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2010年11月11日 (木)

近頃ではすっかり影の薄い日医ですが

昨今珍しくといっていいのでしょうか、日医絡みの記事が二件ほど続いていますけれども、どうやら民主党寄りの路線をさらに一層強化していくという方向性で固まったということのようですね。
会長自ら「もうちょっと、まともな政治をしてもらえると思っていた」と言いつつこの時点でこういう意思表示をしてくるというのは、見ようによっては政権与党に恩を売ったような形ではありますけれども、政権の側がそれを恩と感じるかどうかはまた別な話ではないかと思います。

日本医師会:菅政権を「30点」 会長が不満評価 /茨城(2010年11月1日毎日新聞)

 日本医師会(日医)の原中勝征会長は31日、水戸市内で開かれた県医師会主催の会合で講演し、日医が主導的役割を果たした昨夏の民主党政権誕生について「国を救った」との考えを示しながらも、菅政権の現状については「もうちょっと、まともな政治をしてもらえると思っていた。100点満点だと30点だ」と強い不満を表した。

 「豊かな人生を送るために」と題された講演会には、昨年の衆院選で県医師会の全面支援を受けた県選出同党国会議員や医療関係者、一般市民ら400人あまりが詰めかけた。原中氏は、民主党政権の改革の成果として、郵政民営化見直しを挙げ、政府が民営化を一時的にストップさせる「郵政改革法案」成立を目指していることを「郵貯と簡保の金融資産が海外流出せずに済んだ」と評価した。

 その一方で、菅政権の現状を「我々が望むような政治はしていない」と指摘。小沢一郎元幹事長の政治とカネを巡る問題にも触れ「党内がガタガタしているだけに、国民のためになる行動をしないと次の選挙では勝てない」と注文を付けた。【大久保陽一】

日医、民主党の高齢者医療制度案容認へ 自公離れ鮮明(2010年11月10日朝日新聞)

 日本医師会は、高齢者医療制度について「75歳以上を別建て」としていた従来の主張を転換し、年齢による区分をやめる民主党案を受け入れる方針を固めた。政権交代を機に選挙協力で民主党に接近していたが、政策面でも自公政権が決めた現制度から乗り換え、現政権に歩調を合わせる姿勢を強めることになる。

 原中勝征会長が11日に記者会見して表明する。

 いまの後期高齢者医療制度(後期医療)は2008年に当時の自公政権が導入した。日医も75歳以上になると病気にかかりやすく、長引きやすいなどのデータをもとに、75歳以上の医療保険制度を「独立型」にして税金を手厚く配分するしくみを主張。自公政権と歩調を合わせた。

 これに対し、民主党は昨年の衆院選マニフェストで後期医療廃止を掲げ、将来はサラリーマンらが入る健保などの被用者保険と自営業者らが入る国民健康保険を統合。都道府県などを単位に運営する「地域保険」に一本化する方針を打ち出した。政権交代後、厚生労働省はマニフェストの実現に向けて2013年度に後期医療を廃止し、75歳以上の区切りをなくす新制度をつくるための検討を進めている。

 日医は今回の政策転換について、「地域保険」の方が財源を確保しやすいと説明する考えだが、民主党案に歩み寄ったのは明らかだ。日医幹部は「政策転換を機に細かな制度設計について民主党執行部や閣僚と協議し、新たなパイプを作りたい」と明かす。

 日医は4月、自公から民主の支援に転じるか否かを争点に会長選が行われ、小沢一郎元代表と親しく民主党支援を鮮明にした原中氏が当選。7月の参院選では自民党比例区に立った現職の組織内候補を推薦せず、実質的に民主党を支援した。9月の民主党代表選では、一部の日医幹部が小沢氏を強く支援した。

