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2010年10月30日 (土)

航空管制官有罪確定 その余波は

つい先日は北海道で旭川空港に着陸しようとしていた旅客機が大雪山系に激突しそうになるという事件がありましたが、あの事件も山が近いために高度を下げすぎてはいけないという指示上の約束を管制官が失念していたからだと言われています。
ちょうどタイミング良くというべきかタイミング悪くというべきなのか、2001年の日航機ニアミス事件でかねて罪を問われていた管制官二人の裁判について、最高裁の上告棄却によって有罪判決が確定したというニュースが出ていることは各種報道でご存知の通りだと思います。
単なる業務上過失傷害の裁判というに留まらず、航空事故調などにも多大な影響を与えずにはいられないだろうという事例だけに、関係者のみならずマスコミ方面としても相応に大きく扱っているようですね。

静岡の日航機ニアミス、2管制官の有罪確定へ(2010年10月28日 読売新聞)

 静岡県焼津市上空で2001年、日本航空機同士が異常接近(ニアミス)して乗客57人が重軽傷を負った事故を巡り、業務上過失傷害罪に問われた国土交通省東京航空交通管制部の管制官、籾井(もみい)康子(41)、蜂谷(はちたに)秀樹(36)両被告の上告審で、最高裁第1小法廷(宮川光治裁判長)は「便名を言い間違えるなど管制官の注意義務に違反し、事故を発生させた」と述べ、両被告の上告を棄却する決定をした。決定は26日付。籾井被告を禁固1年6月、執行猶予3年、蜂谷被告を禁固1年、執行猶予3年とした2審・東京高裁判決が確定する。

ニアミス事故で、管制官の有罪が確定するのは初めて。両被告は国家公務員法に基づき、失職する。

 決定によると、蜂谷被告は01年1月、同市上空を上昇中の907便と水平飛行中の958便が急接近した際、958便に出そうとした降下指示を誤って907便に出し、指導役の籾井被告もミスを見過ごした

日航機ニアミス事故 2管制官 有罪確定へ(2010年10月29日東京新聞)

 静岡県上空で二〇〇一年に起きた日航機同士のニアミス事故で、管制指示を誤ったため、衝突回避のため急降下した機の乗客らに重軽傷を負わせたとして、業務上過失傷害罪に問われた管制官蜂谷秀樹(36)、籾井康子(41)両被告の上告審で、最高裁第一小法廷(宮川光治裁判長)は両被告の上告を棄却する決定をした。一審の無罪判決を破棄し、両被告を執行猶予付き禁固刑とした二審判決が確定し、国家公務員法により両被告は失職する見通し。決定は二十六日付。

 ニアミス事故で管制官の刑事責任が問われた初めてのケースで、管制指示と事故に因果関係があるかどうか、両被告が事故を予見できたかどうかが争点だった。決定は四裁判官の多数意見。

 決定によると、ニアミスを起こした二機に搭載されていた衝突防止装置(TCAS)は一方の機に上昇、別の機に降下の指示を出したが、蜂谷被告はTCASが上昇指示を出した機に降下を指示。二機とも降下し、急接近した。

多数意見は、蜂谷被告の降下指示を過失と認定。TCASが上昇を指示したのに、降下を続けた機長の判断について「蜂谷被告の指示の影響を受けた」とし、指示と事故との因果関係を認めた。また「被告らは両機がともに降下を続けて異常接近し、衝突回避の措置で乗客が負傷する結果も予測できた」と判断した。

 桜井龍子裁判官は「一方の機長がTCASの指示に従わず、言い間違えた管制官に従ったのは予想外の異常事態で、過失責任は問えない」との反対意見を述べた。

 一審東京地裁は事故は複合的要因で発生したとし、「指示の誤りが直接の原因とは言えない」として両被告を無罪としたが、二審東京高裁は因果関係などを認め、籾井被告を禁固一年六月、執行猶予三年、蜂谷被告を禁固一年、執行猶予三年の逆転有罪としていた。

