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2010年9月 6日 (月)

迷走する上野原市立病院 最近の話題

「最近の話題」なんて言ってしまってから恐縮ですが、これもボケているということなのでしょうか、とっくに取り上げた事があると思い込んでいたネタでも改めて調べなおしてみるとまだだったということが時にあるようで、今回は山梨県の上野原市立病院の話題を取り上げてみますけれども、どうもこの病院は今回が当「ぐり研」初出だったようなんですね。
とりあえず今までの経緯の概略から紹介してみようかと思いますが、元町立病院から市立病院になったこちらの病院、お約束のように医師減少とそれに伴う診療科の減少、施設老朽化と患者数の減少などといった要因が相まって、今や赤字垂れ流し状態ということなのですが、そのあたりの経緯を過去の記事から拾い上げてみましょう。

公立病院改革:国の見直しガイドライン、県内3病院が該当 診療所転換迫られ /山梨(2007年11月30日毎日新聞)

◇来年度中に改革案作成

 3年連続で病床利用率が70%未満の公立病院に抜本的な見直しを求めるガイドラインが国から示され、県内では公立全14病院のうち、大月市立中央病院と上野原市立病院、山梨市立牧丘病院の3病院が該当していることが分かった。病床数の削減や診療所への転換などが求められる見通しで、病院側からは「医師不足解消が先ではないか」と不満の声も出ている。【吉見裕都】

 ガイドラインは12日、経営が悪化している公立病院のあり方を検討している総務省の「公立病院改革懇談会」が策定。ガイドラインを基に、全国の自治体は来年度中に改革プランを作成することが求められる。
 06年度まで3年連続で病床利用率が70%を切るのは、全国の公立病院の15%にあたる146病院。06年度の病床利用率は大月市立中央病院が45.2%、上野原市立病院が40.8%、山梨市立牧丘病院が69.0%だった。
 病床利用率が低迷する理由について、大月、上野原の2市立病院は常勤医師の減少を背景に、小児科や産婦人科など5診療科で入院患者を受け入れられなくなったと説明。山梨市立牧丘病院は、小規模なうえ山間地にあるため、利用率が低いとみられる。

◇「医師不足解消が先」の声も

 上野原市立病院は「病床利用率の低下はもとをたどれば医療費抑制や新研修医臨床制度といった国の政策による医師不足が原因で、その解消が先ではないか」と疑問を呈している。

患者数、ピークの半数以下 07年度 上野原市立病院 /山梨(2008年7月25日山梨日日新聞)

 上野原市立病院(両角敦郎院長)の2007年度の入院と外来患者数は約8万9000人で、過去10年で最多だった02年度の半数以下に落ち込んだ。常勤医の減少により外来の診療日数や、入院患者の受け入れが減ったことが主な要因。経営状態も旧上野原町立時代の03年度から5年連続で単年度赤字となる見込みだ。
 同病院によると、昨年度の患者数は8万8564人で、前年度に比べ2万291人減少。ピークの02年度(18万2624人)からは52%減り、同年度から5年連続で前年度実績を下回っている。一方、経営状況は06年度の総収入が約16億8800万円だったのに対し、総支出は約18億4600万円で、純損失は約1億5800万円。07年度も患者数減少が影響して純損失は拡大、約3億6000万円に達する見込み。

 同病院は、04年度当初に17人いた常勤医が、山梨大医学部などからの医師派遣が縮小したこともあり06年度から一けた台に減少。昨年度当初は内科2、脳神経外科1の3人だった。ただ、今年10月から指定管理者制度の導入が決まり、導入に先駆けて4月に内科の常勤医を新たに4人採用し、計7人体制となった。同月の患者数は7459人で、前年同月に比べ796人増加している。
 同病院の和田正樹事務長は「指定管理者の導入が決まり、医師確保も進んでいるので今後は患者数増加が見込める。指定管理者の計画に基づき、病院再生に努めたい」と話している。

選択の構図:上野原市長選/下 市立病院 /山梨(2009年2月19日毎日新聞)