 ところが代表選では菅直人首相が勝ち、菅政権は「脱小沢」の布陣に。民主党執行部内には小沢氏に近い日医を敵視する空気もある。頼りの小沢氏が強制起訴されることも決まり、日医は診療報酬改定の議論が来年本格化するのを前に菅政権との関係構築を迫られていた。原中会長は10月24日の日医の臨時代議員会で「『お前は小沢派だから(現民主党執行部から)除外されているのではないか』と言われるが、そんなことはない」と釈明していた。(明楽麻子、友野賀世)

後期高齢者医療に関して日医が民主党案を受け入れるというのは一昔前であれば結構なニュースであったのでしょうが、正直今の日医が何をどう言おうが医療政策の行方にさしたる影響があるとも思えないだけに、「同意してあげるんだから感謝してよねっ!」なんて今どきのツンデレっぽく振る舞ったところでどうなのよというところでしょう。
このあたりは日医執行部全体の総意と取るべきなのか、それとも自他共に民主党シンパと認めている原中会長個人の見解が優先されているのか微妙なところですが、ちょうどこの夏に受けたインタビューで原中会長自身が民主党政権について語っているという部分を参考までに引用してみましょう。

原中勝征さん(日本医師会会長)インタビュー 闘う医師会づくりで官僚主導から脱却(2010年8月4日朝日新聞アスパラクラブ)
より抜粋

民主党との協議会に現場の声を

――政権交代で、変化はありましたか。

原中 政府にこうしたことを訴えやすくなりました。私は民主党寄りだと言われますが、政治家が政治をやるということは正しいと思っています。本来は、2大政党が政権を取り合うのが理想的です。自民党の長期政権で2世、3世の議員が増えて、政治家が勉強しなくなり、官僚が政治をやりやすくなってしまったようです。これは正さなくてはなりません。
 日本医師会は、民主党に現場からの声を届ける団体にならなくてはいけない。そこで、小沢前幹事長と私が最高責任者になって、民主党と日本医師会との協議会をつくることにしました。その中で、雇用問題、少子化問題、民間企業の医療への参入などを話し合います。また、特定看護師の問題もあります。アメリカのナース・プラクティショナーは、チーム医療の中で位置付けられています。ところが日本は、看護師に医療行為をさせれば安くできるという誤った方向に向かっています。
 間違いのない良質の医療をつくることは国民のためであり、経済性を中心に医療を変えようとすることに対しては断固反対していく。それが、私たち専門集団の務めだと思っています。

原中会長には失礼ながら、日医という組織が医療現場の声をまるで聞かないでやってきたからこそ今日の医者の日医離れなどとも言われる事態を招いたのだと思うのですが、その問題意識なくして自分たちが医者あるいは医療現場の代弁者であるかのように誤解しているのだとすれば、これはとんでもないはた迷惑な思い上がりであると言うしかないと思いますね。
ただここで注目していただきたいのは、やはり原中氏の民主党とのパイプというのはかねて噂されてきた通りあくまで小沢氏個人とのパイプが主体であって、民主党の中でも医療行政に深く関与している(どちらかと言えば反小沢派の)方々との間に特別のパイプがあるわけでもなさそうだとは言えそうですよね。
となると、小沢氏なき現民主党にとっては日医などしょせん「うるさい業界団体」の一つにしか過ぎないということになりますし、まして中医協などの場においても日医抜きということがすっかり常態化している現状で、何を言ってもしょせんは負け犬の遠吠えではないかと冷めた目で日医を見ている人間もますます増えてきそうです。
こういう状況になりますと元々非常に微妙な勢力バランスの上に会長職へ就任した原中会長としては、一番のセールスポイントが消滅しかねない事態だけに指導力発揮にも影響があるのではとも思われるところですが、ちょうどこのたび日医の代議員会があったということで、その様子を拝見してみることにしましょう。