<日航機ニアミス事故> 2001年1月31日、静岡県焼津市上空で、羽田発那覇行き907便と、韓国・釜山発成田行き958便が接近。蜂谷秀樹管制官は958便への降下指示を間違えて907便に出し、指導役の籾井康子管制官も見過ごした。両機のTCASは907便に上昇、958便に降下を指示したが、907便の機長は管制に従い、両機とも降下して異常接近。衝突回避のために急降下した907便の乗客乗員100人(起訴対象は57人)が重軽傷を負った。907便の機長は嫌疑不十分で不起訴となった。

 起訴に先立つ02年7月、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(当時)は、事故原因を管制ミスや機長の判断などの「複合要因」とした報告書をまとめた

日航機ニアミス、管制官の有罪確定へ 最高裁 (2010年10月28日日本経済新聞)

 静岡県上空で2001年、日本航空機同士がニアミス(異常接近)した事故で、便名を呼び間違えて57人にけがをさせたとして、業務上過失傷害罪に問われた国土交通省の管制官、蜂谷秀樹被告(36)と籾井康子被告(41)の上告審で、最高裁第1小法廷(宮川光治裁判長)は28日までに、両被告の上告を棄却する決定をした。両被告を執行猶予付き有罪とした二審判決が確定する。

 ニアミス事故で管制官の刑事責任が問われた初のケースで、今後の航空事故の司法判断に影響を与えそうだ。有罪が確定すると、国家公務員法に基づき2人は失職する。

 被告側は上告審で「実質的な危険はなかった」と主張したが、同小法廷は「言い間違いによる危険性が現実化した事故で、誤った指示とニアミスの間には因果関係がある。乗客の負傷も予見できた」と認定した。

事故当時、管制官の指示と航空機衝突防止警報装置(TCAS)の指示が異なった場合に、どちらを優先するかが明確になっていなかった。被告側は、誤った指示を伝えられた機長が、管制官ではなく上昇を指示するTCASに従っていれば事故は避けられたと主張したが、同小法廷は「両被告が全責任を負うべきでないというだけで、罪の成否は左右しない」と結論付けた。

 現在はTCAS優先のルールが明確化されている。

 宮川裁判長は補足意見で「緊張感があれば防げた事故。管制官は求められた注意義務を尽くすべきで、怠れば刑事責任を問われうる」と述べた。桜井龍子裁判官は「予見可能性があったとはいえない」として反対意見を付けた。
(略)

日航機ニアミス事故、最高裁決定要旨(2010年10月28日朝日新聞)

 日航機ニアミス事故で、管制官2人の上告を棄却した26日付の最高裁決定要旨は以下の通り。

 【多数意見】蜂谷秀樹被告が言い間違いで907便に降下指示を出した結果、空中衝突防止装置(TCAS)の指示で降下する958便と衝突する高度の危険性があった。蜂谷被告の訓練の監督者だった籾井康子被告が是正しなかったことも過失行為にあたる。

 907便の機長がTCASの上昇指示に従わず降下を続けた事情はあるが、異常操作とは言えず、管制官の降下指示を受けたことに大きく影響されたもので、誤指示とニアミスには因果関係がある。

 管制官2人は警報で異常接近を認識しており、TCASが958便に降下指示を出すことは十分予見可能だった。2機が降下を続けて異常接近し、衝突を回避するため急降下などの措置を余儀なくされ、乗客らが負傷する結果が生じることも予見できた。

 ニアミス発生の要因として、管制官の指示とTCASの指示が反した場合の優先順位が規定されておらず、航空機の性能が907便の機長に周知されていなかった(そのため、失速をおそれて降下を続けた)事情も認められるが、それは責任のすべてを2人に負わせるのが相当でないことを意味するに過ぎず、業務上過失傷害罪の成否を左右しない。

