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2010年7月 2日 (金)

いよいよ動き始めた医療ツーリズム その時日医は

先日以来取り上げている医療ツーリズムの話題ですけれども、このところ相次いで実働に向けての動きが目立ってきた気配があって、旅行会社なども専属チームを編成していよいよ本格的に参入してくるつもりのようですね。
国内ではすでに亀田メディカルセンターなどが先頭にたって動き始めていますが、国や観光業界などが支援体制を整えてきているということは、自前のノウハウをもたない中小病院にとっても参入のチャンスということになりそうです。
とりわけ近年日本は観光立国ということも目指しているようで、諸外国とりわけ中国など東アジアの新興国からの訪日増加を期待しているということですが、これらはちょうど医療ツーリズムの主要ターゲットと重なるわけですから、今後「医療と観光をセットで」という動きはますます加速していきそうです。

経産省、医療ツーリズム人材育成-今年度中に60人(2010年6月28日日刊工業新聞)

 経済産業省は医療機関での受診などを目的に日本を訪れる外国人を増やすため、国内で医療と語学の両方に通じた人材の育成支援を始める。

 ロシア語と中国語、英語で、医療の専門用語を正確に使える人材60人程度を2010年度中に育てる。態勢を整えて外国人患者を積極的に受け入れることで、日本の医療機関の技術向上のほか医療分野に通じた通訳業、観光と合わせてツアーを企画、実施する旅行代理店など関連産業の活性化を狙う

 経産省は特にロシアと中国において、日本で健康診断や先進的な治療を受けたいとするニーズが強いと見る。秋までに医師が監修して3カ国語の専用教材を作成。各言語で20人、合計60人程度を目標に受講生を集め、講義と医療機関での実習を行う。

「医療ツーリズム」拡大へ、官民で支援会社(2010年6月29日読売新聞)

 経済産業省は、国内の医療機関が外国人患者に高度な医療サービスを提供する「医療ツーリズム」の拡大に向け、患者受け入れを支援する新会社を2011年に官民出資で設立する方針を固めた。

 12年度にも本格的な事業を始める。外国人患者の受け入れ拡大は、国内の医療産業を活性化させるため、政府が18日に発表した新成長戦略に盛り込んだ施策だ。

 新会社は、中国やロシア、中東などの医療機関と提携してPRを行い、国内の病院との橋渡し役を担う。政府系機関による出資を検討しているほか、民間からは医療機関や旅行会社などの出資を募る方向だ。

 経産省は、会社設立に向けた準備費として今年度に約1億円の予算を計上。7月から専門の通訳者などを募集し、外国人患者の受け入れを希望する国内の病院の調査に乗り出す。

 医療ツーリズムに熱心なシンガポールやタイは、中東などから年間数十万~100万人の患者を受け入れ、旅行、ホテル業界の収益拡大にも貢献している。経産省は、昨年秋に有識者らによる「医療産業研究会」を設置し、日本での医療ツーリズムの拡大に向けた具体策を検討してきた。

医療滞在ビザ創設へ 外国人患者受け入れへ年度内(2010年7月1日CBニュース)

 政府は国内医療機関で外国人患者を受け入れる「医療ツーリズム」を拡充するため、2010年度中に「医療滞在ビザ」(仮称)を創設する方針だ。日本の医療サービスを提供する海外拠点を整備するほか、国内医療機関と外国人患者を結びつける組織も立ち上げる。日本の高い技術とサービスを生かし、海外で増す医療ニーズを取り込む狙いがある。

 政府は先にまとめた新成長戦略で、医療・健康産業の国際化を打ち出している。医療サービスの活性化を検討していた政府の有識者会議「医療産業研究会」(座長・伊藤元重東大教授)が30日、具体策を盛り込んだ報告書を公表。これを受けて経済産業と外務、厚生労働各省などを軸に対応策を固める。

 高度な医療サービスを受ける目的で来日する外国人患者を増やすため、余裕のある滞在許可期間の設定や弾力的な期間延長を可能にする医療滞在ビザを新たに設ける。90日まで滞在可能な商用ビザの目的欄に「医療」を追加するなどの案を今年度中に検討する。

 また国が外国人患者の受け入れに必要な能力があると認定した医療機関についての規制を見直す。医療法上の病床規制を緩和したり、外国人医師の受け入れ制限を撤廃するといった方向で、受け入れ環境を整える。