第123回日本医師会臨時代議員会 会長あいさつ(要約)(平成22年11月5日日医ニュース)より抜粋

(略)
 私たち執行部が四月一日に誕生いたしまして,その後の経過を簡単に申し上げますが,私が会長選で獲得したのは,三分の一をわずかに超える票数でした.執行部の先生方のなかには,私が推薦しなかった方も入ったため,いろいろなところからねじれ執行部であるとの批判を受け,一体この日医がどのような道をたどるのかと,大変危うく報じられたことを覚えております.しかし,本当に幸いなことに,この執行部は日本すべての医師会の推薦を受けた先生方で構成することが出来,大変歴史的な執行部になったのではないかと感じているところでございます.
(略)
 私はよく「小沢派だから,お前は除外された」というようなことを言われておりますが,決してそうではありません.私たちは,日医が政治に左右されるようであれば,国民が不幸になるという信念の下に行動しているつもりでございます.
(略)
 今,私たちが求められているのは,当面の問題に対してどういう行動をするかということだと思いますが,小泉内閣の時代,それ以前からずっと続いていた医療費削減が原因となり,地域の医療が崩壊しております.この地域医療の崩壊を一日も早く直すこと,正すことが私たちの使命でもあり,全身全霊このことに力を注いで対策に取り組もうと思っております.
 日本の国は自由主義,自由経済の国であります.しかし,社会保障,医療制度に対し,官僚による医療を束縛しようという態度が見られた時には,医療崩壊が起こります.私たちが国民を守っているという姿が,国民の目に映るような,国民を味方に出来るような方法も必要だと考えているところでございます.
(略)
 私は,地域医療を守るためにということだけではなく,医師免許,特に保険医の免状を取る時に,地域の医師会に全員入っていただけるような法律改正もお願いしなければいけないと思っております.勤務医と診療所の医師が,同じ医師でありながら,全く違う人種,全く違う仕事をしているかのような印象をマスコミがつくってしまいました.
 しかし,私たち医師というものは,生命倫理に基づいて行動しているわけでございます.「ヒポクラテスの誓い」のなかにも,医師というものは人々を病気の苦しみから救う職業である,神から与えられた聖職であるということが,はっきり記されておりますし,第二回世界医師会総会で,この主旨は「ジュネーブ宣言」として採択されています.もしその考えに立たなければ,医師会は単なる職業別組合と同じになってしまうだろうと思います.
 勤務医であろうと,診療所の医師であろうと,心を一つにして,いろいろな難関と闘っていかなくてはなりません.地域医療は,医師会と都道府県等の行政が一緒になって,構築することが大切と考えております.これはあくまでも私の私案として申し述べました.
(略)

第123回日本医師会臨時代議員会 政治に左右されない国民のための強固な医師会を目指す(平成22年11月5日日医ニュース)より抜粋

 第123回日本医師会臨時代議員会が10月24日,日医会館大講堂で開催された.
 当日は,一般会計決算の件など,四議案の審議が行われ,可決成立したほか,代議員から出された様々な質問・要望に対して,執行部から回答を行った.
(略)
 (七)日医広報のあり方について(医療推進協議会の今後)
 久山元代議員(京都府)の日医広報のあり方について(医療推進協議会の今後)の質問に対して,石川広己常任理事は,京都府での「国民医療推進協議会」の開催に謝意を述べたうえで,本協議会が国民と共に国民医療の向上に向けて活動するための重要な組織であるとの認識を示し,協議会の実際の活動は,地域に密着した活動も重要であることから,日医でも今後,必要に応じて,時機を逸せず協議会を開催していきたいとの考えを示した.
 さらに,日医を理解してもらうには,まず,医療界全体,勤務医も含むすべての医師に日医の政策を理解してもらうことが重要だとし,現在,日医の新たな広報戦略として,日医ホームページを一新し,より日医の主張が広く伝えられるよう検討中であることを報告した.
(略)
 (九)弱くなった医師会を強くするための提言
 加藤智栄代議員(山口県)から示された「弱くなった医師会を強くするための提言」に対しては,今村聡常任理事が回答した.
 同常任理事は,勤務医の労働環境の改善のためには,現在の低医療費政策の下,過重労働せざるを得ない医師への十分なサポートが重要であると指摘.その解決策として,今年度の「勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会」の活動内容を紹介した.さらに,「医師の働き方のガイドライン策定」に向けて,検討していることを報告した.
 「医療への司法の介入」に関しては,理不尽な医療裁判等には,医師会をはじめ医療界が迅速に見解を表明することが,患者,国民に医療の正しい姿を理解してもらうためにも極めて重要であるとし,今後も迅速な対応を心掛けていくとした.
 「医師会の異動手続きの簡素化」については,現在,都道府県医師会の意見をアンケート調査中であるとしたほか,「勤務医の会費減免」については,会務の効率的運営,事業内容や収入・支出も考慮に入れなければならず,長期的課題だとして,理解を求めた.
(略)

