« 最近の話題はお年寄りなんだそうです | トップページ | ミスター年金氏、今度は本業の方で大ピンチ?! »

2010年8月 5日 (木)

最近少し気になった小ネタを幾つか

全くの私事ですけれども、最近いささか夏ばて気味です…

さて、地方の医師不足は今さらという話題ですけれども、せっかく大学の定員を増やしても卒業生が県外に流出してしまうという話はよく聞きますよね。
ただその根本原因は出口側ではなく入り口側にこそあるんじゃないかと、改めて考えさせられる記事がこちらです。

明日へのカルテ:第1部・医師不足解消の道/1 都会に帰る研修医(2010年8月2日毎日新聞)

 日本の医療は今、転換期にある。民主党政権は今年度、診療報酬を10年ぶりにプラス改定。野党も医療費や医師数の増加を掲げ、医療を巡る政策は一変した。だが、カネと人を増やすだけで医療現場の問題がすべて解決するわけではない。だれもが、いつでも、より良質で安全な医療を受けられるようにするには、何が必要なのか。まずは医師不足問題から考えたい。

 ◇育てる地方、恩恵薄く

 楽しみにしていた買い物は、何も買わずに終わってしまった。「好きなブランドの店がない……」。神奈川県内の大学病院の女性研修医(29)は秋田大医学部在学中、初めて出かけたJR秋田駅前で途方に暮れた。車の免許がなく、「車社会」の地方では外出もままならない。「連休があれば、逃げるように実家に帰っていた

川崎市出身で慶応大法学部を卒業後、法医学に興味を持って秋田大に入った。15大学を受験し、「医師免許を取れるならどこでも良かった」。唯一合格したのが秋田大だった。

 秋田大の教育環境は気に入っていた。だが今春選んだ研修先は、実家近くの病院だった。「やっぱり、どうしても東京近辺に住みたかった」と振り返る。

 東京都内の大学病院の男性研修医(24)も今春、秋田大を卒業した。東京都出身で、脳外科医を志望。「自分の学力で受かる大学」と秋田大を選んだ

 暮らしは快適で、教育環境も気に入った。だが、研修先は東京を選んだ。きっかけは5年生の時の祖母の死だった。「おばあちゃん子だったし、すぐ駆け付けたかった」というが、帰京は訃報(ふほう)の2日後。長男として、家族のいる東京に住みたいとの思いを強くした。「東京の方が最先端の研究や専門的な症例に触れる機会が多いとも思った」と話す。

 秋田大から今春国家試験に合格した新人医師100人のうち54人は県外へ出た。研修プログラム策定に携わる長谷川仁志教授は「教育内容は他大学に引けを取らないはず。さらに充実させ、地道にアピールするしかない」と語る

 かつて新人医師の多くは出身大学で研修を受けたが、04年度の新医師臨床研修制度導入で研修先の選択の幅が広がり、大学病院、特に地方の大学で研修する医師が激減した。人手の減った大学は地域の病院に派遣していた医師を引き揚げ、医師不足問題が顕在化した。国や自治体は「医師不足の主因の一つ」として対策を進めるが、状況は変わらない。

 毎日新聞は5月、全国の80大学医学部のうち、卒業後の進路が制約されている自治医大と防衛医大を除く78大学を調査した。今春の国試合格者が、出身大学の付属病院か大学がある都道府県内の病院で研修している割合は、東京、大阪、愛知の大学では平均7割を超えるが、地方では5割以下の大学が多いことが判明。最高の順天堂大(東京)は90%に達する一方、最低の宮崎大は19%にとどまる。

 今春国試合格者のうち、大学がある都道府県内の高校の出身者の割合は、横浜市立大67・3%、名古屋市立大57・9%など大都市圏では4割を超える大学が多いが、鳥取大4・5%、山梨大8・7%など地方では2割以下が珍しくない。一方、地元高校出身者が出身都道府県内で研修を受ける割合は、地域を問わず大半の大学で7割以上に達し、地元出身者の割合が都道府県の医師確保の成否に直結する現実が浮かぶ。

 今春の合格者67人のうち、1人しか大学病院に残らなかった鳥取大。能勢隆之学長は言う。「地方の医大は、とりあえず医師免許を取るために都会から来る人が多い。最初から、いずれは帰るつもりなんです

