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2010年7月21日 (水)

なんと医療費は減らさないんだそうです

世の中は景気が悪い、税収が足りないと大騒ぎになっていて、かといって他方では参院選の与党敗北の原因は消費税値上げを言い出したことだなんて言うわけですから、これは予算編成もなかなか頭の痛いところなんじゃないかと思います。
そんな中で「各省庁の予算を一律一割削減しよう!」なんてびっくりするような話が飛び出してきて、確かにそれくらいのことをしなければいずれ日本も財政破綻だという懸念もあるわけですが、これは抵抗勢力も半端ではないことになりそうだなと誰でも思いますよね。
ところがよくよく話を聞いてみれば、社会保障費に関しては年額一兆円以上の自然増を認めましょうというんですから、これは驚くやら本気なのか疑うやらという話です。

UPDATE1: 11年度予算編成、要求段階から71兆円以内が「大前提」=野田財務相(2010年7月20日ロイター)

 [東京 20日 ロイター] 野田佳彦財務相は20日の閣議後の会見で、午前の予算編成に関する閣僚委員会で決定した2011年度予算の概算要求基準の骨子に関し、8月中の要求締め切りに向けて7月中に基準を策定するとし、要求段階から国債費を除く71兆円程度の「歳出の大枠」の範囲内とすることが「大原則」と語った。また、11年度の新規国債発行額について、10年度当初の約44兆円を上回らないとする方針に変わりはない、とも述べた。

 野田財務相は概算要求基準について、政府が6月に閣議決定した「中期財政フレーム」で示した国債費を除く71兆円程度の「歳出の大枠」の範囲内で予算を組み替えるルールと説明。71兆円は2010年度当初予算における歳出から国債費を除いたものだが、野田財務相は要求段階から「総枠(71兆円)の中で要求してもらうことが大原則」と語った。

 11年度は、社会保障費が10年度に比べて1兆円超膨らむ見通しだが、その扱いについて野田財務相は「それも含めて(基準策定に向けた)これからの肉付け段階での議論」と指摘。一方で、自公政権は社会保障費の自然増から毎年2200億円を削減する方針を掲げてきたが「(昨年の)衆院選マニフェストで(2200億円削減を)廃止するとし、参院選マニフェストで実現したと書いた。その思いは大事にしなければいけない」と社会保障費の自然増分を認める考えを示唆した。

 このため、それ以外の経費を大幅に圧縮する必要があるが、20日の閣僚委員会では各省庁一律の歳出削減方針などは「示していない。これからの議論だ」と述べるにとどめた。

 骨子には、中期財政フレームに明示された新規国債発行額の扱いなどは盛り込まれなかったが、野田財務相は「中期財政フレームの中に約44兆円以下にするよう全力を尽くすと書いてあり、その精神は変わらない」と述べた。 (ロイターニュース 伊藤 純夫記者)


11年度予算:概算要求基準、骨子決定 既存予算の削減不可欠 成否握る組み替え(2010年7月21日毎日新聞)

 政府は11年度予算編成で、国債費などを除く歳出を10年度の水準(約71兆円)に抑えるとともに、国債発行額も10年度(約44兆円)以下とする「二つの枠」をはめて、財政の悪化に歯止めをかけたい考えだ。だが、現行制度を維持するだけでも社会保障費は1・3兆円増える見通し。民主党のマニフェスト(政権公約)や新成長戦略の関連予算を盛り込み、「菅カラー」をアピールするには、既存予算の大幅な削減と組み替えが欠かせない。【平地修】

 「新規施策をやるには、安定財源を作るのが原則」

 野田佳彦財務相は20日の閣議後会見で、「新成長戦略」やマニフェストに関連付けて予算要求を膨らませようとしている各省庁にクギを刺した。

 政府が同日まとめた概算要求基準の骨子は、国の借金を返す費用(国債費)を除く歳出を約71兆円に抑え、「その範囲内で、(新規事業に振り向けるための)組み替え基準を設定する」と明記。税収の大幅回復が見込めない中、「歳出を昨年度並みに抑えられたとしても、国債発行枠を守れるかはぎりぎりの線」(財務省幹部)になっているためだ。