 【宮川光治裁判官の補足意見】今回の事故は2人が管制官として緊張感を持って意識を集中していれば、起こりえなかった。切迫した状況下では、管制官には平時にもまして冷静沈着に誤りなき指示を出すことが求められる。2人は907便から復唱があっても誤りに気づかず、不注意が重なっている。大惨事は間一髪で回避できたが、結果は重大で2人の行為を看過することは相当でない。

 ヒューマンエラーを事故に結びつけないシステムの工夫が十分でなかったことは確かだが、情状として考慮しうるにとどまる。事故調査機関と捜査機関の協力関係には検討すべき課題があるが、刑事責任を問わないことが事故調査を有効に機能させ、安全性の向上に資するという議論は現代社会における国民の常識にかなうとは考えがたい

 【桜井龍子裁判官の反対意見】誤指示が職務上の義務に反する不適切な行為であり、ニアミスのきっかけになったことを否定はしない。しかし、事故当時、TCASがいつ、どういう指示を出すか管制官に提供されるシステムではなかったことに照らすと、2人は指示の具体的内容を知ることはできなかった

TCASの指示に反することは極めて危険な行為で、907便がそれに反して降下を続けたのは、管制官にとって予想外の異常事態であった。従って、過失犯として処罰するほどの予見可能性は認められない。

 機長が降下を続けたのは、907便の航空性能情報が機長らに周知されていなかったことや、TCASの指示に反する操作の危険性に対する教育・訓練が不十分だった事情がある。機長の判断は客観的には誤っており、誤指示とニアミスの因果関係は認められない。

 航空機の運航のように複雑な機械とそれを操作する人間の共同作業が不可欠な現代の高度システムにおいて、誰でも起こしがちな小さなミスが重大事故につながる可能性は常にある。だからこそ、二重、三重の安全装置を備えることが肝要だ。弁護側は、今回のようなミスで刑事責任を問えば、将来の刑事責任をおそれてミスやその原因を隠す萎縮(いしゅく)効果が生じ、システム全体の安全性に支障を来すと主張するが、今後検討すべき重要な問題提起だ

ニアミス事故で管制官の刑事責任が問われた初めてのケースだといい、その裁判の中で指示と結果との因果関係が認められ罪に問われたという、これは日本の司法判断における一つの大きな転機にもなるかも知れない判断ですよね。
とりわけ朝日の記事からとりわけ各裁判官の声に注目していただきたいと思いますが、一つには宮川光治裁判官の「今回の事故は2人が管制官として緊張感を持って意識を集中していれば、起こりえなかった」「刑事責任を問わないことが事故調査を有効に機能させ、安全性の向上に資するという議論は現代社会における国民の常識にかなうとは考えがたい」という補足意見には注目いただきたいと思います。
要するに事故原因は個人の緊張感の欠如であると、そしてそれを防ぐためには意識を集中していれば良かったのだと言うのが司法の判断であり、そしてそれが出来なかった個人に対して罪を問わないことは「国民の常識にかなうとは考えがたい」と言っているわけで、これはこれでごく平均的な一つの見方であるという意見も多々あろうかと思われますよね。

これに対して桜井龍子裁判官は「現代の高度システムにおいて、誰でも起こしがちな小さなミスが重大事故につながる可能性は常にある」、それ故に「今回のようなミスで刑事責任を問えば、将来の刑事責任をおそれてミスやその原因を隠す萎縮(いしゅく)効果が生じ、システム全体の安全性に支障を来す」という弁護側の主張に一定の理解を示す反対意見を述べています。
実際にひとたび「誰もが犯し」てしまう程度の過失があれば罪を問われかねないと言うルートが確立されてしまった以上、今後の航空事故調では今までのように真相解明を第一の目的とする場ではなく、証言する各個人が自らの身の安全を第一の目的とする場に変質せざるを得なくなるでしょうから、証言者個人の免責を条件に事故原因の究明と再発防止を徹底するという事故調そのものの存在意義が問われることになりそうです。
このあたりは97年の日航706便乱降下事故において機長の刑事責任が問われた裁判の過程で、本来個人の責任追及に用いられてはならないはずの航空事故調の報告書を名古屋地裁が鑑定書として採用、世界中の航空関係者の間で大騒ぎになった一件を思い出させますが、さすがに今回の有罪判決を受けてマスコミ各社としても多少の危惧を感じずにはいられなかったようです。

