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2010年10月 7日 (木)

嫌われるのはそれだけの理由がある?

日経メディカルが最近「困った患者2010」という連載を組んでいまして、またぞろ例によって例のごとくモンスターペイシェントの話題かと思っていましたら、これが微妙に様変わりしているようなんですね。
近頃では医療機関側もそれなりに暴力患者の類には対応策を取ってきているところですし、各地の警察なども何かあればすぐ呼んでと言うところも増えているようですから、単純な粗暴型というのは今やむしろ時代遅れになった代わりに別種な、ある意味でより厄介なタイプが増えてきているということです。
現在も連載は続いているようですけれども、比較的注目すべきなのは「なぜそうした新しいタイプが増えてきたか」という点で、そのあたりに的を絞って引用させていただきましょう。

本誌連動◇困った患者2010 Vol.1多様化する“困った患者”の実態 医師1000人調査で浮き彫りに(2010年9月21日日経メディカル)より抜粋

 医師5人のうち4人が、クレームや迷惑行為を経験──。日経メディカルの調査からは、依然として多くの医師が患者トラブルを経験している実態が明らかになった。ただしその患者像は多様化しており、悪質な迷惑患者に加え、悪意はないものの無理な要求をしたり、医師の指示に従わない自己中心的な患者も出現している

 日経メディカルが医師1015人(開業医140人、勤務医846人、その他29人)を対象に行った調査では、77.2%の医師が、2008年以降、患者やその家族からのクレームや迷惑行為を「経験した」と回答した(Q1)。

  08年10月号で行った同様の調査では、86.5%の医師が、過去5年間にクレーム、迷惑行為を「経験した」と回答。母集団などが異なるため今回の調査と単純に比較はできないが、「クレームや迷惑行為の経験頻度はずっと高止まり状態にあるといっていい」と、患者トラブルに詳しい大阪府保険医協会事務局次長の尾内康彦氏は話す。

自己中心的な患者が増加中

 近年、医療崩壊が世間に知られるようになったほか、医療者にとって理解不能な“トンデモ判決”が減ってきていることもあり、医療訴訟の件数自体は減少傾向にある。しかし調査の自由記述欄を見ると、「本当にひどいクレーマーは増えている印象はないが、治療内容に疑問を呈するような“小さなクレーマー”が最近かなり増えた印象がある」(50歳代男性、勤務医)、といった意見が目立った。医療訴訟自体は減っているが、その“火種”は逆に増えていることがうかがえる。

 医療機関の経営コンサルティングを手掛ける船井総合研究所チーフコンサルタントの高野昌則氏も、「患者の気質が従来とは変わってきているようだ」と話す。

 これまで医療機関で問題視されてきたのは、大声を上げて要求を通そうとしたり、医療者に暴力を振るったり、暴言を吐くような、いわゆる“モンスター”と呼ばれる患者だった。しかし最近、こうした患者に加え、悪意はないものの、医師に様々な要求を押し付けて困らせる自己中心的な患者が目立ち始めた

 今回の調査では、“モンスター患者”にありがちな悪質で暴力的な迷惑行為が08年以降「増えている」と回答した医師は35.4%にとどまったのに対し、自己中心的な態度による迷惑行為が「増えている」とした医師は71.0%にも上った(Q2)。

 また、最近の経済事情を反映して、治療費の未払いや、検査・治療を拒否する患者も増加傾向にある。実際、経済的事情に起因する迷惑行為が「増えている」とした医師は60.2%もいた。
(略)
 自己中心的な態度や経済的事情に起因する迷惑行為を働く患者は、“モンスター患者”のように警察ざたに発展する心配はほとんどない。しかし、診療に納得せず、検査や治療を拒否するといった行為により、医師は思うように診療できなかったり、説得に多くの時間や労力を奪われたりする。対応に追われてほかの患者からのクレームが2次的に発生する可能性もある。目に見える被害がなく、解決方法も患者によって様々なので、ある意味 “モンスター患者”より厄介といえる存在だ。
(略)

