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2010年9月17日 (金)

逼迫する老人医療・介護問題 超高齢化社会の先に見えてくるものは

先日もお伝えしたように政権公約として後期高齢者医療制度の廃止ありきで話が進んでいる中で、いささか危ういところもあるのではないかという懸念がすでに現段階の議論においても出てきていますけれども、逆の方面で懸念を表明しているという人々もいるようです。

後期高齢者医療制度:廃止訴えデモ行進 横断幕や旗掲げ100人--金沢 /石川(2010年9月16日毎日新聞)

後期高齢者医療制度に反対する市民約100人が15日、制度廃止を訴え金沢市をデモ行進した。敬老の日を前に県社会保障推進協議会や年金者組合県本部が主催。金沢市広坂2の中央公園から同市武蔵町周辺まで、横断幕や旗を掲げ「高齢者を差別するな」と声を上げて行進した。

 同制度は75歳以上を対象とし、医療費の増加によって保険料も高くなる点などが課題とされ、民主党が「高齢者医療制度改革会議」を設置し検討中。しかし、県社保協の寺越博之事務局長は「中間のとりまとめ案を見ても、そのまま引き継いでいる点が多い」と指摘した。【宮本翔平】

そのまま引き継いでいる点が多いと言いますか、民主党としてもあれだけ廃止廃止と大きな声を上げて政権を取ったはいいものの、実際詳細に検討してみるほど「いやこれは、もしかしてうっかり廃止しちゃったら大変なことに…?」と考え始めているんじゃないかと言う気配も見えるだけに、正直廃止の実を捨てて名を取りたいというのが本音なのかも知れませんね。
ただ制度としての有用性などの評価とは全く別な次元で、世間的には高齢者いじめだと評判が悪いことは確かですから、政権側としてもこちらに手心を加えるというのであれば別な部分でアメを用意しなければならない道理ですが、実際このところ相次いで高齢者医療対策というものが打ち出されているようです。
ひと頃はさっさとなくしてしまえと国を挙げて推進していたはずの介護型療養病床にしても、民主党政権となった以上は予想通りと言えば予想通りなんですが、先日やはりそうなったかというニュースが出ていました。

介護型療養病床、2012年度以降も存続(2010年9月9日読売新聞)

 2011年度末で廃止される予定の介護型療養病床に関し、長妻厚生労働相は8日、衆院厚生労働委員会で「廃止は困難」と述べ、初めて正式に存続させる方針を明らかにした

 必要な法改正案を来年の通常国会に提出する考えだ。

 高齢者が長期入院する療養病床には、医療保険を使う医療型(約26万3000床)と介護保険を使う介護型(約8万7000床)がある。医療の必要性が低いのに入院し続ける「社会的入院」を減らすため、厚労省では、介護型に対し、老人保健施設や特別養護老人ホームなどへの転換を促してきた

 ところが、厚労省による4月時点の調査では、回答した介護型療養施設1954か所(約8万5000床)のうち、「転換予定は未定」とする施設が61%。「地域で療養病床が必要とされる」「受け入れ先を見つけられない」などの理由からだった。このまま廃止すれば、入院患者が新たに“介護難民”化する恐れもあり、厚労省では、12年度以降もどの程度まで存続させるかを含めて検討を急ぐ方針だ。

「廃止は困難」と言いますか、実際どこの療養病床もいまだ転換は様子見という状況ですから、この状況でいきなり廃止というのはさすがに無理がありますよね。
国は今後も診療・介護報酬などの誘導で地道に療養病床の転換を図っていくことになるのでしょうが、実際に求められている医療・介護の水準がどんな具合で分布しているから各レベルの施設にこれくらいの定数が必要であるというのならまだしも、単にコストカットが目的で転換を迫るだけでは話がそうそう進むはずもありません。
また特養、老健を増やしたはいいですが、入所者も全部が全部急変時も何もしませんという人ばかりでもありませんから、いざとなればある程度は医療も行える療養型病床と違ってこちらは急性期病床のバックアップも必要となる理屈ですが、利用者側の意識をそのままにして転換を進めたところで、とんでもない状態になって慌てて救急車で運ばれる御老人が増えるばかりですよね。

