« 今日のぐり:「うどん処 あまからさん」 | トップページ | 需要と供給が一致すれば、あとは実施だけ? »

2010年10月12日 (火)

医師数増加に反対する日医が打ち出す対案とは?

先日は厚労省による初めての医師不足実態調査なるものを紹介しましたけれども、どうも現場の実感とはいささか異なったデータなのではないかという印象を受けたのは自分だけではないようです。
このデータが今後の政策決定の下地にされてしまうことには各方面から危惧の声が上がっていますけれども、本日まずは医師の労組である医師ユニオンのコメントを紹介してみましょう。

厚労省の医師不足調査は「誤った認識与える」―医師ユニオン声明(2010年10月7日CBニュース)

勤務医でつくる全国医師ユニオンは10月7日、厚生労働省が9月下旬に発表した「病院等における必要医師数実態調査の概要」について声明を出し、「初めて現場の実態を調査したという点で一定の評価はできるが、大きく誤った認識を国民に与える可能性が高い」との見解を示した。

同調査は、医師不足の実態を明らかにしようと、全国の病院と分娩取り扱い診療所の計1万262施設を対象に、必要医師数や勤務形態などを調べたもの。

声明では、同調査の手法が「各医療機関の意識調査」で、「経営的視点も含めた主観的調査にすぎない」と指摘。また、地域によっては医師不足で医療機関が廃院になっており、「病院が存在しない地域の必要医師数が0人となってしまう」など、調査の不備があるとしている。
さらに同調査の最大の問題点として、「現在の低い診療報酬や医師の労働基準法違反を前提とした調査になっていること」を挙げ、「様々な医療問題を解決する上でのあるべき医師数と病院経営上可能な医師の求人とは全く別のもの」として、当直を課している全医療機関で、交代制勤務を導入した場合の医師数を調べるべきとの見解を示している。

また、約2万4000人の医師不足という必要医師数の調査結果については、OECD(経済協力開発機構)加盟国の人口1000人当たりの医師数が平均3.1人なのに対し、日本は2.0人との現状を示し、「OECD並みの医師数にするためには、最低でも現状の1.5 倍の13万人の医師が必要」で、すべての医療機関が対象ではない今回の調査で得られた結果について、「数字が一人歩きすることを危惧する」としている。

こうした調査の問題点を踏まえて声明では、「関係省庁には、本来あるべき医師数を明らかにし、医療再生へ向けた医師増員と公的医療費・研究費・教育費の増額を求める」としている。

すでに廃院になった施設の需要がカウントされていないというのはユニオンの指摘する通りなんですが、逆にそうした地域に医師を新たに送り込んでもう一度病院を再建するというのも厚労省の過去の政策上ちょっと考えにくいですから、この点については確信犯的に行われている可能性も無きにしも非ずなんだとも思います。
一方でユニオンの主張する通りあくまで経営的視点からの需給調査であって、その実態が医師の違法労働を前提にした数字であるという点も全くその通りだと思うのですが、ここで注目していただきたいのがユニオンとしては医師数はOECD平均並み、現状比1.5倍まで増やさなければならないと考えているらしいことですよね。
これに対してかねて厚労省の医師増加政策に批判的な日医ですけれども、こんなコメントを出して厚労省を批判しているのが好対照に思えますね。

医学部新設は「稚拙な対応」 日医が文科省を批判(2010年10月6日47ニュース)

 日本医師会は6日、医師不足解消のため、大学の医学部新設に向け専門家会議を設置するとの文部科学省の方針について「稚拙な対応は避けるべきだ」と批判する見解を発表した。

 日医によると、医学部の定員は2007年度から10年度までの4年間で1221人増加した。今後の人口減を踏まえると、現行水準のままでも10年後には人口当たりの医師数が1・2倍になる見通しという。

 中川俊男副会長は「既存の医学部の定員が増え、今後徐々に充足される可能性がある。問題はむしろ地域や診療科による偏在で、その解消に向けた仕組みを検討するべきだ」と述べた。

 厚生労働省は9月、全国で約2万4千人の医師が不足しているとの調査結果を発表している。

「問題は医師偏在」と改めて強調―必要医師数調査受け日医(2010年10月6日CBニュース)

