« 天下のWHOがこうおっしゃっているそうですが | トップページ | どうやら朝日がまたやった?! »

2010年11月25日 (木)

「行列の出来る○○」と言えば世間では褒め言葉らしいのですが

最近この種の話題が増えてきている事が目に付くのですが、皆さんお気づきでしょうか。

急患たらい回し防止へ30病院指定 県が「20分基準」(2010年11月20日茨城新聞)

救急患者の受け入れ拒否による「たらい回し」を解消させるため、県は新たな搬送ルールとなる「県傷病者の搬送および受け入れに関する実施基準」を策定し、 19日公表した。これまで搬送先は各救急隊が受け入れ先が決まるまで医療機関に連絡を取り続けてきたが、選定開始から20分程度以上の時間を要しても決まらない場合は、あらかじめ定めた30病院が原則受け入れることにした。基準は来年1月から3月まで試行した後、4月から本格運用する。

たらい回しは2007年、奈良県の妊婦が死産したことで社会問題化。昨年10月の改正消防法施行で、都道府県に基準策定が義務付けられ、県は医療機関や消防本部などで構成する「県救急業務高度化推進協議会」(会長・斎藤浩県医師会長)で検討してきた。

県消防防災課によると、昨年の重症搬送者数は9465人。ほとんどが15分以内に受け入れ先が決まっているが、照会が4回以上要したケースは390人(4・1%)おり、うち6回以上も88人いた。最大照会回数は14回で、決定までに1時間以上を要したという。

原則受け入れる30病院は、昨年中に重症の救急搬送患者100人程度以上を受け入れ、困難事案の受け入れ実績も考慮し選定。県内ほぼくまなく設置された。

このほか、実施基準では緊急性・重症度・専門性・特殊性の高い症状を16に分類し、対応できる医療機関のリストを作成。心肺停止は70、循環器疾患は59、脳血管障害は64、外傷は53、精神疾患は27病院となった。

救急隊は経験によって搬送先を決めていたことが多かったが、これからはリストの中から現場直近の医療機関を決定。処置困難やベッド満床などの理由により、受け入れ決定に20分程度以上要した場合は30病院に搬送することになる。同課は「受け入れる病院がより明確になった」と説明した。

救急患者の搬送先病院リスト化 県が基準、たらい回し防止へ /福井(2010年11月16日福井新聞)

 救急患者の受け入れ拒否による“たらい回し”を防ごうと、福井県は15日、搬送と受け入れの「実施基準」を策定した。症状に応じて搬送先の候補となる医療機関をリスト化し、選定が難航した場合の最終的な受け入れ機関も決めた。これまで搬送先は、各救急隊員や消防本部の経験によって決められることが多く、マニュアル化で一層の効率的な運用を図る。12月1日から実施する。

 基準は、緊急性や診療の専門性の点から▽脳卒中の疑い▽心筋梗塞(こうそく)の疑い▽妊産婦▽小児▽精神疾患―の5症例を対象とした。脳卒中の場合、対応可能な医療機関として県立病院や福井大病院など6市1町の12病院をリストアップ。このうち初期対応が可能な病院としてさらに10病院を挙げ、発症から3時間以内なら搬送するとした。

妊産婦はかかりつけ医を基本とし、不在の場合などに備えて総合周産期母子医療センター(県立病院)など7病院を規定した。小児は地域内の救急医療機関などから、精神疾患は県の救急情報センターの情報提供で搬送先を決めるとした。

 選考が難航した場合の最終的な受け入れ医療機関は、脳卒中と心筋梗塞、小児が県立病院と公立小浜病院。妊産婦は県立病院と福井大病院とした。

 重症かどうかを判断するため、意識や呼吸状態などの確認項目をまとめた「観察カード」も作成し、救急隊員が医療機関に状況を伝えることとした。ただ、各消防本部で独自に項目を設けているケースが多いため当面は参考資料とする。

 救急搬送のたらい回しは2007年8月、奈良県の妊婦が死産したことで社会問題化した。昨年10月の改正消防法施行で、都道府県に基準取りまとめが義務づけられた。県は県内病院や消防本部でつくる「県メディカルコントロール協議会」で策定を進めてきた。

 この日は病院や消防など約40機関に説明会を開催。同協議会長の寺澤秀一・福井大病院副院長は「基準によって救急隊員の経験によらず『搬送の標準化』が図れる。患者の不利益を未然に防げる」と利点を話した。

 県によると、県内の重症患者の救急搬送は昨年2901件あり、うち2876件(99・1%)が2回以内の照会で搬送先が決まった。医師が手術中などの理由で、4回以上の照会が必要だったケースは4件(0・1%)あった。

