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2010年7月16日 (金)

産科領域の最近の話題から ちょっとアレな方面が目立つような?

最近産科領域に関連した話題がいくつか出ていましたので、今日はまず先日少しばかり話題になっていましたこちらから紹介しておきましょう。

妊婦のエコー検査、同意得て実施は半数 医療機関調査(2010年7月9日朝日新聞)

 もともとは安全で健康な出産のために赤ちゃんの発育状況を確認する超音波検査(エコー)。最近は染色体の状態まで推測可能になり両親が深刻に悩む例も増えている。しかし、妊婦の同意を得て検査している医療機関が半数程度にとどまることが、日本周産期・新生児医学会倫理委員会の調査でわかった。同学会は13日、神戸市で開く学術集会で結果を発表し、検査や結果告知のあり方の議論を始める

 同学会倫理委員会は、安全な妊娠・出産に必要な超音波検査の性能が向上して、染色体異常まで推測できるようになっているため、医療現場での実態を知るために調査した。今年2月、地域の産婦人科医会の協力で東京都や大阪府など4都府県の産婦人科医を対象に調査を実施。170人から回答があった。62%が診療所の医師だった。

 通常の超音波検査で、書面で同意を取っていると回答した医師は7人(4%)、口頭同意は44%で、合わせても半数ほどだった。同意を取っていない医師は42%、無回答が10%だった。

 人工妊娠中絶手術が受けられる妊娠22週未満の超音波検査で、胎児に明らかな異常がある場合、72%の医師が「すぐに専門機関へ紹介する」と答えた。染色体異常は羊水検査をしないと確定診断できず、20%の医師は「羊水検査を勧める」と回答した。22%の医師は、「人工中絶という選択肢があることを説明する」と答えた。

 超音波検査の結果が人工中絶の誘因とならないように、中絶ができない22週以降になるのを待って異常を伝え、「専門機関に紹介する」とした医師も5%いた

 調査結果をまとめた大阪大総合周産期母子医療センターの和田和子講師は「尿検査ぐらいの軽い気持ちで超音波検査を受ける妊婦さんが多いが、重い結果を伝えられ、深刻な衝撃を受ける夫婦も少なくない。告知後の夫婦に対するケア、知りたくないという権利を守る態勢などが必要ではないか。議論を深めたい」と話している。(大岩ゆり)

一般にエコーなどは侵襲の少ない検査ですからさほど同意書取りに神経質にもなっていないと思いますけれども、産科婦人科における内診や経膣超音波、あるいは乳癌検診などの場合は自ずから別な問題もあるでしょうから、今後同意の有無ということも問題になってくるのではないかとは思いますね。
ただ記事のタイトルとは別にこの記事の主題は別なところにあるようで、もしエコーで胎児に異常が使った場合にどうするかということが大岩ゆり記者の眼目であることは文脈からも明らかだと思いますけれども、同じテーマで大岩記者が書き上げた続報とも言えるこちらの記事でそのあたりがより明瞭になってきます。

妊婦の同意なく超音波検査、6割以上 産婦人科医調査(2010年7月14朝日新聞)

 妊婦の同意を取らないで超音波(エコー)検査をしている産婦人科医は6割以上にのぼる――。13日に神戸市で開かれた日本周産期・新生児医学会で学会が会員を調査し、こんな結果が出た。胎児に異常がある場合の対応も意見が割れた

 超音波検査は、最近は赤ちゃんの心臓病や染色体の状態まで推測できるようになり、結果に悩む親も増えている。

 調査の対象はシンポジウムに参加した産婦人科医や小児科医ら約400人。会場で押しボタン方式により質問に答えてもらった。その結果、産婦人科医(約200人)の66%が超音波検査で妊婦の同意を取っていなかった。口頭で同意を取っていたのは23%、書面で同意を取っていたのは11%にとどまった。

 胎児に異常が見つかり、親が子への治療を希望しない場合の対応についても質問。たとえば、重い心臓の病気では、帝王切開後、すぐ手術すれば命が助かることもある。

 全回答の74%は両親らを説得し、同意を得て帝王切開すると答えた。家族の希望通り通常のお産をすると答えたのは7%、家族の同意なしでも帝王切開するとしたのは2%だった。