◇高度医療にどう対応

 上野原市の中心商店街から北へ坂道を上ると、古ぼけた4階建ての建物が見える。市民の健康・福祉を守る最後の砦(とりで)ともいえる病院だ。
 上野原市立病院(両角敦郎院長、病床数150床)は1970年に開設され、山梨大学医学部付属病院から医師派遣を受け、地域医療を担ってきた。ところが、医師不足の影響で、17人いた常勤医が一時3人にまで減少。産婦人科の休止など診療科の縮小、病棟の再編が行われ、病床利用率が70%未満の公立病院に見直しを迫る国のガイドラインに抵触。今年3月までに改革プラン作成を求められるまでに追い込まれた。
 市の調査では「職員の対応が悪い」「説明が不足」「待ち時間が長い」など、現状に不満を示す市民の声も多かったという。隣接する東京都など市外の医療機関に入院している人も多い。地元の医療機関に不安や不満を抱いていることが推測される。

 市は07年、市立病院に指定管理者制度を導入し、自治医大の卒業生らが設立した地域医療振興協会(東京都千代田区)に経営を委託。公設民営化した
 今月10日、同病院は公設民営移行後の経営状況を発表。移行直前の経常収支の赤字(月間ベース)が、07年10月には黒字に転換したと説明した。だが、内実は民営化をソフトランディングさせるため、市からの運営交付金が一時的に手厚く交付されているのが主な要因で、厳しい経営状況には変わりない

 市は老朽化した建物を新たに建て替える計画だ。旧上野原中学校跡地に総事業費約40億円をかけ、150床規模の新病院を建設し、11年7月の開院を目指している。診療科は外来が内科など10科、入院が外科など4科の計画。しかし、市民からの要望が多い小児科や産婦人科は設置されない
 市民の間では、市の財政規模に合った病院建設を求める意見がある一方、産科、小児科を備えた高度医療を行える病院を求める意見もあり、関心が高い。 東京都に隣接する地理的環境から、高度医療については県域を越えた病院との連携・分担ができると考えるか、または地域内で完結できる医療を目指すか。根底には大きな思想の違いがある。【田上昇】

150床で40億と言えば一床あたり2700万、民間病院の平均が1600万程度と言いますから、ろくに医者もおらず高度な医療をしているようにも見えない田舎病院にしては、ずいぶんと豪勢な計画だなという印象は受けますよね。
同市としては金の使い道に困っているというのであればこのご時世にうらやましい話ですが、このあたりに関しては後々にもまた言及するところですので留意いただきたいところです。

しかし全ては医者が来てくれないことが原因だ!これも国が悪いせいで我々は悪くない!なんてまさにらしい弁解が並んでいますけれども、医者もおらずわずか病床利用率4割という悲惨な現状で診療所への転換も検討しろとせっ突かれている中、例によって巨額の公費を投じてのシン病院建設というハコモノでお茶を濁そうというあたり、まさに地方公立病院のテンプレと言ってもいいような経過ですよね。
そうは言ってもこれだけでしたらあまりにテンプレ通り過ぎて、世に数多ある公立病院の中に埋もれて終わっていたところだったのでしょうが、この病院が一気に全国区の知名度を獲得したのは病院建設を巡って市長と医師会との間に全面戦争が勃発した事件が今春に発生してからのことでした。
医師会や地元の意向を無視して市長が話を進めているということで、医師会が以後は一切市に協力せずとの方針を打ち出した結果、春からの学校医すら不在になってしまったということで大騒ぎになったということなんですね。

この事件自体は「勤務医 開業つれづれ日記」さんなどが取り上げていますように、記事からすると「妙に頑なな市長だなあ」という程度の印象なんですけれども、自身も元医師だという市長はかねて市議や地元企業の贈賄問題などを告発してきた御仁だという話もあるようですから、これまた地方のハコモノ行政に特有の問題(苦笑)に絡んでの何かしら背景事情があったのかも知れません。
実際に同市長は「新病院の建設費は異常に高すぎる!これを民間病院並みの値段にまで切り下げてスタッフ確保のために使えばいいじゃないか!」と言っているようですから、何かしら根っこの部分でそのあたりのトラブルが暗示される展開ではあるのですが、問題は全国紙で「医師会がゴネて子供が困っている!」なんて話が広まった結果、面白からぬ思いをしているだろう人間も大勢出ただろうということでしょうね。
何しろ世界に冠たる独特の価値観を常々紙面に誇示せずにはいられないあの変態新聞にすら「医者の価値観は独特だ」なんてことを言われてしまったくらいですから、それは事の経緯はどうあれ現場での感情的対立はどんなものかと想像に難くないところがあって、いずれにしてもこの春の時点でも今後に十二分な?不安を感じずにはいられないという状況だったわけですね。