 また、海外医療機関との提携や日系医療機関、診断センターなどを通じて、日本の医療サービスを提供する海外拠点の整備も進める。世界的に高度な技術を持つ先端X線や内視鏡治療などをアピールし、国内に外国人患者を呼び込む。

 日本は磁気共鳴画像装置(MRI)の設置数が世界で突出するなど高いインフラ水準を誇る。日本でのがん検診などに来日する外国人も増加基調にある。政府は外国人患者を国内医療機関にあっせんするセンターの設置や、専門用語が必要な医療通訳の育成にも力を入れる計画だ。

 経産省の試算によると、50万人の外国人患者の受け入れで約1兆円の経済効果が生まれる。シンガポールやインド、タイなども医療を成長分野と位置付けており、アジアでの医療の国際競争が加速する方向にある。

外国人というのは当然ながら保険診療外の自由診療であって、治療法自体も保険診療の縛りを受けませんから世界標準の方法が使えるということで医療側にとってもメリットがあるとも言え、マンパワーの問題や料金設定などで折り合いがつけば、是非やってみたいと考えている施設も案外多いんじゃないでしょうかね?
東南アジアなどと競合することになれば医療自体のコストもさることながら、ホテルコストの部分でずいぶんと不利ではないのかなという気がしますが、このあたりは観光価格込みということも含めてどれだけ日本のイメージというものが高く売れるかということでしょうね。
この日本の病院の設備や待遇の悪さというものはヒラリーさんにも数十年前のレベルと酷評されたといいますが、確かに今時風呂は週3回だけとか六人部屋でプライバシーゼロであるとかあり得ないような話が普通に残っているわけですから、こうした自由診療の方々が大勢やってくることで設備や待遇の改善が進めば一般の患者さんにとっても悪い話ではないですよね。

さて、そんなこんなで景気のいい話が続いてきた中で、ここで記事の中にさりげなく「医療産業研究会」なるものが登場してくるわけですが、これに関して先日経産省からこういうニュースが出ていましたが、ご覧になりましたでしょうか。

医療生活産業の振興を―経産省研究会が報告書(2010年6月30日CBニュース)

 医療サービスの新たな市場拡大のための方策を検討する経済産業省の「医療産業研究会」(座長=伊藤元重・東大経済学部長)は6月30日、昨年9月からの5 回にわたる議論を取りまとめた報告書を公表した。医療分野の基盤強化や市場拡大に向け、海外との競争力強化も踏まえた具体的施策として、医療生活産業の振興の必要性などを指摘している。

 報告書に示された具体的施策は、「医療生活産業の振興」「医療の国際化」「医療情報のデジタル化・標準化」の3つ。

 「医療生活産業の振興」は、医療を産業の側面からとらえた上で、「公的保険の枠内で全てを賄おうとした場合には期待できない、自由な発想や工夫された効率性、自律的に顧客のニーズに応える能力を持つサービス事業の創出」が必要としている。その上で、病院と自宅の間を埋めるサービス機能を持つ“准病院”の役割を担う機関など、人生のQOLを維持するための医療・周辺サービスの振興や、外食産業やフィットネスなどの医療とは必ずしも密接な関わりを持たない産業などとの連携、ノウハウの応用を提唱している。

 「医療の国際化」は、外国人が日本国内の医療を受診する「インバウンド」と、日本の医療サービスを何らかの形で海外で提供する「アウトバウンド」の2つの類型で国内外の需要への対応を図ることで、「日本の医療権が拡がり、外国の医療の発展に寄与しつつ日本の医療産業の発展を支える裾野の拡大が実現される」としている。政府の新成長戦略に掲げられている医療ツーリズムに係る施策については、医療目的の訪日に見合った「医療ビザ」(仮称)の創設や外国人医師・看護師の受け入れ、病床総量規制の特例などを検討すべきとしている。

 「医療情報のデジタル化・標準化」は、個人の医療情報を可視化し、共有できるシステムやその情報流通の仕組み、ルールを構築することで、「医療や介護、その周辺のニーズに関わる需要と供給を随時、正確に把握することが可能になる」としている。そのための具体的な施策イメージとして、ITを活用した医療や介護、支援サービス事業者による「リモート・リアルタイム」の情報共有ネットワークの構築や、過去の診断履歴やDNA情報に基づく「テーラーメード」のサービスの実現が必要だとしている。

