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2010年7月22日 (木)

高校野球なら負けて学ぶものも多いという話なんですが

先日の参院選で日医の推す候補が全て落選という結果に終わったことは知られている通りですが、日医の政治団体である日医連からこの一件に関するコメントが出ています。
ちなみに実質的にはおわび会見となったようですけれども、日医会長を兼任する原中委員長は都合がつかないと出席を見合わせたそうです。

全員落選「心からおわび」―日医連・横倉氏(2010年7月14日CBニュース)

日本医師会の政治団体である日本医師連盟(日医連)は7月14日、同連盟が推薦したり、支援したりした3候補がいずれも落選した参院選の結果を受けて記者会見を開き、「国民のみなさまへ―第22回参議院選挙を終えて―」と題する原中勝征委員長名の「メッセージ」を発表した。
会見に臨んだ横倉義武副委員長は、「わたしどもの力不足で3人とも当選を獲得させ得なかったことについては、心からおわびを申し上げたい」と述べた。原中委員長は、会見に姿を見せなかった

横倉副委員長は、候補者を一本化できなかったのが敗因ではないかとの質問に、「(3人を出すことで)受け皿づくりができた」「一本化が困難な状況だったのは事実」とする一方、「(3人に)分散したので、会員の先生方も戸惑いを感じられたのかなとの反省を持っている」とも述べた。執行部の責任について問われると、「真摯に反省をして今後の活動にしっかりとつなげていきたい」との考えを示した。

また、今後の政治運動の方向性については、「組織内でしっかりと議論して、あまり偏することなくいろいろな活動をして、わたしどもの医療政策をご理解いただく議員を与野党問わず、支援していかなければならないとの思いでいる」と説明した。

日医連は5月、参院選で比例代表に立候補した民主党新人の安藤たかお氏の「推薦」、自民党現職の西島英利氏とみんなの党新人の清水鴻一郎氏の「支援」を決定したが、3候補はいずれも落選した。

「メッセージ」では、こうした結果について、「国民のみなさまが、日本医師会は、もっと地に足をつけて、医療の再生により国民の安心と安全を守る政策を自らがしっかりと打ち出しなさいという、強いメッセージを下さったものと受け止める」としている。その上で、今後は政府・与党だけでなく野党にも強く働き掛け、「是々非々」で政策を判断し、支援する姿勢を示している。

「メッセージ」の全文は次の通り。

国民のみなさまへ―第22回参議院選挙を終えて―

7月11日、第22回参議院選挙の投開票が行われました。日本医師連盟は、国政に医療現場の声を直接伝えたいとの思いから、安藤たかお氏(民主党)を推薦、西島英利氏(自民党)および清水こういちろう氏(みんなの党)を支援してまいりました。しかし残念ながら全員落選という結果になりました。

このことについて、私は、国民のみなさまが、日本医師会は、もっと地に足をつけて、医療の再生により国民の安心と安全を守る政策を自らがしっかりと打ち出しなさいという、強いメッセージを下さったものと受け止めます
そして、いっそう国民のみなさまの声に耳を傾け、日本医師会において、日本の医療のあるべき姿を描く決意を新たにしました。

日本医師連盟は、日本医師会がその責務をまっとうできるよう、これからもたゆむことなく政治活動を行います
これまで、日本医師連盟は、日本医師会の政策提言をより直接的に国政に反映させるため、政府与党への働きかけを重視していました。
今後は、政府与党および野党に対しても、たゆむことなく力強い働きかけを行っていく所存です。そして、日本の医療を再生させるという強い気持ちをもって、是々非々で政策を判断、支援してまいります。

あらためまして、今回の参議院選挙の結果を真摯に受け止め、真に国民のみなさまに求められる医療提供体制の実現に向けて、これからも国民のみなさまとともに努力してまいる所存です。

