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2010年9月30日 (木)

やっぱり際限なき暴走って怖いですよね

ちょうど先日こういう記事が出ていて、失礼ながら思わず苦笑してしまったのですが、まあこれもシルバー人材の有効活用という一つの事例ではあるのでしょうかね?

鷹島診療所に85歳新所長 /長崎(2010年9月28日読売新聞)

 松浦市立鷹島診療所の新所長として、医師の菅井健治さん(85)が着任し、27日、市役所で委嘱状の交付式が行われた。

 約15年間離島医療に携わった経験がある菅井さんは、同診療所の常駐医確保が難航していたため、市側の要請を引き受け就任した。任期については当分の間とし、主に内科診療を平日に行うという。

 式では、友広郁洋市長が「市民を挙げて感謝と歓迎を申し上げたい。豊富な経験や考えを広く伝える機会も作って、市民とも交流を深めていただければ」とあいさつ。菅井さんは、往診などを通じて独り暮らしの高齢患者らの実態を把握し、意思疎通も重視する意向で、「ご期待に添えるよう、現場で一生懸命努めたい」と話した。

当分の間と言いますか、折り合いが付けば社会的、生物学的に可能な限りというのが実情なのでしょうが、このお年でまだ往診もやる気満々というのは大した活力ではないでしょうか。
こういう話を聞きますと一般的にはもっと若くて元気の良い人材はいないのかと思えてくるところですが、少なくともこうした僻地離島でやっていこうと考える人材はそうそうはいないのが実情であって、しかもそれは別に医療に限った話でもないんですよね。
僻地医療問題はともかくとして、実際のところ全国の医師不足がどの程度のものであるのか、初めての定量的な調査結果がこのほど出たということでちょっとした話題になっています。

全国で2万人超の医師が不足―厚労省・医師不足実態調査(2010年9月29日CBニュース)

 医師不足の実態を把握するため、厚生労働省が全国の病院と分娩取り扱い診療所を対象に行った調査の結果が明らかになった。それによると、各施設が担う診療機能を維持するために確保すべき医師数は、全国総数で現員医師数16万7063人の1.14倍となる19万1096人で、約2万4000人の医師が不足していることが明らかになった。

 この調査は、医師不足の実態を明らかにしようと、厚労省が初めて行った。調査対象の医療機関は、病院8683施設、分娩取り扱い診療所1579施設の計1 万262施設。このうち調査票を提出したのは、病院7687施設、分娩取り扱い診療所1011施設の計8698施設で、回収率は84.8%

 調査項目は、「必要医師数」「勤務形態」「分娩取り扱い医師」の3項目。
 このうち必要医師数は、地域医療において各施設が担う診療機能を維持するために確保すべき医師数を調べたもので、全国総数は2万4033人。現員医師数と必要医師数の合計は、現員医師数の1.14倍となった。また、このうち分娩取り扱い医師の必要医師数は、現員医師数(7312人)の1.15倍となる 8436人で、1124人の医師が不足している結果となった。

 必要医師数を地域別に見ると、現員医師数に対する必要医師数の倍率が高い都道府県は、岩手県が1.40倍と最も高く、以下は、青森(1.32倍)、山梨(1.29倍)などとなっている。一方、比較的医師数が充足して倍率が低いのは、東京(1.08倍)、大阪(1.09倍)、神奈川(1.10倍)などで、首都圏などの都市部に集中している。
 分娩取り扱い医師については、山梨が1.59倍とトップで、以下は、高知(1.55倍)、青森(1.34倍)などとなっている。逆に倍率が低いのは、長崎(1.00倍)、熊本(1.04倍)、福岡、宮崎、新潟(いずれも1.05倍)などとなっており、九州地域に集中している。

 このほか診療科別では、リハビリ科(1.29倍)、救急科(1.28倍)、産科(1.24倍)などの倍率が高く、医師不足の深刻化が浮き彫りになっている。

勤務医1.8万人不足 地域・診療科に偏り 厚労省調査(2010年9月29日朝日新聞)

 全国の病院に勤務する医師数は約1万8千人不足していることが、厚生労働省の調査でわかった。地方に比べ都市部に医師が集中している地域偏在や、救急科やリハビリ科での不足がより深刻であるなど診療科ごとの偏りも判明。医師不足の全国調査は初めて。厚労省は近く結果を公表し偏在の解消に乗り出す。

