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2010年10月15日 (金)

お産を取り巻く最近の話題から

先日こういう記事が出ていまして、公立病院などの不当なダンピングが続く中で良い傾向だなと思う一方、当事者である妊婦さん達にとってはこの不景気で大変でもあるという話ですよね。

平均出産費用47万円 一時金を5万円上回る(2010年10月13日産経新聞)

 厚生労働省は13日、社会保障審議会の医療保険部会で、出産費用の全国平均(平成22年8月時点)が47万3626円に上るとの調査結果を発表した。現行の出産育児一時金は原則42万円で、本人負担が5万円上回る実態が明らかになった。

 調査は各都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連)に申請された正常分娩(ぶんべん)に伴う請求書5万3192件を集計した。下位25%の平均費用は42万5955円。最も平均費用が高かったのは東京都の56万3617円。神奈川、栃木、宮城の3県も50万円を超えた。一方、最低は鳥取県の39万1459円で、次いで熊本県40万6439円となり、地域格差も顕著になった。

 出産育児一時金は21年10月から22年度末までの暫定措置として、4万円上乗せされ42万円となっている。13日の部会では、42万円の恒久措置化を求める意見があった一方、38万円に戻すべきとする声もあった

とある産科の先生が言うことに、現代医療の要求水準に対応して必要なコストを積み上げていくだけでも40万以上はかかる計算だと言うことですから、育児金というのは言ってみれば実費分負担というだけで、お産に必要な諸費用としてはいささか不足気味であるらしいとも考えられるところですよね。
一方で地域によっては平均でこの水準を下回っている土地もあるということですが、この価格差は何を反映しているのかと少し調べて見ましたが、人口あたりの産科医の数で見ますと鳥取と言うところは日本一の数なんだそうで、他方宮城や神奈川は少ない方だと言いますから、ある程度は競争原理というものも働いているのかなと推測されるところです。
いずれにしても少子化対策がこれだけ言われている中で出産はお金がかかるというイメージをこれ以上定着させても困るということですから、さっそく国としてもこういう判断を示してきたことは妥当なところではないかと思いますね。

出産一時金「42万円」恒久化へ 厚労省、引き下げ困難と判断(2010年10月15日産経新聞)

 厚生労働省は14日、今年度末で4万円上乗せの暫定措置が切れる「出産育児一時金」について、来年度以降も「原則42万円」を維持し、恒久化する方針を固めた。出産費用が高額化していることなどから、支給水準を再び下げるのは実態にそぐわないと判断した。妊婦が出産費用を立て替え払いしないで済む医療機関への直接支払制度も継続する。次回の社会保障審議会医療保険部会に提示する。

 現在の出産一時金は「原則38万円」だが、政府は少子化対策の一環で昨年10月から来年3月までの特例として4万円上乗せし、42万円を上限に支給している。

 厚労省が来年度以降も給付水準を下げない方針を固めたのは、同省が行った実態調査(8月時点)で、出産費用の全国平均が47万3626円、下位25%の平均でも42万円超かかっていることが明らかになったため。出産一時金は少子化対策としても一定の効果があり、「最低でも現行水準は維持せざるを得ない」(幹部)と判断した。

 だが、4万円上乗せを維持するには、来年度予算で平成22年度予算の182億円と同水準の財源が必要となる。上乗せ分については国民健康保険は半分、健康保険組合と協会けんぽは30~53%が国庫補助となっているが、残りはそれぞれ保険料が充てられている。

 厚労省は各保険運営主体に対し、22年度と同程度の負担を求めていく考え。だが、負担増となる企業側などからは反発も出ており、負担割合をめぐる調整は難航も予想される

 一方、直接支払制度については、資金繰りなどの対応が難しい小規模の医療機関などがなお存在していることから、23年度の全面実施は見送る方針。事務手続きの簡素化などを通じて普及を図る。

ネットなどでも「帝切は保険扱いになるんだから、どうせならお産の費用も保険でやれ」なんて意見が結構多かったりするようなのですが、あれだけ大騒ぎになった出産費用の直接支払い制度などにしても、最初から保険扱いであれば天下り団体に借金漬けにされるような羽目にならずに済んだやも知れず、「お産は病気でない」なんて堅いことを言っていないで何とかしろよというのも確かに一理あると思いますね。
しかし考えて見れば現在は一時金が実際の費用の一割引という状況ですから、これが保険扱いになって三割負担になれば実際には自己負担額値上げということになりかねず(もっとも、金を出す側にはその方が歓迎されそうですが)、保険診療上の公定価格の設定にもなかなか頭を悩ませそうではありますでしょうか。
いずれにしても産科医というものがかなり絶滅危惧種化しているし、その激務というものも社会的問題となっている中で、現場の負担を少しでも軽減していくことをまず第一に考えた政策を進めていかないことには、本当に幾ら金を積んでも産む場所がないなんてことにもなりかねないわけですよね。

