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2010年9月27日 (月)

こういうのも中国問題というのでしょうか

ちょうどこのところ中国絡みで世間が賑やかなことになっていまして、何かしら中国絡みの話題をと探していたわけでもないんですが、そう言えばこちらはスルーしていたなという話題を取り上げてみましょう。
日本も観光立国だ医療ツーリズムだと近頃では外国人、とりわけ中国人富裕層の誘致に熱心だそうですが、そんな中ちょっと先行きにケチがついたんじゃないかと思えるような話が先日出ていました。

妊産婦をサポート、中国語医療通訳を養成へ /京都(2010年9月23日京都新聞)

 京都市内の中国人妊産婦を対象に、病院や行政機関で診療や助成制度の手続きを助ける中国語の医療通訳の養成に、下京区のNPO法人「多文化共生センターきょうと」が10月から乗り出す。市内の中国人居住者が増え続ける一方、医療や行政側に中国語を話せる人材が少ないミスマッチを解消する狙いだ。

 同センターは市内4カ所の病院に限って中国語の医療通訳を派遣している。昨年度は、英語などを含めた派遣約1600回のうち、9割以上を中国語通訳が占めた。

 新たに養成する中国語の医療通訳は、妊産婦の要望に応じた医療機関をはじめ、出産費用や乳児にかかる医療費の軽減制度を利用するために区役所窓口などへ帯同する。通訳には時給1500円と交通費を支給する。

 10月15日からの毎週金曜に計10回、同区のキャンパスプラザ京都で、母子保健の制度▽出産に関する医療の知識▽診療時や行政窓口での手続き-などについて実技指導を交えて講義した後、試験を課す。合格者を、来年1月から通訳として現場へ派遣する。

 同センターの重野亜久里代表は「専門性の高いプロの人材を養成し、国際結婚や就労、留学などでこれからも大きくなる中国語医療通訳へのニーズに応えたい」と話している。

 日本語と中国語で日常会話をできるのが受講の条件。料金は、30日までに申し込むと1万円。定員25人(先着順)。同センターTEL075(353)7205のホームページから申し込む。

この話、少しばかり注目しておきたいのが「出産費用や乳児にかかる医療費の軽減制度を利用するために区役所窓口などへ帯同」といった仕事も行うということで、昨今では中国人と日本人とを問わずお産費用の踏み倒しが多発しているということですから、こういうところできちんとサポートを行っていくというのは病院にとってもありがたい話ですよね。
ところでこれも別な方面から見れば昨今政府が音頭を取って進めている医療ツーリズムとも関わってきそうな話でもあるわけですが、基本的にあちらは健診や高度医療と絡めて海外富裕層を呼び込むというのが主眼である一方、こちらの方はもう少し身近な半ば定住レベルの外国人を相手にした話であるという点で違いがあります。
健診にしろ高度医療にしろ最初からやることは決まっている顧客を対象に、それを専門にやると言っている医療機関が相手をするわけですから話は簡単であるわけですが、こちらのような話ですと予定分娩のみに留まらず、それこそ未受診妊婦や飛び込み出産などにも関わることになるでしょうし、将来的には妊婦以外の領域にも幾らでも需要はありそうな話ですよね。

対象が多様化してくればもちろん起こりえる事態も複雑化してくる理屈ですし、そうでなくとも気の利いた検診レベルでもちょっとした検査用薬品でいきなり心肺停止なんてこともないとは言い切れませんから、当然ながら予定通りに行かなかった場合のリスクマネージメントにも考えが及んでいなければならない道理です。
ところが医療現場ではどうも未だにそちら方面への手配にはあまり気が回っていないのではないかと感じられる事件が、つい先日起きてしまったと言うのはタイミングがいいのか悪いのか、医療ツーリズム推進という国策を前にして思わぬケチがつきかねないということですよね。

中国人観光客:心臓発作、治療費600万円超 保険適用されず家族困惑 /大阪(2010年9月19日毎日新聞)

 ◇「日本旅行ブーム」の陰で

 今月2日に中国から観光で関西国際空港に降り立った男性(72)が心臓発作で倒れて病院に入院、医療費が600万円以上に膨らみ、家族らが途方に暮れている。渡航前に旅行保険に加入したが、病気の治療には適用されず、全額自己負担を求められているためだ。集中治療室で意識が戻らない中、家族は「どうやって支払ったらいいのか」と困っている。

 男性は河南省から来日した医師、王〓貴さん。妻の趙翠芳さん(68)と団体ツアーで来日、10日間かけ国内を巡る予定だった。

 王さんは関空に到着直後から胸に痛みを覚え、空港近くのホテルでさらに悪化。意識を失い、泉佐野市の病院に救急搬送された。緊急手術の費用や入院などで治療費は16日までで計約658万円に達し、今後さらに増える見込みだ。しかし、中国で加入した旅行保険では、既往症には適用されない

 王さんは勤務先の病院を退職し、現在、月ごとに支払われる約3万円(日本円換算)の「退職金」で生活。旅行費は貯金から約10万円(同)を出し、初めての海外旅行を楽しみにしていたという。

 中国から日本への観光客は急増中だ。00年に団体観光が始まり、今年7月には個人向け観光ビザの発給要件も緩和された。そんな「日本ブーム」の中で王さんを病魔が襲った。趙さんは「親切にしてくれた日本の病院関係者には本当に感謝してる。20年、30年かけても分割で支払いたいが、そのすべもない」と涙にくれている。【平野光芳】