 全国にある全病院を含め計約1万施設に対して調査した。今年6月1日時点で、実際の勤務医師数や求人中の医師数のほか、求人理由などを調べた

 調査によると、病院に勤務している医師数は約17万人。診療機能を維持するために病院が求人中の医師数は約1万8千人で、勤務医師数に対して必要医師数の倍率は1.1倍だった。調査時点で求人していなかったが病院が必要とする数を加えれば必要な医師数は計約2万4千人になる。

 都道府県別でみると、必要医師数の倍率が高かったのは青森、岩手、島根などで1.2倍を超えていた。一方、東京や神奈川、福岡は1.1倍以下と低く、都市部と地方で医師不足に差があることがはっきりした。医師が十分足りている都道府県はなかった

 また、診療科による医師の偏りも明らかになった。病気の後遺症でおきる運動障害などを総合的にみるリハビリ科や、救急科で1.2倍を超えていた。しかし、美容外科、形成外科、アレルギー科などの必要数は少なかった

 医師を求人しなければならなくなった要因は、転職や開業などで勤務医が退職し補充のために募集していると答えたケースが最も多い。次いで、大学病院が地方に医師を派遣する機能が低下したことや、医師の勤務時間を減らすなど勤務環境を改善するためという理由が多かった。

 2004年に新卒医師に2年間の臨床研修が必修化され、自由に病院を選ぶことができるようになった。大学病院に残る医師が減り地域の病院に派遣していた医師を引き揚げざるをえなくなった。このため各地で医師不足の傾向が顕著になったとされる。

 厚労省や文部科学省は地域偏在の解消に向け将来その地域で診療することを条件に入学する学生の定員枠を設けるなどの対策をしてきた。厚労省は来年度予算の概算要求で医師不足に悩む病院に医師を派遣する「地域医療支援センター」を各都道府県に設置することを盛り込んでいる。

医師:2万4000人不足 地域の偏り鮮明 厚労省調査(2010年9月29日毎日新聞)

 全国の医療機関で実際に働く医師数が計約16万7000人なのに対し、医療機関側はさらに計約2万4000人が必要と考えていることが28日、厚生労働省が初めて行った「必要医師数実態調査」で分かった。現在の1.14倍の人数が必要で、医師不足の深刻な実態が改めて浮き彫りになった。地域による偏りがあることも分かった。

 厚労省は昨年度の補正予算で各都道府県に50億円の「地域医療再生基金」を設置し、医師の配置を促す方針。文部科学省が検討している、医学部新設の容認に向けた議論にも拍車がかかりそうだ。

 都道府県別で、現在の医師数に対する倍率が最も高かったのは岩手の1.4倍で、次いで青森1.32倍、山梨1.29倍。逆に低いのは東京(1.08倍)、大阪(1.09倍)、埼玉・神奈川(1.1倍)と大都市圏が中心だった。

 分娩(ぶんべん)を扱う医師は山梨(1.59倍)、高知(1.55倍)、青森(1.34倍)が高かったのに対し、長崎(1.0倍)、熊本(1.04倍)、新潟・福岡・宮崎(1.05倍)は低い。診療科別ではリハビリ科1.29倍、救急科1.28倍、産科1.24倍の順だった。

 各医療機関が回答した医師不足の背景は「求める診療科医師の絶対数が地域で少ない」38%、「大学の医師派遣機能が低下」20%、「勤務条件と医師の希望との不一致」14%

 調査は全国の病院8683施設と、分娩を扱う診療所1579施設の計1万262施設が対象。計8698施設が6月1日時点で回答した(回答率85%)。

この調査結果をどう見るかですが、各医療機関が好き勝手に「これくらいの医者は欲しい」と出してきた数字を積み上げた結果だということですから、言ってみれば現場で求められる勤務医の最大値とも言える内容なんですが、それがたかだか14%増し程度で十分だと言うことになりますよね。
これなら現在の医師数増加のペースが続くとすれば(続くどころか、むしろ更に増加しそうですが)、今後わずか数年で必要医師数が充足されてしまうということになりますけれども、現場でそうした実感はありますでしょうか?
こういう話を聞くと思うことに、一つには崩壊だ崩壊だと言いながら現場は未だに逼迫しつつも回っているわけですから、少なくとも今現在生き残っている病院というのは現在やっている業務に対する最低限の必要数を満たしているという考え方もあるかと思いますね。