 出産直後の子どもの救命について、34%が気管内挿管による人工呼吸などすべての通常治療をすると回答。人工呼吸以外の通常治療をするのは39%。保温や酸素投与だけで積極的な治療はしないとした医師は21%いた。

 家族が望まなければ、積極的な治療をしにくいという医師も少なくない。一方で「胎児や新生児の人権への配慮が必要ではないか」(田村正徳埼玉医大教授)などの指摘も出ていた。(大岩ゆり)

非常に興味深いと思うのは、たとえば埼玉医大の田村教授の「胎児や新生児の人権への配慮が必要ではないか」というコメントにも現れていますけれども、「超音波検査の結果が人工中絶の誘因とならないように、中絶ができない22週以降になるのを待って異常を伝え、「専門機関に紹介する」とした医師」が5%いたという点ですよね。
法的に見ますと出生届を受理する以前は社会的存在という意味での人間としては扱われないことになっているわけですし、母胎を離れて生きられない時期の胎児はいわば母体側の付属物であるという感覚の方が世間では一般的なのかなとも思っていたのですが、産科領域では胎児もまた人であるという感覚も根強くあると言うことなのでしょうか。
それに加えて胎児に異常があり手術が必要な場合にも2%の産科医は家族の同意なしでも帝王切開をすると答えているということですが、どうもこのあたりの行動様式は最近の他科医ではあまり見られない、往々にして利害の相反する複数の生命を扱っている産科に独特のものなのかなという気がしないでもありません。

こういう話を聞くと考え方はいろいろあるものだなと改めて感じるところですが、一方で診断を受ける側にしてもそれぞれに異なった立場があるのは当然だろうとは予想できますよね。
「京都ダウン症児を育てる親の会」がこの出生前診断というものに対して意見を出していますけれども、同会代表の佐々木和子氏は出生前診断の普及によって胎児がダウン症と診断された殆どの妊婦が中絶していると言う現実を踏まえ、「検査があるという情報が、本人がどうしたいと思うかとは別に(略)受けなければならないと言う圧力になったのでは、本当の意味での自己決定にはならない」と言っています。
実際に生む、生まないという決断の前提条件として正しい情報が不可欠であることは言を待ちませんが、佐々木氏の「81%の家族がダウン症を産んで良かったと答えている」という言葉にも表れているように、この場合の正しい情報とはいわゆる統計的・座学的知識といった範疇に留まるものではなく、むしろ経験というものに近いのではないかと言う気がしますね。

「医学的に軽微と思われても、診断された親がそのことについて感じた不安を恐怖に変えたならば、軽微と思われる障害が重篤に判断されてしまう」ということは別に産科領域に限らない話で、他人からはどうでもいいと思われるようなことでも本人はいっそ死んでしまいたいというほど気にしているなんてことがままあるのは、世に高価な美容整形などというものがこれだけありふれたものになっていること一つを見ても判ることでしょね。
逆に医学的に重篤なことであるのに本人が軽微であると思い込んでいる、なんて話はそれこそ日々の診療で日常的に手を焼いていない臨床医の方が少ないわけで、このあたりは先天性障害に限らず、社会が何かしら異なっているという他人の存在に対して慣れていくと言うことも重要ではないのかなという気がしますし、障害の当事者あるいはその家族ももっと大きな顔をして世の中闊歩していくべきなんでしょうね。

いささか蛇足にまで脱線しましたけれども、先天性障害ということになりますとこれは言ってみれば誰を恨むわけにもいかないとある意味納得しやすい部分もあるのかも知れませんが、産科絡みの医療事故ということになりますと医療訴訟へととりわけ結びつきやすいことは、産科医の高い被訴訟率を見ても判ることですよね。
特に近年患者団体の活発な活動の結果、すっかり悪者扱いされてしまっている陣痛促進剤ですけれども、最近こういうニュースが出ていたことをご存知の方もいらっしゃるでしょう。

