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2010年10月22日 (金)

一周回ると時代遅れが最先端に変貌したり?

兵庫県は加古川と言えば、JBMの本家本元とも言うべき「加古川心筋梗塞事件」によって「聖地」として有名な土地柄ですけれども、全国的な例に漏れずこの界隈でも公立病院のスタッフ不足は深刻化しているということです(ま、前述のような特殊事情も関係あるやなしやですが)。
加古川市民病院などもひと頃は14人いた内科常勤医が二人にまで減ったとも言いますからすでにまともな病院の体をなしていませんが、これまた全国的な例に漏れずこちらも病院統合計画が持ち上がっているところなんだそうで、見ていますとなかなか面白いことを言っているのですね。

加古川の病院統合:「女医確保」求める 評価委、中期計画素案を審議 /兵庫(2010年10月20日毎日新聞)

 加古川市民病院と神鋼加古川病院の統合・再編問題で、新病院の経営主体となる地方独立行政法人(独法)加古川市民病院機構の業務を評価する評価委員会(委員長、川村隆・元県健康福祉部長、委員5人)が19日開かれた。市が提示した業務運営のための中期計画素案について審議が行われ、委員から「女性医師の確保」方針の明示などを求める意見が出た

 会議では、素案に示された10項目のうち、(1)計画期間(11年4月から5年間)(2)住民に提供するサービス(3)業務運営の改善・効率化を達成するための措置--の3項目について審議した。委員側からは「女性医師確保」のほか、「5年間の年度計画を盛り込むべきだ」や「患者への具体的なサービスの明示が必要」などの意見が相次いだ

 委員会は今後、2回の会議を予定している。中期計画は来年1月に確定する見込み。【成島頼一】

いや、失礼ながら贅沢な注文をつけられるような立場か?とも思うのですが、とくに興味深いのが委員から特に「女性医師の確保」方針を明示せよなんて話が出ているということなんですね。
どのような意図でこういう話が出てきたのか、今のところちょっと議事録の詳細が見つからないこともあってはっきりしないのですが、病院の運営と言う事を考えた場合にただでさえ医者がいなくなって回らなくなっている状況であるのに、わざわざ女医を集めようなんて自殺行為としか思えないという考え方が普通なのではないかと思いますがどうでしょうか?
同評価委員会では必ずしも医師や現場の人間が中心になってやっているとは思えないような話が沢山出てきているようですが、元々医者が逃げ出して内科が崩壊すると騒いでいた中での今回の女医確保指令などは見当違いの方向への迷走になりかねないということを、こちら栃木県から出ている記事が示しているように思いますね。

女性医師勤務環境:院内保育や長時間労働、設備・制度向上せず /栃木( 2010年10月20日毎日新聞)

 ◇「常勤望まず」25%超

 女性医師が働きやすい環境作りを目指し、独協医大産科婦人科の望月善子准教授が県内の女性医師の勤務環境を調査した。院内保育など設備・制度面は3年前と比べてほとんど向上しておらず、非常勤の女性医師のうち常勤を望まない人が約4分の1を占めることが明らかになった。【泉谷由梨子】

 調査は県医師会や県の事業として今年5~7月、県内の110病院(有効回答74病院、回収率67・3%)と女性医師782人(有効回答299人、回収率42・4%)を対象に二つのアンケートを実施した。

 病院対象の調査では07年度の同じ調査と比較した。院内保育施設の設置は41・9%(07年度41・7%)、24時間保育実施は16・2%(同16・6%)でほとんど変わっていなかった。保育施設の運営に関して、国や県の支援を受けている病院は24・3%にとどまり、病院側の情報収集の不足がうかがわれた。

 医師対象の調査では男性同様に長時間労働にさらされており、月5回以上の宿直勤務をしている人が8・1%いた。現在、非常勤で働く女性医師は約10%いる。理由の約6割は子育てで、将来も常勤を望まない人が25・6%だった。

出産・子育てなどで仕事を中断・離職した経験がある人は45・2%。その人たちに将来希望する勤務形態(複数回答)を尋ねたところ、厳しい勤務状況を反映してか、日勤のみの常勤が53・3%、非常勤を希望した人も20%に上った。宿直もある常勤を望んだのは12・6%にとどまった。

 また、子育て面では、院内保育所があっても緊急呼び出し対応してる施設はわずか1割、院内保育所があるのに利用していない人が6割いた。理由では「保育時間と勤務時間が合わない」が23・1%と最も多く、支援制度と勤務実態とのミスマッチが明らかになった。