昨年に出来て以来この医療産業研究会なる団体は地道に医療の産業化を検討してきたということですが、メンバーを見てみましても医療側で参加しているのは大学関係やナショナルセンターのお偉い先生方ばかりで、少なくとも日医的な立場を代弁する方々とは縁遠いのかなというのが後の伏線になっているようです(これも日医外しの反映でしょうか?)。
他方では、いきなり「公的保険の枠内で全てを賄おうとした場合には期待できない」云々という文言が出てくることからも明らかな通り、露骨に保険診療外での医療の規模拡大を目指したものであるということが明らかなわけですから、民主党の言うところの医療の産業化による経済成長戦略とはやはりそういうことであったかと納得できるところですね。
そのこと自体の是非はまたともかくとしても、こういった話になると必ず一言ないではいられないというのが日医の方々ですから、当然ながら医療ツーリズム自体がそもそも反対、この報告書に関しても激しく反発しているというスタンスであるようです。

「海外の医療需要に慎重対応を」―新成長戦略受け日医(2010年6月23日CBニュース)

 日本医師会は6月23日の定例記者会見で、政府の「新成長戦略」に対し、国民皆保険に影響を与えたり、医療現場に混乱を招いたりしかねない問題があるとする見解を発表した。アジア諸国を想定した「国際医療交流(外国人患者の受け入れ)」に対しては、海外の需要に注目する前に、日本人の患者を守ることを最優先にすべきだと訴えている。

 中川俊男副会長は会見で、日本人か外国人かを問わず患者を診察・治療することは医師の「当然の責務」とする一方、日本の地域医療が崩壊した今、心疾患などで日本人の患者すら十分な医療を受けられない場合があると指摘。日本の医療再生を最優先し、海外の医療需要には慎重に対応するよう求めた
 また、営利目的の組織的な「医療ツーリズム」には反対の姿勢を改めて示した。

 新成長戦略ではこのほか、外国人患者の受け入れに資する医療機関の認証制度の創設も掲げているが、見解では、認証制度により特定の医療機関に資源が集中し、地方の医療が完全に崩壊しかねないと懸念している。

医療産業研究会の報告書を厳しく批判―日医(2010年7月10日CBニュース)

 日本医師会の中川俊男副会長は6月30日の定例記者会見で、経済産業省の「医療産業研究会」が取りまとめ、同日公表された報告書に対する日医の見解を示し、「非常に問題が多い」「これだけ問題の多い報告書もない」などと厳しく批判した。その上で、報告書に医療ツーリズムの考え方が含まれていることを問題視し、「国民皆保険の崩壊につながりかねない医療ツーリズムと混合診療全面解禁には、今後とも断固として反対していく」と強調した。

 見解では、報告書の最大の問題点は「副題に『国民皆保険制度の維持・改善に向けて』とあるにもかかわらず、地域医療の崩壊を見過ごして、公的医療保険に依存しない民間市場を拡大している点だ」と指摘。その上で、「所得によって受けられる医療に格差がつく社会、その結果、公的医療保険の給付範囲が縮小する流れには断固として反対」との考えを改めて表明した。

 報告書では、外国人患者らの受け入れに必要な能力を持つ医療機関を認証し、認証を受けた医療機関が必要とする場合には、医療法上の病床規制の特例などの規制緩和を検討すべきとしている。これに対し見解では、「医療崩壊の最中、国が特定の医療機関にお墨付きを与えてその経営を支援するようなことをすべきではない」と指摘。「いわゆる『勝ち組医療機関』が富裕層を受け入れて経営改善を図る一方、そうではない医療機関では診療報酬が上がらず、『勝ち組医療機関』に医師が引き抜かれる」などの懸念を示した。

 また報告書で、財源的に制約がある診療報酬体系の中に入れば、どのようなサービスでもその範囲と価格が公定され、サービスの内容が固定されて創意工夫のインセンティブが働きづらくなり、「極論すれば、工夫をしない方が収入がよいという場合もあり得る」などと指摘されていることに対しては、「まさに中医協、医療機関、医師に対する冒とくだ」と批判。その上で、「診療報酬が財源的な制約で決められることが間違いであり、本来必要な医療に必要な財源を充当することを考えるべき」と主張した。