今を去ること一年あまり前に成立した消防法改正案によって、都道府県には患者の容体に応じた搬送先のリスト等搬送ルールの策定と公表が義務づけられたわけですが、様々な議論もあって遅れに遅れていたこの作業がようやく昨今具体化し始めたと言うことです。
ただ見ていただければ判る通りですがこのルール策定、あくまで消防庁が主導し救急隊側がいかに早く病院に搬入するかというところを突き詰めた話であって、病院側の勤務状況や診療体制といった昨今医療崩壊などと言われる諸問題とは全く無縁のところで進んでいる話であるということには注意が必要ですし、この背景には救急隊側は一刻も早く患者を医療に渡したがる事情があるんだという、笑えない話すらあるようです。
もちろん脳卒中など迷い無く搬送先を決めるべき症例がガイドライン上も増えてきた時代にあって、こうしたマニュアル化で無駄な手間が省けることで助かる側面も多々あることは確かなんですが、では救急医療崩壊と言われる問題の中心が搬送先探しの問題であるかと言われれば、それは断固として否である!と言いたい先生方も多いんじゃないかと思いますね。
これもマスコミあたりが「たらい回しだ!」なんて大きな声を叫ぶたびに出てきた、「いや近所の○○病院では受け入れ可能であったのにスルーされてしまったのだ!」式の反論のもたらした当然の帰結とも言えますけれども、根本原因である現場のキャパシティーに対する需要過多という問題を放置したツケが今後どこに回ってくるのかです。

救急搬送問題と言えば何かと「搬入先決定までに○○時間」なんて話ばかりが取り上げられる傾向がありますけれども、搬送先が決まらず延々救急車内で待っているなんて状況はごく例外的であることは当の救急隊も言っていることなのに、キャッチーな話題を好むマスコミがしきりに騒ぐものですから、まるで根幹に関わる重大問題のように言われるようになったのも問題の本質からするとどうなのかですよね。
実際には医療機関に運ばれてからが本当の勝負であることは明らかですし、むしろそちらの方が崩壊していることの方がはるかに大きな問題であるのに根本的解決策が出てきたという話をあまり聞きませんし、むしろそちらで性急に解決を図ると医者は安く奴隷扱いしたい人々や住民サービス向上を何かの際の売り文句にしたい方々など、各方面に困る方々が大勢いらっしゃるんじゃないかという想像すら働くところです。
結局のところ限られた医療の供給に対して需要過多であるという状況が続く限りは何をどう工夫しようがどうにもならない問題であるし、その結果先日の奈良産科医訴訟にも見られるように現場スタッフの酷使にも関わらず報いるところがないとなれば、最終的には志気崩壊から医療の破綻を招くことは全国各地で立証されていることですが、その解決には需要側の問題への切り込みは欠かせないはずなのに誰も手を出そうとしません。
マスコミは相変わらず「新臨床研修制度が」云々とどうでもいい枝葉の話に原因を押しつけようとしていますけれども、医療受給のミスマッチ解消をただ医療供給側の一方的な努力だけに頼るという状況が、いったいいつまで続くのかという想像力も必要ではないかと思いますね。

再生へのシグナル:壊れる生活2 救急医療、都市でも崩壊 医師不足、36時間労働が横行(2010年10月26日毎日新聞)

 延々と連なる赤いブレーキランプに焦りが募った。激しく渋滞する熊本市の国道3号。ベビーシートにいた生後6カ月の長男大和(やまと)君はもはや母乳を吸う力もない。熊本県山鹿市の主婦、豆塚愛子さん(36)は運転席の夫に叫んだ。「お父さん、急いで!」

 4月の朝、大和君は38度の熱を出し、意識を失った。駆け込んだ近所の診療所で「入院可能な専門医療機関に」と言われたが、山鹿市にはない。約30キロ離れた熊本市の大病院には「ベッドの空きがない」と断られた末、マイカーで約1時間20分かけて同市の熊本地域医療センターにたどり着いた。診断は髄膜炎。緊急手術で一命は取り留めたが、執刀した後藤善隆副院長(60)は言った。「あと少し遅かったら危なかった」

 山鹿市で小児救急を担っていた市立病院から小児科医がいなくなったのは07年。以降、非常勤の医師が週3日診察するが、夜間診療や入院を伴う2次救急は閉鎖された。

きっかけは04年度に導入された新医師臨床研修制度だ。研修先を自由に選べるようになった研修医が大都市に流れ、医師不足を懸念した熊本大が、市立病院に勤める出身医師を引き揚げたのだ。

 市立病院の常勤医は23人から一時半減し、勤務状況は激変した。小児科長だった松本真一医師(51)は、地域の子供のヘルスケアに力を注いできたが、専門外の成人救急もカバーし、夜間総合当直も頻繁に回ってきた。「辞めたくなかったが、疲れた」。07年10月、市立病院を辞め、同県合志市で開業した。

 医療現場が医師不足と過重労働にあえいでいる。厚生労働省の調査では、医療機関(19床以下の一般診療所を除く)で働く医師は2万4000人足りず、現在の1・14倍必要だ。人口当たりの医師数は経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の3分の2で最低レベルだ。

 背景には国の財政赤字解消の優先がある。「医療供給の合理化」をうたった第2次臨時行政調査会答申(82年)を受け、政府は膨れあがる医療費を抑えるため医師数抑制へと医療政策を転換した。07年度まで医学部定員を減らし、新研修制度により地方から医療が崩れ始めた。