実際には例えば産科医がいなくなってお産をやめた、救急担当が回らなくなって救急指定を外したといったことはよくあるわけですが、そうした施設はすでにその分野から手を引いているわけですから、「地域医療において各施設が担う診療機能を維持するため」云々と問われればお産はやめたから産科医の不足数はカウントしない、救急はやめたから救急担当医は数えないというバイアスがかかっている可能性はあります。
やっていることではなくやりたいことに必要な医師数までカウントさせてしまうとすれば、例えば僻地の零細町立病院でも「うちも亀田のような総合病院を作って医療で町おこしをしてみたいんだ!そのために医者が300人は必要だ!」なんて夢物語まで数え上げられてしまいますから、取りあえず今手を出している範疇でカウントさせるというのは妥当ではあるのでしょう。
ただそうなりますと、例えば地域内で一定の需要があるのにどこの施設もやっていないという場合には必要数が過小に申告される可能性がある理屈ですが、そうした患者もどこかの地域のいずれかの医者にかかっていて、そうした施設で不足感があれば申告しているはずだと考えれば、案外まずまず妥当な数字ではあるのかも知れませんね。

一方で「いや、たかが一割二割増やしたところでどうしようもない!そんなことでは違法労働も改善されない!」と感じている人間の方がはるかに多いということは、実のところ医師数16万人などと号しても実際に医療の現場で手を動かしている人間はごく少なかったと考えると納得できることなのかも知れません。
例えば大学病院には大勢の医者がいますが、教授助教授をはじめ上の方の先生は医者としての労働量は大したことはないわけですし、市中病院でも院長など管理職をやっている医者なども同様でしょうが、これらの人々はいわゆる医者稼業以外にやるべき仕事が沢山あるということですよね。
慢性期中心の中小病院や療養型などにおいてもこれ以上手を広げなければ何とか回していけるとすれば、実は死にそうな顔で医療に血眼になっている医者など全体の半分もいない、下手すると数分の一にしかならないのだとすれば、本当に二万人もの実戦力が増えれば一気に奴隷労働解消!なんてことになるのかも知れません(増えれば、ですが)。

要するに日本において医者が余っているという話は未だに聞かないものの、一方で多くの現場では手に合う範囲で業務を縮小しながら何とか折り合いをつけて仕事を回していて、どうしても医者を増やしてくれないことには現状維持も出来ないと悲鳴を上げている現場というのは、案外多くはないんじゃないかという推論も成り立つということでしょうか。
この推論が当たっているとすれば自ずから別な結論も導き出されるわけですが、つまりは不足分が二万人だから医者を二万人増やしました、さあもう不足とは言わせませんよとなったところで、医者の中でそうした修羅場に回っている人間というのは比率的に多くはなかったわけですから、増えた二万人にしても大多数は別な場所に行ってしまうだろうと言うことが想像されますよね。
とすれば、当初の設問の立て方に不十分なところがあって、不足だと言わずとも過剰でない限りはどこの施設でも医者は多い方がいいわけですし、増えたら増えたでそれに応じて業務を拡張した方が経営上も成長路線に乗せられるわけですから、こうした場所が完全に充足するまでは本気で不足している領域にも医者は行き渡らないだろうとも考えられそうです。

医者も人間ですから楽に食っていける道があるのであればそちらを選ぶ人間が多いのは当然で、むしろ今まで公立病院などで奴隷労働に勤しんできた医者こそ(特殊な性癖をお持ちと言うのでなければ)人としてちょっと変な考え方の持ち主とも言えるわけで、そうなりますと少なくとも医者が余って困るような職場があちこち出てくるまでは現状の分布傾向が続くだろうと言う推測が成り立ちますよね。
そうなると当分続くことになる一部領域での極端な医師不足解消をどうするのかという課題が残るわけですが、例えば公立病院関係者や読売新聞が熱心に主張してきた医者など強制的にラーゲリで労働させればいいんだという考え方は、職業選択の自由を云々する以前に人権上どうなのよというところがあって、当の現場から最も忌避されているということは言うまでもないことです。
ところがそれでは完全な自由選択に委ねた結果どうなるかと考えると、すでに民主党政権は医学部新設も含めた医師数大幅増加にゴーサインを出しているわけですから、政府や国民が納得するところまで医者が増えた頃にはすでに逃散先もなく医者の相場は大暴落、それこそ「嫌なら辞めろ。代わりは幾らでもいる」が現実のものとなっているだろうと言うことで、これまたあまりありがたくもない話ではないでしょうか。