 日医では今後、同研究会の関係者らとの対話や、政府・与党への働き掛けを行っていくという。

もちろん医療ツーリズムなどにはおよそ縁がなさそうな零細開業医を支持基盤としてきたのが日医という団体ですから、保険診療崩壊ケシカラン!わずかでも芽は全て摘みとる!と憤慨するのも理解は出来るのですが、完全保険診療固守という姿勢をこうまで強調するというのはどうなのかなという気もするところです。
民主党政権になれば医療費大幅増だ!なんてバラ色の未来絵図を描いて投票所に行った方々には残念なことに、政権が変わろうが医療費削減政策が放棄されようが相変わらず医療費政府支出分は大きく増やすつもりはない(というより、構造的に増やせない)ということが逆にこの上なく明らかになってしまったわけですよね。
一方で医者の数は今後どんどん増やしますということは公言されていて、少なくとも何割という単位で医師総数が増えていくだろうことは既定路線になっているとなると、今後も保険診療の枠組みを固守し混合診療など他の儲け口を認めないという主張は、すなわち今以上の貧乏暮らしを覚悟しときなさいねということと同義であるとも取れる話です。

特に今回「工夫をしない方が収入がよい」云々の指摘に対して「まさに中医協、医療機関、医師に対する冒とくだ」などと感情的な反発をしてしまっていますけれども、診療報酬の半分を占める国庫支出分が財源的な制約で決められるというのは当たり前の話であって、日医が皆保険絶対視で医療を保護産業化したいというのであれば今後も総収入が限られるだけに、今以上に支出をいかに減らすかということが現場の目的化しかねません。
医療事故の損害賠償などでもすでにそうした議論が出ていますけれども、まじめに熱心に診療にあたる先生ほど医療訴訟のリスクが高く多額の賠償金を背負う羽目になる一方、リスクは徹底回避してやっている昼行灯タイプが一番安全に、安楽に暮らしていけるなんて話がますます一般化してくるということになれば、これはまさに働かない方が儲かるなんて世の中になってしまいますよね。
日医とすれば長年の固定客だけで細々とやっているような町の老開業医を念頭に置いた発言なのかも知れませんが、そうした先生はとっくに息子達には医者稼業だけは継ぐなと言いくるめているという時代ですからあまり関係がない、となれば彼らが必死に代弁しようとしているのは誰なのか、「勝ち組」に医者を引きぬかれてばかりの負け組医療機関と言えばハハン、そういう連中か…と察しはつきそうに思います。

一体に今の日本の医療においては大学病院やナショナルセンターのような特殊な医療を行う例外は別として、市中病院であればまず医者ら専門職をたくさん抱え込んだ施設こそ勝ち組になれるという構図が見えてきていますが、そうした観点で言えば医者が逃げていく負け組病院とはどんな施設なのかということですよね。
3000万出そうが医者が逃げ出していく施設もあれば、給料も悪ければ仕事も大変なのに医者が集まってくる施設もあるわけで、医者にとっても腕を発揮できるような魅力に乏しい、待遇改善で医者集めをする意志など全くない、そもそも医者といえば大学医局に派遣を依頼するか国を動かして医者が逃げ出さないようするしか考えていない、そんな施設が負け組になることの何が悪いのかということも考えてみた方がよさそうです。
業界圧力団体の日医が業界の既得権益を固守するべく動くのは当然だし、今までそれがなかったからこそ見放されてきたという側面も多々あるわけですが、一方でその固守しようとする努力の矛先がどこを向いているのかを見ていくと、彼らの眼中に現場で働く個々のスタッフは入っていないんだろうなとも思えてくるところですよね。

日常的に外国人診療をやっていたり、日本人相手でも健診など保険診療以外の業務を中心でやっている施設の先生方は、今現在すでに日医の主張するような保護主義的色彩が濃厚な医療にはとっくに違和感を持っているんじゃないだろうかと思いますが、いったい日医は医療機関が自助努力で頑張ることを邪魔したいのかとも思えてくる話です。
日医がどこまでも皆保険制度固守を金科玉条としていくつもりであれば、いったい日医の考えている妥当な医療の取り分というものはどの程度の規模であるのかを示す必要があるでしょうし、それを叩き台に国民の税負担への納得が得られるのかという議論にも参加していく必要があるでしょうし、そもそも日医が代弁者を気取っている業界内で彼らのビジョンに同意が得られているのかという検証も必要なんでしょうね。

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