原中委員長は「国民のみなさまが(中略)強いメッセージを下さったものと受け止めます」と言い、横倉副委員長は「会員の先生方も戸惑いを感じられたのかなとの反省を持っている」と言う、このあたりにそれぞれの目線の違いが現れているようで興味深いですね。
いろいろと分析は可能ではあるのでしょうが、とりあえず業界圧力団体としての日医が何より「会員の先生方」の声すら拾い上げられてないということが明確に示されたわけで、そもそも政策の根幹が異なる三党から出ている候補を同一団体が推すなどということ自体がどうなのよと感じた人間が多いということでしょう。
日医としても特定政党に偏ったのでは会員の意見に反するという自覚があるのであれば、そもそも同じ日本の医師免許所持者という以上の共通項のない十数万人の会員が、特定候補を揃って支持するなどあり得ないということにも気付いてしかるべきではなかったでしょうか。

原中氏いわく、今後は政府・与党だけでなく野党にも強く働き掛け、「是々非々」で政策を判断し、支援するということですが、こういう現実を突きつけられた以上はそろそろ日医としても旧来の選挙のやり方を変えていかなければますます組織内分裂が進むだけですよね。
失礼ながら今回の推薦候補の顔ぶれを見ましても、「計算上、日医会員(約16万6000人)が1人1票入れただけに終わった」なんてレベルの方々が一人二人議会に送り込まれたところで医療政策の何がどうなるというものでもないでしょうから、こういうやり方自体が今の時代にどれほどの意味があるのかということです。
そして何より、ただでさえ組織内の支持基盤が怪しい原中氏としては今回の大失態が命取りにもなりかねないという話で、早晩吊し上げ確定という状況で悠長に「今後は是々非々で政策を判断し」云々などと言っていられる立場かということでしょう。

日医連副委員長「一党に偏することなく活動」、3候補全員落選で(2010年7月14日日本経済新聞)

 日本医師会の政治団体「日本医師連盟」の横倉義武副委員長は14日の記者会見で、参院選で推薦・支持した3候補が全員落選したことを受け、今後の政治活動について「あまり一党に偏することなく活動していく」と語った。次期参院選では「特定の人を組織内候補にするのとは違う形での支援の方がよいのではないか」と述べ、組織内候補の擁立に消極的な考えを示した

原中勝征委員長は記者会見を欠席した。日医連は参院選で、親民主の原中氏が候補者を一本化できず、民主の安藤高夫氏を推薦、自民の西島英利氏とみんなの党の清水鴻一郎氏を支持した。

日医連:組織力急落 特定政党支援から撤退も…3候補落選(2010年7月14日毎日新聞)

 日本医師会(日医)の政治団体「日本医師連盟」(日医連)が参院選比例代表で推薦・支援した3候補がいずれも落選し、74年以来守ってきた「組織内議員」の議席を失った。しかも、3人合わせても07年に落選した武見敬三氏1人分の得票に及ばず、組織力の急落ぶりを印象づけた。14日の会見で今後特定政党の候補を支援しないこともにじませた日医連だが、親民主を掲げた原中勝征会長(日医連委員長)と反原中派による分裂選挙の末の敗北は、医師会内に大きな傷を残した

 会見で日医連は「今後は、政府与党および野党に対しても力強い働きかけを行っていく所存です」とする原中委員長名のコメントを発表し、「民主支持一辺倒」の姿勢を改めた。横倉義武副委員長は「政権が移ろいやすい時代だ。一党に偏することなく私たちの医療政策を理解する与野党の国会議員を支援する」と述べ、今後組織を挙げて推す候補を擁立しない可能性に触れた。原中氏は「都合がつかなかった」(横倉氏)との理由で、会見に姿を見せなかった

 かつて日医は、政府の医療政策を左右してきた。その力の源泉は組織力だ。日医が初めて参院選旧全国区に擁立した組織内候補は74年。続く77年には、福島茂夫氏が日医史上最高の127万票を獲得した。その後も80万票程度を集めて常に2議席を維持し、非拘束名簿式が導入された01年以降も一定の集票力を示していた。

 しかし、会員の政治意識が変わりトップダウンの縛りが効かなくなったのは日医とて例外ではない。07年には武見氏が20万票を割り込んで落選した。今回は、民主公認の安藤高夫氏、自民公認の西島英利氏、みんな公認の清水鴻一郎氏の3人の合計得票でも武見票より1万6000票少ない。同じ医療系業界団体の日本歯科医師連盟や日本看護連盟が候補を1人に絞り議席を確保したのとは対照的な結果となった。

