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2010年11月15日 (月)

朝日捏造報道問題 問題記者の退場は早く?!

先日以来当「ぐり研」でも何度か取り上げている朝日新聞社の捏造報道問題ですが、じわりじわりと社会的にも認知度が広がっているようです。
今回まずは週刊ダイヤモンドさんのまとめ記事から紹介してみますけれども、朝日にしてもいつものアサヒったというだけの話で軽くスルーしてくれればいいものを…と、この事態を苦々しく見守りつつ黙殺しているのかも知れませんね(苦笑)。

朝日新聞のガンワクチン報道 医療界に広がる反発と懸念の根拠(2010年11月11日週刊ダイヤモンド)

 朝日新聞の報道が、大きな波紋を呼んでいる。

 コトの発端は、10月15日付け朝刊1面の記事である。内容は次のとおりだ。東京大学医科学研究所(医科研)附属病院で行ったガン治療ワクチンの臨床研究(人を対象として行う医学上の研究)中、2008年に膵臓ガンの患者で起きた消化管からの出血が「重篤な有害事象」と院内で報告された。医科研はこの有害事象を、同種のワクチンで臨床研究を行う他の病院に知らせず隠蔽した――という。

 また記事は、ワクチン開発者である中村祐輔・東大医科研ヒトゲノム解析センター長が、自身も10%強の株式を保有する、東大発ベンチャーのオンコセラピー・サイエンスのガンワクチン事業に不利に働かないよう情報を隠した、との印象を受けるような構成になっている。さらに朝日は翌16日の社説においても「東大医科研−−−研究者の良心が問われる」と題し、前日の記事に基づいてナチスの人体実験を例に批判記事を掲載した。

 これに対して、まず清木元治・東大医科研所長が「事実誤認である」と真っ向から反論。記事について、大きく次の2点を主張し、訂正・謝罪を求めた。

 第一に、問題とされた消化管からの出血は、もともとかかっていた末期の膵臓ガンで起こりうる周知のリスクであり、その後の治療で出血は治癒したこと。

 第二に、今回のケースのように単独施設で実施する臨床研究の場合、他施設への報告義務はそもそもない。それでも予想外の異変や、治療の副作用などは倫理上知らせるが、今回はそれに当たらないとの判断があったこと。

 加えて、記事中の「重篤な有害事象」は一般に “非常にやっかいな事態”を想像させるが、医学上は国際的に「薬剤投与後の患者に起こるあらゆる好ましくない医療上のできごと(当該薬剤との因果関係は問わない)」として理解されている点も強調。ワクチンの開発者が中村教授でない点や臨床施設数など基本事項の誤りについても指摘した。

 また、当事者以外の患者団体や学会からも、医科研への援護射撃が続いている

 まず10月20日に、41ものガン患者団体が記者会見を開き「事実をわかりやすく伝えるよう冷静な報道」を求め、国のガンワクチン向け臨床研究の予算が削減されないよう訴えた。22日には、日本癌学会と日本がん免疫学会が朝日の記事を「大きな事実誤認に基づいて情報を歪め、読者を誤った理解へと誘導する内容」との抗議声明を発表。

 また27日には、帝京大学の小松恒彦・帝京大学教授を発起人代表とする「医療報道を考える臨床医の会」が発足し、記事の訂正・謝罪などを求める署名活動を開始した。29日には、日本医学会が「事実を歪曲した朝日新聞ペプチドワクチン報道」と題して、前述した2つの学会の抗議声明の支持を表明し、中村教授の人権侵害として朝日を非難した。

 一方、朝日側は「記事は薬事法の規制を受けない臨床研究には被験者保護の観点から問題があることを、医科研病院の事例を通じて指摘したもの」とのコメントを繰り返してきた。11月10日になって、朝刊17面の「オピニオン」(通常は読者や有識者の声を載せるコーナー)で、前述の経緯などとともに、福島雅典・先端医療振興財団臨床研究情報センター長のインタビューを掲載した。趣旨は、医師主導の臨床研究と薬事法下にある治験の二重基準は改めるべき、というもので、聞き手は一連の記事を書いた編集委員でなく、東京本社の科学医療エディター(部長級)が務め、“客観性”を押し出している。

 これら朝日の“反論”に、医科研側は不快感をあらわにする。「当初の記事は、どう見ても日本の臨床研究の仕組みを批判する主旨ではなかった。議論のすり替えだ」(医科研総務)。両者の意見対立は一向に収まりそうにない。

