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2010年8月11日 (水)

「昔はアメリカまで臓器をもらいにいってたんだよ」なんて時代が来ますかね

先日ひっそりとこんな記事が出ていたことを御覧になりましたでしょうか。

腸移植の1歳女児、古谷美香子ちゃん死亡 募金で渡米、帰国できぬまま

全国からの募金で渡米して小腸と大腸の移植を受けた古谷美香子ちゃん(1)=東京都渋谷区=が7日(日本時間8日未明)、米国の病院で亡くなった。「美香子ちゃんを救う会」が9日、明らかにした。

 救う会によると、美香子ちゃんは4月、米国の病院で小腸と大腸の移植を受けたが、術後の体調が安定せず、小児集中治療室(PICU)から出られない状態が続いていた。

 美香子ちゃんは腸の一部が機能しない「ヒルシュスプルング病」のため移植が必要と診断された。昨年秋からの募金活動で約1億2千万円が集まり2月に渡米。入院が長引き治療費が不足したことから6月から再募金が行われ、さらに約7千万円が集まっていた。

 救う会の中岡洋一代表(42)は「皆さまの期待に応えられず本当に悔しい気持ちだ」と話した。

大勢の方々による支援の甲斐無くこういう結果になったことは、関係者の皆さんにとってもさぞや無念なことであったと思います。
国内では臓器移植は様々な障害の存在もあってまだ一般化しているとまでは言えませんが、とりわけ小児の移植術に関しては子供からの臓器提供が認められていなかったこともあって、これまでは完全に海外頼りとなっていた現実があります。
しかし海外の人間からすれば大金をかき集めた日本人が横から移植待ちの行列に割り込んで来るように見えるわけですから、あまりおもしろい話でもないだろうとは誰しも想像がつくところですよね。
こうした諸問題を改善して国内でも移植医療を進めようということで、先日は臓器移植法が改正されたのも未だ記憶に新しいところですが、さっそくその第一号症例が出てきたということで大きな話題となっています。

家族の承諾だけで初の脳死・臓器移植へ(2010年8月9日読売新聞)

 日本臓器移植ネットワークは9日、交通事故で入院していた20代の男性患者が脳死判定され、臓器提供されることが決まったと発表した。

 家族の承諾だけで脳死判定と臓器提供ができるとした改正臓器移植法が7月17日に全面施行されて以来、初の適用例。男性は生前に書面での提供意思を示していなかったが、家族が承諾した。脳死での臓器提供者は1月下旬を最後に現れなかったが、改正法施行後わずか約3週間余りでの提供申し出となった。

 関係者の話によると、男性が搬送されたのは関東地方の病院。5日に診断した結果、脳全体の機能が失われた可能性が高いことが判明。主治医や移植コーディネーターの説明を受けた家族が8日夜、臓器提供を承諾した。法的脳死判定は8日午後9時半に始まり、9日午前11時55分に終了した。

 改正前の臓器移植法は、本人が臓器提供意思表示カードなどで提供意思を示すことが求められるなど、世界で最も厳しい提供条件とされていた。この結果、これまでの脳死臓器提供例は約13年間で86例にとどまっており、改正法が成立した。

 法的脳死判定は1997年の臓器移植法施行後、今回で88例目。臓器提供が今回行われれば87例目となる。

 同ネットワークによると、男性の場合、生前に口頭で家族に臓器提供の意思があると伝えていた提供を拒否する意思表示は確認されなかったため、家族が話し合い、男性の臓器を提供することを決めたとしている。

 臓器の摘出は10日未明から開始される予定。心臓は国立循環器病研究センター(大阪府)で20代男性に、肺は岡山大病院で20代男性に提供される予定。肝臓は東京大病院で60代女性に、腎臓は群馬大病院で10代男性に、もう一つの腎臓と膵臓(すいぞう)は藤田保健衛生大病院(愛知県)で50代女性に提供される見通し。

 小腸は医学的理由で断念し、眼球の提供先は今後決める。

 ◆日本臓器移植ネットワーク=脳死や心停止となった人から提供された臓器を移植希望患者にあっせんする国内唯一の機関。1997年に前身の日本腎臓移植ネットワークを改組する形で発足。臓器提供者の家族への説明などを担う移植コーディネーターや医師などで構成する。

 改正臓器移植法の主な変更点

 〈1〉本人の生前の意思が不明でも、家族の承諾で脳死臓器提供を認める

 〈2〉15歳未満の子どもからの提供を認める

 〈3〉家族に臓器を優先的に提供できる親族優先提供制度の創設

移植ネット理事の一問一答 (2010年8月9日共同通信)