    ◇

 この連載は高木昭午、河内敏康、福永方人、田村彰子が担当します。

いや、どう見ても出て行く学生側は秋田の研修プログラムの内容など全く興味も関心もないとしか読めない話なんですが、「さらに充実させ、地道にアピール」するしかない」って、長谷川先生は学生のニーズというものを全く理解していないで我が道を突き進んでいるとしか言いようがないですよね。
そもそも学生の多くが将来は地元に帰るというのであれば、はるか遠隔地の学生を合格させればさせるほど卒後の定着率が下がるのは当然ですから、大学側が卒業生の残留率を何より優先したいというのであれば入試の段階で「医師免許を取れるならどこでもいい」なんて他県の学生ではなく、地元出身かどうかを最優先考慮して合否を決めないことにはどうしようもないでしょう。
最近はようやく医学部入試にも地元枠ということを言い出していますけれども、これも全国相手の競争から県内相手の競争に変わるわけですから学生の質の低下を来すことは避けられないところで、将来的には地域の医療レベルを引き上げたいならまず高校生のレベルを引き上げろという話になってしまうのでしょうかね?

千葉県と言えば公立基幹病院がいきなり破綻したりと、近年何かと医療関連で話題の多い地域ですけれども、松戸市内の二市立病院も例によって耐震化対策で立て替えをという話が浮上し、ついでに市内の二病院を統合しようという話が出ていながら未だにまとまっていないと言うことですよね。
全国各地で病院を統合しなければやっていけないと言われながら一向に話が進まないのは、今や病院存続問題は自治体主張の首をも飛ばしかねないくらいの大きな社会的関心を呼んでいるという背景があるわけですが、その松戸市から先日出ていました記事がこちらです。

松戸市の病院管理者が辞職(2010年7月24日読売新聞)

後任に医師

 松戸市の本郷谷健次市長が23日に記者会見し、中島道博病院事業管理者の辞表を受理したことを明らかにした。辞職は25日付。後任には、医師である植村研一病院事業総長が来月1日付で就任する。

 同市の病院事業管理者は2000年以降、市職員OB3人が務めていた。本郷谷市長は「新市立病院の建設という重要な問題で、医師たちの意見を反映することが必要」と説明した。

 本郷谷市長は、植村氏、江原正明病院長の2人と新病院の建設について22日に話し合ったことを明らかにし、「現地建て替えをベースに、技術的に建設が可能か検討することで意見が一致した」と述べた。来月にも庁内に病院建設検討委員会を設置する考えを示した。

 中島氏以外では、清水正己土地整備公社理事長、新病院建設担当官(嘱託)2人の辞表を受理。一方、山根恭平教育長、池田明代表監査委員、山田常基水道事業管理者の特別職3人は辞表を撤回した。

 本郷谷市長によると、市長が交代したことによるけじめの意味での辞表提出で、話し合いの結果、辞任の理由はないと判断したという。

この先日行われた松戸市の市長選というもの、今どき巨額の金をつぎ込んで新病院を移転・新築しようなんて昔ながらなハコモノ計画に対して、現在地での立て替えと病院事業規模縮小を訴えた新市長が当選したことで市民がノーを突きつけた形ですが、この政権交代に伴って関連する諸部門で一斉に人事の入れ替わりが起こっているようですね。
いやしかし「新市立病院の建設という重要な問題で、医師たちの意見を反映することが必要」と言いますが、裏を返せば今の今まで現場の医師達の声など無視して話を進めてきたということなんでしょうか、この調子では立て替えを機にまたぞろ医師一斉退職なんてことも起こりそうな予感ですよね。
ただでさえ公立病院の運営は難しいこのご時世に、病院管理者という重要ポジションが単なる役人の天下り先では金をどぶに捨てているようなものではないかという突っ込みもありそうですが、他方では市長自らが全国に知られることになった大失態の尻ぬぐいに奔走する自治体もあるようです。

助っ人医師は前市長 熊坂さん 古巣 宮古病院に(2010年7月15日読売新聞)

 岩手県宮古市で昨年まで市長を務めた内科医の熊坂義裕さん(58)が、かつての勤務先である県立宮古病院で18日から日曜診療の当番に入ることが決まった。同病院は5月、無資格で医師を名乗った女性が着任寸前までこぎ着けた事件の舞台となるなど深刻な医師不足に悩んでおり、日曜や祝日の診療は地元開業医が交代で手伝っている状況となっている。23年ぶりとなる古巣への“復帰”に、熊坂さんは「少しでも病院の医師の負担が軽減できれば」と意気込んでいる。

 熊坂さんは、弘前大学医学部を卒業後、同医学部付属病院に勤務。1985年に、妻の故郷である宮古市に赴任し、宮古病院の内科科長に着任した。

 2年後には市内に個人医院を開設、97年に市長に初当選すると、昨年まで3期12年間を務めた。引退後は、医院で診察をこなしつつ、盛岡市の私立大学教授として管理栄養士の養成にもあたっている