 翻って、臨床研究と治験の二重基準の問題性は、指摘されて久しい。この記事を機に一本化に向けた議論が進むかは未知数だが、ガンワクチンを巡っては明らかなマイナスのダメージが広がっている

 たとえば、朝日が取材して回ったガンワクチンの臨床病院では「患者のエントリー数が、過去3ヵ月で従来より3割減少しており、研究の停滞にもつながりかねない」と中村教授はいう。また朝日報道の直後、10月21日に内閣府総合科学会議で実施された来年度の概算要求における科学・技術関係施策の優先度判定において、318事業のうち2件のみが最低評価(実施すべきでない)を受け、その1つが厚生労働省の「ガン治療ワクチン開発(29億円)」だった。 11年度予算における1兆円超の「元気な日本復活特別枠」のヒアリングが今週始まるが、「ガンワクチンを含むライフサイエンスが含まれるかは微妙な情勢で、報道が影響しないとは言い切れない」と民主党関係者は語る。

 ちなみに、記事中で名指しされたオンコセラピー社や中村教授は、来週にも名誉毀損による損害賠償請求を起こす見通しだ。朝日の再反論に注目が集まる

朝日の反論なるものがさらに火に油を注いでいるということが丸わかりという話ですけれども、注目されるのはこうまで大騒ぎになっているこの捏造報道問題に関して、そもそも勝手に火のないところに放火して回った朝日がこのまま黙殺を決め込むのか、それとも人並みに社会的責任を果たすべく謝罪なり再反論なりをしてくるのかでしょう。
医療ガバナンス学会の方で「その後の続報」というものをまとめていただいているのですが、これが見ているとなかなか面白い話が並んでいて一読いただきたいのですが、週刊ダイヤモンドさんとなるべく重ならない範囲で抜粋させていただくことにしましょう。

朝日新聞 がんワクチン報道の波紋(2010年11月6日医療ガバナンス学会)より抜粋

(略)
【各地から抗議が殺到】
 10月15日のスクープ記事を受けて、最初に動いたのは東大医科研の清木元治所長です。18日、医療ガバナンス学会が発行するメルマガMRICに『朝日新聞「臨床試験中のがん治療ワクチン」記事に見られる事実の歪曲について』を寄稿しました。
http://medg.jp/mt/2010/10/vol-32720101015.html

 それに続いたのが、41のがん患者団体です。20日、厚労省記者クラブで『がん臨床研究の適切な推進に関する声明文』を発表しました。記者会見では、多くの患者・家族が不安になったことを紹介し、臨床研究の予算が削減されないこと、被験者保護のための情報開示、さらに「誤解を与えるような不適切な報道ではなく、事実をわかりやすく伝えるよう、冷静な報道」を求めました。早い段階で、患者が主体的に動いたことは、医療界が変化しつつあることを象徴しているように感じます。
(略)
 その後、27日には、帝京大学の小松恒彦教授を発起人代表とする「医療報道を考える臨床医の会」が発足し、署名活動が始まりました。署名開始後4日間で2000筆以上の署名が集まっています。
(略)
 更に、11月1日には東京都保険医協会が抗議声明を発表。これまで、朝日新聞記事を擁護する医療関係者はなく、今後も抗議は続きそうです。

 今回の抗議活動の特徴は、患者会、Captivation Network、医療報道を考える臨床医の会などのインフォーマルなネットワークが早期に動いたことです。民をベースにしたボトムアップの合意形成システムが構築されつつあるようです。

【朝日新聞の対応】
 では、朝日新聞はどのように対応したのでしょうか。

 まず、がん患者団体の抗議を21日の朝刊で報じました。しかしながら、そのタイトルは『患者団体「研究の適正化」』。患者団体が訴えたことは、患者への適切な情報公開、がん研究予算削減阻止、そして「報道の適正化」でした。朝日新聞は、患者の抗議を自らの都合に良い形でねじ曲げて報じました

 ついで、22日の日本がん学会などの抗議に対しては、23日になって『医科研記事、癌学会など抗議 朝日新聞「確かな取材」』との見出しで報じました。読売・毎日・産経・日経・共同通信などは、前日に記事を配信しており、朝日新聞の対応の遅れは際だちました。また、朝日新聞の広報部が「確かな判断」や「見解の相違」ではなく、「確かな取材」とい良い方に留まったことは示唆に富みます。記事の解釈ではなく、取材の手続きの正確さを保証したに過ぎません