 しかも、政府・与党は「社会保障の自然増容認」の方針で一致しているため、「歳出枠」を守るには少なくとも、自然増分を他の歳出から減らす必要がある。その上、新成長戦略やマニフェスト関連施策の事業に予算を付けるには、既存予算をさらに削り込まなくてはならない

 このため官邸・財務省は、近く決定する概算要求基準で、約71兆円のうち、社会保障費や地方交付税を除く約26兆円について、各省に一律1割程度削減するよう要求する方針。公務員の人件費なども削減対象に含め、「聖域なき見直し」を進める姿勢を強調する。経済危機に対応するため10年度予算に計上した予備費約1兆円を廃止し、経済成長や雇用拡大に充てる「重点化枠」とする案も民主党内に浮上している。

 だが、各省からの削減分を重点分野に回すことに対しては、減らされる省や与党からの反発は必至。各省、与党の不満を抑え、省庁をまたがる予算組み替えを実現できるのかが、菅予算に問われている。

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 ◇民主党の政策提言案(要旨)

 民主党政策調査会がまとめた2011年度予算案に関する第1次政策提言の素案要旨は次の通り。

 <総論>

 ムダ根絶、総予算の組み替えを国民に分かりやすい形で実現する。経済成長、雇用拡大を最優先課題とし、その実現に向けた重点的な予算配分を行う。

 <基本的考え方>

(1)地方交付税は中期財政フレームを前提に、前年度と実質的に同水準を確保。

(2)年金、医療、介護等(社会保障費)の自然増は容認。ただしできる限り合理化、効率化する。

(3)「経済危機対応・地域活性化予備費」の1兆円は廃止する。経済対策、経済成長・雇用拡大重点枠で対応する。

(4)公共事業費は基本的に10年度予算並みの要求を認める。ただしできる限り効率化、合理化する。

(5)公務員人件費は対前年度比マイナス5%に抑制する。

なんでも昨年度予算をベースに各省庁の予算を一律に削減させ、多く減らした省庁から優先的に新たな予算を回しますなんてことを考えているという話も漏れ聞こえて来ますが、何にしろこれだけ厳しいことを言っている中で社会保障だけは「聖域」化しているようにも見えるのが目につくところです。
こんなことを言い出して、どうせあれも無駄、これも駄目と仕分けされまくった挙げ句に結局一兆なんて話は反故にされるんだろうとか、末代までの固定経費になりかねない社会保障だけ特別扱いするような話を財務省が飲むはずがないじゃないかと、今までの議論の経緯を知っていれば誰でも考えますよね。
ところが今回相前後してこういう話が出てきているというのですから、あれれ?これは?と何やら解釈に迷うような状況です。

社保費自然増、適正化に取り組んでも1.3兆円―長妻厚労相( 2010年07月20日CBニュース)

 長妻昭厚生労働相は7月20日の閣議後の記者会見で、2011年度の予算概算要求で1兆3000 億円とされる社会保障費の自然増について、「不正などを放置して膨らんでいるわけではない。施策に厳しく取り組んだ上でも、1.3兆円という金額になる」との見方を示した。

 来年度予算編成をめぐっては、社会保障費にも削減の余地があるとの議論があるが、会見で長妻厚労相は「(社会保障費を)単に放置しているわけではない」と強調。医療・介護給付費の適正化などに向けた取り組みとして、レセプト点検の徹底や利用者への通知などを列挙し、「そういう取り組みをした結果としても、1.3兆円の自然増が見込まれる」と述べた。

 一方、社会保障費に含まれる事務費などについては、「省内や行政刷新の事業仕分けなどで厳しく取り組んでいる」と指摘し、「そういう前提の下でも、必要なお金が年々、自然増の形で増えていくということだと理解している」と述べた。

社会保障費の自然増抑制せず-財務相( 2010年07月20日CBニュース)

 野田佳彦財務相は7月20日の閣議後の記者会見で、各省庁による2011年度予算概算要求での社会保障費の自然増約1兆円の扱いについて、「昨年の衆院選マニフェストで、自公政権が続けてきた毎年2200億円削減する方針を撤廃すると明記し、それを実現した。その思いは大事にする」と述べ、一定の上限を設けるなどして抑制する考えはないことを強調した。

 野田財務相はまた、同日の閣僚懇談会で、仙谷由人官房長官、玄葉光一郎公務員制度改革担当相(民主党政調会長)と共に策定した来年度予算の概算要求基準(シーリング)の骨子を各閣僚に示したことを明らかにした。政府は月内に、概算要求基準を閣議決定する方針だ。