 厚生労働省で9日記者会見した、日本臓器移植ネットワーク理事の小中節子医療本部長の一問一答は次の通り。

 ―臓器の提供病院が明らかになっていない理由は。

 「家族の要望で、個人を特定されないよう公表を控えてほしいと言われた」

 ―提供に至る経緯は。

 「本人が家族との会話の中で『万が一のことがあったら臓器を提供してもいい』と話していた。本人の口頭による意思表示を尊重して、臓器提供することを家族の総意として決めた

 ―臓器提供という選択肢を病院側が提示したのか。

 「把握していない

 ―本人は脳死からの臓器提供を希望していたのか。それとも心臓死後の臓器提供を希望していたのか。

 「脳死とか心停止とか明確に言ったかどうか、把握していない

 ―本人が臓器提供意思を持っていたとしても、脳死判定に従う意思を持っていたかどうかは確認していないということか。

 「確認していない

 ―家族とは具体的には両親か。

 「どういう家族かは言えない。人数は数人以上。3~4人ぐらい」

 ―男性が家族に話してから翻意した可能性はないのか。

 「会話した後の本人の意思に変化がないと家族が判断されたと受け取っている」

 ―書面による意思が不明な中で、脳死下の臓器提供が行われた意義は。

 「意思不明ではなかったと考えている。過去にも本人が口頭で意思を示していたのに移植ができなかった例があった。そういう方の意思を尊重できる新しい一歩になったと認識している」

「移植承諾、家族の決断に敬意」 厚労相   (2010年8月9日日本経済新聞)

 長妻昭厚生労働相は9日午後、厚労省内で「ご家族の決断に敬意を表するとともに、移植を受けられる方の手術も成功してほしい。今後も法律をもとに、適切に移植が行われるよう我々としても色々な施策・行政を進めたい」と話した。

 男性が生前に口頭で示した臓器提供の意思が、脳死後の提供を指すものか不明だった点については、「家族もお考えのうえでの決断だと思うので、それを尊重するのが法律の趣旨だ」と述べた。

 改正法施行後から1カ月未満で家族承諾による脳死判定が行われたことには、「早いとも遅いとも言えないが、適切な運用が必要だ」と話した。

臓器移植:家族承諾で移植 臓器ネット、意思表明時期「言えぬ」 難しい透明性確保(2010年8月10日毎日新聞)

 「新たな一歩になる」--。9日午後5時40分ごろから厚生労働省で開かれた記者会見で、日本臓器移植ネットワークの小中節子・医療本部長は強調した。だが、提供者本人の意思表明の時期など詳細については、「把握していない」「家族の要望で言えない」など約1時間続いた会見では歯切れの悪さが目立ち、透明性確保とプライバシーを両立させる難しさが改めて浮かんだ

 先月17日に全面施行された改正臓器移植法では、書面による意思表示がなくても、家族の承諾で法的脳死判定や、脳死後の臓器提供が可能になった。一方、これまで書面があることで担保されていた本人意思の確認や決断した時期などは、家族やネットワークの判断に委ねられる。

 小中本部長は「男性の家族が『本人の意思を尊重したい』として(家族内の)総意をまとめた。推測ではあるが、男性に脳死後の臓器提供の意思があったと思っている」と話した。

 しかし、どのように男性の意思を確認したかという点に質問が集中すると、男性や家族のプライバシーを理由に、ほとんど明らかにせず、言葉を選んだり、熟慮する場面が何度も見られた。

 脳死判定に至る手続きについて、もともと主治医が家族に臓器提供についての情報提供をしたのか、家族から申し出があったのかという質問に対しては「明確に把握していない」(小中本部長)と応じるにとどまった。また、提供に至る手続きが適正だったかどうかを検証するために、本人の意思を判断した経緯を公表できるかどうかについても、「ご家族は今非常につらい状況にある。家族の中だけの思いという面もある。どこまで情報を出せるか、(家族に対する)これ以上の確認は難しい」と語った。【大場あい】

特に今回の改正で注目されるのが読売の記事でも掲載されている三点ですが、家族の一存だけで脳死状態の子供から臓器提供を行え、その提供先として親族に優先権を設定しているといったあたりが、性善説頼りのかなり危なっかしい制度設計ではないかという声は聞かれるところです。
今回の場合も詳細な事情はプライバシーの関係もあってほとんど不可視となっているわけですが、悪い想像をすれば今後もし何かしら犯罪的な行為が隠れていたとしても事後検証も出来ないという可能性はあるということですし、それもあって各メディアも(無論、商売柄もあるのでしょうが)もっと情報開示をと連呼しているわけですね。
ただし、そうした一定のリスクを背負ってまでも国内での移植医療を早急かつ大々的に推進していかなければならないという事情が、こちらWHOから出されたかなり厳しいコメントによっても伺えるということで、これはもう何を置いても始めてみなければ仕方ないという状況であるのも事実なんですね。