 日本医師会は10月6日、厚生労働省が実施した必要医師数の実態調査結果を受けて、医師不足と偏在解消に向けての日医の見解を発表した。見解では、これまでの既存医学部の定員増によって、今後必要な医師数は徐々に充足されるため、医学部を新設するという「拙速な対応」は避けるべきとの認識を示した上で、「むしろ問題は医師の偏在にある」と改めて強調している。同日記者会見した中川俊男副会長は、現在執行部で地域間・診療科間の偏在解消策を検討しており、「今年中か、遅くとも今年度中に(提言する)」と述べた。

 見解では、厚労省の調査結果と2008年に日医が行った調査結果を基に、「マクロで見れば現状の1.1倍以上の医師数が必要とされている」ものの、地域間・診療科間の偏在はより深刻だと指摘している。
 一方、近年の医学部入学定員数について、07年度から10年度にかけて1221人増加しており、「新設大医学部の定員数を100人と仮定すると、約12 大学分に相当する」と指摘。さらに、▽今後医師数が年1%増加する▽今後10年間の医学部定員が今年度(8846人)と同水準である―と仮定して人口推計を加味すると、20年には人口1000人当たり医師数が現状の1.2倍に当たる2.6人になるとの推計を示した。

 見解ではまた、医学部新設に反対する姿勢を改めて強調。病院を経営しているところが主体となって医学部を新設すれば、それらの病院への医師供給は充足されるが、「地域の医師不足、ましてや医師偏在が解消されるわけではない」と指摘した。
 さらに、医師養成数の増加が文部科学省主導で行われていることに強い危惧を表明し、「厚労省主導により、あるべき医療を踏まえて検討を進めるべき」と主張している。

 中川副会長は、細川律夫厚生労働相が1日の記者会見で、医学部の新設について「文部科学省の所管でもある」などと述べ、具体策に言及しなかったことについて、「医師不足、医師偏在は厚労省の重要な課題だ。文科省の所管だからという表現はいかがなものか」と問題視した。
 一方、必要医師数については「変化するので、継続的に見直すべきだ」と述べた上で、「既存医学部の定員数を調整するのは可能だと思うが、医学部を新設して、その医学部をやめてもらうのはまず無理だ」と強調した。

ユニオンの方では1.5倍まで増やせと言い、日医はそもそも医師の総数不足よりも偏在の問題なのだからこれ以上無闇に増やすな、偏在解消の仕組みこそが必要なのだと言う、どちらが正しいかは将来の検討課題としても、勤務医の労働環境というものに対する過去の日医の貢献ぶりを考えた場合に、彼らがどうやってその偏在を解消させるつもりなのかと非常に興味が湧く話です。
日医としては現在医師偏在解消のためのプランを作成中ということですが、例えば同じ医師強制配置と言っても読売新聞が主張する僻地を含む医師不足地域の強制的医師派遣と、厚労省がかねて主導してきた基幹病院への医師集中とでは、その目指す方向性が全く異なるわけですよね。
もちろん読売などは「いや、我々は医者を集めた基幹病院から末端医療機関へ医者を送り込むことを考えている。基本は厚労省と同じだ」などと主張するのかも知れませんが、いずれにしても日医としては医者をどのように再分布を図ろうとしているのかもさることながら、どうやってそれを実現しようとしているのかにも注目が集まるわけです。

そういう点で日医のコメントを見てみますと、新設医大を拒否する根拠として「病院をやっているところが医大を作っても自前の医者充足に使われるだけだ」という、普通に考えれば医学部を持てるほど大きな基幹病院であれば勤務医も相当な激務であるはずですが、それを自前の医師調達ルートを作って解消することなどまかりならん!とも受け取れる話ですよね。
開業医の利権団体と言われて久しい日医なども、近頃では一生懸命勤務医も日医に入ってくれと言っているようですが、当然ながら幹部連中は開業医系列の御老人方に占められていますし、本当に多忙極まる奴隷勤務医などは到底医師会活動なとやっていられるものでもないという現実があります。
この状況で日医が「大勢医者を抱えているんだから、病院勤務医を僻地に派遣すればいい」なんてことを言い出そうものなら「また勤務医だけに貧乏くじを引かせて済ませる気か」とますます悪評高まる結果になりそうですが、日医としても一応ポーズとしては勤務医の労働環境も考えてますよと言いたいのか、こんな集会もやっているようですね。