さて、ここで少し話は変わりますが、先日こういう記事が出ていたのを御覧になりましたでしょうか。

医療界にみられる女性研修医の「奴隷契約」(2010年10月13日朝鮮日報)

 「専攻医(研修医)の間(4年間)は結婚、出産をしません」

「奴隷契約」の条文のような誓約が病院の現場で行われている、と大韓専攻医協議会(大専協)が12日、発表した。多くの大学病院が、妊娠や出産による業務の空白を嫌がり、研修医選抜の課程で、女性志願者からこのような誓約書を受け取っているという。

 この日、ソウル市内の国立中央医療院で開かれたシンポジウムで、ハン・ビョンドク大専協政策局長は、「子どもを産むな」と強要する病院現場の実態を告発した。

 昨年ソウル市内のある大学病院で、研修医4人を公募した科に男性3人、女性7人が志願した。成績順で上位5位に入ったのは、全員女性だったが、結局男性二人、女性二人を採用した。志願者のうち生後3カ月の子どもを持つ女性は、最初から成績とは関係なく、選考対象にすらなれなかった

 今年初めに大専協が研修医402人を対象に実施したアンケート調査によると、81%(326人)が「一般的に、出産休暇として90日未満を使用する」と答えた。産婦と新生児の健康を守る義務がある医療界でさえも、出産を避ける文化がまん延しているというわけだ。

こういう話を聞いて韓国の医者も大変だなと感じられるかも知れませんが、さすがに文書などで明文化するところは少ないものの日本の医療現場においても「今抜けられるのは困るぞ」なんて陰に日向にのプレッシャーがかかるなんてことは当たり前の話だったのも事実で、その意味では別に人ごとでもなんでもなく「医療の現場は男の(男でないと務まらない)職場」であったという歴史的経緯があったわけですね。
一方、昨今どこの大学の医学部に行ってもとにかく女子学生が増えたなんて話は耳にするところで、一昔前は女子学生など言葉は悪いですが生物学的に女であるというだけでモテモテだと言われるくらいに希少価値があったものが、今や下手すると男女ほとんど同数なんてことになっているのですから華やかになったものだと思います。
そんな中で産婦人科などでは当然ながら患者側からも女医希望ということが年々強まっているわけですが、日本においても同様に子供を産んでいる暇もないような現場でもあるわけですから、そもそも産科の現場には女医が入ってこない、間違って入って来ても実戦力になりがたい上にすぐに逃げ出していくということが現実に問題になっているわけですね。

【参考】夜勤する女性産科医はほとんどいない(天漢日乗)

【参考】女性産科医:出産に携わるのは11年目で半数以下(産科医療のこれから)

こういう話を聞いてどう考えるかですが、一部に「女学生の入学を制限すれば医師不足問題もあっさり解決するのでは?」なんて半ば冗談交じりでささやかれているのも事実であるし、一方ではQOML派を中心に「女性医師が問題なのではなく、彼女らが務められないような過酷な職場環境を放置してきた医療界の非常識こそが問題だ」という指摘も行われているのも事実です。
実際問題「奴隷」に質の高い医療をなんてモチベーションが湧いて出るとも思えませんし、一生奴隷労働が出来て潰しの効く男ばかりで回せばいいという発想は、いずれ24時間365日働けるスーパーマンに医療をやらせればいいという話にもなりかねませんから、いずれにしても健全な医療の永続性を考える上では非常にまずい状況であるのは確かだと思いますね。
担当医が女医さんだから大きなお腹を抱えた妊婦の気持ちがわかるはずだと安心していたら、担当医の方は子供を産んだ経験もなかったなんて笑い話のようなことが実際に少なからずある世の中ですが、医者が産休を取る暇もないほど疲弊した状況は国民にとっても良い話でもないはずですすから、回り回って我が身に降りかかる問題として一緒に考えていかなければならないはずですよね。

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