医療情報を都合よく解釈

 自己中心的な患者の中でも、テレビやインターネットなどから入手した医療情報に絶大な信頼を置き、医師がそれとは異なる治療方針を示すと反論したり、従わなかったりする患者が特に増えてきているようだ。背景には、患者が医療情報を得やすくなったことがある。

 この数年間で、健康や医療に関するテレビ番組が多くなったほか、新聞や雑誌では、最先端の医療技術や新しい治療法などを取り上げた記事がよく目に付くようになった。さらに、インターネットの普及により、これまで簡単に得られなかった専門的な医療情報を医師でなくても容易に入手できるようになった。

 ところがバラエティー色の強いテレビ番組や雑誌では、情報を誇張したり、極端な症例を紹介したり、センセーショナルに演出された内容が少なくない。このため患者が間違った情報を身に付けてしまうことがある。

 今回の調査でも、クレーム、迷惑行為が増えている要因として、「マスコミによる医療報道の過熱化」を挙げた医師が68.5%に上り、最も多かった(Q4)。

 一方、インターネットでは、利用者自身がキーワードを設定して情報を検索するため、断片的な情報しか得られないことも多い。このため患者が情報を誤って解釈してしまう可能性がある。調査では25.1%の医師が迷惑行為が増えている要因に、「インターネットを中心とした医療・健康情報へのアクセスの向上」を挙げた。

 自分や家族の健康に関連する医療情報を集めること自体は、決して悪いことではない。しかしメディアから得られる医療情報は、断片的で中途半端なものもあり、患者が情報を正確に選別して解釈するのは難しい。その結果、自己中心的な気質と相まって、間違った医療知識を振りかざす患者が増えているわけだ。

 クレーム、迷惑行為の要因として、「医療に対する過剰な期待」を挙げた医師も60.4%に上った。船井総研の高野氏は、「患者は、医療機関にかかる前から病医院のホームページや評価サイト、個人のブログなどで、既にドクターショッピングを始めている。いくつもの医療機関を比較して自分に一番合った医療機関を選んだつもりでいるので、『ここなら私の思い通りの治療をしてくれるはず』という期待が高くなっている。そして思い通りにならなかったときに、クレームに発展する」と話す。
(略)

本誌連動◇困った患者2010 Vol.3テレビの患者への影響力を実感 今どきの困った患者(その1)医療知識を振りかざす【調査編】(2010年9月24日日経メディカル)

 テレビ番組やインターネットから情報を集め、医師の前でも自分の見立てを主張する──。

 調査では、こうした“知識武装”をする患者や家族が「増えている」と回答した人は7割近くにも上った(Q5)。「医療や健康管理に関心を持って、正しい知識を豊富に持つ患者は歓迎。問題なのは、間違った情報を信じたり、自分に都合のよい偏った知識に固執する患者である」といったコメントが多く寄せられた。

 偏った知識を持つ患者のケースとして最も多かったのは、「自分なりの見立てを強硬に主張する」だった(Q6)。北陸地方のある開業医は、「固執していた情報の誤りを指摘した途端、ぱたりと受診をやめてしまう患者も少なくない」と頭を抱える。

 思い込みで勝手な診断を下すだけでなく、偏った情報を基に治療法や処方薬まで指定してくる患者に対し、その間違いを正すのに苦慮している医師が多いことがうかがわれる。

 患者への影響力が強いメディアの第1位は、「テレビ」だった(Q7)。ある勤務医は、「テレビ番組を通じて聞き慣れない疾患名を知り、軽微な症状でも心配して来院する患者は多い。診察上は否定的であっても安心してもらえず、説明に苦労する」と話す。テレビで取り上げられた有名医師への紹介状を求められるケースも多いようだ。