泉:麻生前首相発言の真理 /山梨(2010年4月20日毎日新聞)

 「(医師は)社会的常識がかなり欠落している人が多い」。08年11月、全国都道府県知事会議で、こう発言した当時の麻生太郎首相は翌日、首相官邸に抗議に訪れた当時の唐沢祥人・日本医師会長に謝罪した。軽率な発言で、謝罪は当然だろう。
 ただ、上野原市で取材をしていて「医師の価値観は独特だ」と感じざるを得なかったのは、市内の学校医が不在になっていることを分かっていながら、対立を続けた江口英雄市長と上野原医師会の「内輪もめ」だ
 江口市長は医師でもある。新市立病院という地域医療の核の建設を巡って地元医師会を無視し、医師会は学校医委嘱を辞退した。その結果を招いた江口市長の行政手腕には疑問符が付く。一方、江口市長の手法がどうあれ、選挙という市民の審判を受けてもいない医師会が、子供の健康診断の日程を左右してはいけない
 医師は人とあまり折り合わなくても貫ける職業かな、とも思う。麻生さんの発言も一面の真理がある、と思えてくる。【富士吉田通信部・福沢光一】

いや、医師会が健診日程を左右してはいけないと言いますけれども、学校保険法で児童生徒への健診を義務づけられているのは設置者や教育委員会の方々であって、本来なら医師会風情が口を出す義務も義理もない話なんですけどね(苦笑)。
ま、今さら羽織ゴロに何を言われようが気にしないという医者も増えているご時世ではありますけれども、当の上野原医師会の皆様にとってはまた別な見解があるやも知れず、改めて変態新聞の購読部数が下落の一途を辿っている理由の一端を垣間見たようにも思えます。

さて、ようやくここからが本日の本題に入って、その上野原市の新病院建設に関わる新展開がまた記事に出ていましたので紹介させていただきます。
前述のように国からは「どうせ誰も使わないんだし」と身の丈にあった運営への改組を進められている状況にあって、市長としては医療の充実という公約もあって診療科の拡大路線へ意欲的であり、これに対して公設民営化された病院管理者らとしては少し現実を見据えていこうじゃないかと言っている状況のようですね。

上野原市、新病院建設へ暗雲 市長「産科を再開」 VS 管理者「赤字膨らむ」 「撤退困る」市民に不安 /山梨(2010年9月4日山梨日日新聞)

 上野原市が計画している新市立病院の診療体制をめぐり、江口英雄市長と病院を運営する指定管理者・社団法人地域医療振興協会の主張が対立している。江口市長は公約を実現させようと産科の再開などを掲げ、基本設計に盛り込んだ。協会は「ニーズが少ない産科を設ければ赤字が膨らむ」と運営面から反論する。着工が来春に迫る中、両者が歩み寄る姿勢は現状で見られない。同病院は医師不足から経営が悪化、協会が運営に乗り出してから改善の兆しが出ていた。市民からは「市長が公約を実現したい気持ちは理解できる。ただ協会とゴタゴタして撤退されては困る」と不安の声も出ている。
 「市立病院に産科を設置するのが行政の責任」。江口市長は3日の定例会見で、新市立病院に産科を設ける考えを強調。「市長選は人口減少に歯止めをかけたい思いで立候補した。『産める、育てるまちづくり』という公約を新病院で実現したい」と述べた。
 市関係者によると、新病院の設計は、江口市長から指示を受けた協会側が内容を詰めた。しかし江口市長は(1)産科の設置(2)救急循環器診療体制の確立を含む血管造影室の設置-などについて再検討を求めたことで対立が深まった。
 協会側が産科設置に難色を示すのは、県計画で東部地域の産科は都留市立病院という方向性が出ているため。「産科があるに越したことはないが、医師確保は困難。市内の出生数を踏まえると、施設があっても赤字が膨らむ」との指摘が出ている。
 これに対し、市長サイドは医師不足で2006年秋から産婦人科を休止していることを踏まえ、「市民への説明会でも、産科の再開を望む声は多かった。公立病院だからこそ、不採算部門も設置できる」(病院対策課)と主張。医師確保は、市が進めるという。血管造影室について、市長サイドは重度の心筋梗塞(こうそく)や狭心症などに対応する救急循環器の診療体制を充実する狙いがあった。ただ協会側は「実現には数人の医師チームが必要」との理由から困難との見解。
 同病院をめぐっては、03年に15人だった常勤医が大学からの派遣縮小で、07年には3人に減少して存続の危機に陥った。08年に同協会が指定管理者となり、常勤医は9人に増えた。両角敦郎院長は「この病院は危機的な状況を乗り越えて常勤医が増え、経営が改善してきた再生途上の段階。まずは身の丈にあった医療を提供し、充実することが大切」と話す。江口市長は、3日の会見で「指定管理者にも努力してもらうようお願いする」と述べた。
 市内の男性(61)は「市長の公約達成は重要だが、現実問題として可能かどうか検討する必要がある。協会を無視するような強引な進め方は撤退という望ましくない結果につながるかもしれない」と懸念する。

