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2010年11月 1日 (月)

臨床研修制度も定着してきましたが

当初はさんざんな言われようだった(新)臨床研修制度も今やすっかり定着してきて、皆さんそれなりに対応してはいるようですけれども、無論制度の抱える問題点がすっかり解消されたなんて状況にはほど遠く、むしろそろそろ抜本的な改革も必要なのではないかと言われている昨今です。
この制度の改革というもの、そのゴールとして地域医療の問題点解決であるとか医師不足の解消であるとか、要するに需要の側のロジックで行っていくべきなのか、それとも研修医にとってよりよい研修とは何なのかという供給の側のロジックで行われていくべきなのかも議論の余地があるところだと思いますが、少なくとも現段階までの話を見る限りでは研修医側の声はさほどお上の耳に届いているようにも思えないのが気がかりなところですよね。
そんな中で少し前にこんな記事が出ていまして、厚労省の医師集約化という意向を受けてか大学病院もずいぶんと強気に出たなあと感じていたものですが、まずは記事から紹介してみましょう。

来年度の研修医の募集定員、大学病院で初の増加(2010年9月15日CBニュース)

 厚生労働省は9月15日、今年度の研修医採用実績と来年度の臨床研修制度の実態体制を公表した。それによると、来年度の研修医の募集定員は1万900人(今年度比201人増)。このうち大学病院の占める割合は47.1%で、新医師臨床研修制度が始まった2004年度以降、初めて増加に転じた。一方、研修医を募集する基幹型臨床研修病院と大学病院の数は合計1038施設(同21施設減)で、2年連続の減少。定員全体に占める地方(東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡以外)の割合は60.2%で、ほぼ横ばいだった。

 来年度の募集定員1万900人のうち432人分は、募集定員20人以上の受け入れ病院に設置が義務付けられている小児科・産科の研修プログラム(定員各2人以上)に関する特例枠。これまでは産科か小児科のどちらかを選ぶことができたが、来年度から両方の研修を実施しなければならなくなった代わりに、各病院はプログラムの定員(4人)分を総定員に加算できるようになった。今回、定員数が増加した背景にはこうした影響があるとみられる。
(略)

基本的に厚労省としては大きな病院に医者を集中したいという意向がかねてあるわけですから、とりわけ他施設に医者を派遣しているようなアクティブな基幹病院が大勢の医者を抱え込むのはウェルカムである一方で、田舎の公立病院などが下働き的に研修医を呼び込むようなことはNGというのが本音ではあるのでしょう。
これを受けて厚労省の諮問機関である医道審議会では、研修医の定数を制限することで各地の医師数をコントロールしようと試みているようですが、定数是正措置も過渡期であるということで、今のところまだまだ完全な管理下に置くには至っていないというのが実情であるということですね。
ところで大学病院と言えば何となくどこにもマッチングしなかった医者の最後の落ち着き先という印象もありますけれども、いくら国の意向を受けての事とは言えこうして順調に定員だけ増加させていって果たして実は伴うのかと疑問にも感じますが、やはりそうなったかと言う記事がこちらに出ています。

臨床研修、大学病院の割合最低に 「医局離れ」進む(2010年10月28日47ニュース)

 新人医師が2年間病院で学ぶ「臨床研修制度」で、2011年度に大学病院で研修する人の割合は47・9%(3828人)と過去最低になることが28日、分かった。

 医師になる予定の医学部学生らと病院の双方が希望を出し、日本医師会などでつくる協議会が集計した結果、希望者8331人中、7998人の研修先が内定。大学病院の割合は、制度が始まった04年度から10・9ポイント減少した。民間病院など大学病院以外で受ける人は52・1%(4170人)。

 新制度導入で、医学生の希望が研修内容や待遇、生活環境が良い都市部や私立病院に集中したため、国は昨年5月、地域への医師派遣機能を持つ大学病院の定員枠を優遇するなどの見直しを実施。大学病院側も研修プログラムを充実させるなど工夫しているが、「医局離れ」が進んでいる実態が浮かび上がった。