 望月准教授は「労働環境を整備するための継続支援が必要だ。多様な生き方を望む人が増える中、モチベーションを保てる制度を整えるべきだ」と指摘している。

個人的には男医と同等どころか、それ以上に熱心な女医さんも大勢承知していますけれども、逆にそうした方々はいわゆる家庭の主婦的な面においても一般の男医と同等であるように見受けられましたから、いずれにしても現在の医療現場が家庭を顧みない労働をこなさなければ回らなくなっているのは事実なのでしょう。、
社会的に男が仕事、女は家庭という基本的認識が未だに残っている以上、共働きであっても家庭内業務が女の側により多く降りかかるのも当然でしょうし、まして女医と言えば男医との結婚率も高いわけですから、パートナーの側に家庭運営をと望むのにも限界があります。
昨今では医学部女性進学率が限りなく男女同数に近づいてきていて、中には確かに「医学部に入っておけば確実に医者をゲットできるから」なんて公言している女学生も見かけますけれども、基本的には女医問題は医者の労働環境の一側面が顕在化しているのだという認識が必要だろうし、いつまでも「これだから女医は」なんて言っていられる時代ではないということでしょう。

そうでなくとも兵庫県の公立病院と言えば以前にも噂話を紹介しましたけれども、院長が「最近の若い医者には過労死するくらいの覚悟でやるやつはおらんのか!」と叫んだり、総務部長が「医者は適当に過労で死んでくれる方が好都合」と豪語したり、爺医が「おまえら若いもんがもっともっと働けばすむことだ」と宣ったりと、かねて香ばしい噂には事欠かないところなのは確かです。
しかし逆に考えれば病院経営上は残業代だ、労基法だとうるさいことを言わず馬車馬のように奴隷働きする人間の方はよほど使い勝手が良いのは事実だとも言えるわけですが、前述の栃木の例を引くまでもなく相対的に男医よりもQOMLを重視する女医という存在がこの対極に位置しているとは言えそうですから、マンパワーに乏しい病院の運営として考えた場合に本当にそれでいいのかという視点は必要でしょう。
他の意見に関しても見ていますと、総じて現場目線で組み立てていれば決してこうはならなかっただろうという話ばかりが並んでいるあたり、すでに計画素案の段階でフラグが立ちまくりという気がしますけれども、どうせ統合・新病院建設に絡んでハコモノ利権さえ確保しておけば無問題という認識なんでしょうかね?

疲弊する現場が何を求めているかということは現場医師に聞いてみれば一番判るのでしょうが、現実問題として現場医師の求めることが実現可能なのかという話もあって、経営上も人材確保の上でもどこの施設も一杯一杯で回しているというのが実情ではないでしょうか?
しかし逆に使う側が使われる側の人権など無視、「あいつらは適当に使い潰しておけばいいんだ」とばかり好き放題やるばかりでは現場がついてくるはずもないのは当然であって、とりわけ昨今全国の公立病院から我先に医者が逃げ出していくというのもそうした経営方針を現場が敏感に感じ取っているからこそですよね。
そうであるからこそトップダウンで強力な指導の下に職場環境改善を図っていかなければならない時期なんじゃないかと思いますが、例えば民主党政権になって何かしら変わるかと期待はされていた中医協などにしても、相変わらずどう支払い側の負担を削るかと言った話には熱心でも、このあたりの現場の状況改善には全く興味も関心もないというのはどうなのかという話でしょう。

勤務医の疲弊、無力な中医協(2010年10月16日ロハスメディカル)より抜粋

 「救急に従事する医師等の範囲は不明確」─。深夜の救急患者に対応する当直などで勤務医の疲弊が叫ばれる中、厚生労働省が出した答えは「救急医療の調査は難しい」だった。中医協委員から反対意見は出なかった。(新井裕充)

 「救急に従事する医師等の範囲は不明確で、バラつきが大きいのではないか」

 「現状の調査では解釈に窮するデータが多く出るのではないか」

 10月15日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、厚労省はDPCの調査について救急を除外する調査案を示し、了承された。委員から反対意見はなく、審議は5分でアッサリ終了した。

【勤務医の疲弊】
 入院医療費の一部を定額払いにするDPCをめぐっては、入院期間の短縮をめざす動きが加速することに伴う粗診粗療が問題になっている。DPCは入院期間が長くなると報酬が下がる仕組みであるため、「十分な治療を施さないまま退院させてしまっている」と危惧する声もある。

 一方、入院期間を短縮させるとベッドが空くため、それを埋めるために患者を受け入れようとする。いわゆる「ベッド稼働率」がアップする。
 その結果、医師や看護師らの業務が過密になっているとの指摘もある。「DPCの導入によって医療従事者は疲弊している」とも言われる。