陣痛促進剤:点滴の調整装置を義務化 過量投与を防止(2010年7月13日毎日新聞)

 陣痛促進剤による子宮破裂などの被害が相次いでいることから、医療機関が投与する際に、危険性を説明して妊婦の同意を得ることや、過量投与を防ぐため点滴の量をコントロールする装置の使用が添付文書(説明書)の改訂で義務づけられた。被害者らでつくる「陣痛促進剤による被害を考える会」(愛媛県今治市)などが17年前から要望しており、出元明美代表は使用の厳格化を歓迎している。

 陣痛促進剤は、陣痛を誘発したり強める時に使われるが、人によって作用に100倍以上の差があるとされている。子宮の強い収縮によって胎児が脳にダメージを受ける副作用が知られ、点滴する際には、ごく少量ずつ投与し、母子の状態を見極めながら使用しなければならない。

 同会によると、00年からの10年間で、少なくとも90件の副作用被害が報告されている。脳内出血などで子どもや母親が亡くなったり、重度の障害が残った例もあるという。

 こうした事態を重視した厚生労働省は先月1日付で、陣痛促進剤を製造する5社に対し薬の添付文書の改訂を指示した。各社は先月10日までに、インフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)を求めることを添付文書に明記。子宮破裂や脳内出血、(胎盤が出産前に突然はがれる)常位胎盤早期はく離などが起こる危険性があるとして、分娩(ぶんべん)監視装置による監視などで妊婦の状態を観察し、適切な処置を行うことなども書き加えた。出元代表は「さらに陣痛の状況に応じた用法・用量も詳しく書くことが必要だ」と話している。【奥山智己】

陣痛促進剤の使用の是非であるとか功罪といった話題に関しては、専門の先生方があちこちで書いていらっしゃることですからここで言及するに及ばずですが、とりあえず医学的に危険性があるから投与方法をこうまで厳しく規定すると言うことであれば、陣痛促進剤以上に厳しく規定しなければならない薬剤は幾らでもあるんじゃないかなという感想は抱くところです。
某会某代表などはさらに厳しく用法、用量を規制せよなんてことを主張していらっしゃるようですけれども、この調子でいくとそのうちに例えば「カテコラミン製剤を使用した患者は有意に死亡率が高い。こんな危険な薬剤の用法、用量はもっと厳しく規制すべきである」なんてことを言い出して、ボスミン打つのにもまず同意書を取ってからなんて話にもなりかねませんよね。
失礼ながら某会の活動も発足当初はどうだったのか知りませんが、現在のところは過度のゼロリスク症候群に陥っていると言いますが、リスクとベネフィットのまっとうな評価が出来ず単に特定薬剤を敵視することに終始しているという印象を受けるところですが、むしろ気になるのは厚労省がそうした世の流れに乗って(乗せられて)いるかのようにも見えるところです。

まさか天下の厚労省が「いや患者団体の突き上げが厳しくて」なんてこともないでしょうから、おそらく陣痛促進剤の危険性は野放しになっている他の薬品に比べてこれだけ高い!という内部データを元にこうした規制に走ったんだろうとは思っていますけれども、年間110万人の出産数に対してせいぜい数件という副作用発生率をどう考えるかですよね。
もしかすると産科領域においてはその性質上、普段から極めて安全性の高い薬品しか使用されておらず、このくらいの数字でも大騒ぎになるような重大な副作用発生率なのかも知れませんが、その他一般の医学領域の感覚からすると何か違和感を感じるというのも率直なところで、単純に数字から受ける印象からするとはたしてDHMOとどちらが危険性が高いのかなんてことまで考えてしまっても不思議ではない話です。
国が規制してまで問題視しなければならないということであれば大変な話で、実際に副作用がこの水準であれば当該薬品はよほどに有用性が少なく使うことに意義を見いだせないほどのレベルかとも感じるのですが、医療側、国側そして市民団体側それぞれがきちんとした数字を挙げて国民に情報を出してくる必要があるんじゃないかなという気がしますね。

