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2010年9月16日 (木)

相次ぐ負担増加に国保はいつまで保つのか?

市町村が運営する国民健康保険(国保)において、この四月から失業者に対して保険料を減免する制度が始まっていますが、世が不景気という時代だけにこれだけでは未だ十分ではないという判断があるのでしょう、高額医療費の払い戻し制度なども低所得者の負担限度額を月4万円まで引き下げようなんて話も検討しているようで、国として相次いで対策を打ち出してきているようですね。
先日以来さらにもう一段階の低所得者向け医療費対策を講じるという報道がなされていますが、すでにこの六月から基本方針は伝えられていた医療費自己負担分の軽減措置がこのたび入院医療費分から実施されることになったということで、まずは幾つか関連するニュースから拾い上げてみましょう。

医療費の窓口負担減免に財政支援/国保の低所得者向け(2010年6月22日四国新聞)

 厚生労働省は22日、国民健康保険に加入する低所得者が医療機関にかかった際、医療費の窓口負担(原則3割)の減免を受けられるよう、国保6件を運営する自治体に来年度から財政支援する方針を決めた。

減免分が全額市区町村負担となるため、財政的に余裕のある自治体でないと実施しづらいのが現状。厚労省は半額を交付金で手当てし、実施自治体を増やしたい考えだ。医療費の未払いを防いで医療機関の負担を減らすとともに、景気悪化で生活に困窮する人を救済する狙いもある。

 本年度中に数十自治体でモデル事業を実施し、その結果を踏まえて統一的な運用基準を定める。

 厚労省によると、減免のための条例や規則を定めているのは、2007年時点で全体の55%に当たる1003自治体。減免を認める理由は自然災害の被害などが多く、低所得を理由に認めているのは155自治体だけだった。

 しかし、厚労省が全国の病院を対象に昨年実施した調査で、病院側は医療費の未払い額のうち22・6%が「患者の生活が困窮して資力がないため」と回答。減免制度を設ければ、未払いの抑制につながることがうかがえた。

 財政支援には、加入者の収入格差などを調整するため国が自治体に交付している国保6件の「調整交付金」の基準を見直して、一部を充てる。

国保加入失業者らの医療費減免へ 入院3カ月まで(2010年9月13日47ニュース)

 厚生労働省は13日、失業などで一時的に収入が減った国民健康保険(国保)の加入者が医療機関に入院した際、3カ月まで医療費の自己負担(原則3割)の減免を受けられるよう、財政支援することを決めた。対象者の基準を定め、国保の運営主体である市町村に同日付で通知した。

即日実施し、減免した分の半額は国が交付金で補助する。景気悪化に伴う生活困窮者の支援や、医療費滞納による病院の負担解消が狙い

 患者負担の減免はこれまで全額が市町村の負担だったため、多くの市町村は二の足を踏んでいた。厚労省は国が半額を持つことで実施自治体の増加を期待しているが、財政難の市町村にとっては残り半分でも負担が重く、どこまで広がるかは不透明な面もある。

 対象となるのは(1)災害や事業の休廃止、失業などで収入が著しく減少(2)月収が生活保護基準以下で、かつ預貯金が1カ月の生活保護基準の3倍以下―の条件をいずれも満たした場合。個別の事情に応じて減免期間が3カ月を超えることも認める。

国保の負担減免、基準を明確化=「生活保護以下」と通知-厚労省(2010年9月14日時事ドットコム)

 市町村が運営する国民健康保険(国保)の加入者が失業などで一時的に収入が下がった場合、医療費の窓口負担(原則3割)を減免する制度について、厚生労働省は14日までに、対象者を「生活保護水準以下」など基準を明確にして都道府県に通知した。減免額などは市町村が決める
 同省が通知した減免の対象は、入院を前提とし、(1)生活保護基準以下の収入(2)預貯金が生活保護の3カ月分以下-のいずれも満たすことが条件。期間は3カ月を基本とし、長期化する場合は生活保護制度の適用を検討する。

