全面対決姿勢は確定したと見るべきでしょうね。
実際に当事者である東大医科研は朝日がどこをどのように「創作」したと言っているのか、その指摘を別紙の資料からポイントだけをごく簡単に要約してみますと、こういうことになるようです。

1.記載内容が事実と異なる部分

1)朝日は医科研の中村祐輔教授がペプチドを開発したと報じているが、ペプチド開発者は別人であり、中村教授は特許にも関与していない

2)朝日は同種のペプチドを使う臨床研究が少なくとも11の大学病院で行われ、うち6国立大学で中村教授が研究協力者や共同研究者とされていると報じたが、実際はそれぞれ7大学、4国立大学である。

3)朝日は5月下旬に東大に取材を申し込んだと報じているが、実際には2月22日に取材がはじまっている。

2.情報の部分的引用により不適切な表現となっている部分

1)すでに他施設から消化管出血の報告があり、進行癌の経過中に発生するこの問題に関係者は精通していることを説明したにも関わらず無視している。また今回の出血が原疾患の進行によるものであると取材に回答しているにも関わらず、ワクチンの副作用であるかのように記載している。重篤な有害事象と副作用の違いについての回答も無視している。

2)出血に関して原疾患の進行によるものと判断され、患者はその後軽快した旨を説明したにも関わらずこれらを無視され、短絡的に「因果関係を否定できない」と記述している。

3)免疫反応の比較検討を優先したこと、被験者のリクルート率が低いこと、アジュバンド等の経費負担が大きいことなどを総合的に判断し試験終了を決めたと回答したにも関わらず、消化管出血を副作用として判断し、中止したかのように記述している。

4)本試験には「臨床研究に関する倫理指針」で定める共同臨床試験機関は存在していないと回答したにも関わらず、「しかし」という接続詞で今回の試験と全く関連のない国の先端医療開発特区に話を結びつけ、間違った取り扱いがあったかのように記載している。

5)無関係の国の先端医療開発特区と結び付け、「中村教授」、「医薬品開発」、「オンコセラピー・サイエンス社」と記事をつなぐことによって、いかにも中村教授に重大な利益相反があるかのような誤解を読者に与える表現をしている。

3.「確かな取材」過程に対する疑義

1)朝日新聞社からの質問状では「情報公開した資料に基づく」としながら、医科研が開示した書類には記載されていない情報に基づいて質問しており、情報入手に関する正当性に疑義がある。

2)「被験者の安全と人権を守る観点に立てば、医科研の側からも情報を提供すべきだった」の根拠として唯一あげられているのが、専門領域も明らかでない他大学関係者なる人物の「なぜ知らせてくれなかったのか」というコメントのみであり、到底「確かな取材に基づいている」とは言えない

4. 本記事の紙面における取扱いに関する疑義

2010 年10 月15 日付東京朝刊1 面において、医科研が大きな間違いを犯したかのような記事をトップに取り上げたにも関わらず、10 月24 日の朝刊38 面では「日本の臨床試験の体制に問題があることを指摘するため」の記事であったと自らトーンダウンしている。しかしこの目的のためとしては極めて不適切な取り扱いであった。

具体的な数字のことごとくが間違っている、ペプチド開発者とか特許の関係者といった基本的事実関係すら正しく把握していない朝日が、一体何をどう考えてこんな記事を書いたのかも今でははっきりしませんけれども、少なくとも同社が言い訳がましく主張しているような社会的警鐘を鳴らすためという目的に関しては、全く別方面で大いに警鐘が鳴り響く結果になったようですね(苦笑)。
ちなみに3.の2)にあげられている、朝日の医科研批判の唯一の根拠となっている「他大学の関係者」なる人物ですけれども、すでに先日もお伝えしたように当の関連医療施設の調査によって、朝日の取材に対してこのようにコメントした人物は存在しないことが明らかにされていることは注目すべきでしょう。
要するに大々的に一面トップ記事に取り上げたほどの記事の、一番の立脚点となる東大医科研批判の根拠そのものがアサヒっていたと言うことだとすれば、一から全てを捏造してまで医科研と中村教授、そして数多の関係者をバッシングしなければならないと朝日が決意した理由は何なのかということが気になりますよね。

今回朝日が火のないところに自ら放火してまわったその経緯というものも不明なのですが、当然ながら何かしらの内部情報なりに基づいて取材を開始したと考えるならば、そもそもその発端がどこにあったのかというところも問題でしょうし、この時期に突然記事を載せたということに関しても前回取り上げたように、ちょうど内閣府の科学技術政策調査と被せてきた、その結果がんワクチンはC判定を下されたように見えることの意味がどうなのかです。
すでに「オンコセラピー・サイエンス社」では朝日のバッシング記事によって株価が急落し大迷惑だということですけれども、当然大変な目にあった人間がいればその逆に大いに恩恵を被った人間もいるでしょうから、数年前のNHKインサイダー取引事件のような何かしらの思惑も絡んでいたのか、それとも更なる複雑な利害関係のもつれなりがあったのかどうかです。
いずれにしてもここまで一から十まで捏造で成り立った妄想記事だけを根拠にこれだけの大きなキャンペーンを仕掛けたわけですから、朝日にしてもその後始末はしっかりとしてもらわなければ社会的責任上からも許されることではないでしょうし、早急に東大医科研からの文書に対しても公式のコメントを出す必要があるように思いますね。

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コメント

今回の朝日の事件で関係者がどれだけ危機感を抱いているかがよく判りますね

投稿: | 2010年11月 8日 (月) 15時24分

マスコミは自らの記事に対して責任を持ってほしいですね

投稿: | 2010年11月 8日 (月) 19時39分

これ、公的機関がここまで根拠あげて捏造認定しちゃったら、朝日がどう言い訳するつもりなんですかね?

投稿: 通りすがりのただの人 | 2010年11月 8日 (月) 21時08分

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