ニアミス事故裁判:「現場萎縮」判決を懸念…初の有罪確定(2010年10月28日毎日新聞)

 静岡県上空で日航機同士がニアミスし、乗客57人が負傷した01年の事故で、最高裁は2審同様に航空管制官2人の過失を認定した。国際線の発着枠が増えた羽田空港では管制官の業務量の増加にどう対応するかという課題が横たわる。管制官の職場からは「個人の責任ばかり追及されれば現場が萎縮(いしゅく)する」と最高裁の判断を疑問視する声が漏れた。

 北海道のある空港の管制官の職場。テレビのニュースで「有罪」を知った管制官たちは顔をしかめた。

 くしくも2日前、旭川空港へ向かっていた全日空便に対し、札幌航空交通管制部の管制官が、前方の大雪山系より低い高度へ降下するよう指示を出すという管制ミスを起こしたばかり。機械と管制官の指示が相反するというのは、有罪とされた管制ミスと全く同じ構図だ。

 ある管制官は「機長が機械の指示に従うことを即断し、事故を免れたのは、静岡の事故の教訓が生きたから」と前向きにとらえようとした。一方、関東地方の空港で働く中堅の管制官は「ミスを明日の仕事に生かすのが私たちの宿命」と気を引きしめた。

 日本最大の利用客を誇る羽田空港では、航空機のルートが交錯しやすい井桁(いげた)配置の滑走路運用が21日から始まったばかり。管制官からは「公務員削減の流れは管制官も例外ではない。仕事量の増加に間に合うのか」と懸念する声も漏れる。

 実際、管制官の数は4000人台前半で、97年をピークに漸減傾向にある。だが、発着回数は増加傾向にあるため、管制官1人あたりの発着回数は、最近10年間で約1.5倍になっているという。

 国土交通省は管制官の習熟にあわせ、羽田の離着陸機を3年かけて少しずつ増やす方針だが、若手の男性管制官は「個人の責任ばかりを追及すると、現場が動揺したり萎縮し、ささいなミスもしっかり反省する空気が後退する」と話した。

航空安全の専門家の間では、高裁判決を疑問視する声が根強い。ヒューマンエラーを許さない安全対策では複雑な事故は防げないとする作家の柳田邦男さんらが、昨年1月、最高裁に対し、判決見直しを求める要請書を提出したこともあった。【本多健】

 ◇解説 刑事責任に異論も

 日航機のニアミス事故を巡る26日付の最高裁決定は「責任のすべてを被告らに負わせるのは相当でない」としつつ、管制官を有罪と認めた。一方で、個人の刑事責任追及より再発防止や原因究明を優先すべきだという被告側の主張に理解を示す意見も出され、同種事故の捜査や調査のあり方に一石を投じる形となった。

 管制官の指示と航空機衝突防止装置の回避指示が矛盾した場合、現在は装置の指示が優先されることになっているが、事故当時はどちらに従うべきか明確なルールがなかった。907便の機長が装置の回避指示よりも管制官の誤った指示に従った背景には、このシステムの不備があった

 裁判長を務めた宮川光治裁判官は、補足意見の中で「被告らが緊張感を持って仕事をしていれば、ニアミスは起こり得なかった」と指摘。多数の乗客が負傷した結果を踏まえ、「今回のようなケースで刑事責任を問わないことが国民の常識にかなうとは考えがたい」と主張した。

 一方で、反対意見を述べた桜井龍子裁判官は「現代の高度システムでは、誰でも起こしがちな小さなミスが重大事故につながる可能性は常にある。二重、三重の安全装置が十全の機能を果たせるよう日々の努力が求められる」と付言。管制官の刑事責任追及は原因の隠ぺいにつながり、システム全体の安全性向上につながらないとした被告側の主張に対し「重要な問題提起だ」と理解を示した