このところ市の人口は横ばいから減少に転じているということですから、今さら産科などを拡充したところで仕方ないんじゃないかという意見もあるのでしょうが、逆にこういうところの体制がしっかりしていないと安心して子供を生み育てられないという考え方もあるでしょうから、これはこれで為政者として何が正しいということもない問題なのでしょう。
ただ現実問題として考えると、すでに一度撤退した産科をこのご時世にわざわざこんな地雷原めいた公立病院で再開するとなれば、いったいどこの誰が行きたがるのかということは気になるところですし、県の計画でもすでに産科施設としては見切られているとなれば、医者確保の問題は置くとしても今後県のバックアップも見込めない中、市単独で赤字の産科を維持していくだけの覚悟はあるのかということでしょう。
三顧の礼で産科医を招いたはいいがやはり無理でした、産科やめますでは全国産科医はおろか全科医師を敵に回しかねない話ですし、ましてやこんな病院で循環器救急をなどと気勢を上げてみたところで、常識的に考えて身の程を知れと突っ込まれて終わるのが当たり前ですよね。

この件を見ていて非常に面白いなと思うのは、一般的にこういう話になりますと現場の状況を無視した市民の声とやらに行政が振り回されて、無茶苦茶をやった結果崩壊に至るということが多いのですけれども、ある意味市長が必要以上に熱くなって暴走している結果なのでしょうか、むしろ市民の側からは「いやそんな無理でしょ普通に考えて」と妙に冷めた声が聞こえてきていることですよね。
現地ではかつて建設されたニュータウンも住人の高齢化が進んできてオールドタウンになりつつあるなんて話も聞こえてきますけれども、要するに地域としてこれからどんどん新規人口が増えていくという状況にはすでにないのだとすれば、150床規模の地域の中小病院として産科や循環器救急を充実させることが本当にニーズに合っているのかですよね。
市立病院の受診者数がどんどん減ってきたことからも見えるように、市民の側では今までも病院の身の丈に合わせて何とか折り合いをつけてきたのも事実でしょうから、この財政も厳しい折にここで無理に一足飛びに冒険をするよりは…と現実を見ている側面はあるのかも知れません。

そもそも公設民営というくらいですから民間が知恵を絞って一生懸命黒字化を目指して頑張っているというのに、肝腎の行政当局(というより、市長個人でしょうか?)が強権をもって新たな赤字要因を押しつけるというのであれば、一体何のための民営化かと感じずにはいられない話でしょう。
公設民営化後の行政介入と言いますと夕張の村上先生もずいぶんと文句を言っていましたけれども、公営時代にろくな経営も出来なかった人々が民営化後も経営が悪化するよう余計な口出しをしてくるのは悪しき伝統というものなのか、それともまさか「俺たちでさえうまくいかなかったものを民間人風情にうまくやられてたま るか」なんて、今どき時代錯誤の妙な意識でもあるのか、いずれにしても困ったものだなと思いますね。
同市長の奮闘ぶりなどは国民生活重視を掲げて政権を取ったはいいが、いざやってみると何やら公約に振り回されている感もある政権与党にも通じるところがあるような話ですけれども、公約というものが政治家のメンツのためなのか市民の生活改善のためなのかということもよく考えた上で、市民も納得できるような結論を出していただきたいところですよね。

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