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2010年7月20日 (火)

それでも夕張市だけが悪いわけではありません

先日は患者受け入れの件で市長からバッシングを受けたという夕張希望の杜の村上先生ですが、その後当時の状況などに関してあちこちで反論してきたということは当「ぐり研」でもお伝えしてきた通りです。
この村上先生の直接発信してきたメッセージが当地では結構問題視されていたらしく、その後村上先生が夕張市長に対して謝罪したという記事が北海道新聞に掲載されました。

ツイッター問題で村上理事長が 夕張市に謝罪(2010年7月16日北海道新聞)

 【夕張】夕張市立診療所を運営する医療法人財団「夕張希望の杜(もり)」の村上智彦理事長がインターネットに短い文章を載せるサービスの「ツイッター」で不適切な書き込みをしたとして夕張市が村上理事長に抗議していた問題で、市は15日、村上理事長から文書で謝罪を受けたことを市議会で明らかにした。

 村上理事長は、医療活動をめぐる市からの質問書を「脅迫状」と表現したり、市の幹部を名指しで非難するなどしていた。謝罪文は「不適切な表現を撤回し、おわびする」としている。市と市立診療所は今年5月に同診療所が心肺停止患者の救急搬送受け入れを拒否したことで対立していた。

救急受け入れを拒否した挙げ句に逆ギレして市当局を逆批判とはなんて悪徳医者だと、この記事を見ていると道新的にはすっかり悪者扱い確定という感じの村上先生ですが、何がどうだったのかということをこれまた夕張希望の杜のHP上で公表していて、これもまたなかなか面白い話のようですよね。

新聞記事は表現の自由(2010年07月19日夕張希望の杜:歯科医師・医師のつぶやき)より抜粋

(略)
法人と全く関係ない個人のツイッターというつぶやきでも問題になることは理解しました。このことに関しては謝罪しました。表現する難しさを感じました。

ただ、
ツイッターで市の幹部を名指しで非難した事実はどこにもありません。(リツートで他の人がその人の実名を出しましたが)
あおるマスコミはいましたが)また、市と対立したいとも思っていません。

名指し非難とか、拒否とか、市と対立という極めて慎重にすべき表現を

公的な新聞の記事で事実のように書くことは問題になりません

表現の自由です。

要するに道新の言うところの「不適切な表現を撤回し、おわびする」という部分は「脅迫状」云々の表現に関してのみかかることであって、他のところは全く知らない話であると言うことでしょうか。
道新とすれば話が大きくなった方がネタになるという気持ちもあるのでしょうが、こういうところはお互い誤解が誤解をよんでいる訳ですから、外野が勝手に誤解を広め延焼させるようなことをやっていても仕方がないように思いますけれどもね。
先日の夕張の一件に対しては村上医師の対応がどうであったかといった批評とはまた別として、道新をはじめとするマスコミ諸社や当の夕張市当局の対応についても全国から批判の声が相次いでいるというのが実際のところで、他ならぬあなた達が他人を批判していられるような身分か?とは誰しも感じているところのようですね。

夕張市に村上医師を非難する資格はあるのか 私が見てきた夕張の地域医療(1)川本 敏郎(2010年7月13日JBpress)
より抜粋

北海道夕張市立診療所の村上智彦理事長による「なぜ私は救急患者の受け入れを拒否したのか」という記事が、6月7日にJBpressに掲載されました。

 この記事を読んで、私がまず感じたことは、「またか」という思いでした。

 2009年10月にも、9月末に首つり自殺した夕張市内の中学生の救急搬送を夕張医療センターが断ったと報道され、耳目を集めたからです。

 その時、藤倉肇市長は定例記者会見で、「二度とこうした事態が起きないよう、市内の救急医療体制の改善を図りたい」と発言していました。それが、改善されないばかりか、また自殺者が出たのです。しかも2010年5月上旬にも自殺者が救急搬送されたばかりというのですから、驚くしかありません。

