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2010年9月28日 (火)

民主党の医療行政 大臣交代でどう仕切り直すか?

先日の代表選後の内閣改造で大臣職から「左遷」させられたと噂の元民主党エース・長妻前厚労相ですが、かねて言われている通り官僚との折り合いが悪かったのもさることながら、結局のところ唯一の売りであった年金関係でも目立った成果を上げられなかったことも大きかったのでしょうね。
もっとも昨今の状況からすると閣内に残っていたらいたで余計なとばっちりを食らいかねないですから、案外これは結果オーライだったということなのかも知れずですが、いずれにしても後任の細川律夫厚労相にすれば官僚との距離感にも苦労しなければならないのでしょう。
実際に就任早々「官僚の皆さんをわずらわせないよう、私は休日出勤はやめますから」なんていじましいことを言っている細川大臣ですが、先日就任早々にこんなことを口にしていたということで、まずは記事から引用してみましょう。

医師不足はまず偏在是正で対処―細川厚労相(2010年9月21日CBニュース)

 細川律夫厚生労働相は9月21日の閣議後の記者会見で、医師不足への対策として、医師の診療科偏在や地域偏在の是正に取り組んでいく考えを強調した。

 細川厚労相は医師不足への取り組みについて、医師を増やすだけでなく、診療科や地域による偏在があることから、「その是正をまずしていかなきゃいけない。そのことにしっかり取り組んでいこうと思っている」と述べた
 また、医師の偏在状況に関する調査結果が月内には出るとの見通しを示した上で、各都道府県に設置する「地域医療支援センター」で調査結果に基づいた偏在解消に取り組む考えを示した。

■医療分野は藤村副大臣、岡本政務官が担当
 細川厚労相はまた、藤村修副大臣と岡本充功政務官が医療分野を担当すると発表。岡本政務官を「中堅の非常に有能な医者」と評した。

思わず「えーマジ偏在?!(以下略」と叫んでしまいそうになりますけれども、結局医学部定員大幅増と不人気診療科の待遇改善で何とかしますと主張して政権の座についた民主党も、一周して医師強制配置論に帰ってきたということであれば困ったものですが、実際のところ民主党政権になって以降も医師「偏在」問題が解消に向かっているという話は寡聞にして知りません。
もちろん政権交代後一年、診療報酬改訂後もまだ半年という時期ですから、未だその結果が出てくるには先の話ではあるのでしょうが、問題は総選挙前にはそれなりにあった「民主党が政権を取れば医療行政はもの凄く変わる」という期待感のようなものが、この一年で雲散霧消してしまったと言うことですよね。
このあたりは世間は元より当の医療従事者からも関心の集中しているこの政権交代後の一年を、医療問題の素人である長妻氏に預けてしまったことが結果として失敗だったということになるかも知れませんが、ひと頃は期待されていた民主党の医療系ブレーンも昨今ではすっかり陰が薄いというのも、結局財政その他の現実を前にしては夢もあり実効性も備えたビジョンを提示出来なかったということなのでしょう。

民主党政権も前政権の路線変更から引き継いだ医学部定員増に関しては着実に歩みを進めたものの、最終的にどうやって医者を不人気診療科なり僻地なりに誘導するのかと言う方法論、特に野党時代から同党が主張してきたところの魅力的な待遇で人を集めるという、その肝心のエサの部分がうまそうに見えないのであれば魚も食いつくはずがないというものですよね。
仕方がないものだから医学部学生だけはどんどん増やしますと言う、中には人が嫌がる道に進む人もいるでしょうという下手な鉄砲も何とやら作戦に走っている気配もある昨今ですが、既存医学部の定員増だけならまだしも、巨額の資金と人材集中を必要とする医学部新設ともなれば、それだけの資源を投入するだけの見返りがあるのかどうかという評価が欠かせないはずです。

医学部:3私大で新設の動き 政府、容認検討へ(2010年9月19日毎日新聞)