 概算要求基準の骨子は、歳出の大枠に中期財政フレームで決めた約71兆円を設定。この大枠の中で、予算の組み替えを進めることになる。組み替えの基本方針としては、▽各大臣が優先順位付けを行い、新成長戦略やマニフェスト施策等に重点化する▽従来のような細かい区分にとらわれず、聖域なく大胆に無駄を見直す▽各大臣が自主的に組み替えを行った上で、首相のリーダーシップにより各府省にまたがる大胆な組み替えをする-の3つを示した。

長妻厚労相は「1.3兆円は無駄も不正も徹底的に削り取った後の増加分である」と言い、野田財務相は「社会保障費を抑制する考えはない」と言う、これはいったいなんなんだと驚くような話ですが、事実であるとすれば民主党政権が発足して以来の大々的な独自政策がついに出てきたということになるのでしょうか。
ここまで言い切ってしまったということはほぼ確定的だと言うことだと思いますが、とりあえず現段階で言えることはこの1.3兆円というのは自然増であるということですから、何かしら医療行政に関して画期的な新政策を提示してその分の予算をつけますという話ではないということですよね。
確かに不自然な医療費抑制をやめるだけでもそれくらいには増えそうにも思いますが、そうなりますとまた中医協であそこは何点、こちらに何点と細々したマイナーチェンジだけで結果これだけ増えましたで終わってしまうのか、結局医療の現状に対する何らの積極的提言もないまま今度の予算も前例踏襲で決まってしまうのかとも危惧されるところです。

いずれにしても日医など医療系団体はかねて医療費抑制政策をやめろと主張してきていますけれども、実際に抑制政策をやめますと政権側が言い出した時に、それじゃ増えるお金を何につぎ込むのが一番現場のためになるのかということを、きちんと政権の側に言えるだけのデータ付きのアイデアがあるのかどうかが問われることになりそうです。
例えば先日も地方の大学病院が大赤字だ、予算を削らないでと緊急声明を出したなんて記事が出ていましたけれども、国全体の医療に対するコストパフォーマンスということで考えれば、失礼ながら田舎大学に底なしの予算をつぎ込むより他にずっと優先すべきことは多々あるはずですよね。
医療費抑制が医療業界に様々なひずみを顕在化させたのは一面の真実だとしても、それがなかったところで「医療の常識は世間の非常識」なんて言われるようなひずみは元々存在していたわけですから、やれやれこれで金が入った、助かったと病院経営者が喜んで終わりなんてことになってしまっては、現場の人間にとって一番悪い結果にもなりかねないわけです。

しかし、先の参院選で日医の推す候補が揃って討ち死にしたことは記憶に新しいところですけれども、その直後に「医療費は増やしてもいいことにしました」なんて話が飛び出してきた形ですから、こうなりますと「やはり日医なんてないほうがいいんじゃないか?」なんて声が医者の間からも強まりかねませんかね(苦笑)。
医療費が増えるなんて目が出てきた時こそ、それをどう使うべきかという提言に日医のスタンスが明確に現れるはずですが、相変わらず開業医や病院幹部ら経営者の視点だけでものを語っているようですと、使われる側の人間からはますます見放されていくのは仕方がないところだと思いますけれどもね。

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コメント

社会保障費の自然増というものの中で、医療・介護費の増加はそんなにありません。
1.3兆円の医療費や介護費が増えたのだと考えてしまうと、激しく間違えますよ。

実際には民主党の無策により、景気が低迷してしまい、生活保護や失業給付が増えてしまっている分、そしてこども手当などの負担が社会保障費の必然的な増加をきたしてしまっており、これらを全部合わせて1.3兆円ということです。

むしろ、医療介護は審査を厳しくして(レセプトの電子化で簡単にできるようになりましたよね)、できるだけ、診療報酬増分を「減らす」でなく「削る」方向にもっていくことでしょう。

元から民主党は「国民の生活」を大事にする、という公約ですから、どこをとっても社会保障費は増える政策になるんですよ。単に、「俺たちの政策が必要とする社会保障費の増大は認める」という勝手な理屈にすぎません。

投稿: Seisan | 2010年7月21日 (水) 11時22分

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