陣痛促進剤については各人各様の考え方もあって、すでに単なる医学だけの話では済まないものになっていますが、もう少し異論の少ないところでちょっとそれもどうなのよ?と感じさせる話題も最近相次いでいます。
恐らく当事者には悪意はないんだろうなとは思うのですが、こうまで不幸な結果になってしまうと果たしていったい誰が悪かったのか、何かしら妙なことを吹き込んだ側には罪はないのかと思わず考えてしまう話がこちらです。

信者両親が起訴内容認める 福岡、長男死亡で初公判(2010年7月12日47ニュース)

 重い皮膚炎を患う生後7カ月の長男に、信仰を理由に治療を受けさせず死なせたとして、保護責任者遺棄致死罪に問われた、いずれも宗教法人「新健康協会」職員の父高月秀雄(32)、母邦子(31)両被告=福岡市東区=の裁判員裁判の初公判が12日、福岡地裁(林秀文裁判長)であり、両被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。

 検察側は冒頭陳述で「この宗教は医療行為をできるだけ回避することで自然治癒力の向上を説くが、医療を受けることを禁止はしていない」と説明。「2人が教義にこだわるあまりに起きた事件。長男の危険な状態は認識していた」と指摘した。

 弁護側は「2人は深い愛情を持って一生懸命育てようとしていた。祖父母の代からの信仰で、教義は生まれたときからある空気のようなものだった。今は誤っていたと認識している」と述べた。

「2人交代で一日中“手かざし”」(2010年7月12日rkbニュース)

信仰する宗教の教えから病気で衰弱した7か月の息子に手かざし療法を続け、死亡させたとされる夫婦の初公判が開かれました。
検察側は「危険な状態だと知りながら、2人が交替で、1日中、手かざしをしていた」と主張しました。

きょう初公判を迎えた福岡市の宗教法人・「新健康協会」の職員、高月秀雄被告と妻の邦子被告。
去年10月、生後7か月の長男がアトピー性皮膚炎などの悪化で衰弱していたにも関わらず、必要な治療を受けさせずに死亡させたとされています。
警察は2人を殺人容疑で逮捕しましたが、福岡地検は、殺人罪の成立は立証できないとして保護責任者遺棄致死の罪で起訴しました。

きょうの初公判で夫婦2人は、いずれも間違いありませんと述べて、起訴内容を認めました。
その後、妻の邦子被告は、ハンカチで涙をぬぐいながら、検察側の冒頭陳述を静かに聞いてていました。

検察側は犯行当時の状況について、「生後7か月の長男の体重は、平均の半分ほどの4,300グラムだった。(中略)医療行為を受けさせなければならない危険な状態だと分かっていたが、2人は交替で1日中手かざしを続けていた」
2人が勤務していた「新健康協会」には、「病気になっても『浄霊』と呼ばれる手かざしをすれば治る」という教えがあります。
検察側はこの浄霊について「教義では、医師の医療を可能な限り回避し…とあり、医療行為を受けるかどうかはあくまで信者の判断である。適切な治療を受けさせていれば救命は十分に可能だった」と主張しました。

一方、弁護側は、起訴内容は争いはないとしながらも、「浄霊という手かざしで病気が治癒したと信じことができる経験があったことなどから、教えを信仰していた。今では、手かざしで病気が治るというのが誤っていることを認識している」と述べて、情状酌量を求めました。

宗教も単に信者という立場に留まらずスタッフともなれば立場場引けない一線があるのかも知れませんが、ここまでの結果になっても未だに「元・職員」ではなく「職員」の肩書きで記事になっているということを誰がどう考えるかですよね。
それでもこのあたりは医療とは遠い世界とも言える話ですが、世間的には医療の少なくとも親戚筋くらいには見られていながらなかなか問題が絶えないのが一部の開業助産所における助産行為というもので、このあたりの話は当「ぐり研」でも繰り返し取り上げているところです。
もちろん近年の産科医不足もあって助産師をもっと活用しようと言うのが世間的流れになっているわけで、産科医と密接に連携をしながらきちんとした助産行為を行っている助産師さんが大多数ですけれども、逆に敢えて現代医療から背を向けて独自の理論体系に走っていく人も、特に「自然な分娩!」なんてことをうたう開業助産師の中に未だに少なからずいるというのも現実なのですね。