 ちなみに、22日の読売新聞の記事では、「朝日新聞が報じていなかった問題」と、朝日新聞を暗に批判しました。読売新聞の変わり身の速さが際立ちました。新聞各社は、朝日新聞のスクープ記事に追随した記事を書いており、今更、否定しにくかったでしょう。記者たちは、朝日報道を読んで違和感を抱いたらしいのですが、トクオチを恐れるデスクを説得するには至らなかったようです。横並び新聞報道の構造的問題を示しています。

 その後、朝日新聞が、この件を報道したのは、28日の『教授の人権侵害と朝日新聞に通知書 東大医科研報道』だけです。11月1日現在、朝日新聞記事を捏造の疑いありと訴えたCaptivation Networkの記者会見や、「医療報道を考える臨床医の会」などのインフォーマルネットワークの活動は全て無視されています。

【メディア・ネットワーク】

 一方、新聞・テレビ以外のメディアは朝日新聞に対して批判的です。一番、最初に問題を取り上げたのは日刊ゲンダイです。19日に『がん治療ワクチン報道で朝日新聞と東大が火花』という記事を掲載しました。同紙は28日にも『1面デカデカスクープ報道にアチコチから怒りの声明』との記事を掲載し、朝日批判の論陣を張っています。これ以外に、週刊現代、週刊新潮、J-Castニュースなども同様の記事を掲載しました。電車の中吊りなどでご覧になった方も多いでしょう。

 医療界に関しては、メディファックス、メディカル・トリビューン、日経メディカルオンライン、エムスリー、キャリアブレイン、MRICなどが連日のように問題を報じました。このような医療メディアを通じ、多くの臨床医が問題を認識したのではないでしょうか。筆者が参加している医療関係のメーリングリストでも、繰り返し話題になりました。

 他のオンラインメディアも動きました。例えば、JMMや楽天の「内憂外患」でも繰り返し取り上げられ、金融やITなどの他業界にも広がりました。ネットやメールメディアが情報のハブとして機能したように感じます。

 

ツイッターが果たした役割も無視できません。「医療報道を考える臨床医の会」は、ツイッター(@iryohodo)を用いて積極的に情報を発信しました。このような発信を通じ、メディアのあり方自身に問題意識を持つ上杉隆、平野啓一郎、内田樹、岩上安身氏などが問題を認識し、上杉氏(@uesugitakashi)、岩上氏(@iwakamiyasumi)は、ツイッター上で応えました。このようなやりとりを通じて、彼らの followerが問題を認識しました。

 このように、今回の事件ではマスメディアが動かなかったにも関わらず、様々な媒体が有機的に連携することで、関係者の認知度があがりました。福島県立大野病院産科医師逮捕事件以降、医療界は様々な事件を経験してきました。このような試練を通じ、医療界と社会を繋ぐメディア・チェーンが形成されつつあることを実感します。
(略)

注目していただきたいのは今回の事件、当初の朝日の報道によれば「東大医科研がこんなとんでもないことをやっている!これでは患者が危ないではないか!」という論調であったものが、これに何より強烈な反撃を行っているのが実は医科研など批判される側というよりは、患者団体や現場の臨床医といった朝日のシナリオ的には被害者に近い立場の人たちであったということですよね。
そしてこれだけ各方面から非難囂々、誰も擁護する人間などいないほどあからさまな状況にありながら、例によって大手マスコミはこの問題を真っ正面から取り上げるつもりは更々ないらしい、むしろ朝日の捏造を隠蔽しようと協力しているかのような態度が目立つということが明らかです。
そしてここでも例によってこの問題を世間に広げたのは名もなきネット住民の個人的な努力の積み重ねであったということなのですから、何のことはないいつものようなマスコミ業界の醜態が今回もまた繰り返されただけであるかにも思えます。
医療ガバナンス学会の記事では今回の「幻のスクープ」を物した記者達が産経から引き抜かれた「スター記者」達であったこと、経営厳しく早期退職を推奨しているような新聞社内でこれら「外様」組がスクープをあせっても仕方がないのでは…と推測していますが、そうであるならば今後同じような構図の事件が二度、三度と起こっても不思議ではないということになりますよね。

【朝日新聞のガバナンス】
 この事件の真相は不明です。真相解明には、朝日新聞社、あるいは第三者機関による調査を待たねばならないでしょう。

 ただ、現時点で朝日新聞の記事は捏造の疑いが強いと言わざるを得ません。例えば、中村祐輔教授は朝日新聞からインタビューを受けていませんし、東大医科研から朝日新聞への回答と記事内容は全く異なります。また、中村教授との利益相反を示唆され、報道後に株価が暴落したオンコセラピー・サイエンス社は朝日新聞から一切の取材を受けていません。今回の記事を、当事者から直接取材することなく、記者たちの「先入観」に基づいて組み立てたのですから、大問題です。

