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2010年9月22日 (水)

意外なほど滲透しているホメオパシーの現状とは

朝日新聞ら各社に遅れは取りましたが、日経新聞もついにホメオパシー批判に参戦したかと話題になっているのがこちらの記事です。

現代医学を否定する危険  科学的根拠なしに独り歩き 背景に偽薬効果と自然志向  (2010年9月17日日本経済新聞)

 代替医療への期待が行き過ぎると、科学的根拠のない民間療法までもがはびこり、症状を悪化させることにもなりかねない。医師らは現代医学を否定するケースはとくに気をつけてほしいと注意喚起する。

 8月24日、日本学術会議の定例会見にはいつもの数倍の報道陣が詰めかけた。民間療法「ホメオパシー」について、同会議が見解を述べるとあらかじめ知らせていたからだ。

 「科学的な根拠がなく、荒唐無稽(こうとうむけい)。治療への使用は慎むべきだ」――。宮内庁皇室医務主管も務める金沢一郎会長はこう述べ、ホメオパシーの治療効果を完全否定した。唐木英明副会長も「科学でないものを治療として使えば、患者を通常の医療から遠ざけることになりかねない」と強い口調で懸念を表明した。

 後日、日本医師会や日本医学会なども学術会議の会長談話を支持するとの声明を公表し、ホメオパシーを日本の医療から事実上、締め出した

希釈水は単なる水

 ホメオパシーは植物や鉱物の成分を限りなく薄めた水にして砂糖玉に染み込ませて「レメディー」を作り、それを飲み薬のようにして使い、様々な難病を治すとする民間療法。今年5月、山口地裁で、新生児の頭蓋(ずがい)内出血の予防にビタミンK2の投与を否定してホメオパシーを行った助産師を相手取り損害賠償を求めた裁判が起き、社会問題になった

 科学的にみれば希釈された水は単なる水でしかない。にもかかわらず、こうした民間療法が代替医療としてまかり通るのはどうしてか。

 背景の一つにプラセボ(偽薬)効果がある。砂糖水のようなものでも偽物と知らずに薬だと信じて飲めば、心理的な治療効果が表れるというものだ。

 シドニー大学などの国際研究チームは今年2月、英医学誌「ランセット」にプラセボ効果に関する学術論文を100年以上さかのぼり調査・分析した結果を発表した。臨床現場や創薬時の比較試験で、プラセボ効果が確認されていることが判明、なかには初歩的な治療と大差のない効き目もあった。

 国内でもプラセボ効果は実際の医療に利用されている。

 帝京大学医療技術学部の小松明教授らは2008年、全国の病床数300床以上の955病院と、都内の20~299床の337病院を対象に、「プラセボ治療」の実施状況をアンケート調査した。全国の病院では全体の22%、都内の病院では59%が、過去1年間にプラセボを投与したことがあると回答した。痛みや不眠を対象にしているケースが目立った。

医療不信と関係?

 もう一つが医療を受ける側に広がる自然派志向だ。

 山梨県に住むA子さん(40)は、昨年末、第3子となる長男を自宅で産んだ。助産師にきてもらい、夫と長女、次女が見守る中での出産となった。

 6年前、長女を出産したのは夫の海外赴任先の米国の病院だった。スタッフと医療機器に囲まれた殺風景な分娩(ぶんべん)室で流れ作業のように進んだ出産に「違和感を覚えた」という。

 助産所での出産はおよそ10人に1人の割合で出血などで病院に搬送されるにもかかわらず、医療機関以外で出産を望む妊婦の数は増えている。全出産数に占める割合は1%強だが、出生数の減少傾向が続くなか、その数字は変わっていない。

 医療受診行動に詳しい聖路加看護大学の堀成美助教は「自然派志向が強い女性の中には、(医学のような)人工的なものほど加害的で、逆に自然であれば安全という誤った認識が強い」と解説する。

 乳幼児のワクチン接種などにもその傾向が出ている。水ぼうそうやおたふくかぜなどの予防接種は受けさせずに、「かかった子どもがいたら故意に感染させて自然に免疫をつけるほうがいい」と小児科医からすると「非常識」に考える母親も少なくない。

 北里大学医学部産婦人科の海野信也教授は「リスクをきちんと認識して選択するのならいいが、そうでない人に、自然だから安全という誤った認識が広がると危険だ」と指摘する。