ごくごく主観的判断に基づいて大幅に端折らせていただきましたけれども、会長の発言の中にも私案として「医師免許,特に保険医の免状を取る時に,地域の医師会に全員入っていただけるような法律改正もお願いしなければいけない」なんてとんでもない発言が飛び出している、これを受けてか質疑応答の中でもいかに日医の存在価値をアピールし、会員を増やすかという話に力が入っている印象を受けます。
日医としてはよほど各方面から「誤解」されているという危機感があるのでしょうが、失礼ながら政治にしても二大政党制なんて時代がやってきているような現代、20万人以上の医者が一つの価値観を中心にまとまって行動するなんてことはちょっと考えにくいんじゃないかと思いますし、ましてやその中心がこれだけ誤解数多(笑)と自ら認めている日医となれば誰しも躊躇せざるを得ないのではないでしょうか?
そもそも全ての医者が一致団結して立ち上がるとなれば例えば大野事件などに代表されるように、医者自身の健康なり権利なりに対する侵害に対して断固戦う時ではないかと思うのですが、当の日医はと言えば相も変わらず国民のために頑張っていきますと明後日の方向を向いて演説をしているわけですから、それは会員からも見放されるのは当然でしょう。

原中会長は「医師というものは人々を病気の苦しみから救う職業である,神から与えられた聖職であ」って、「もしその考えに立たなければ,医師会は単なる職業別組合と同じになってしまう」と言い切っていますけれども、そんな言葉は一度でもまともな職業別組合として機能したことがある組織にして初めて口にして良い言葉であって、もし自分らはそんな「低レベル」の存在ではないなどと考えているのならとんだ思い上がりです。
そもそも毎年毎年会員から巻き上げた金を使って多額の献金をして、年がら年中医療費を増やせと日医が叫び続けるよりも、現場の医者達がもう無理、勘弁してくれと行動に移した方がはるかに政治的影響力を発揮してしまったという実例がすでに存在している時代に、日医が組合的機能を果たしているなどと考える人間がどれほどいるでしょうか。
日医と言えば一応開業医の利権団体ということになっていますが、地方で医師会を支えているような開業医の先生方ほど実際には日医というものに不満が溜まっていて無茶苦茶に執行部の悪口ばかり言っている、そういう現実を無視したまま「医者は全員医師会に入るように法改正を」などと言ったところで、よほど上納金に飢えているのだろうなとしか受け取られない話ですよね。

近年の日医という組織を見ているとまさに崩壊していく組織が辿る道筋そのものと言いますか、さんざん医者を使い潰した挙げ句誰からも相手にされなくなった田舎の公立病院が「医者が全く来ないじゃないか!国が医者を強制配置してくれないと困る!」なんて大騒ぎしているのと全く同じ構図で、およそ自ら何が悪かったのかと顧みるところがない組織はこうまで堕落するのかと改めて感心するしかありません。
良きにつけ悪しきにつけ存在感だけは発揮していた武見時代ならまだしも、今どき何らの実権も影響力もない日医が他人に何かを主張したいのであればその主張の内容で勝負しなければ仕方がないでしょうに、肝心の中身が一向に代わり映えしないということであれば求心力が回復する見込みもあるはずがないですよね。
近々発表するという日医の医師偏在対策なるものがどのような内容となるのか、そうした視点からも大いに注目されるところでしょう。

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