医者の側としては教育の問題などもあって急激な医師数増加はよろしくないし、もちろん歯科医や弁護士業界のようなワープア化も望んでいないでしょうが、全くの自由選択に委ねたままで現状を続けていくということになれば、これは結果としてかえって自分たちの権利が侵害されそうな気配でもあるわけですよね。
だからと言って医師数増加断固反対!というのもすでに仕事が回っている人たちの既得権益ということになりますから、ある程度節度を持って総数を増やすのは仕方がないとして、新規に増やした医者だけではなく医者全体としてどう業務を分け持つかの議論も必要だということでしょう。
要はある程度皆が納得できる範囲で自主的に何かしらの対策を講じておいた方が、最大多数にとっての最終的な幸福度は高くなるんじゃないかとも考えられるわけですが、全医師横断的な組織も存在しない「早い者勝ち」な現状で、自分たちの権利を制限してまで主体的な管理体制を構築しようと考える奇特な人間がどれほどいるか、その管理体制についても業界としてコンセンサスが得られるかどうかです。

それでも自分たちは既得権益を確保した側である本田大先生やら日医あたりの御老人達の好き勝手に任せておいたのでは、何かしらの自主規制が成立するにしても「何僻地医療?救急?そんなものは若い連中にやらせておけばよろしい」で終わりかねないでしょうから、そろそろ現場も危機感を持つべき時期なんだと思うのですけれどもね。
何にしろ、国のやりたい放題にやらせてしまった結果すっかり業界が崩壊してしまった卑近の例にだけは事欠かない時代ですから、医者の側としても同じ轍を踏むのが嫌であれば対案を出していかないことには社会の納得も得られ難いところでしょう。

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コメント

たしかに、この調査は地域に必要な医師数ではないですね。
この調査は僕も見て書きましたけど少なくとも当院としてはこの地区に対する当院の役割と要望、それに対する医師数ではないです。だって、各診療科に書類が回って今、その診療科で医師が足りてるかどうかって書いただけだもん。ぐりけんさんの言うとおり亡くなった診療科を復活させるとか今できないけど地域が求めている診療を行うために人員は入っていません。
あくまでも、自分が辛くない程度に働けるための必要人数です。

投稿: 優駿 | 2010年9月30日 (木) 12時50分

585 名前:お増健さん ◆0ZOKENdh0E [sage] 投稿日:2010/09/30(木) 15:40:42 ID:oWSm4g0u0
田舎にいるおいらが言うのも何だが、偏在偏在とほざいても、東京でさえ必要数が足りてないんだから、簡単に田舎に行くわきゃねえじゃん。
それに「倍」ってのは、統計でウソをつく悪質な方法だな。
東京の方が人口が必要人数が多いに決まってんだから、東京1.08倍、岩手1.4倍ったって、不足してる絶対人数は東京の方が多いはずだぞ。
正規分布しない集団に「平均」を持ち出すと同じで、分かっていてわざとそういう発表をする。

586 名前:卵の名無しさん[sage] 投稿日:2010/09/30(木) 15:49:04 ID:tYpqQU+20
マスゴミは文系だからな…
分かっていない人間も多いだろう。

まあ、厚生省は分かって言ってるだろうがw

587 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:56:14 ID:872ZkE8r0 [1/2]
>>585
東京(H20) 35,616人(http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2010/03/60k3v100.htm)
岩手(H18) 2,569人(http://www.pref.iwate.jp/~hp7002/02kikaku/iryou/19.pdf)

これで不足数を計算すると、東京の医師不足数2849名、岩手の医師不足数 1028名

588 名前:卵の名無しさん[] 投稿日:2010/09/30(木) 15:57:05 ID:872ZkE8r0 [2/2]
東京は、岩手の3倍医師不足ってことになるね

投稿: またも捏造? | 2010年9月30日 (木) 23時18分

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