 「インターネット」は2番目に挙がり、患者が自発的に医療情報を集めるようになっている実態がうかがえた。

自由意見
私が遭遇した、医療知識を振りかざす患者たち

    * テレビ番組で、あるタレントが「検査の画像はデジタルカメラで撮るようにしている」と発言したところ、翌日の外来に早速、カメラで撮らせてほしいという患者が現れた。問題はないので撮らせてあげたが、テレビの影響力が大きいことを改めて実感した。(40歳代男性、脳神経外科医)
    * 左肩甲部周辺の痛みを訴えた70歳代女性。身体所見、画像所見は異常なし。様子を見ましょうと言うと、さらなるMRI検査を要求した揚げ句、某大学医学部整形外科の教授が脊椎の権威だから紹介しろと言い出した。自分の出身医局の教授で、こんな患者を紹介したら物笑いの種にされると思ったが、調べてみるとその教授はちょうど定年退職したとか。「もういませんよ」と言ってしのいだ。最後はペインクリニックに相談するように勧めた。(30歳代女性、整形外科医)
    * インターネットに多数の広告を出しているエビデンスのない民間療法や、日本では保険収載されていない薬剤の情報を入手し、治療や処方を要求される。(50歳代男性、産婦人科医)
    * 発症から1日たって受診した脳梗塞の患者。適応がないにもかかわらず、「tPA静注療法を実施している病院へ転院させろ」と執拗に迫られた。(30歳代男性、内科医)
    * 「不眠にはこの薬剤がいい」と自分なりに調べてきた患者。30日以上処方できない薬剤でも、それ以上の処方日数を要求された。また、降圧薬を服用中の患者が薬剤の副作用をインターネットで詳細に調べ、診察のたびにそれと合致する症状に関して細かくクレームを付けたり、薬剤の変更を迫ってきたこともある。(30歳代男性、内科医)
    * 「むずむず脚症候群」に関する記事を集めて持参し、自己診断で治療薬を要求した患者。「この病気ではない」と告げたところ、「先生は勉強不足だ」と怒り出した。パーキンソン症候群として治療を始めたが、専門家に診てもらうと言って、勝手に転医してしまった。(60歳代男性、内科医)
    * 不定期に来院していた糖尿病患者。ベル麻痺の発症早期にステロイドを使用しなかったことに対して、インターネットから入手した医学辞典のコピーを持ち出し、家族や知り合いが次々と訪れて「不適切治療であった。神経内科専門医への紹介と費用をよこせ」と執拗に抗議してきた。医学的正当性を説明するも、ウェブサイトの情報を金科玉条のごとく振りかざし、なかなか納得しなかった。数カ月かかったが、他院でも同様の説明を受けたようで来院しなくなった。(40歳代男性、内科医)
    * 知り合いに医療従事者がいる患者は、中途半端な医学知識を吹き込まれていることが多く、かえってやりにくい。(50歳代男性、内科医)
    * テレビのワイドショー番組で紹介された治療法を要求した患者。診察上、治療は不要である旨を告げたところ、「どうして私には治療してくれないのか。医者の好みで患者を選ぶのか」と非難された。(50歳代男性、精神科医)
    * うつ病の症状をセルフチェックできるというウェブサイトで、「うつ病の疑いがある」と判定された会社員の男性。勝手に自己診断を下し、症状もないのに、「会社を休むので診断書を書いてほしい」と要求された。(40歳代男性、精神科医)
    * 癌性疼痛の緩和がスムーズにいかないことに関して、「WHOのガイドラインではこうなっているのに、なぜその通りに行わないのか。すぐに痛みがとれないのはおかしい」とクレームを付けられた。副作用などの問題もあったため、示されたように簡単に増量したり、鎮痛補助薬を追加できるものではないことを説明した。(30歳代男性、内科医)

ま、昔から「でも先生!み○も○たはこう言ってたんですよ!」なんて手合いは少なからずいたわけですし、テレビの健康番組に触発されて何やら妙な病気を作り出してしまったような方々は地方会などで必ずと言っていいほど症例報告に出てくるものですが、そういうテレビ情報をそのものズバリで受け取っている人間はむしろ扱いやすくて、往々にして自己流解釈が入るほど難治症例化する印象もありますけどね。
もちろん末端臨床現場ではそういう患者様はご希望通りどこへなりと紹介状をつけて送り出していますという先生も多いのでしょうが、送られてくる側の専門外来でもこういう方々が増えてくると大変な話ですし、業界全体としてはずいぶんと大きな迷惑を被っているんじゃないかと推測できる話です。
こうした患者が増えてきた一因として世間でもメタボ検診だ何だと健康管理にうるさいことを言うようになった、それもあって医療情報が氾濫するようになっていることも大きな影響があるのは言うまでもなさそうですが、一方の当事者であるマスコミからはこうした問題はどう見えているのか、先日出た産経新聞の記事から引用してみましょう。