 ホメオパシーが200年ほど前にドイツで誕生し、その後、欧州で広まったのも、西洋医学に対抗する意味合いが強かったとされる。最近の代替医療への期待は医療不信ともなんらかの関係があるのかもしれない。

 ただ、科学的知見に基づき、医学は大きく進展した。治療法が確立した領域にまで、代替医療が踏み込むのは危うい

 矢野寿彦、西村絵、長倉克枝が担当しました。

記事の内容自体は各社の後追いといったもので特に新鮮みはありませんけれども、興味深いのは記事中に掲載されている東京都での相談・苦情件数の表で、これだけ社会的に危険性が云々されているような状況にも関わらず、ホメオパシーは他の代替医療に比べてずいぶんと件数が少ないんだなという印象を受けるところですよね。
すでに当「ぐり研」でも何度も書いてきました通り、ホメオパシーというのは非常にカルト的色彩が強く、こうした社会的バッシングも布教がより一層広まるための予想された試練だと一致団結する傾向があるのに加え、先日もお伝えしましたように弁護士ら各界の専門家が入り込んでしっかりした批判対策をも講じているということですから、この牙城を切り崩すのはなかなかに容易ではなさそうです。
これに加えて医療方面などにもすでに相当広範囲な浸食が発生している様子であるのが気がかりですが、先日以来話題になっているのが琉球大医学部では正規カリキュラムの一環として、ホメオパシーを必修にしていたというのですから驚きますよね。

琉球大、必修授業にホメオパシー 来年度から取りやめ(2010年9月17日朝日新聞)

 琉球大学医学部が6年前から、助産師の卵たちに民間療法「ホメオパシー」を必修授業の中で教えていた。日本ホメオパシー医学協会認定の療法家(49)が講師だった。ホメオパシーに傾倒する助産師が通常医療を拒否するトラブルも起きており、同大は来年度から取りやめることを決めた。今後は学生に「リスクがある」と伝えていくという。

 大学や担当した講師によると、ホメオパシーの授業は、代替療法の一つとして、保健学科の「助産診断・技術学」の中で年1回、3年生を対象に行われた。今年度も8月10~11日、学生10人を対象に、ホメオパシーの歴史やレメディーと呼ばれる砂糖玉が体に作用する仕組み、症状が緩和できる病気について、教えたという。講師が学生から「どうしたら(ホメオパシー療法家の)資格が取れるか」と聞かれたこともあるという。

 講師の療法家は助産師で、沖縄県内に日本ホメオパシー医学協会と提携する助産院を開設。2004年度に非常勤講師として採用された。この療法家は取材に「ホメオパシーは素晴らしい。症状が改善する」と話している

 今夏、山口市でホメオパシーを実践する助産師が女児にビタミンK2シロップを与えず頭蓋(ずがい)内出血により死亡させたとして、損害賠償を求める訴訟が起きたことが明らかになった後も、学内で授業内容に異論は出なかったという。

 しかし、日本助産師会が8月下旬、ホメオパシーを使用したり、勧めたりしないよう会員に求めたのを受け、担当教員らが「適切ではない」と判断。来年度以降は中止することを、医学部教授会などを通じて決めることにした。

 ホメオパシーを取り入れている助産師は多く、日本助産師会の調査でも、1割弱の助産院が実践していた。

 担当の教授(母性看護・助産学)は「お母さん方から質問された時に、説明できるように取り入れた。今後はホメオパシーはリスクがあるものと伝えていく」と話している。(岡崎明子、長野剛)

この一件、記事を読む限りでも色々と突っ込みどころはあるのでしょうが、例えば漢方医を呼んで特別講義をなんてことは全国どこの医学部でも普通に行われているだろうと思われますから、いわゆる代替医療問題ということに関してどこから線引きしていけば良いのかということはなかなか微妙な話ではないかなという気がします。
ちょうどこの講義で使っていたという「教科書」をチェックしてきてくださった方がいらっしゃって、何しろ「看護のための最新医学講座」なんてもっともらしい名前で30巻以上の大著だと言うのですからこれは本格的なテキストだと誰でも思うでしょうが、実際の中身はこれ全てが代替医療のオンパレードだと言うのですから、一粒で二度びっくりというものですよね。
当然に予想通りというのでしょうか、ホメオパシー関連部分の執筆者には例によって由井寅子氏が名を連ねていると言うのですから、思わず「コテコテやんか!」と突っ込みを入れたくもなりますけれども、こういうものが一般の教科書っぽい体裁で出ているというのですから困ったものです。