このあたりは最終的には高齢者の看取り方に対する国民の意識が徐々に変わっていくのを待つしかないところだと思いますが、下世話な話で金銭面の感覚からこの問題を考えて見た場合、かれこれ半世紀にわたって医療は幾らでも上限定額制で使い放題、目一杯使わなければ損だという感覚が滲透しているわけですから、自然なお産ならぬ自然な看取りの伝統が復活するのは当分先になりそうです。
最近の不景気で現役世代の収入は軒並み目減りしていますが、逆にそうであるからこそ高齢者の年金や恩給の現金収入を当てにせざるを得ないという人も増えてくるだろうと考えれば、今まで以上に「何があってもお爺ちゃんは絶対死なせないでください!」なんて人たちも増えてくる可能性があるわけですよね。
ただそうなってきますと医療財政上はまことに都合が悪いのも事実ですから、国としてはあの手この手でお年寄り向けに何かと工夫を凝らした政策を打ち出してくることになりますが、最近出てきた話題だけでも色々と興味深い話も多いようです。

グループホーム利用を大幅緩和 公営住宅、高齢者ら自立支援(2010年7月19日47ニュース)

 政府は19日までに、地方自治体が賃貸する公営住宅について、高齢者や障害者向けのグループホームやケアホームとしての利用を大幅に緩和することを決めた。これまで空き室などに限定していたが、都市部にあるなど一般の入居希望者が多い物件でも一定の戸数を「福祉枠」として設け、利用を認める。要介護高齢者の増加が見込まれる中、住み慣れた地域で自立して生活できる受け皿づくりを進めることが狙いで、近く関係自治体に通知する。

 公営住宅は低所得者向けとして全国に約218万戸あるが、社会福祉法人などの利用は2008年度末で約700戸にとどまっている。

 国土交通省は自治体からの要望も踏まえ、運用見直しが必要と判断。収入基準など公営住宅の入居資格を満たす高齢者や障害者らを対象としたグループホームなら、高倍率の物件でも抽選の対象としない福祉枠を自治体が設け、社会福祉法人などが利用できるようにする

 中堅所得者向けに都道府県などが設立する住宅供給公社の賃貸住宅は、グループホームとしての利用自体を認めていないが、本年度中に関係省令を改正し、解禁する方針だ。

介護の技量に「段位」、雇用促進へ認定制度検討(2010年9月1日読売新聞)

 政府は介護や環境、観光など将来の成長が見込まれる分野で、職業の習熟度や知識を客観的に示す「段位」認定制度の本格的な検討に着手した。

 一企業だけでなく、多くの企業・産業に通用する専門家を育て、雇用・転職の促進や高い技術を持つ人の収入増につなげるのが狙いだ。まず「介護・ライフケア」「環境・エネルギー」「食・観光」を対象に、能力評価基準やカリキュラムを検討し、2011年度末までに体制を整備。5年間で他の成長分野にも対象を広げる方針だ。

 段位制度は政府が6月にまとめた新成長戦略で提唱した。内閣府で31日開かれた「実践キャリアアップ戦略推進チーム」の有識者会議では、今後、段位の数や具体的な評価方法、既存の資格・検定制度との関係などを検討し、年内をメドに基本方針を取りまとめることを確認した。制度導入により、企業は求職者を評価しやすくなり、求職者も就職に必要な能力を見極めやすくなるとみられる。

24時間地域巡回訪問サービスを全国に100か所―長妻厚労相(2010年8月25日CBニュース)

 長妻昭厚生労働相は8月25日、24時間対応の地域巡回型訪問サービスの拠点を全国に100か所整備するための費用を来年度予算の概算要求に盛り込む方針を明らかにした。また、宿泊が可能なデイサービスセンター(お泊まりデイサービス)の整備を促進する費用も概算要求に盛り込む意向を示した。

 いずれも、独立行政法人の都市再生機構が運営する横浜市の高齢者専用賃貸住宅(高専賃)を前原誠司国土交通相と視察した際に明らかにした。視察では、居住スペースや共有スペース、併設のデイサービスセンターなどを見学したほか、入居している高齢者や施設職員らと懇談し、住み心地やサービスの内容などについて話を聞いた。