【社会部オンデマンド】医者への苦情はどこに言えばいい? 公的窓口は病院に伝えるだけで不十分の声も(2010年10月2日産経新聞)

 「今までに何度か、病院で怒鳴り散らされるなど嫌な出来事に遭遇したり、不快になることを言われたりしました。医療ミス以外の医者への苦情は、泣き寝入りするしかないのでしょうか?」=鳥取市の女性会社員(22) 

病院によって対応にばらつき

 医者に暴言を吐かれた、治療内容に不安がある-。病院に不満がありながらも、どう伝えればいいのか分からない人は多い

 医療に対する苦情の公的な相談窓口としては、都道府県などが運営する「医療安全支援センター」がある。センターの名称は自治体ごとに異なるが、厚生労働省が医療事故対策の柱として平成15年から設置を呼びかけ、昨年1月の時点で全国に388カ所ある。

 医師や職員の対応などの苦情以外にも、さまざまな医療に関する相談を受け付けて中立的な立場で助言。東京都が設置する「患者の声相談窓口」では、都内の医療機関で行われている医療について、看護師や保健師など専門の職員が電話で相談を受けている。

 都によると、年間で約1万件、1日に40~50件の相談があり、約4割が「診察で不快なことを言われた」など、医師や診療についての苦情だという。

 こうした苦情は、患者からの要望として該当の医療機関へ伝えられる。衛生面での問題など、患者の安全に直接かかわる場合は保健所に連絡し、立ち入り検査が行われることもある。だが、センターは要望を病院側に伝えるだけで、「十分に機能していない」と指摘する声も多い

 医療機関が独自に患者からの苦情や相談に対応する体制を整える動きもある。厚労省によると、国が高度な医療の提供を認める特定機能病院には、患者相談窓口の設置が義務付けられている。それ以外の医療機関でも、独自に窓口を設けているところは多いという。

 先進的な取り組みで知られるのは、「新葛飾病院」(東京都葛飾区)。この病院では、患者からの問い合わせの窓口となる「医療安全対策室」に、医療事故で息子を亡くした経験がある豊田郁子さん(42)を雇っている。

 豊田さんは、セーフティーマネジャーとして、悩みを持った患者と病院の橋渡しをする。「主治医を変えたい。でも治療に影響が出ると困るので、医師には伝わらないようにしてほしい」。こうした患者の相談を親身になって聞き、病院側の言い分にも耳を傾ける。双方が納得いくまで対話を続け、患者や病院の意向に沿う形で問題解決の糸口を探る。患者と病院側の両方を支援するのが、豊田さんの役割だ。

 豊田さんは「ほとんどの病院に相談窓口があるはず。探してみて、まずは気軽に相談してほしい」と話すが、「多くの病院では、窓口の存在をうまく知らせることができていない」とも指摘。また、窓口はあっても適切な対応ができる職員がいない場合もあり、病院によって対応にばらつきがあるのが現状だという。

医師と患者の対話も必要

 医療事故などトラブルが起こった際の患者と医療者の橋渡し役を「医療メディエーター(医療対話仲介者)」と呼び、養成する取り組みも進んでいる。

 「日本医療メディエーター協会」の代表理事で、早稲田大学大学院法務研究科の和田仁孝教授は「トラブルの根底には、医者と患者のコミュニケーションのずれがある」と話す。

患者が必死に自分の不安を伝えようとしているのに、病院側は「クレーマー」とレッテルを張ることはままあるという。多忙なこともあり、トラブルが起こったとき患者の言葉の背景にまで思いを巡らせることができる医者は、多くはない。

 メディエーターの養成プログラムでは、トラブルを想定したロールプレーイングなどを通じて、患者と向き合う姿勢やコミュニケーションのスキルを身につける。日常的に患者と接する際にも役立つという。