ただ先日も沖縄で中学校の養護教員がレメディーを勝手に使った挙げ句、当の中学生からも「思い込み薬」だと看破されたなんて恥ずかしい話を紹介しましたけれども、どうも沖縄では昔から介補なんてシステムが存在していたせいか、あるいは医療に似て医療に非ざるものに対する敷居が低いといった文化的背景があるのかも知れません。
少し古い琉球新報にもこういう記事が出ていて、この浦崎氏は琉球新報のみならず沖縄タイムスなどにも取り上げられているちょっとした地元の有名人のようなんですが、悪性リンパ腫に対して化学療法や放射線療法を行い幸い回復したということですから、普通に考えれば最新の医学的知見に基づく集学的治療が奏功した症例であったと受け取るべきですよね。
もちろんご本人が「これはホメオパシーのおかげだ!」と考える自由は否定できないわけですが、客観的に見ればその解釈の自由を商売に利用している結構痛い人(失礼)という解釈も成り立ちそうなところを、学校もマスコミも一緒になって盛り上がってしまうというのも土地柄なんでしょうか?(すでにご本人ブログや通販ショップは閉鎖されたようですが)

向き合えば成長できる 末期がん克服した浦崎千秋さん(2010年3月2日琉球新報)

 【与那原】末期がんを克服した浦崎千秋さん(32)=ホメオパシー代理店陽(みなみ)代表=が2月24日、与那原町板良敷の沖縄看護専門学校(小波津豊子学校長)で「創造的に生きる」と題し、講演した。看護師を志す2年生92人を対象に、自らの闘病体験で感じたことなどを率直に語った。
 浦崎さんは4年前に悪性のリンパ腫が見つかり、再発を乗り越えて回復した。現在2児の子育てをしながら統合医療のアドバイザーを目指して勉強中。28日に豊見城中央公民館で公演する沖縄芝居「恩納なびー」への出演も決定している。
 がんになったことで、生きていることへの感謝の念が生まれたという浦崎さん。「がんと向き合って自分の良さが発見できた」と笑顔で語り「苦しい時にも逃げないで。向き合うことで成長するから」と語り掛けた。
 治療で苦しい時に、近くで看護師同士が「今日のコンパ何着て行く?」と話す声が耳に入ってきた時に「むなしかった」という。「何のために看護師になったか初心を忘れないで」と強調し「皆さんの前向きな生きざまを見せることが、患者の治癒力を確実に向上させる」と訴えた。
 学生からの「末期患者にどう接すればいいか」という質問に対しては「寄り添うだけでいいという人が多い。手を握っても一緒に泣いてもいい」と答え、「心から相手をいとおしく思い、抱き締めてあげられる自分になろう」と呼び掛けた。

もちろん沖縄が特別代替医療にはまりやすいというわけでもない、日本全国どこだって大なり小なり似たものではないかという意見も当然ありでしょうし、そこにこの問題の根深さが潜んでいるのだということにこそ注目していかなければならないでしょう。
琉球大学ばかりを悪者にしても仕方がないところで、例えば愛知大学などでも「暮らしに活かすホメオパシー 基礎 ~「36種基本レメディキット」を学ぶ~」だの「暮らしに活かすホメオパシー 応用 ~テーマ別セルフケアー~」だのといった、いかにもそれらしいホメオパシー講座が開催されていたということですよね(幸いにも?最近中止が決まったということですが)。
東京女子医大などではそのものずばり「自然医療研究所クリニック」なんてものが存在していて、以前からそのクリニックでは各種代替医療が公然と行われていることが知られていましたけれども、今も変わらずホメオパシーの金看板を掲げ続けているようで、ホメオパシーと言うに限らずこちらの体験談を拝見するだけでもクラクラするものがあります。

事例・体験談(東京女子医科大学青山自然医療研究所クリニックHP)より抜粋

心身の状態
      Cさんは進行した肝臓病で、Oリングテストでは、西洋薬は全て否定(合わない、効果が無い)され、他の療法も効果がないという結果が出ていました。