「ビタミンK与えず乳児死亡」母親が助産師提訴(2010年7月9日読売新聞)

 生後2か月の女児が死亡したのは、出生後の投与が常識になっているビタミンKを与えなかったためビタミンK欠乏性出血症になったことが原因として、母親(33)が山口市の助産師(43)を相手取り、損害賠償請求訴訟を山口地裁に起こしていることがわかった。

助産師は、ビタミンKの代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤を与えていた。錠剤は、助産師が所属する自然療法普及の団体が推奨するものだった。

 母親らによると、女児は昨年8月3日に自宅で生まれた。母乳のみで育て、直後の健康状態に問題はなかったが生後約1か月頃に嘔吐(おうと)し、山口市の病院を受診したところ硬膜下血腫が見つかり、意識不明となった。入院した山口県宇部市の病院でビタミンK欠乏性出血症と診断され、10月16日に呼吸不全で死亡した。

 新生児や乳児は血液凝固を補助するビタミンKを十分生成できないことがあるため、厚生労働省は出生直後と生後1週間、同1か月の計3回、ビタミンKを経口投与するよう指針で促している。特に母乳で育てる場合は発症の危険が高いため投与は必須としている。

 しかし、母親によると、助産師は最初の2回、ビタミンKを投与せずに錠剤を与え、母親にこれを伝えていなかった。3回目の時に「ビタミンKの代わりに(錠剤を)飲ませる」と説明したという。

 助産師が所属する団体は「自らの力で治癒に導く自然療法」をうたい、錠剤について「植物や鉱物などを希釈した液体を小さな砂糖の玉にしみこませたもの。適合すれば自然治癒力が揺り動かされ、体が良い方向へと向かう」と説明している。

 日本助産師会(東京)によると、助産師は2009年10月に提出した女児死亡についての報告書でビタミンKを投与しなかったことを認めているという。同会は同年12月、助産師が所属する団体に「ビタミンKなどの代わりに錠剤投与を勧めないこと」などを口頭で申し入れた。ビタミンKについて、同会は「保護者の強い反対がない限り、当たり前の行為として投与している」としている。

損賠訴訟:山口の母親、助産師を提訴 乳児死亡「ビタミンK与えず」(2010年7月10日毎日新聞)

 助産師がビタミンKを与えなかったのが原因で生後2カ月の長女が出血症で死亡したとして、山口市の母親(33)が同市の助産師に約5640万円の損害賠償を求める訴えを山口地裁に起こしたことが分かった。厚生労働省の研究班は新生児の血液を固まりやすくするためビタミンKの投与を促しているが、助産師は代わりに、自然療法を提唱する民間団体の砂糖製錠剤を与えていた。

 訴状によると、母親は09年8月に女児を出産。生後約1カ月ごろに発熱や嘔吐(おうと)などを起こし、急性硬膜下血腫(けっしゅ)が見つかった。入院先の病院はビタミンK欠乏性出血症と診断し、10月に亡くなった。

 厚労省によると、ビタミンKは本来、体内にあるが、胎児には蓄積が少なく生成力も弱いため不足しやすい。不足すると頭蓋(ずがい)内出血や消化管出血などを起こし、生後1カ月前後の乳児に多くみられるという。

 同省の研究班は89年に発表した報告書で、「出生直後と生後1週間、同1カ月の計3回、ビタミンKを経口投与させること」との指針を提示。現在は医学従事者向けの教科書にも記載され、認知されているという。

 民間団体によると、錠剤は、植物や鉱物などを希釈などした液体を砂糖の玉にしみこませたもの。訴状によると、助産師は母子手帳にビタミンK2のシロップを投与したと記載していたが、実際には錠剤を3回与えていたという。助産師は毎日新聞の取材に「錠剤には、ビタミンKと同じ効用があると思っていた」と話している。