 今後は民主支持にかじを切ろうとし、分裂を招いた原中氏に対する責任論が噴き出すのは確実だ。3人の推薦・支援を決定した5月11日の執行委員会では、「3人とも落選したらどう責任を取るのか」とただされ、原中氏が返答に窮する場面もあった。西島氏を支援したある県の医師会長は「次の執行委員会では原中氏の責任を追及する」と意気込む。

 原中氏は今後の政治活動方針について、「是々非々」を強調する。しかし、ある日医関係者は「力のない団体の要望など政党が真剣に聞くわけがない」と話し、組織を割った選挙戦の影響に懸念を示した。【鈴木直】

日本医師会「二また」後遺症深刻…組織候補ゼロ(2010年7月18日読売新聞)

 日本医師会(日医・原中勝征会長)が、参院選の「後遺症」に苦悩している。

 参院選では、同会の政治団体「日本医師連盟」(日医連)の推薦・支援した3候補が全員落選し、1974年以来、守ってきた「組織内議員」の議席を失った。日医連は今回、組織内候補だった自民党現職を「支援」に格下げし、民主党候補を推薦した。ほかにみんなの党の候補も支援したが、結果的に都道府県ごとに支持が分かれ、「全敗」となった。日医連の横倉義武副委員長は14日の記者会見で、「候補の一本化は困難だった」と苦悩をにじませた。

 選挙後、原中氏は日医連委員長として、「これまで、日医連は政府・与党への働きかけを重視してきた。今後は政府・与党及び野党に対しても力強い働きかけを行っていく」とする談話を発表した。日医は長く自民党の有力支持団体だったが、4月に民主党支持の原中氏が会長に選ばれ、原中氏の主導で民主党候補の推薦に踏み切った。しかし、参院選を受けてさらに軌道修正を迫られ、与野党の「二また」というあやふやな立場に追い込まれる形となった。

 日医連にとって衝撃だったのは、3候補の総得票数が約17万票で、2007年の前回参院選で擁立した組織内候補1人(落選)の得票より1万6000票も減った点だ。日医連関係者は「計算上、日医会員(約16万6000人)が1人1票入れただけに終わった」と落胆を隠さない。1977年の参院選で、組織内候補として過去最多の約130万票を得たころと比べると、組織の弱体化は否めない。

 ある県の医師会幹部は、「組織を一本化できなかった原中氏の責任は大きい」と批判する。発足して間もない原中体制の求心力低下は避けられそうもない

日医の求心力低下は今に始まったことでもありませんが、会員に限らず広く現場の医師側の立場からその原因を考えてみるに、中医協での議論に代表されるような金配分の話に茶々入れするばかりで、日医幹部がどれほど現場の人間の目線で動いているのかさっぱり判らないということも大きいんじゃないかと思いますね。
「今どき日医ってw」な多くの勤務医はもとより、長年にわたって日医の主たる支持層であった開業医の先生方の間でも、例えば現場と日医中枢の双方を知る地方医師会幹部クラスになるほど「日医は何をやってるんだ!」なんで不満の噴出ぶりが半端ではない、要するに全く現場の声が届いていないと言うことですよね。
どうせ今回の三候補の誰かが当選したところでそれで政界勢力図の何が変わるという影響力もないだろうし、失礼ながら三候補から医療政策の今後に関するすばらしい見識を拝聴した記憶もないとなれば、なんだ単に数合わせの候補かと見極められても仕方のない話で、いったい日医は何を考えてこんな泡沫候補を推しているんだと疑問に思わない方がおかしいということになってきます。