記事を見ますとこの制度、もちろん経済的に困窮する患者救済ということもあるのでしょうが、そもそもの発端としては病院未払い医療費問題が大きく取り上げられ始めたことから行われた調査結果によるものと言うことで、医療機関側の救済ということがまず先にあった話であるようです。
この未収金問題、最近では専門業者に委託する動きも進んでいますけれども、回収できた医療費は2.6%に留まるなんて数字もあるようにあまり捗っている様子でもなく、民間医療機関などでは対策を講じないことには自分が潰れてしまうと言う状況となれば、それは現場で働くスタッフにしたところでそれなりの対応は考えざるを得ないのも当然ですよね。
もちろん制度が検討されはじめた当時は例の「たらい回し」報道が盛んだった頃でもあったわけですが、こうして経済的側面から病院側が被るリスク要因を減らしていくことが患者の受け入れ促進につながり、結局は患者自身にとっても利益になるという判断も当然あっただろうと思われます。

そんなこんなで病院にとっても患者側にとっても悪い話ではないということではあるのでしょうが、問題はこの時期行政の側としても金が余っているということでもないでしょうに、財源負担はどうするのかという話ですよね。
恐らく政府としては対象者の数を計算して「この程度ならやれる」という試算はしているのでしょうが、例えば昨年厚労省自身が出したデータによっても年収200万円以下の国民が1000万人は存在するということですから、生活保護の患者よりもはるかに大勢が対象になりそうだと考えれば決して少なくない数になりそうだとは思えるところです。
もちろん国としては我々も半額を出すのだから自治体も出せと言う話なのでしょうが、先日以来お伝えしているようにただでさえ後期高齢者医療制度廃止で国保に抱え込まされる形となった自治体は悲鳴を上げているという現状で、これ以上の負担をしていくだけの余力があるのかどうかですよね。

2009年の調査では国保加入世帯の平均保険料負担額が32.5万円と言いますが、自治体ごとの最高額(50.4万円)と最低額(14.0万円)とでは実に3.6倍に及ぶ市町村格差があったと言いますから、現在でもそれぞれの国保加入者の内訳によって必要とされる医療費の額は大きく変わるものであることは明らかであるわけです。
一般に所得水準が高い人ほど健康状態が良いとされていることに加えて、日医などが長年主張しているように早期受診の制限は初診時に重篤化している可能性を高めるのだとすれば、病院にかかることも憚られるような低所得者層は平均よりも医療費がかかると言う予測も立ちますから、公費の医療費負担も無視できないものになる可能性は十分ありそうですよね。
自治体側としては勝手に国が負担増を言い出してきたという形ですから、どこまでの自治体が追随するものなのか、実際の減免額が幾らになるのかはやってみないと判りませんけれども、こうして新聞でも報道されてしまった以上は市民の側としても「なんでうちの自治体は減免制度がないんだ?」なんて疑問も生じるだろうし、現場での混乱が生じかねない話です。

政府の側とすれば「自分たちはこんなにも貧困対策をやった」と得点になるつもりでやっていることでしょうし、実際社会的にそれで助かるという人間もいるのは確かでしょうが、昨今かなり危ないことになってきている国保に更なる負担を押しつけるということであれば、やはりもう少し自治体側としても配慮が欲しかったというのが本音なんだろうなと思います。
低所得者対策は社会的急務なのも事実ですが、一方で国保が破綻し保険料大幅値上げとでもなれば、結局はその影響を被るのも国民の側であるわけですから、小手先のやりくりだけではいずれ限界ということになれば、最終的には抜本的な健康保険制度の見直しという話も必要になってくるのでしょうね。
どうせ必要なことならとことん追い詰められてどうしようもなくなってから慌てて移行するよりも、まだしも幾らか余力のあるうちにやった方が被害は少ないということになりそうですが、何しろ異論百出で紛糾すること必至なだけに、国がどの程度の青写真を描いているのかが気になります。

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