 昨年10月、助産師から今回の死亡事故の報告を受けた日本助産師会(東京)が、民間団体にビタミンKの投与を促したところ「『ビタミンKを与えないように』とは指導していない」と答えたという。【井川加菜美】

この一件、ちょいとググってみるだけでも背後関係はあちこちで調査が進んでいて、ホメオパシーだのレメディーだのという言葉が盛んにヒットしてきますけれども、非常に興味深い(というより、恐ろしい?)と思うのはこうした話がごく一部の例外的な話というわけでもなく、想像以上に広がっている可能性があるということですよね。
例えば堂々と助産師会「主催」によるホメオパシー講習会なんてものが開催されているなんて現実もありますし、そもそも今回の事件報道を受けての日本助産師会の見解なるものも全く煮え切らないもので、どう見てもホメオパシーなどというものを否定しているようには見えませんよね。

ビタミンK2投与がなされず、児が死亡した件に関して(平成22 年7 月9 日日本助産師会)より抜粋

(略)
今回の自然療法を含む東洋医学・代替医療等に関する本会の見解を述べる。

東洋医学、代替医療等に関する日本助産師会の見解

助産師は、「保健師助産師看護師法」に基づき、正常妊産婦及び新生児に対する診査やケアを提供することを業務としている。具体的な助産師の役割や責務に関しては、本会で、「助産師の声明」や「コアコンペテンシー」に規定し、公表している。
助産師は、女性や新生児が本来持っている力を最大限に発揮できるよう支援している。それゆえ、生理的な自然の力を重視し、業務を行っている
助産師は、活動の対象としている人々に対して、人間存在を全体的に捉えるべきであると考えている。すなわち、西洋医学を中心とした上で、食事療法、東洋医学や代替医療等も包含する統合医療の観点から理解しケアを展開している
分娩を取り扱う開業助産師の業務基準に関しては、「助産所業務ガイドライン」を定め、それに基づき、母子の安全性を最優先した業務を実施している。
したがって、助産学に付随する医学の考え方の基盤は、いうまでもなく西洋医学であり、あくまでも西洋医学的見解を主に助産学が展開されていることは既存の事実である。それゆえ、助産師業務にまつわる妊産褥婦や新生児の様々なケアに関する考え方も同様である。
それゆえ、ビタミンK2の投与や予防接種は、インフォームド・コンセントのもと推奨されるべきである。

いや、西洋医学西洋医学と連呼するのはいいんですが、別に世間は西洋医学一辺倒で突っ走れと言っているわけではなく、あくまでエヴィデンスに基づいた行為をやってくれるものと期待しているわけですから、「代替医療等も包含する統合医療の観点から理解しケアを展開」すると主張するならその根拠を示しなさいよということではないでしょうか?
まさにその代替医療が科学的にはるか昔から証明されているリスクを無視して突っ走った結果、これだけ悲惨な事態に至ったということに反省の意を示すということであれば、同会として代替医療に対する態度を表明する義務があるはずですが、見ていただいて判る通りうちでも使っていますよと言うだけで、少なくともそれを否定する論調は全く存在していないわけですよね。
今回の事件を受けて助産師会がこのコメントで事足れりと考えているのか、それとも今後内部から何らかの自浄作用が働いてくることがあるのかは判りませんが、少なくとも現時点では科学の一分野である近代西洋医学の考え方は同会には全く滲透していないと判断するしかなさそうです。

しかしリスクと利益を正しく評価していかないと大変なことになるという話は別に医療業界に限った話でもなく、このようにどこに言ってもいつ何時とんでもないトラブルに巻き込まれる危険はあるわけで、情報が氾濫している時代だけに利用者側にも正しい情報の取捨選択が必要になってくるということでしょうね。

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コメント

【緊急】再びホメオパシーで幼い命が失われようとしています
ttp://ameblo.jp/aestheticsurgeon/entry-10591301825.html

投稿: 非常に悪質な児童虐待 | 2010年7月16日 (金) 15時19分

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