 医師不足に悩む県内では、厚生労働省がまとめた10万人あたりの医師数(2008年)が191・9人と全国37位に沈む。都市部への偏在も顕著で、盛岡市から車で約2時間の宮古医療圏は、120人とさらに少ない。

 こうした中、宮古市では開業医ら地元医師会有志が一昨年12月から、日曜や祝日診療の応援を始めた。今年4月からは、市の休日急患診療所を休止する代わりに、宮古病院の日曜診療にほとんどの医師が参加する仕組みになった。

 熊坂さんの医院も、7月から2か月に1度、応援医師に加わることになった。熊坂さんは「自分もかつてお世話になった病院。勘も取り戻したし、少しでも力になりたい」と話す。

 一方、宮古病院の菅野千治院長は「開業医の応援のおかげで、勤務医は病棟回りや書類整理の時間ができた。本当に助かる」と歓迎している。

県立都病院と言えば当「ぐり研」でも大きく取り上げさせていただきましたあの事件で有名ですが、この事件に関して同院OBでもある熊坂義裕前市長は当時「病院側が、どんな技量を持っているのかわからない人たちと、独自に交渉していたのがそもそもの原因。県が早い段階で資格をチェックしていたら、こんな恥ずかしいことにはならなかった」なんて厳しいコメントを出していたのは記憶に新しいところですよね。
臨床医としてはなかなかこの年齢、ブランクからの現場復帰というのは大きな決断だったのではないかと推察しますが、経歴から拝見するところ同病院は元より地域の開業医、そして当然ながら市政界と多方面に顔の利くなかなか珍しいキャリアをお持ちのようですから、うまく間を取り持つようですと興味深い連鎖反応が期待できるのかも知れません。
しかし田舎に行くと医者なんてものは下手すれば「おらが町で一番の分限者」で地域への影響力も大きいだけに、第一線を退いたベテラン医師が政界へというのは地方自治体レベルでは決して珍しいことではありませんけれども、逆にそこからのカムバックも十分可能であるという実例が出来たというのは、例えば厚労省の医系技官などにはよいモデルケースになりますかね?(苦笑)

その厚労省ですけれども、今回の診療報酬改定で原則発効義務化となった明細書問題は、事前にはなんだかんだと大騒ぎされながらも現場はそれなりに落ち着いてきている様子ですよね。
この明細書発行を長年の悲願としてきた勝村委員あたりは、汚く散らかった部屋は無理矢理にでも他人が踏み込んでやって初めてキレイにしようという気になるものだ、なんて率直すぎる(苦笑)言い回しをしていましたが、おかげさまで見なくてもすんでいたはずのものが見えるようになってきたなんて話もあるようです。

明細書で治療内容歴然 がん未告知患者にどう説明 (2010年6月18日神戸新聞)

 多くの医療機関で治療や検査の内容を詳しく記した「明細付き領収書」が4月から無料発行されるようになったことに伴い、家族の同意を得て本人に告知していなかったがん患者や、薬物依存を防ぐため偽薬を処方していた患者から、医師らが説明を求められるケースが出ている。いずれも領収書をきっかけに事実を知ったためだ。一部の医師は「患者との信頼関係が崩れかねない」と心配するが、患者への病名や治療内容の告知が一気に進む可能性がある。

 神戸市内の開業医によると4月、60代の女性患者が、領収書を手に「ここに書いてあるのは肺がんの薬ではないか」と説明を求めてきた。

 女性は高血圧の治療で通院していたが、約2年前に検査で肺がんの疑いが判明し、別の病院を紹介。病院側は女性の夫と相談し、ショックで治療を受けなくなる心配があるなどとして本人には告知せず、抗がん剤治療を続けてきた。しかし、女性は病院が発行した領収書を基にインターネットで調べ、抗がん剤と知ったという。

 また、統合失調症の70代の男性は処方の頭痛薬では不足だとして、市販薬を大量に服用する状態が約8年間続いた。このため家族の要望を受け、開業医は2年ほど前から偽薬として消化剤を処方していた。しかし、領収書で頭痛薬ではなかったと知り、男性は「だましたな」と激怒。開業医は家族を同席させ、事情を説明した。

 開業医は「病名や偽薬を知ることで自暴自棄になったり、医師を信頼できなくなったりして、治療が中断されないか心配だ」と漏らす。

 これに対し「医療情報の公開・開示を求める市民の会」世話人で、中央社会保険医療協議会(中医協)委員として領収書発行を訴えてきた勝村久司さんは「そもそも患者本人に本当の病名や薬を伏せることは、あってはならない」と指摘。「明細付き領収書は自分の医療情報にアクセスする大切なきっかけだ」と発行の意義を強調する。