 各地の大学で医学部新設へ向けた動きが広がり始めている。文部科学省は80年以降、医学部新設を認めていないが、民主党は医師不足対策として医学部の新設も掲げており、近く容認に向け本格的な検討が始まる見通し。ただ、既存の大学医学部や日本医師会は「現場の臨床医を教員として引き揚げねばならず、地域医療が崩壊する」などと反対しており、新設容認へ向けた議論の行方は不透明だ。【福永方人】

 医学部新設を具体的に検討しているのは、北海道医療大(北海道当別町)▽国際医療福祉大(栃木県大田原市)▽聖隷クリストファー大(浜松市)--の私立3大学。いずれも学内に検討委員会を設け、定員やカリキュラムなどを協議している。また、公立はこだて未来大(北海道函館市)も、函館市が識者らでつくる懇話会を設置し、新設の可能性を検討している。

 北海道医療大は入学定員60~80人を想定。大半を歯科医や薬剤師、看護師などが対象の編入枠とし、医師不足が深刻な道東地域への医師配置を目指す。同大医学部設置検討ワーキンググループ座長の小林正伸・看護福祉学部教授は「地域医療の担い手育成は急務。国から医学部新設のゴーサインが出たらすぐに手を挙げられるよう準備したい」と話す。

 国際医療福祉大は、現在の医学部設置基準の上限である定員125人程度を想定。聖隷クリストファー大は、4年制大学卒業者を対象とした「メディカルスクール」の創設も視野に入れている。

 医学部の設置は79年の琉球大が最後。国はそれ以降、医師が過剰になるとの将来予測などから新設を認めてこなかった。

 民主党は昨夏の衆院選に向け公表した政策集で、医師養成数の1.5倍増を掲げ、「看護学科等を持ち、かつ、病院を有する大学の医学部設置等を行う」とした。全国の病院と診療所を対象とした厚生労働省の「必要医師数実態調査」の結果が今月中にも公表される予定で、鈴木寛副文科相は6月の記者会見で「調査結果を受けて関係省庁、関係者と(医学部新設について)本格的な議論に入りたい」と述べている。

 一方、大学医学部でつくる全国医学部長病院長会議や日本医師会は「既存の医学部を拡充する方が財政的に有利」「医師が充足した時に養成数を減らしにくくなる」などとして医学部新設に反対している。

医学部新設の是非については人それぞれの考えもあるのでしょうが、失礼ながらこうして底辺私大ばかり増やしてしまうということに対する異論も多々あるでしょうし、こうした私大であればどうしても医者にならなければ仕方がないという開業医子弟なども多いでしょうから、親の後を継ぐともなればどれだけの人間が僻地や不人気科に行くものだろうかと疑問視されるところです。
ブランド力もなければ国試合格率も高いとは期待できない新設医学部ばかりが増えてくるということになりますと、すでにロースクールなどで顕在化している学費詐欺まがいの低レベル教育の問題も今後出てくるでしょうし、OECD平均並みを目指して先行してきた歯学部のように、希望者全員入学できますといった事態も今後出てくるかも知れませんよね。
その際にはもちろん真っ先に不人気となるのは歴史も伝統もなくレベルも低い新設底辺私大となるだろうことは容易に想像出来る話ですが、せっかく巨額のお金を投入し医者をかき集めて開いた新設医大が経営に行き詰まって破綻したと言うことにでもなれば、一体先行する他の国家資格専門職の崩壊事例から何を学んだのかと言われそうです。

こうやって当の医療業界が「悪いことは言わないからそれはやめておけ」とまで言うような斜め上方向に疾走するよりは、現場から求められている喫緊の課題はもっと別なところにあるんじゃないかと思いますが、その一つが現場スタッフ待遇改善の元ともなる医療機関の体力ということでしょう。
最近ちょうどこういう記事が出ていましたが、かねての厚労省の計画に従って基幹病院に医療資源を集中させるという思惑通りの展開であるとも読める話で、その意味では当然に予想された結果でもあるわけですが、その社会的影響がどうなのかという点が注目されますよね。