先年誕生した全国医師連盟(全医連)の方ではそうした点は割り切っていて、各党への公開質問状等という形で選挙の判断材料を提示するというところに留まっているのは医療系団体としては正しい分別だと思いますし、逆に今の時代に特定政党なり個人なりに肩入れしたり喧嘩を売っても仕方がないということでしょう。
となると日医にしろ今後目指すべきなのは、医療業界とりわけ医者の世界でコンセンサスとして追い求めていくべきものは何なのかという理念であり、それを実現するためにどう動くべきなのかという方法論だと思うのですが、そもそもこの段階からして異論百出過ぎて話がまとまりそうにもありません(苦笑)。
一方でネット経由で誕生した全医連の方はもともと目指す方向性が近い者同士が集まって出来たという経緯もありますから、今のところ所帯も小さいこともあってそのあたりは共通認識があるようで、全医連系の労組である医師ユニオンなども含めて一貫して医者の労働環境改善という、誰もが反対し難い訴えを続けているのは周知の通りですよね。

勤務医の労働実態把握を―全国医師ユニオン運営委(2010年7月20日CBニュース)

 小児科医の中原利郎さん(当時44歳)の過労自殺をめぐる民事訴訟で、最高裁で和解が成立したことを受け、全国医師ユニオン運営委員会は7月20日、勤務医の労働実態を適切に把握し、医師が健康に働ける診療環境をつくるよう医療機関に求める声明を発表した。

 声明では裁判について、▽労災認定にとどまらず、雇用する病院側の安全配慮義務や注意義務違反を問うた医師の過重労働の問題を社会に知らせ、警鐘を鳴らした―ことから、「医師の過労死裁判の中でも極めて重要な裁判」だったと位置付けている。

 また、現在の医師不足と医療崩壊は、個々の医療機関の責任ではないものの、医療機関には労働者である勤務医の労働実態を把握し、健康状態を留意する義務があると強調。その上で、厚生労働省に対し、▽和解の意図を真摯に受け止める▽医師の労働実態に関する情報公開を行う▽医療機関が医師の労働実態を適切に把握するよう指導を徹底する―ことを要望した。

 一方、各医療機関に対しては、医師の健康確保と医療安全のために勤務医の労働実態を適切に把握し、地域住民の協力も得ながら、医師が健康でやりがいを持って働ける適切な診療環境をつくるよう強く求めている

 さらに、今年4月に実施された診療報酬改定に対し、勤務医の負担軽減が一つの柱になったものの、大多数の医療機関で勤務医の労働条件が改善されていないと指摘。全国の勤務医に対し、▽自分の勤務時間を記録する▽不払い労働の解消と診療環境の改善を要求する―よう呼び掛けている。

ちょうど日看協なども相前後して看護師労働時間適正化を求めるコメントを出していますけれども、業界団体と言うなら業界の現場にいる人間が気持ちよく働けるように政治に働きかけるのが当たり前のことであって、そうした方面にあまり関心のない?日医の方が異端だとも言えますよね。
日医と言えばいざと言うとき患者を引き受けてもらわなければ困る開業の先生はもとより、原中氏のような病院幹部にしても配下の手駒がきりきり働いてもらわなければ病院が回りませんから、使われる側の現場勤務医に対してあまり権利意識が高まってもらっても困るという気持ちはあるのかも知れません。
そういう意味では近頃日医も「もっと勤務医も日医に結集せよ!」なんて言っていますけれども、ある意味厳しい奴隷労働の現場で働く人間の代弁者がいなかったからこそ好き放題やって来れたとも言える話ですから、あまり勤務医が増えて大きな顔をしてもらっても困るという本音もあるのかもですね。

ちょうど先日出てきた日医の予算概算要求に対する要望書を見ても、現場で奴隷労働を強いられている人間の労働環境改善なんてことが日医的にどれほど優先順位が低いのかはよく判る話ですから、いくら原中会長が「医師会が政府に現場の声を伝える役割を果たしたい」なんて言ったところで、いったいそれは現場の誰の声なんですかと突っ込まれるのがオチではないでしょうか。
日医が世評通りに業界内の特定層の代弁者であることを今後も目指していくのでなければ、かなり大胆な考え方の変革を行っていかないことにはどうしようもないんじゃないかという気がしますし、何よりこのままでは現場の人間に対して全く影響力を発揮できなくなってしまうでしょうね。

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