 こうした医師と患者の対話文化を定着させるべく、国も対策に乗り出した。

 厚労省は昨年度から、患者と医師の対話促進をサポートする「院内相談員」の養成研修に、補助金を支給する事業を始めた。医療関係者と患者側が意見を交わすシンポジウムを開いたり、医療事故に遭った患者や家族を交えた養成研修を開いたりして、全国に相談員を拡大させたい考えだ。

 和田教授は「患者の声をきちんと反映させることで、医療の質も上がっていく。医療安全支援センターに指導権限を持たせるなど、うまく機能させる工夫も必要だ」と話している。(長谷川陽子)

いやあ、まだまだ足りませんか(苦笑)。
さすが産経と言えば医療記事というくらいに隠れファンの多い同紙だけあってするどい記事で、もちろんそれぞれにごもっともと言うべきことなのでしょうが、では何故そうなっているのかということに思いをいたさずに「ではコミュニケーション不足を解消しよう」と頑張ったところで、結局付け焼き刃の対症療法ということになりますから、根本的解決策を見いだすにはまず正しい現状認識が欠かせません。
医療の歴史を見れば化石世代とも言うべき「お医者様」と呼ばれていた世代があって、未だ現役の末端に名を連ねているこれらの方々はコミュニケーションスキル云々以前に、人としてその態度はどうよ?と思われるレベルの接遇問題があったことは確かですからどうぞいくらでも教育してやってくださいですが、正直この方々は今や絶滅危惧種と化しつつあります。
それに代わって現在主流を占めているのは「患者様と呼びましょう」運動を経験したり、インフォームドコンセントこそ何より大事であるといった教育を受けてきた世代ですけれども、同時に彼らが学んできたのはリスクマネージメントの重要性であるとか、要するに「いかにトラブルを抱え込まないように仕事をこなすか」のテクニックでもあるわけです。

なぜそういうテクニックが必要かと言えば、例えば昨今導入が進められている定額払い(いわゆるDPC)などもそうですが、想定されている標準から外れた途端に儲けがなくなってしまう診療報酬体系が決められていて、トラブルなど起こした日には大変な大赤字なんてことにもなりかねない価格設定になっていることも一因ですよね。
例えば最近とある有名基幹病院において直腸癌は肛門を残せそうな症例でもほとんど人工肛門にしてしまうなんて話があって、ひと頃肛門温存の術式が流行ったのに何故そんなことになっているのかとよくよく聞いてみましたら、実際に手術をやっているのは中堅以下の若い先生達が中心で、その先生達は後でリークなどのトラブルになるくらいならと最初から確実なやり方しかしないんだと言うことなんですね。

手術などという大事に限らず日常の外来診療においても同じことで、時間をかけて丁寧な説明をして一人の顧客に納得いただいたところで、そんなことでお金をいただけるようにはなっていない、それなら消費した時間は全てただ働きか、賽の河原で石を積んだのと同じことかという話ですよね。
何よりそんな面倒なことをしたところで別に給料が増えるわけでもなし、病院からしてもそんな一円の収入にもならない仕事に時間を浪費する医者などが増えてもらっては困るということですから、それなら手のかかる患者はさっさと余所にでも行っていただいて聞き分けの良い患者だけ抱えている方が、自分にも病院にもよほど利益につながるというのが現在の保険診療における「正解」ということになりますよね。
要するにこれは世間で求められている「医療にもコスト意識を」論に従った結果であって、病院が儲かって幾らでもただ働きが出来た時代ならともかく、今どきそんなコスト意識に乏しい病院は真っ先に潰れていくということでしょう。