 26日には北海道上空で全日空便が管制官の誤った指示により地表520メートルまで接近するトラブルが起きたばかりだ。人的ミスを完全に防ぐことは不可能だろう。安全確保のために個人の刑事責任をどう考えるべきか、改めて議論する必要がある。【伊藤一郎】

日航機ニアミス事故 責任追及と原因究明のバランスを(2010年10月29日産経新聞)

 管制官個人にニアミス事故の刑事責任を負わせるべきかどうか-。1、2審で揺れた結論は、最高裁で「有罪」と判断された。検察審査会が責任の所在のありかを法廷に求めようとする流れもあり、管制官ら重い職責を担う個人の過失に対する刑事責任追及の動きが加速する可能性もある。

 決定は、管制官と航空機衝突防止装置(TCAS)の指示が食い違った場合の優先順位が、平成13年の事件当時は明確でなかったことなど、被告に有利な事情も検討。しかし、「責任のすべてを負わせるのが相当ではないことを意味するに過ぎない」と、業務上過失傷害罪の成立には影響しないと結論づけた。

 また、宮川光治裁判長は補足意見をつけ、「刑事責任を問わないことが、現代社会における国民の常識に適(かな)うものであるとは考えがたい」と指摘した。

 兵庫県明石市で平成13年に起きた歩道橋事故に絡み、検察審査会は検察が不起訴とした県警明石署の元副署長を業務上過失致死傷罪で「起訴すべきだ」と議決した。議決書では「有罪か無罪かではなく、市民感覚の視点から、裁判で事実関係と責任の所在を明らかにする点に重点を置く」との立場を打ち出した。

 管制官の刑事責任追及には、関係者が保身から虚偽の証言をする可能性があり原因究明を阻害するという見方や、技術で人為的ミスをカバーするシステムのもとで責任を個人に帰結させるのはなじまないとする意見も根強い。

 ただ、航空機事故など、結果が重大なケースでは、宮川裁判長の指摘する「国民の常識」や、検審の言う「市民感覚」に照らし、過失や因果関係を認定するハードルが下がる可能性も否めない。「責任追及」と「原因究明」をいかに相反しないように実現するか、バランスが問われている。(酒井潤)

空の安全担う管制官の責務 人員面では不安も 日航機ニアミス事故(2010年10月29日産経新聞)

 空の安全を担う管制官の責務に、警鐘を鳴らす最高裁決定が出た。平成13年の日航機ニアミス事件で最高裁が、管制官の刑事責任を認めた。26日には北海道・旭川空港上空で、全日空系機が管制官の誤誘導により地表に異常接近するトラブルが発生したばかり。一つ間違えば大惨事になりかねない管制ミスだが、一向に無くならない。増加する飛行便数に、管制官の増強が追いついていないことなどが背景にありそうだ。(原川真太郎)

 乗客ら計100人が負傷した平成13年の日航機ニアミスの発生後、国土交通省は再発防止のため、管制官と航空機衝突防止装置(TCAS)の指示が相反した場合、TCASを優先させることを徹底。通信制御システムを新調するなど、管制のハード面での安全対策もあわせて進めてきた

 だが、ソフト面での強化は必ずしも十分とはいえない現実がある。国交省航空局によると、国内の管制の延べ取り扱い年間件数は、11年の約396万機から21年は約491万機と、約24%増加している。しかし、管制官の数は1763人から1996人と、約13%増にとどまっている

 26日に旭川空港上空で発生したトラブルの場合、この空域の管制を担当する管制官は2人いた。1人が高度約3千メートルまでしか降下できないエリアで約1500メートルへ降下するよう誤指示を出したことに、もう1人は気づいていなかった

 空港との連絡調整など別の業務に当たっており、誤指示が出されていることがチェックできなかった可能性があるという。国交省の担当者は「個々の管制の内容を別の管制官が100%チェックするのは、現状では困難」と指摘する。