まったくの下世話な話ですがこういう話になると、どこぞの人たちが「かわいそうな人を助けてあげよう!」なんて募金を呼びかけたりするものですが、当今の状況下にあってはどうなることでしょうね?
それはともかく、もちろん保険外の自由診療扱いですから本来は医療保険の定価に縛られる必要はないわけですが、事情が事情だけに原価ぎりぎりの価格で請求していると考えると、恐らく限りなく保険の診療報酬通りの定価販売に近い額となっているんじゃないでしょうか?
普通の人が何も知らずに毎日新聞の記事を読んでいると「なんて高いんだ!」とも思ってしまいそうなこの件、ちょうど「天漢日常」さんが取り上げていてその通り!と思ったのですが、少しばかり引用させていただきましょう(改行を勝手に修正させていただいています)。

 ICU管理1日入院でいくら取られるか考えただけで もし中国で心臓発作でICU管理だったら、家族は治療を承諾したのかという辺りが気になる。
で、2年前のデータなので 現在は更に高騰していると思われる中国の医療費データがジェイアイ傷害火災保険のサイトにあった。
中国(上海) 医療事情があったので、それによると

 上海でICU管理一日15万円

のようだ。この当時のレートで考えると ICU一日1万元ってことでしょ?
今回の事例ではないが 日本人が搬送された例が上がっていて、それは

    頭部の痛みを訴え受診。チャ-タ-機で医療設備の整った病院へ搬送。脳内出血と診断され25日間入院。8,247,124円

というもの。チャーター機が高そうだが、その下の

    トイレの段差を踏み外し転倒。胸椎圧迫骨折と診断され4日間入院。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添いチャーター機で医療搬送。4,953,716円

と言う事例と比べると、チャーター機の費用が200〜300万円程度かな〜。
脳内出血はICU管理だろう。そうすると 一日1万元のICU管理料で更に高度な医療を施すとなると、結構取られることになる。

ちなみに「天漢日常」さん曰くアメリカでは「ICU管理に一泊2万ドル」ということで、このほかにもいろいろな事例報告を取り上げていますけれども、「アメリカで早産した知人は1億請求きた」とか「弟がタイで脳梗塞で倒れたけど400万請求された」とか、要するに日本が世界に向けて顧客を呼び込もうとしている高度医療で最高の手当をしてもこのレベルというのは、実はどんだけ安売りしてるんだよとも受け取れる話なんですよね。
もちろん国際相場からすると不当なダンピングレベルでも無保険となればそれは確かに絶対値としては高いのは事実ですが、逆に何であれ先払いでなければ医者が手を出さないという中国で同じ状態になっていたとして、同様のレベルの医療を受けていたのかと言えば恐らく断っていただろうとも思われる状況でもあったわけです。
このあたりは昨今の無保険患者の増加を考えた場合に日本人相手であっても決して人ごとではありませんけれども、命は何よりも重いはずだとついついお金のことは考えずにやれるだけの医療をやってしまう、あるいは仮に支払いの懸念を感じてもJBM的に徹底的な治療をやらざるを得ないという、現代日本の医療における弱点をピンポイントで突かれてしまった事例ではあったかなという気がします。

今回は不運な旅行者の話ですけれども、今後国が言うように国外から外国人を大勢呼び寄せ観光立国化を図るということになれば当然同様の事態は急増するでしょうし、そうでなくとも国内に定住している外国人も増えてきているわけですから、これからもいつ何時同様のことが発生するかは知れないということです。
最近では都道府県毎に救急搬送のルールを策定するように義務づけられることになって、いずれは黙っていても勝手に患者が送りつけられてくるような時代が目前に迫っているわけですが、そうなりますとどこの病院でもいつ何時こうした症例を引き当ててしまう可能性があるということで、医療を行う側も早急に意識改革をしていかなければ大変なことになりかねませんよね。
国が本気で外国人を呼び込もうとやる気を出しているのであれば、こうした方面に関しても何かしらの対策を早急に講じてくれないことには困るということなんですが、現在の政治の状況を見ていると到底そんなところにまで気を回していられそうな気配でもないんですよね…

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コメント

中国の国内で医療過誤で亡くなっても数万円程度のことにしかならないのに、日本で数千万円の慰謝料が取れるとなれば、さて一攫千金目指して日本を目指す人達も押し寄せてきそうな気がします

なにせ、支払い金がなくても当面は断られることなく医療が続く日本です

あっさり中国に帰ってしまったとしても、資金回収手段がありません。
医療費は2年で時効でパーです。督促状が届くはずもない。

で、医療を断れば、これはこれでまた慰謝料が待ってます。

医療の国際化とは、国際標準の医療受け入れ体制ということでもあります
果たして日本にそれほどの覚悟があるのか?と問いたくなります

性急に法整備が必要なのですが、大きな倫理問題があって医療提供側も一枚岩に成り難いものがあります。

善意が貧乏に喰い尽される日も遠くないように思えてなりません

投稿: Med_Law | 2010年9月27日 (月) 19時20分

今回の尖閣騒動でも日本人のナイーブさを世界に暴露してしまいましたが、とりわけ医療現場の性善説前提の運営ぶりは早急に何とかしないと大変なことになると思います。
すでに日本人相手でも破綻しかけているようなところに、外国人がどっと押しかけてくればどうなるか誰でも想像出来ると思うのですがねえ…

投稿: 管理人nobu | 2010年9月28日 (火) 09時01分

     いいか、おまえら
         ( ゚д゚ )
         (| y |)


    いがみあいの続くアジアだが
       亜  (゚д゚ )
       \/| y |)


     心を合わせれば・・・
       亜   ( ゚д゚)  心
       \/| y |\/


          ( ゚д゚)  悪
          (\/\/

           _, ._
         (;゚ Д゚) 悪
          (\/\/

投稿: | 2010年9月28日 (火) 11時33分

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