「なんたることだ!それでも医者か!」なんて考える方もいらっしゃるかも知れませんが、逆の方向からこの問題を見てみれば、例えばたまたま入ったラーメン屋がまずかったとして、店長以下スタッフを捕まえて「おたくのラーメンはスープの取り方が間違っているんだ!そもそも豚骨の扱いは」なんて美味しんぼごっこをやる人間が今どきいるかという話です。
普通の人間ならまずい店を教育してうまい店にするよりは、そんな店には二度と行かないことを選択するでしょうし、逆に店長を説教してるような顧客を見れば「なにあれキモい」ということになりますが、こと医療の世界においてだけ何やら別の方法論が正解であると考えるよりは、やはり医療の世界にも世間並みの常識を通用させる方が話が早いんじゃないかと言う気がしませんか。
医療も産業としての総体として考えるとごく当たり前の法則に従って営まれているわけで、そうであれば医療の世界にだけ飛び抜けて特殊な感覚を要求するよりは、どうやったら利用者にとって望む結果がついてくるのかを、世間並みの常識に従って考えていくべきであるということになるんじゃないでしょうか。

医療業界でも近頃ようやくマニュアル化が進んでいて、患者説明なども個々人が好き勝手なことを喋っていたのではダメで、きちんと過不足なく統一の書式を用いて説明するのが当たり前になっていますし、それも医療にコスト意識をという社会的要請に答えた結果でもあるわけですが、ではマニュアル対応で納得が出来ない「手間がかかる人たち」にとってはどうなのかです。
少なくとも診療報酬上はそんな例外的な人たちに特別対応をするようなコストは出してくれるはずもないわけで、そもそも大多数の人がその対応で納得出来るからこそマニュアルとして通用しているわけのですから、例外的な個人に赤字サービスを病院側から提供する義務があるのかどうか、対応できない場合に対応できる施設に行っていただくのが非難されるべきことなのかですね。
本当であればそういう人たちは自由診療の施設になりと行っていただいて、自分の満足出来るサービスに相応の代価を払っていただくのが筋なんだと思いますが、旧来の医者が赤字垂れ流しにこだわらず保険診療扱いで対応して来たことが患者からすれば勘違いを産んだ原因であり、そうしたコスト意識に乏しい医者と患者が集まる公立病院などがとりわけ赤字山積となっている現状の一因でもあるわけですね。

100%公定価格の保険診療である以上は、国民が選んだ政府の決めた診療報酬体系に従って労力配分を決めるのは当然であって、例えば廊下をぴかぴかに磨き上げることに医者も看護師も精出しているような病院はろくに収入が得られず潰れてしまうのは当然ですよね。
医療に限らず現代日本人は無形のサービスにお金を出すという感覚に乏しいようですが、どこの施設もマンパワー上も経営的にもぎりぎりどころか赤字にどっぷり染まっている今の時代に心の満足まで求めるのであれば、いつまでも赤字覚悟の出血大サービスにばかり頼るのも無理がありそうです。
そう考えると「もっと患者の言うことに耳を傾けてくれてもいいじゃないか!」と叫んでいるだけでは何の解決にもならない話で、耳を傾けている間は何の見返りも得られないただ働きという報酬体系こそが問題であるわけですから、そうした患者対応自体にお金が出るようにしろと国にこそ働きかけるべきでしょう。

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コメント

そーです、顧問医の先生もよくグッチてます
専門家の医者のアドバイスよりネットの何の根拠も無い情報の方を信奉してると.....
メタボにもなんとか茶に膨大なお金掛けるよりこの方が安上がりで簡単なんですが........

投稿: 通勤フミフミ | 2010年10月 8日 (金) 13時33分

新語アナリストの亀井肇氏が、これから世の中に浸透しそうな言葉を先取り紹介。
「グーグル症」(Google Disease)という言葉を同氏は紹介しているが、これについて解説する。
なんでもグーグルで検索してしまう人が陥りがちな症状とは?

【定義】
グーグルの検索で病気について自分で調べ、素人判断で重篤な病気にかかっていると思い込んだり、
医師に対して治療法で文句をつける症状。

【情報過多】
少し体に変調をきたした時に、その症状に近い病名をネットで見つけ、
そこに書いてある情報をもとに、自分の体に起こっている変調以外の症状も自分にあると思い込んでしまう。
医師に対してその思い込みを実際の“症状”として話してしまうので、
医師はどんな病気なのか判断がつかなくなってしまう。

【蛇足】
「餅は餅屋」。
http://www.news-postseven.com/archives/20101011_2756.html

投稿: こういうのもある | 2010年10月11日 (月) 20時21分

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