 北海道の2008年の自殺者数は人口10万人当たり31.2人です(全国第9位。全国平均は10万人に対して25.3人)。つまり、1年間で人口 1万人当たり3人が自殺する計算になります。夕張市は人口が約1万1100人。たった半年間で3人の自殺者が出たということは、自殺率が全道の2倍ということになります

 常識で考えると、市がやるべきことは、まず自殺者対策であり、次に救急医療体制の改善です。それなのに真っ先にやったことは、記者会見で「市内の 50代男性自殺者の救急受け入れを断っていた」と発表したことでした。

 しかも数時間後に市長、副市長、総務部長はじめ5人が事実関係の確認、抗議に「夕張希望の杜」に押し掛けたというのですから、恥の上塗りとしか受け取りようがありません

市はいつまで「前例がない」を繰り返すのか

 整理しておきましょう。村上医師は反論記事で、自殺は病気ではなく、やるべきことはうつ病対策等の行政の取り組みが大切だと主張しています。

 3人の自殺者がどのような理由で自死を選んだのか詳細は分かりませんが、一般論としては、村上医師が言うようにまずうつ病への対策をすべきだったのであり、同時に将来を含めて日々の生活不安を減らすこと、希望の持てる町づくりをすることでしょう。

 次に、救急医療体制の改善ですが、村上医師は2年ほど前に、市内に急病センターを1カ所設け、初期救急患者(軽症の救急患者)についてはそこで医師が交代制で診るようにしてはどうかと具体案を出しています

 これに対して、市は「前例がない」「予算がない」と突っぱねたそうです。絵に描いたような「お役所仕事」としか言いようがありません。

 これでは、昨年10月、藤倉市長が記者会見での「改善を図りたい」という発言は口先だけとしか受け取れないでしょう。知恵も出さずカネも出さず、「前例がない」では、何もやりませんと言っていることと同じことだからです。

 第三者から見ると、夕張市は、建物は市のもので「市立夕張診療所」なのだから以前の市立総合病院がやっていたように救急患者を受け入れるべきだと勝手に思い込み、ないものねだりをしている駄々っ子としか映りません

 財政破綻して3年、市はそろそろ「自分たちはかわいそう」などといった被害者意識から脱し、破綻したからこそ前例のないこと、これまでとは違ったやり方にトライすべきなのではないでしょうか。

大手マスコミに対する若い医師の問いかけ

 行政だけではなく、一連の出来事を報道してきたマスコミにも問題があります。

 「夕張希望の杜」への取材を行うことなく、市の発表をそのまま報道してきた新聞、テレビ、ラジオ等すべてのメディアの人たちは、今回のことをどのように考え、どう判断をしたのでしょうか。

 村上龍氏が編集長を務めるJMM「医療に対する提言・レポート from MRIC」の6月22日号に、遠藤香織(北海道大学・整形外科医)さんが「記事:夕張・村上医師「なぜ私は救急患者の受け入れを拒否したのか」各聞社へお願いしたいこと」という一文を投稿しています。

 遠藤さんは、村上医師は若い世代の目標であり、その影響もあって地域医療を考えて皆で一緒に歩んでいこうと思っている人が増えているのに、北海道新聞の記事を読んだことで、北海道で働くモチベーションが下がったと書いています。

 そして、記事を書くのはやむを得ないとしても、微妙な問題なのだから続報でもう少し建設的なことへと昇華はできないものかと問いかけ、「報道関係者様は問題の本質を是非突いてください」とお願いしています。

 この投稿を読んで、私は一筋の光明を見るとともに、暗澹たる気分にもなりました。志を抱く若い世代の医師たちがいることに、まだまだ日本も捨てたものではないと感じると同時に、そうした若い人たちに大手マスコミは果たしてきちんと応えられるだろうかという危惧が一緒にやって来たからです。