 こうした批判に対して、厚労省は「DPCの導入によって医療の質は低下していない」という立場で一貫している。根拠としているのは、毎年実施している「DPC導入影響の評価に係る特別調査」だが、肝心要の労働時間を調査しないなど的を外した調査設計になっているので、厚労省にとって都合の悪いデータは出てこない

 そこで、10年度改定を終えた後の中医協で診療側委員は、DPCの調査を中医協・下部組織の「DPC評価分科会」に"お任せ"するのではなく、「我々にも意見を言わせろ」と求めていた。

【無力な中医協】
 8月25日の中医協総会で、厚労省の調査案に対して診療側の嘉山孝正委員(国立がん研究センター理事長)が医師の勤務時間や業務内容などを把握する「タイムスタディ調査」を求めたが、厚労省は「調査が難しい」という姿勢のまま重い腰を上げなかった

 なおも引き下がらない嘉山委員に対し、厚労省は「医師1人あたりの患者数の調査」という"妥協案"を打ち出したが、救急を除く内容だった。9月 24日、中医協の専門組織であるDPC評価分科会で、委員らは「救急医療の調査は難しい」と大合唱。救急医療の調査を除くことについて分科会のお墨付きを得た。

 こうして迎えた10月15日の中医協総会。最終的に、救急を除く調査を実施することで了承された。反対意見は出なかった。しかし、「救急=当直」を調査しなければ、医師の業務負担は十分に把握できないだろう。
 厚労省は医師の地域偏在を是正するため、急性期の拠点病院である「DPC病院」の医師数を調査した上で、"医師の適正配置"を進めたいのだろう。医師数の調査には乗り気だが、勤務実態を調査する気はないように見える。

 近年、医療現場では労働基準法に違反するような長時間労働が放置されていると聞く。労基法違反の勤務状況は医師だけではなく医療以外の職種も同様かもしれない。ただ、その中でも医療現場の疲弊は多数の国民の生命や健康に影響を及ぼすので深刻な問題と言える。

 こうした背景には社会保障費の抑制策があると言われる。医療費の総枠を広げるかどうかは政治的な判断だが、35兆円を超える国民医療費の配分に深く関わるのは厚労省。
 特に、診療報酬の配分を議論する厚労大臣の諮問機関である中医協の役割は重大だが、勤務医の負担が著しい「当直」についてはほとんどノータッチ。厚労省は無関心を決め込んでいるし、病院団体の委員も指摘しない。なぜだろう?
(略)

ロハスメディカルさんの記事は今回のみならず一年前の「新体制」中医協初期のやりとりなども取り上げられていて、北里大の海野信也先生の「とにかく現場を合法的な状態にしていただきたい!」なんて叫びが華麗にスルーされた一件を始め非常に興味深い内容ですので是非ご一読いただきたいと思いますが、その後も状況は改善するどころか現場の声など誰も見向きもしなくなっているように見えるのは自分だけでしょうか?
民主党政権になれば医療は変わる、医療行政も変わるなんて今さら信じている人間もさすがにいなくなっているのでしょうが、それにしてもこの現場の声への無視ぶりはいっそ清々しいとも感じられるほどで(苦笑)、医者の負担の最たるものが救急当直であると認めながら決してその実態は調査しようとしない、そもそも誰もが口をつぐんでいるという中で粛々とシナリオ通りに話が進んでいっているわけです。
それは現実問題として医療現場がここまで深刻な状況になってしまいますと、医療のみならず労働も所轄する厚労省としても責任問題になりかねず迂闊に手を出せないというのも確かではあるのでしょうが、厚労省の役人や支払い側委員は元より、診療側委員も現場の医者を酷使する立場の人間で固められている中で、誰も労働環境問題を取り上げず医療制度を論じ続けているという現状は本当にそれでいいのかです。

国の医療方針を決めている場所がこういう状況である以上、現場としては自らの身を守るものは自助努力しかないというのは当然ですけれども、一歩間違ってやり過ぎてしまっても誰も後ろから命綱を引いてくれないと判っている以上、あらかじめ慎重すぎるほどのマージンを見込んで自らの労働管理をしていかなければならないというのは当然ですよね。
そう考えると今まではとかく「働かない、使えない」と現場での評判が悪かった(失礼)女医というもの、むしろ時代の最先端を走る存在として今後再評価されるべきなのかも知れず、少なくとも女医も働けないような労働環境で進んで働くなんて自殺行為であるという考え方もあっていいはずでしょう。
そう考えますと加古川市民病院なども、現場医師の労働環境改善ということで敢えて自らがその先鞭をつけるという高邁な理想と使命感に燃えてやっていらっしゃるのだとしたら、将来は「聖地・加古川」も別な意味での聖地として崇め奉られる時代が来るかも知れませんよね。

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