臨床研修、大学病院離れ進む 地方の割合最大52.4%(2010年10月28日日本経済新聞)

 厚生労働省は28日、来年度の医師臨床研修を希望する医学部生などのうち、東京や大阪など都市部の6都府県以外で研修を受ける割合が 0.1ポイント増の52.4%となり、過去最大となったと発表した。大学病院で研修を受ける割合は1.8ポイント減の47.9%で過去最低。大学病院を離れ、地方の病院での研修を希望する割合が増えている

 医師の臨床研修は2004年度から義務化され、研修先は「医師臨床研修マッチング協議会」(東京・港)が医学部生と臨床研修病院などの希望をコンピューターで組み合わせて決めている。

 同協議会によると、来年度に臨床研修を希望した医学部生などは131人増加して8331人で、うち7998人(96.0%)の研修先が組み合わせで内定した。

 6都府県(東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡)以外での研修が決まったのは4194人(52.4%)。都道府県別では東京が1409人で最も多く、大阪が624人など都市部の6都府県で半数弱を占めるが、6都府県以外で23県が前年度より増加した。

以前は大学病院での研修が大半だったが、臨床研修を義務化した04年度は希望を組み合わせる方式を採用、大学病院の割合は58.8%に急落した。06年度に48.3%と半数を初めて割り込んだ後は増加傾向が続いたが、前年度の49.7%から再び減少に転じた。

研修医内定者、地方の割合が過去最高―今年度マッチング結果(2010年10月28日CBニュース)

 医師臨床研修マッチング協議会は10月28日、来年春から臨床研修を開始する医学生らの研修病院の内定結果(研修医マッチング)を公表した。登録者 8331人のうち内定したのは7998人で、内定率は前年度と同じ96.0%。東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡の6都府県(都市部)を除いた地方の内定者の割合は52.4%(前年度比0.1ポイント増)で、新医師臨床研修制度が導入された2004年度(03年度マッチング)以降で過去最高となった。一方、内定者全体に占める大学病院の割合は47.9%で、前年度に比べ1.8ポイント減少し、過去最低だった。

 研修医マッチングは、次の年の春から臨床研修を受ける新人医師と研修病院のそれぞれの希望をコンピューターで組み合わせるもので、双方の希望が一致した場合に内定先が決まる。今年度のマッチングは、9月16日から10月14日まで希望順位の登録を受け付けた(主に医学生と病院)。

 地方の内定者数の増加を見ると、埼玉が40人で最も多く、次いで岡山(35人)、愛媛(22人)、兵庫(20人)、鳥取(19人)などと続いた。一方、都市部では東京、京都、大阪で増えたが、これは募集定員20人以上の研修病院が設置する小児科・産科プログラムの定員数(4人分)を来年度から総定員に加算できるようになった影響とみられる。
 このほか、大学病院(114施設)では過半数の61病院で内定者数が増加したが、45病院では減少した(8病院は前年度と同数)。

 地方の内定者の割合が増加したことについて、厚生労働省の担当者は「(制度見直しで)都道府県の定員に上限ができたことで、各病院の取り組みに個性が出てきたからではないか」と説明。一方、内定者全体に占める大学病院の割合が減少したことに関しては、過半数の病院で内定者数の増加が見られることから、「個々の病院によって原因は異なると考えている」としている

考えようによっては現状で定員と実際の内定数がほぼ同じ比率になったわけですから、これが正常な状態であるという考え方もあると思いますけれども、以前は大学病院での研修が大半だったと言っても、確かにとりあえず大学病院に配属はされるものの実際にはすぐに外の病院に出される人間も多かったわけで、初期研修を通じて大学に残る人間の数を比較すると減っているとばかりも言えないような気もするところです。
このあたりは昔と今とで研修システムが全く変わっているわけですから、きちんと実態に即したデータで比較しないと単に数字だけを追っていては読み誤るということになりかねませんが、逆に故意にデータを曲解して「だから○○にしなければならないのだ!」と言いたい人にとっては好都合ではあるのかも知れませんよね。
ただいずれにしても募集定員が1万人を超えているのに対して実際の採用実数が8000人そこそこですから、一部の人気病院以外では希望さえすればおおむね枠は空いている売り手市場とも言えるわけで、今後定数枠が実数寄りにコントロールされてくるにつれて次第に学生にとっても希望先の選択がシビアなものになってくるんじゃないかと思えますね。