地域医療再生へ交流 勤務医の労働改善急務 日医集会(2010年10月10日しんぶん赤旗)

 「地域医療再生~地域の力、医師の団結~」をテーマに9日、栃木県宇都宮市で日本医師会主催の全国医師会勤務医部会連絡協議会が開かれ、行政関係者や市民を含め約410人が参加しました。同協議会は年1回開催。31回目のことし、初めて一般公開しました。

 日本医師会の原中勝征会長が「長年にわたる医療費抑制政策の結果、進みつつある地域医療の崩壊から一刻も早く脱却し、再生への道を切り開くのが本会の使命」とあいさつ。「総医療費の大幅な引き上げこそ地域医療の再生に必要不可欠である。過酷な労働環境を強いられている勤務医への強い支援が喫緊の最優先課題だ」とのべました。

 また同氏は講演で、現政権で出ている混合診療全面解禁や医療ツーリズム(国際医療交流)などの考え方の問題点を指摘しました。

 医師不足についての日本医師会勤務医委員会の報告では、病院全体で医師不足を感じている比率は71・5%とし、勤務医の大多数は過労死基準の1カ月100時間を超える超過勤務と長時間連続勤務を恒常的に強いられているとのべました。

 シンポジウム「医療再生の新しい取り組み」で、地域医療を守るために住民、行政、医療関係者が共同を広げている徳島県や宮崎県延岡市などの経験を交流しました。また、栃木県大田原赤十字病院の救急医療のとりくみ、女性医師支援、各地の多様な医療連携の実践でも活発な論議が行われました。

ま、言っている内容は相変わらず旧来の主張通りという様子ですから、実際問題どういう勤務医への支援を彼らが考えているのか斜め上方向への期待が高まりますが、実際に話を聞きに行ったという方の声などを聞いてみても「女性医師の活用こそ大事なんだ!」なんてことを熱心に主張していたと言うのですから、本当に彼らに任せて大丈夫なのかと不安を抱く人間も多いのではないでしょうか?
そもそも医師不足だ、勤務医の激務だなんて話は昨日今日のことでもないのに、「せめて今年度中には何かしらの対策案が出せたら」なんて悠長なことを言っている時点で彼らの本気度が知れるということですし、何しろどこまで行っても現場感覚に全く疎いということをこうまで明らかにされてしまうと、やはり終わっている組織なのかなと改めて考えざるを得ない気配ですよね。
日医としてもすっかり民主党政権から冷遇されている現状は言わずもがなですが、仮に今後また政権交代が起こったところで小沢氏支持など公言してしまった原中会長一派が再び日の目を見るとも思えませんから、せめて現場の医者からは支持される話でも言ってみるのであればともかく、相変わらず真逆の路線を突っ走るとなれば本当に組織としての存在意義がどこにあるのかが問われそうです。

|

« 今日のぐり:「うどん処 あまからさん」 | トップページ | 需要と供給が一致すれば、あとは実施だけ? »

心と体」カテゴリの記事

コメント

おそらく日医のアナウンス(主張)は政権与党・厚労省の思惑に沿ったものだと思いますよ。

厚労省は別に医師を増やそうと熱心に思っているわけではなく、むしろ文科省リードの医学部新設を苦々しく思っているでしょうし、足りないという認識はあるものの、いまだ「偏在と言ったのは間違いだった」とは言ってませんから。

いまの日医指導部は、政権与党・厚労省に対抗する根性もないですから、むしろ飼い犬になる方向に進んでいるとしか思えませんので。
もちろん、全く厚労省と同じ発言なら、逆に会員から総スカンを食らいますから、ちょっと対抗する、くらいのお約束レベルの反論でお茶を濁しているのがアリアリです。

投稿: Seisan | 2010年10月12日 (火) 11時51分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/49715492

この記事へのトラックバック一覧です: 医師数増加に反対する日医が打ち出す対案とは?:

« 今日のぐり:「うどん処 あまからさん」 | トップページ | 需要と供給が一致すれば、あとは実施だけ? »