 大手マスコミで働く人たちは、志のある若い医師の言葉にどう応えるのでしょうか。興味を惹けば、何を書いてもよいとでもいうのでしょうか。

 それが夕張の医療、ひいては北海道の、そして全国の地域医療崩壊に繋がってもよいというのでしょうか。それが自分たちや家族に火の粉となって降りかかってこないと思っているのでしょうか。
(略)

記事の内容が仮に事実であれば(と前置きしておきますが)市当局はかねて問題点の存在も把握していて、しかもそれを解決するための提言も外部のプロフェッショナルから受けていたにも関わらず、「前例がない」からと突っぱねたということなんですが、正直こんな人たちが市政を担当していて大丈夫なのかという疑問が湧くと同時に、こんな人たちだから夕張はこうなったのかと納得もするところですよね。
相次ぐ自殺者に代表される夕張市自体が抱える構造的問題というのは今さらな話であるのに未だに何らの動きも見せず、民営団体である希望の杜の村上先生に責任を丸投げにするような市当局の対応は少なくともどうかと言うことでしょうし、そんなこの上ない駄目っぷりを発揮してばかりの市当局を叩くよりも現場の個人を叩いてよしとするメディアもどうかということです。
「北海道新聞の記事を読んだことで、北海道で働くモチベーションが下がった」とは言い得て妙だと思いますが、実際に医療畑に限らず北海道から脱出してきた方々の口から道新の噂はよく耳にするところで、良くも悪くも北海道の行く末に大きな影響力を発揮しているメディアであるという自覚は必要なんじゃないかと思いますね。

それもさることながら、記事の後段にある村上医師の以前の講演会でのコメントというものがいつもの村上節だなという感じなんですが、こちらに引用してみましょう。

 村上医師に取材を申し込んだのは、2008年の2月、千葉県東金市で行われた「NPO地域医療を育てる会」主催の講演でのことでした。村上医師はよく通る声で、こんな風に聴衆に話しかけていました。

 「多くの人は、病気について自分は素人だといって医者任せで、軽症でも救急車を呼びます。だけど、八百屋に行ってどんな野菜を買おうか、みなさんはお店の人に任せませんよね。どうして医療についてだけは素人でいいんですか。どうして勉強しないんですか。あっ、これはあくまで北海道での話ですから・・・」

 「夜間に救急車を呼んで受診することを当たり前と思っている住民が、医療崩壊が起きているとは知らなかったとか、あるいは財政が破綻するとは思ってもみなかったと言います。知らなかったですまされますか、知ろうと努力をしなかっただけでしょう。あっ、これはあくまで夕張の話ですから・・・」

 村上医師は自然に囲まれた夕張の素晴らしさを紹介する合間に、自分の健康を医師に丸投げしたり、知る努力をしようとしなかったりする住民への批判、コンビニ受診がはびこる社会風潮への非難をくり返しました

一臨床家としての村上先生に対する批評はまたあちこちで聞くところですが、一方で地域医療の専門家(それは必ずしも優れた臨床家であることを意味する必要はないですよね)を以て任じる先生らしいコメントだなとは感じるところで、要するに今の時代医者を生かすも殺すも住民次第であって、あるいはそれを地域の民度であるという言い方も出来るんじゃないかと思います。
先日は紋別市の方でも出張講演をしたということですが、前述の記事中で「これはあくまで夕張の話」と言いながらこちらの講演内容なども拝見してみれば同じ文脈であるとは知れるところで、いわゆる医療過疎と呼ばれるような地域でとりわけ必要とされるものは何なのかと普遍性を持った話として語っていることが判りますよね。

夕張希望の杜村上理事長、医療講演で語る~「住民の健康意識が重要」(2010年7月18日北海民友新聞)