 これでは、朝日新聞の自作自演と言われても仕方ありません。その構造は、1989年に問題となった珊瑚記事捏造事件と酷似します。この事件では関係者は処分され、一柳東一郎社長(当時)は辞任しました。また、不起訴となったものの、カメラマンは刑事告発されています。

 知人のメディア関係者は朝日新聞の問題点を象徴していると言います。今回の記事を書いた出河雅彦編集委員、野呂雅之論説委員は、1983年産経新聞の同期入社組です。その後、朝日新聞に異動します。朝日新聞が即戦力確保のため、他社からスター記者を引き抜くのは有名です。出河氏は医療分野で、野呂氏は大阪本社社会部のデスクとしてイトマン事件や防災問題で活躍しました。このようなスター記者たちが、独自に進めた取材に対し、後輩の記者たちやデスクがチェック出来たか、甚だ疑問です。編集局長は、社内でのどのような議論の末、記事掲載に至ったかを説明する義務があるでしょう。
(略)
 私は、今回の記事は氷山の一角に過ぎないと考えています。探せば、同じような報道は沢山あるのではないでしょうか。例えば、2007年出河氏は『薬の臨床研究、国が補助金打ち切り 慶大医学部長、財団と二重受給』とのスクープ記事を発表しました。小泉改革で運営交付金が減少し、大学病院は臨床研究の継続に苦労していました。このような医療現場の実情を無視して、「細かい手続きの不備」を批判しました。実害を被った患者はいませんでした。今回と全く同じ構造です。当時、患者は勿論、医療界からも記事批判の声はなく、この報道以降、大学病院の臨床研究は失速しました。

 朝日新聞は医療事故報道に熱心です。その中心は出河氏。著書『ルポ医療事故』(朝日新書)は、2009年の科学ジャーナリスト賞(日本科学技術ジャーナリスト会議)を受賞しました。その中で、出河氏は医療機関の隠蔽体質を糾弾し、医療事故から逃げない、隠さないことの重要性を訴えました。私も彼の主張に賛同します。今回の記事は、医療現場に大きな被害を与えた「報道事故」です。真相を究明し、再発防止に努めるのは朝日新聞の義務です。彼らの矜持が問われています。

今回の捏造報道は決してたまたま起こったわけでもなんでもなく、むしろ今までの経緯を考えれば必然とも言っていいものであった、そうであるとすればこれを防ぐことも可能であったのではないかという考えは多くの人の抱くところではないかと思うのですが、朝日がこの一件に対してどういう総括をしているのかが全く見えてこないわけです。
マスコミ各社はひと頃(今も?)盛んに「リピーター医師」なんて言葉を作り上げて盛んに喧伝していましたけれども、それではこういう「リピーター記者」に対してマスコミ業界がどのような自浄作用を働かせているというのか、むしろ一面トップに取り上げて大々的にキャンペーンを張ろうとするがごとく強力に社をあげて後押ししているのではないかとも思えますよね。

朝日もこうした世間の声を気にしたということなのか、11月11日の「オピニオン」では第三者として福島雅典・臨床研究情報センター長のインタビュー記事「臨床試験を考える」の掲載という形で、「決して医科研バッシングではないんですよ。薬事法の規制を受けない臨床研究ってダメでしょと言いたいんですよ」との自説を擁護させていますが、ただ他人に喋らせているだけで「考える」も何もないものですよね(苦笑)。
ちなみにこの朝日新聞、かつて社説で「乱心乱療 問題医師の退場は早く」なんて記事まで書いているわけですが、せっかくですから「問題記者の退場は早く」された方が御社のためにもなるんじゃないかと思いますけれどもね…もちろん、きちんと社会に対する説明と謝罪を済ませた上での話ですが。

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コメント

ワクチンを打たぬ日本人は「疾病をまき散らす迷惑な国民」か
2010.11.10 10:00

 インフルエンザ、三種混合ワクチン(MMR)、BCG―かつて義務であった日本のワクチン接種は「努力義務」に変わり、日本はあっという間に“ウイルス大国”へと転落した。その背景には、少数の事故例を必要以上に大袈裟に報じるマスコミの過剰反応がある。元フジテレビキャスターで国際医療福祉大学大学院教授の黒岩祐治氏はこう書く。