WHO 日本の脳死移植に期待(2010年8月10日NHK)

改正臓器移植法の施行後初めて、書面での意思表示がない状態で臓器提供のための脳死の判定が行われたことについて、WHO=世界保健機関で移植問題を担当する責任者は、国内で移植手術を受けられない日本人の患者が海外の病院に渡航してきた実態が改善されることに期待を寄せました。

WHOは、ことし5月の総会で、各国で臓器の提供が進んでいないなか、自国で臓器提供が受けられないことを理由に、海外に渡って臓器提供を受けるのは望ましくないとして、外国での臓器移植を自粛するよう各国に求める新たな指針を承認しています。こうしたなか、今回、日本で初めて、書面での意思表示がない状態で臓器提供のための脳死の判定が行われたことについて、WHOで移植問題を担当する責任者のルーク・ノエル氏は、NHKの取材に対し、「日本が国内で臓器移植システムを確立できるようになる大きな一歩だ」と述べ、国内で移植手術を受けられない日本人の患者が、アメリカやドイツなどの海外の病院に渡航してきた実態が改善されることに期待を寄せました。さらにノエル氏は、今後の課題として「臓器提供の際、提供者の個人情報や尊厳をいかに保てるかが大切だ」と述べ、移植医療の信頼性を確保するためにも、一連の手続きに細心の注意が必要だと指摘しています。

この臓器移植問題に関しては以前にも取り上げましたが、こうまで国内移植推進が急がれている背景には、今や世界中で臓器移植ということが盛んに行われるようになってきてドナーが足りない、その結果「自分の国の患者の臓器は自分の国でまかなうようにしよう」という臓器ナショナリズムとも言うべき発想が台頭しているという事情があります。
すでに以前から外国患者に対して厳しい受け入れ制限を課してきている国が続出していて、実際に日本から移植を希望していたのに受け入れを断られたなんて話がどんどん出てきている、そしてWHOからも「海外渡航による臓器移植は自粛するように」という勧告が出てしまっている状況ですから、今後海外に渡っての移植というのは極めて例外的な事例に限られることになりそうです。
要するに一部マスコミなどを初めとして制度の不備があるから拙速に進めるべきでないと主張するべき人は、きちんとした制度が出来るまでにタイムリミットが来てしまった患者さんは天寿だと思ってあきらめてくださいと言っていることになるわけで、議論をするならまず大前提となる状況を明確にしてからでないと、結局何もしないでただ人が死んでいくのを見ているだけということになりかねないということですよね。

これとは別に移植医療の透明性ということで言えば、今回の改正で特に家族への優先権が認められているという点にも言及しないわけにはいきませんが、この点も含めて国内メディアは情報開示を進め移植医療の透明性を保てと専ら主張していることに対して、先の記事でWHOの移植担当責任者ノエル氏はむしろ「提供者の個人情報や尊厳をいかに保てるか」ということに細心の注意を払うように言っていることに留意ください。
このあたりは国ごとのメディア事情というものも大いに関わっているでしょうし、正直ジャーナリズムとしてあまり成熟しているとは思えない日本の各メディアに対する信頼性ということもあるかと思いますが、世界標準で見ると何よりまずドナーら当事者の尊厳が保たれるということが最優先であって、何かしら細々とした問題が懸念されるとしてもそれは二の次に位置するものであるというのが大原則であるということですね。
日本と海外では恐らく個人と社会というものの比重の置き方が違うということもあるのでしょうが、いよいよ日本でも移植医療が本格化していくべきこの時期に、臓器提供の意志を示すことが何かしら悪いことだとか、後ろめたいことであるかのような社会的雰囲気が形成されてしまうことだけは避けなければならないし、あくまで各個人が中立的な情報を元に判断し主体的に決定していくというプロセスが保証されなければならないでしょう。

いずれにしても国内での移植が定着するかどうかは、今後どの程度の数の移植医療が実施されてくるかに関わってくると想像されるところで、早い話がどこそこで移植が行われたなんていちいち大々的に騒がれないような状況になれば、日本人の特性からしてほどほどに社会に根付いてきたんだと考えていいんじゃないかと思いますね。
身近にドナーになった人が出た、あるいはレシピエントになった人がいるという実例がこれから次第に一般化してくるんだと思いますが、いたずらに興味本位の視線を向けるなんてことがないよう、社会的にも成熟した節度ある態度で各個人の決定を見守っていかなければならないでしょうし、何よりいつ自分が当事者になるかもという心構えが必要だと言うことです。

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