大病院と中堅病院、収益力の二極化くっきり 帝国データ調査(2010年9月25日産経新聞)

 年間総収入が30億円以上ある全国の民間病院事業者で、平成20年度までの3年間の最終損益が判明した法人のうち、3期連続で黒字を確保した法人が5割あまりある一方、3期連続で赤字に陥った法人も1割弱あったことが、信用調査会社「帝国データバンク」のまとめで分かった。赤字法人はすべて中堅事業者で、診療報酬の引き下げや特定の大病院の“ブランド化”が進んだ中、民間病院の経営で二極化が顕著となっている実態が表れた。

 同社は、兵庫や岡山の大規模病院が昨年、相次いで民事再生手続きを申請したことなどを受け、医療法人や社会福祉法人、財団法人など全国803事業者の決算状況を調査した。

 その結果、20年度(21年3月期)が前期より増収となったのは66%の530法人で、規模が大きい法人ほど増収の割合が高かった

 また、過去3年間の最終損益が判明した547法人のうち、3期連続で黒字を確保したのは55%の301法人。逆に3期連続で赤字だったのは8・2%の45法人で、すべて年間総収入が300億円未満の中規模事業者だった。

 帝国データバンクは「長く続いた診療報酬引き下げのほか、患者の大病院志向が高まり、中規模以下の安定経営が難しくなっている」と分析している。

 一方、全国に144ある国立病院は20年度、約7割が黒字を確保。しかし、地方自治体が運営する公立病院は、逆に約7割が赤字となった。

民間病院収益二極化、診療報酬下げが直撃 “医療弱者”へ悪影響も(2010年9月25日産経新聞)

 民間の大規模病院と中小病院で、経営状態が二極化している実態が明らかになった。背景には、政府が長らく続けてきた診療報酬の引き下げによる「淘汰の誘導」や、高評価を得る優良病院への患者の集中があるとみられる。ただ、明治以来日本の医療の中心を担ってきた民間病院の減少が進めば、患者の選択肢の狭まりや、地方の高齢者など“医療弱者”への悪影響も懸念される。

 厚生労働省の統計によると、平成2年に1万を超えていた全国の病院数は、22年3月末時点で約8700施設に減少した。

 その大きな要因となったのが、診療報酬の改定だ。22年度は全体で0・19%の引き上げとなったものの、自民党政権が続いた21年度まで、10年連続で計7%も引き下げられた。

 大阪市の中堅病院院長は「今後(診療報酬引き下げを)意図的にやれば、病院経営の淘汰はさらに進む。国は民間病院を整理し、公立病院を残すことしか考えていない」と憤る。

 この院長は「僻地医療を公立病院だけで支えられるのか」と警鐘も鳴らす。実際、民間病院が破綻した地域では、公立病院も医師不足から診療科が減り、結果的に住民が地域内で必要な診療を受けられなかったり、選択肢が狭まったりするケースも表れている。

 一方、都市部の大病院も安泰とはいえない。東京都心で約500床を抱えるある総合病院は、最高水準の医療体制が高く評価され、著名人も数多く利用するが、本業である医業損益は赤字で、不動産の運営益で全体の黒字を確保しているのが実情だという。

 医療関係者は「模範的な医療を提供しても、赤字経営は避けられないという事実に、国も国民も気づいていない」と指摘している。

国は気付いていないというよりも、そもそも厚労省としては中小病院の淘汰が当初から目的としてあるわけですから、赤字補填が可能な公立病院か、本業の医業収益以外で経営を支えられる余力のある民間基幹病院しか生き残れないという状況であれば、これは願ってもないという話ではあるわけですよね。
昨今では頑張っている病院には様々な加算を認めましょう、努力している施設には診療報酬で報いますなんて表向きは言っていますけれども、例えば医療安全対策加算なんてものを取れる施設は全国でわずか17%と、実際には「取れるものなら取ってみれば?まず無理でしょうけど(笑」という状況に置かれているわけです。
見かけ上は診療報酬は多少なりとも引き上げましたと言っても、現実には大多数の医療機関にとっては全くその恩恵が及んでいないとなれば、表看板の掛け替えはどうあれ厚労省のホンネは全く変わっていないじゃないかと言うことになりますが、実際に地域の中小病院が消えて基幹病院だけが残ると医療の現場はどうなるかですよね。