■“お泊まりデイサービス”の整備に約100億円を要求

 視察後、長妻厚労相は「高齢者向けの施設の整備と同時に、在宅ケアを支援するため、さらにきめの細かいサービスを実現する必要がある」と指摘。その具体的な施策として、24時間対応の地域巡回型訪問サービスの拠点を全国に100か所整備するための費用として数十億円を、“お泊まりデイサービス”の整備促進の費用として約100億円を、それぞれ来年度予算の概算要求に盛り込む方針を明らかにした。
 さらに、介護職員を支援する介護ロボットを経済産業省と共同開発するための費用も概算要求に盛り込むとした上で、開発されたロボットの性能が優れている場合は「介護保険を適用していこうと考えている」との意向も示した。

■サービス付き高齢者住宅「60万戸を目標に」―前原国交相

 長妻厚労相と共に記者会見した前原国交相は、介護などのサービスが付いた高齢者向けの賃貸住宅を、今後10年間で60万戸を目標に整備する方針を示した。また、こうした施設の整備のための予算については「倍増を目指したい」と述べた。

こういうのを見ますとこれからの高齢者対策のキーワードは「自立」ということになるんだろうと思いますが、要するにお金のかかる病院は使わず出来るだけ介護サービスで済ませておく、それも可能な限り施設入所ではなく在宅でという流れを定着させようと頑張っている構図が見えてきますよね。
もちろんそれが必ずしも悪いというわけでもなくて、スパゲッティシンドロームなんて言葉に象徴されるように、ひと頃の世の中を席巻した過剰医療批判を思えば、なるべく病院には関わらず最後は自宅の畳の上で看取るというのは国民の認識的にも良いことなんだろうし、そのための道具立てを国が率先して用意していくというのは本筋ではあるのでしょう。
現実問題として少子化が久しく前から言われていて、今後下手すると高齢者より現役世代の方が数が少なくなってくる可能性すらあるわけですから、経済的な面のみならずマンパワーの面でも社会の中でいかに労力、コストを効率的に配分するか、そして元気な高齢者をいかに労働力として活用するかといったことも大事になってくるのでしょうね。

鳩山さん以来民主党政府は新成長戦略で医療・介護業界を経済成長の牽引役にと言ってきましたけれども、いろいろと話を聞く限りでも結局若い現役世代の多数派は介護などやりたくないというのが本音のようですから、そちらを産業的に成長させて失業者の受け皿にというのも今ひとつうまく進んでいるようには見えませんし、これは仕方のないところだとも思いますね。
やはりどの産業でも全年齢同じに就職希望や適正があるというわけではありませんから、産業毎に年齢や性別など様々な要因で就労者分布に自然な差がついてくるということを考えた場合、さしずめ介護業界などはどちらかと言えば本来年配者向けの産業と言うことになってくるのでしょうし、実際家族レベルで見ると現状でも入院患者の付き添いに若い人がべったり付いてるなんてことはあまりないわけですよね。
例えば元気な高齢者自身が老人介護を支えてくれるといった高齢者自給自足的な状態になれば、社会にとっては一番手がかからないということですし、元気な高齢者にしてもまだまだ自力で稼げる手段が得られるわけですから、年金制度などが多少怪しくとも自力で食べていくことも出来る道があるわけで、(本来それではいけないのでしょうが)国としてもありがたい話ではあるはずです。

現状でも退職した世代が介護サービスなどで第二の社会人生活をスタートさせているなんてことが普通にありますけれども、体一つでやっている現状であっても出来ることは幾らでもあるわけですし、体力が衰えて一人で支えるのが難しいとなれば二人、三人で支えればいいじゃないかということですよね。
もし今後社会として大々的に高齢者の介護現場への活用を進めるということになれば、その一番の障壁になるのは介護する側の身体的能力の衰えということになるのでしょうが、たとえば前述の記事にもあるように介護用のスーツなどがもっと一般に普及してくるようになれば、別に若くて元気のいい連中を苦労して大勢かき集めなくても老老介護で十分じゃないかということになってくるのかも知れませんね。
SFの世界ではコンピューターや機械によるサポートの発達で肉体的能力の衰えがカバーされるようになってくればいずれ老人の時代が来る、なんて話がずいぶんと前から言われていたものですが、いっそ日本も超高齢化社会を逆手にとった先進的老人国家を目指してみるというのも面白いんじゃないかと、近頃の元気なお年寄りを見ながら密かに考えているところです。

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