 都市部も例外でない。北部九州のある救急病院。時間帯に関係なく患者が運び込まれ、医師と看護師の格闘が続く。当直は月4~5回。そのまま日勤も続け、36時間勤務はざらだ。自律神経が崩れ、睡眠剤なしでは眠れない。激務に見合う給与や、より高度な専門医療の現場を求め、この1年で半数以上の医師が去った。残された医師の仕事量はさらに増え、当直は倍近くに。30代男性医師は久しぶりに帰宅したベッドから朝、起き上がれず、10日間まともに寝ていないことに気付いたという。「今の現場じゃ、脳死患者の臓器移植に対応できるだろうか」と弱気になった。

地方から医師が消え、そのしわ寄せが都市部にも重くのしかかる。馬場園明・九大教授(医療経営学)は「必要とされる医療に国が人もカネも投じなかったツケが回っている」と指摘した。政府は見直しに着手したばかりで、妙案はまだ見えない。【阿部周一】=つづく

「あと少し遅かったら」なんて今どきどうなのよですが、新臨床研修制度で地方から都市部へ医者が集まったことが医療破綻の原因だなんて言っているその口で、都市部では押し寄せる患者に医者が壊れかかっているなんて言っているわけですから、まともな論理的思考力があれば「あれ?それって何か変じゃない?」と気付かない方がおかしいという話ですよね(苦笑)。
マスコミの問題はそれとしても、先日は埼玉県が主要な施策に関する実際の支出額を算定して「行政の値札」であるとして公表していましたけれども、「救急患者搬送一件につき7600円」なんて数字を公開するくらいならこの仕分け全盛の時代、そのコストに見合うだけの必要性、緊急性があるかないかというところまで踏み込んでもいいはずです。
救急搬送実費負担なんて話が出ますと、必ず決まったように「いや、本当に重症の人が救急車を呼ぶのに躊躇するようになってはいけない」なんて話も出てきますけれども、同様の議論がさんざん言われてきた時間外選定療養費問題にしても、実際にやってみればさしたる不具合もなく現場スタッフの労働環境改善に大きな効果があったと評価されているわけです。
実際に本当の重症であれば救急車の実費どころではない医療費がかかるわけですから、それが払えない方々はいずれにしても病院と相談して生保取得や医療費減免等の対策を取らなければならない方々であるわけでしょうから、このあたりは実際の医療現場で起こっている現象とは無関係に、社会的に判断されてしまっていることであるように思えます。

もちろん医療とは言え民主主義国家である日本で行われている一産業であるわけですから、社会的要請というものを全く無視して現場の判断で勝手にやるというのには無理があるとしても、その結果本当に医療が必要とされる局面での供給に支障が出るということになっているのだとすれば、これは医療の受益者である国民にとっても結局は損な話ですよね。
そしてこの件に関しては医療の側も単なる被害者に留まらないのも一面の事実であって、何が損で何が得かを素人に分かりやすく情報を提供し、その結果最善の判断の手助けをすることも専門家の重要な仕事の一つであるとするならば、今までの医療業界の人間は専門家として大いに職務怠慢を問われても仕方がなかったように思えます。
財政的にもマンパワー的にも医療の上限と言うものが見えてきた時代にあって、いつまでも天井知らずの成長時代と同じ感覚で「何かおかしいと感じたらすぐ病院へ!」なんてやっている方々が未だに医療業界の代弁者のような顔をしているのだとすれば、そうさせている側にも問題はあったと言うことではないでしょうか。

|

« 天下のWHOがこうおっしゃっているそうですが | トップページ | どうやら朝日がまたやった?! »

心と体」カテゴリの記事

コメント

この選定された「原則受け入れ」病院における当直医の労基法上の勤務状態はどうなっているんでしょうね。まさか、救急患者を原則問答無用で受け入れなくちゃいけないのに「労基法上の当直」のコストで働かせているだなんてブラックなことはしてないですよね?

投稿: Seisan | 2010年11月25日 (木) 10時31分

どうでもいいっちゃあどうでもいいんですが、6か月の乳児の髄膜炎に何の緊急手術をしたんですかねぇ。まさか気管切開?確かに乳児に施行するには小児外科でないと難しいでしょうが。まさかお得意の捏〇ですか、毎日さん。もちろん、言いたいことの本筋でないことは重々承知してますが。

投稿: 蛾蜻蛉 | 2010年11月25日 (木) 21時19分

緊急手術云々のくだり、自分も一読してあれ?と思ったところでした。
しかしこんなところで「あと少し遅かったら」なんて言っちゃったら、これから同じような症例で不幸な結果になったときに突っ込まれるだろってのが今の時代なんですが…

投稿: 管理人nobu | 2010年11月26日 (金) 15時58分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/50126068

この記事へのトラックバック一覧です: 「行列の出来る○○」と言えば世間では褒め言葉らしいのですが:

« 天下のWHOがこうおっしゃっているそうですが | トップページ | どうやら朝日がまたやった?! »