 今月21日に新滑走路運用が始まった羽田空港の管制をめぐっては、より複雑な管制技術が必要とされている。これまで並行する2本の滑走路だけだったのが、今後は方向の異なる4本の滑走路を同時に運用する場面が出てくるためだ。

 ある現役管制官は「限られた人員で膨大な数の航空機をさばかなくてはならず、安全装置などの機械によるシステムに支えられながら日々やっているのが現状」と緊張を話す。

 羽田の拡張など、重くなる一方の管制官の負担を減らそうと、国交省は全国の空の交通状況を一元的に管理している「航空交通管理センター」(福岡市)を通じて、航空機の無用な空中待機を減らして空を「渋滞」させないよう措置をとっている。しかし、ミスの発生を完全には抑え切るまでには至っていないのが現実だ。

どこの業界でも何か事故が起これば再発防止にはダブルチェックだ、いやトリプルチェックだとやたらとシステムを多重化したりして対応したがる場合がありますが、ただでさえ限られた人員でやりくりしている中でさらに手数を必要とする業務を割り当てていけば現場がどうなるか、その結果過労と集中切れから更なる事故が誘発されるのではないかという想像力は働かせてもらわなければなりませんよね。
「なに事故だと?!個人の気合いと根性が足りなかったからだ!」で終わってしまう世界においては、事故を起こさないようにする最善の策は過労に追い込まれないよう各人が業務量自体を制限していくしかないわけですが、次から次へと勝手に仕事が押し寄せてきて業務制限が出来ない職場ではそこから逃散するしか道はないのは自明の道理です。
実際近頃では航空機の便数が増える一方であるということとも関連しているのでしょうか、管制官の中からも辞めていく人間が少なからずという話も側聞しますけれども、忙しくても頑張っているという人たちにとっては忙しいは言い訳にならないぞと言う言葉こそが一番「効く」だけに、今回の判決確定は今後様々な社会的影響を与えていきそうですよね。

管制官に限らずどこの仕事でもそうですが、資格はもとよりきちんとした専門的トレーニングを必要とする専門職と一般職とはきちんと分けて考えていかないと、「役立たずは不要だ」とばかりにバッサバッサと切り捨てていったのでは、最終的にろくなキャリアもない未熟者ばかりが残って誰が一番迷惑するのかという話です。
実際に近頃この国では「かわりは幾らでもいる」を実現させようと言うことでしょうか、あちらでもこちらでも有資格専門職の大量養成を始めては(傍目には)大失敗と言うことを繰り返していますけれども、専門職がひとたびmoral(倫理)もmorale(士気)も崩壊してしまうとどうなるか、近年の医療崩壊などという現象一つ取ってみてもその社会的影響の大きさは明らかだと思うのですけれどもね。
歴史的に見てもその道のプロフェッショナルである職人というものが高く評価されてきたのは日本の良き伝統だと思いますが、市民感覚、国民感情を錦の御旗にやっていった結果プロフェッショナリズムが崩壊してしまえば、その結果はまさに当の国民に帰ってくるのだという自覚を当の国民一人一人も持っておかなければならないと思いますね。

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コメント

全運輸労働組合の批判コメント来ましたな
しかし「反動的かつ非科学的」ってさすがに大時代な…

日航907便最高裁決定にあたっての声明
http://www.zenunyu.net/zen-usr/907bin/kousaiseimei.pdf

投稿: 通りすがりのただの人 | 2010年10月30日 (土) 17時56分

>「被告らが緊張感を持って仕事をしていれば、ニアミスは起こり得なかった」

こーゆー考えは法曹や愚民の多数派ですな
ま、アホな国は勝手に逝ってください

投稿: 元外科医 | 2010年10月31日 (日) 00時11分

上級審で判決ひっくり返された下級審の裁判官にはペナルティがあってしかるべきだと思う

投稿: | 2010年10月31日 (日) 20時50分

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