 厚生労働省保険局の担当者は「患者の健康のために家族と医師が納得して病名や薬の告知をしていない場合、領収書も本人の代理人として家族に渡すことは現場の知恵。患者側に渡るという意味では違反ではない」としている。

(金井恒幸)

 【明細付き領収書】無料発行は診療報酬のオンライン請求が義務付けられている医療機関に規則で義務化され、病院全体の約9割、診療所ではほぼ半数が該当する。薬害や医療事故の表面化を受け、患者側に医療情報の公開を求める機運が高まったことが背景にある。

今どきインフォームドコンセントもなしで治療をやってきたなんてこと自体が、勝村氏あたりに言わせると「一番大事なことを医療関係者がしてこなかったから医療が信頼されなくなった」ということになるのかも知れませんが、いずれにしても昔ながらの「本人だけが何も知らない」式の医療は通用しない時代になってきているということは現場の医者も承知はしておかなければならないでしょうね。
その上でここでそれ以上に注目しておきたいのが、厚労省保険局の担当者が「患者の健康のために家族と医師が納得して病名や薬の告知をしていない場合、領収書も本人の代理人として家族に渡すことは現場の知恵。患者側に渡るという意味では違反ではない」なんて裏技まがいのことを公言してしまっているということですよね。
恐らく勝村氏のお許しも得ていないでしょうに、こんなことを堂々と言っちゃっていいの?などと人ごとながら心配してしまいますけれども、これが厚労省の公式見解ということであれば何やら応用も利きそうな知恵ではあると思います。

しかしこういう記事で担当者の実名を書かないというのは後で説明責任だの何だのと言われないよう、マスコミ当局と阿吽の呼吸でやっていることなのかも知れませんが、記事の匿名発言を信じて現場の知恵を働かせて後でトラブった時には当局は一切関知しないということになるんでしょうかね?

|

« 最近の話題はお年寄りなんだそうです | トップページ | ミスター年金氏、今度は本業の方で大ピンチ?! »

心と体」カテゴリの記事

コメント

国立なんだから都会出身の受験生が地方の大学に合格して、卒後に都会に戻って
何が問題なんだろう。しかも医学部でのみ問題視されていて、法学部や工学部の
卒業生が地元に就職しなくても問題にならないのは変な話ですね。
都会からの受験生が合格するのが気に入らないなら、県立の医学部を創って受験資格に
地元出身のみとすればいいのでは?

投稿: 浪速の勤務医 | 2010年8月 5日 (木) 15時43分

一県一医大の整備が「おらが県の大学」意識を産んだことは否めないでしょう。
結局口を出したいのであれば自治医大方式なりで金も出すか、各県ごとにしか診療に従事できないような縛りを何かしらひねり出すかです。
医学生は最近ようやくそのあたりに考えが及びつつあるようですが、高校生がいつ現実に目覚め進路選択の参考にし始めるかが今後の注目点でしょう。

投稿: 管理人nobu | 2010年8月 6日 (金) 10時03分

すでに高校生の青田刈り遂行中です

地域の医師、高校から育成 宮城県教委が受験指導など支援
http://www.kahoku.co.jp/news/2010/08/20100808t15032.htm

 地域に定着する医師を高校生のうちから育てようと、宮城県教委が本年度、医学部を志す生徒の支援事業に乗り出している。
予備校とも連携し、受験指導や学習合宿、医師との交流などを実施。「難関」とされる医学部受験の突破に向け、
やる気と学力の向上を助けながら、医師不足に悩む地域で活躍する人材の確保を目指している。
 事業名は「医師を志す高校生支援事業」で、県教委が本年度、関連予算100万円を計上してスタートした。
宮城県内で慢性化している医師不足と医師の偏在を中長期的に解決するのが狙いだ。
 2008年度、宮城県内で法定の医師数を満たした病院の割合は約8割にとどまる。地域別には仙台が9割を超えるのに対し、
登米は約17%、気仙沼は約14%で、地域間格差が顕著だ。
 宮城県では、医学部の現役合格者数も低迷している。今年春は合格者78人のうち、現役は22人。
他県に比べ現役合格者の比率が低い上に、合格者数もこの数年、80人前後で頭打ちになっている。(後略)

投稿: | 2010年8月 9日 (月) 07時29分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/519753/49065200

この記事へのトラックバック一覧です: 最近少し気になった小ネタを幾つか:

« 最近の話題はお年寄りなんだそうです | トップページ | ミスター年金氏、今度は本業の方で大ピンチ?! »