今ですら基幹病院は重症患者の対応に手一杯で一般外来などやりたがってはいませんが、仮に潰れた中小病院から医者が流れ込んだところで外来をこれ以上広げられるとも思えない(そもそも診察室その他のスペースはとっくに埋まっているはずです)、人手が増えたにしてもより重症で手のかかる入院患者にこそマンパワーを投入するはずですよね。
外来は今以上に混雑するだろうこともさることながら、入院患者も当然今まで以上に増える、そして症状が落ち着いてきた患者を帰す前にワンクッション置こうと転院先を探そうにも、引き受けてくれたはずの地域の中小病院は壊滅しているわけですから、人手が増えたはずなのに今まで以上に病床の回転は悪くなるという奇妙な現象が予想されます。
その結果平均在院日数も増えれば診療報酬は切り下げられてくるわけで経営は苦しくなるだろうし、体力のある施設は施設でそれでは外来部門は独立させようか、急性期を脱した患者を移す回復期向けの施設も用意しようかとなれば、何のことはない近所の中小病院を温存しておいても同じことだったじゃないかという話になってしまいますよね。

民主党政権自らがお得意の政治主導でこれだけちぐはぐなシナリオを描いているのだとすれば、むしろ芸とも言うべきある種のセンスを感じる仕事ぶりですけれども、恐らくは医療に暗い大臣の下で官僚達が粛々と既定の路線を踏襲してきただけというだけのことではないかという気がします。
弁護士出身でもともとネクスト法務大臣にも名が上がっていた細川新大臣にしても、最初から冒頭のような素人臭いことを口に出してしまうくらいですから医療畑に暗いのは見え見えですが、そうなりますと名指しで医療分野を任されることになった藤村副大臣、岡本政務官あたりがこうした流れを是認するのか、それとも本気の政治主導で何かしら独自の対案を出してくるのかが今後の注目点でしょうか。
しかし「中堅の非常に有能な医者」とも紹介された岡本政務官にしても内科医として7年ばかりのキャリアがあるだけで、しかも学位取得でそのうちの半分は大学院暮らしですから臨床のキャリアは医系技官並みでしょうし、藤村副大臣にしても工学部出身の素人で、しかも国際カイロプラクティック教育議員連盟幹事だなんて今どき大丈夫なのかと思う経歴の持ち主ですから、この人達が一体どこまで政治主導でやっていけるのかですよね。

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コメント

http://twitter.com/h_hirano/status/25772927222
長妻氏が更迭された理由

投稿: こんな話も | 2010年9月29日 (水) 02時26分

仙石大活躍w

投稿: | 2010年9月29日 (水) 07時01分

忙しさゆえ遅くなってしまいましたが、9月25日(土)と9月26日(日)の出張プロジェクトAのご報告です。
出張プロジェクトA@山口県周南市では、山口を満喫してきました。
皆さんが温かく迎えて下さり、美味しい料理を食べながら、
政治の専門的な話から勉強方法まで幅広くお話させて頂きました。

出張プロジェクトA@港区では、カイロプラクティックに関わる皆さんと
代替医療・統合医療等について意見交換をさせて頂き、大変勉強になりました。

「脱ガラパゴス」の立場から、カイロプラクティックの国家資格化に取り組んでいきます。

同じく出張プロジェクトA@港区では、同世代と語り合うことができました。

出張プロジェクトAで巡り合った、全てのご縁に心より感謝します!

よこくめ勝仁公式ブログ
http://ameblo.jp/katsuhito-yokokume/entry-10665151686.html
参考画像:横粂議員
http://livedoor.blogimg.jp/gekisha-krw/imgs/2/a/2a12d5df.jpg

投稿: | 2010年10月 4日 (月) 08時41分

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