******************************
 意外かもしれないが、日本は専門家の間ではずいぶん前から「ワクチン後進国」と呼ばれている。娘をアメリカに留学させようとした友人が語ってくれた。

「アメリカでは予防接種は絶対にやっておかなければならないことなんですね。書類に予防接種をいつ受けたか書かなければいけないから急いで受けさせました」

 日本で「努力規定」とされている定期接種ワクチンは、ジフテリア、百日ぜき、破傷風、BCG、ポリオ、はしか、風疹、日本脳炎の8種類。これに対して米国では、それら以外に肺炎球菌、インフルエンザ、おたふくかぜなども含まれ16種類。WHOがすべての地域で推奨するワクチンであっても、日本では定期接種になっていないものがたくさんある。

 つまり、日本人は“疾病をまき散らす、はた迷惑な国民”と見られても仕方がないということだ。

 そもそもどうしてこんな事態になったのか。国の施策の一貫性のなさこそ最大の問題ではあるが、マスコミはワクチン後進国になった責任を一方的に国に押し付けるわけにはいかない。当事者でもあった自らの歴史的事実を総括しなければ、この問題を克服することはできないからだ。

 私たちが子供の頃は学校でインフルエンザワクチンの集団接種があった。腕を出して自分の番を待つ、あのドキドキ感は今も記憶の中に鮮明に残っている。62年に始まったものだが、今は行なわれていない。

 1970年代後半からインフルエンザワクチンによる副反応事故が相次ぎ、各地で予防接種禍訴訟が起こされた。1980年代後半にはその判決がマスコミでも大きく取り上げられた。

「恐るべきワクチン禍」
「予防接種で脳症?」

 刺激的な見出しが躍り、ワクチンの危険性が強調された。ワクチンの副反応事故は、元気だった子供がワクチンを打ったことによって突然に重篤な状態になったり、死亡したりする。衝撃は大きい。

 そんな中、1987年には、厚生省の「インフルエンザ流行防止に関する研究班」が予防接種の有効性に疑問を投げかける報告書をまとめた。ワクチンを接種した地区と、しなかった地区を比較したが、患者発生率に差がなかったというのである。副反応の危険があるのに、効果のないワクチンを打つとはどういうことか?

「だれのためのワクチン注射か」
「疑問符ついた学童『集団接種』」

 マスコミではワクチンに否定的な論調が続いた。

 その結果、国はこれまでの集団接種を同意方式に変えた。さらに94年には打ちたい人だけ打てばいいという任意接種にして、集団接種は消えた。これにより、国の政策は大転換した。それは同時にワクチン後進国へのスタートともなった。

 そもそも任意接種とはなんだろうか? 集団接種の場合(国が努力規定とした定期接種も同じだが)病気が蔓延することを社会全体で防ごうという社会的防衛であり、任意接種はあくまで個人を守るものだという。本質的に予防接種とはなにか? その理念の混乱はここから始まった。

※週刊ポスト2010年11月19日号
http://www.news-postseven.com/archives/20101110_5456.html

投稿: マスコミのまき散らした害悪 | 2010年11月15日 (月) 12時00分

医療報道を考える臨床医の会です。今回はブログで取り上げて下さり、誠にありがとうございます。

今回の問題の本質を全て把握されておられ、感銘致しました。

当会では「私たちの主張」で、各団体の抗議声明をまとめて掲載しております。

今後とも、この話題を取り上げて下されれば誠に幸甚でございます。宜しくお願い申し上げます。

投稿: 医療報道を考える臨床医の会 | 2010年11月15日 (月) 22時46分

お忙しい中、わざわざのコメントをいただき恐縮です。
おかしいことはおかしいと、現場からきちんと声が上がるようになったのは頼もしく思っています。
診療共々お忙しいでしょうが、どうか頑張ってください。

投稿: 管理人nobu | 2010年11月16日 (火) 12時51分

消化器病学会もきましたが、朝日はどこまで黙殺するつもりなのかしら?

朝日新聞の記事に対する日本消化器病学会からの抗議声明
http://www.jsge.or.jp/member/oshirase/topics/asahi_kougi.html

投稿: 通りすがりのただの人 | 2010年11月16日 (火) 22時57分

「清木所長が医科研のウェブサイトに掲載している文章で、記事中の関係者のコメントを「ねつ造」などと述べていることについて、事実に反し、社の名誉を傷つける記述だと指摘し、撤回を求めている」
いや正直その発想はなかったわw

東大医科研の抗議、本社が反論回答書 臨床試験巡る記事
http://www.asahi.com/health/clinical_study/101126_honbun.html
朝日新聞社からの回答書
http://www.asahi.com/health/clinical_study/101119_kaitou.html

投稿: 朝日の反論 | 2010年11月27日 (土) 10時09分

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