処置・対応
      そこで、『自然経過として、あなたの体が死ぬ行程にあるとしたら、Oリングテストはそれを肯定し、西洋医学では運命に逆らうのかもしれません。しかし、西洋医学なら運命に逆らって、死ぬべき人を生へ引き戻すことができます』とお話ししたところ、Bさんは西洋医学を選択され、治療をはじめました。

経過
      1年後も透析を受けないで済んでおり、仕事も再開されました。奇跡に近いことですが、西洋医学でもこういう事があるのです。

琉球大医学部にしろ東京女子医大にしろ、一応は正規の助産や医療の系列に連なっている組織のはずですが、そんな中にもこれだけ代替医療が滲透しているということは改めて問題の根深さを感じますね。
医師会や助産師会を初めとした各業界団体がそろってホメオパシー反対の公式見解を打ち出してきたことで、これらの領域に連なる末端ホメオパスの動向が注目されてきたわけですが、先ほどの浦崎さんのようにあっさり転んだように見える方が軽症かと言えば、実は単に地下に潜っているだけということも大いにあり得るわけですよね。
彼らの側にしてみれば社会的バッシングはいずれ必ず通らなければならない道だという認識があるわけですから、単にホメオパシーけしからん!と大騒ぎしているだけではどれほど実効性があるのかと疑問の余地無しとしないところで、何かしらの法的規制を初めとして社会的に逃げ場のない対策というものを考えていく必要もあるのでしょう。

もちろん根本的な問題として、社会の一人一人が怪しげなものに騙されないように注意していく必要があることは言うまでもありませんけれども、あれだけ啓蒙活動を繰り広げた今でも振り込め詐欺なども撲滅できていないというくらいですから、この商売だけはおいそれと人類社会から撲滅することは難しいのでしょうね。
厚労省が行うという公式な調査結果というものの行方もさることながら、より一層注目すべきはその結果を受けて国としてどのように動いていくかということであるはずで、このあたりの国の動向を最終的に決めるのが民意、世論というものであることを考えれば、調査結果は出たけれども世間の関心もなくなったようだし、今後の検討課題としましょうかといった話にはさせてはならないということなのでしょう。

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コメント

補完代替医療:厚労省が検証 臨床試験検討も
http://megalodon.jp/2010-0922-1648-45/mainichi.jp/select/today/news/20100922k0000e040073000c.html

 がん患者の半数近くが、通常の医療とは別に健康食品や気功などの補完代替医療を利用する中、これらの有効性や安全性を個別に検証しようと、
厚生労働省研究班が有効事例の収集を始めた。全国の医師に情報提供を呼びかけており、データが十分に集まった段階で薬などと
同等の臨床試験に移ることも検討する。
 05年に公表された研究班の調査によると、何らかの補完代替医療を利用しているがん患者は44.6%に上り、平均で月5万円以上をかけていた。
そのほとんどがキノコ類などの健康食品で、他に気功や鍼灸(しんきゅう)などが挙がった。一方、これらの有効性を科学的に検証した研究はほとんどないのが実情だ。
 研究班は、補完代替医療単独でがんが消失したり小さくなったりしたケースや、痛みなどの症状が緩和されたケースを対象に、がんの種類や進行度、
使った代替医療などをデータベース化する。専門家の分析で効果がありそうだと判断された場合、臨床試験を行うかどうかを検討する。
 補完代替医療の有効事例を集めて検証する作業は、米国立がん研究所でも進められているという。
 研究班の大野智・埼玉医科大講師は「有効かどうか、安全かどうかもよく分からないまま患者さんが利用し、データがないので医師側も勧められないし、
やめろとも言えないのが現状だ。科学的にしっかりした根拠となるデータを蓄積したい」と話す。
 問い合わせは大野講師の電子メール(ohno55@saitama-med.ac.jp)へ。【西川拓】

【ことば】補完代替医療
 鍼灸や指圧、気功、健康食品、ヨガ、心理療法、温泉療法など、通常の医学の枠に入らない治療の総称。日本補完代替医療学会は
「現代西洋医学領域において科学的未検証および臨床未応用の医学・医療体系の総称」と定義している。

投稿: 厚労省も懲りないな | 2010年9月23日 (木) 17時59分

産経も来ましたね。
かなり今さらって感じですが。

ホメオパシーは有効? 「副作用もないが治療効果もない」VS「科学的に有効性が証明」
http://sankei.jp.msn.com/life/body/100926/bdy1009261802001-n2.htm

投稿: | 2010年9月26日 (日) 23時22分

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