昨年末に研修医の待遇に病院間で極端な差があるなんてことがちょっとした話題になっていましたが、これに対して厚労省側では研修医に過度の?高給を出している病院には補助金支給を減らすという対応を決めたという経緯がありました。
研修医とは言っても現実には院内の一労働者であることには変わりがないわけで、現場から見れば売り手買い手双方の需給バランスで価格が決定されるのは当然だとも思えますが、逆に制度のタテマエからすれば研修医はお勉強をしているのであって、生活に困らない程度の給料は保証するが単なる労働力として使われて良いものではないと言うことにもなっているわけですよね。
定数にしても給与問題にしても制度のタテマエと現場の実情がひどく乖離しているという事実があるとして、さてタテマエの側に現実を近づけるべく努力すべきなのか、それとも現実に合わせて制度を変えていくよう動くべきなのかは考えどころですが、その考える過程で誰の意志を一番尊重していくべきなのかということも重要ではないかと思いますね。

そういう点で見ていて最近の大学で面白いなと思うのは、一昔前には大学医局と言えば強権の象徴みたいなイメージで語られていたところがありましたけれども、今は何しろどこからもここからも医者を送ってくれと言ってくるばかりで使える手駒が全く無い、そんな状況だから若手の連中も含めて医局内の医者に対してひどく下手に出ているところがあるということです。
もちろん本人の意向に逆らってあっちに行けなんて言い出した日にはあっと言う間に総スカンですから、数ある関連病院の中でも各人の希望に最大限配慮して人を送っているし、逆にスタッフに対してそうした配慮が出来ない病院とは縁切りせざるを得ないということなんですが、こういう流れが今やぺーぺーであったはずの研修医の方に対しても広がっていて、「看護師が点滴をしてくれるようになった」なんていじましい労働環境の改善(笑)はもとより、一昔前の「研修医は人に非ず」な時代を知っている先生方なら驚くような話が現実になってきているようなんですね。
初期研修はそれなりにルールが厳しいですからアルバイト等の制限は仕方ないにしても、研修の内容や後期研修などで本人意向を最大限尊重していくだとか、わざわざ大学を選んでくれた相手に対して色々とオプションを用意できるというのは、幅広い裾野を持つ大学ならではの強みであると言える話ですし、下手に自分で希望に合う病院を探すよりは確実に希望通りの研修が出来ると考える研修医がいても、不思議ではない状況にはなってきているようです。

いずれにしてもやる気のある研修医にとってはポリクリ(学生実習)の延長線上にあるようなお客様研修よりも、実際に現場に組み込まれて責任ある仕事を任せられた方が実力がつきやすい上にやり甲斐もあると喜ばれるようですが、逆に俺はどうせマイナー科に行くんだからローテートなんてかったるいだけだ、なんて向きにはデューティーフリーで9時5時で適当にこなせる楽な研修の方が歓迎されるわけですよね。
ごくごく素朴な感覚からすれば頑張っている人たちにはきちんと給料という形で報いてあげたくなるものなんじゃないかと思いますが、現在の研修医(に限らず、医師全体にも言えることですが)の給与相場というものは労働の程度に応じてなんて話とは縁遠い、むしろ激務の病院ほど安月給なんて現実があったりするのが哀しいところです。
今の研修医の定数改定の議論もあくまで都道府県なり病院側なりといった需要の側の論理で決められているところが否めませんけれども、研修の内容は言うに及ばず労働環境や待遇面といった部分も含めて、もっと供給する研修医の側の声も拾い上げた上での制度になっていけばいいんだろうし、今どきの若い先生達にしても色々と言いたいことはあるんだろうと思うんですけどね。

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