 紋別市休日夜間急病センターの立ち上げにも医師派遣等で協力した医療法人財団・夕張希望の杜の村上智彦理事長(医師・薬剤師)による講演会が、このほど紋別市立博物館で行われた。全国的に産婦人科や小児科を中心に医療崩壊が懸念されているが、村上理事長は「日本の医療は今でも世界最高」「世界で一番長生きなのに、これ以上望むのは他の国を考えれば贅沢だ」と指摘。病院が無い地区があるにもかかわらず、長年にわたり減塩に取り組んできた長野県のがん死亡率が都道府県別で最少であることを示し「住民の健康意識の差が大きい」として医療過疎に対する意識転換を求めた。
 紋別の地域医療を育て守る会(鈴木さよ子代表世話人)が出張教室として開催した。
 村上理事長は長野県について「40年前は脳卒中が日本一で胃がんも多かった。これを減らそうと減塩運動をしてきた。検診受診率も8割と高い」と説明。農家が多く生涯よく働き、山菜をよく食べ、脂肪分をあまり取らないという環境もあり、現在では、がん死亡率が13年連続で最少、寿命は最長で、医療費も最低だという。
 参加者たちは舌鋒鋭い村上理事長の話に耳を傾け、自らを守る健康づくりへの意欲を高めていた。

「世界で一番長生きなのに、これ以上望むのは他の国を考えれば贅沢だ」なんて厳しい話を舌鋒鋭いとは言い得て妙ですが、最近はこういうちょいと毒舌気味なくらいの方が受けるということではあるのでしょう(苦笑)。
こういう話を聞くと先日高知から出てきた話題を思い出すのですが、医療と地域の民度、あるいはマスコミとの関わりということを考える上で決して北海道と道新に限った特殊な話でもないということを理解する上でも、なかなか興味深い話でもあると思います。

支局長からの手紙:病院に「見捨てられて」 /高知(2010年5月31日毎日新聞)

 昨年4月末、57歳だった高知市の会社員、橋田曉(とし)さんは高知医療センターで胃がんの手術を受けました。胃をすべて摘出する予定でした。手術途中、妻の智子(さとこ)さん(57)は手術室に一人で呼ばれ、ピクピクする心臓が目に入る夫のお腹の中を見せられました。がんは腹膜に播種(はしゅ)(転移)する末期がんでしたが、素人が見てもわかりません。数日後、胃を摘出しなかったことに気づきます。外科医は余命について「わかりません」と説明しました。

 抗がん剤による化学療法に移り、智子さんはさらにショックを受けます。以下はその証言です。

 「余命3カ月、抗がん剤治療をしても9~11カ月。治りません」。最初に受診した昨年5月14日、橋田さん夫婦は担当医から伝えられます。「脳天を打ちのめされた」と智子さん。死に至るまでの病状の変化も詳細に聞かされました。「子どもに言い聞かせるような口調」でした。橋田さんが事前に病状の説明をどこまで求めていたのかわかりませんが、化学療法に望みをつないでいただけに、本人も相当なショックを受けました。

 2回目の受診時に抗がん剤の説明を受け、入院予約をしました。多くの種類が専門用語や略語で説明され、途方に暮れます。国が承認した抗がん剤を使う「標準治療」。承認前の抗がん剤を使って、その効果や副作用などを調べる「臨床試験」「治験」。次回までに選んでくるよう指示されました。

 3日後。看護師に「標準治療を選ぶ」と答えて受診したところ、担当医は「かかりつけ医を探してほしい」。理由を聞くと、「(標準治療は)ここでなくてもできるから、もっと近い、待ち時間の短いところがいい」。智子さんが「ここで」と懇願しますが、すでに「入院予約をキャンセルした」。智子さんは見捨てられたと思いました

 「患者の悲しいさが。下手(したて)に出なくてはいけない」。結局、転院せざるを得ませんでした。その後、医学知識を蓄えた智子さんは「末期がん患者は治験じゃないと受け入れないのでは」。医療センターへの不信感は募るばかりです。

 取材に対し、担当医は個人情報のため個別事案には答えられないとしながらも、次のように回答しました。「頻回通院が困難な場合などには、ご相談の上、地域の連携先病院に紹介させていただき、両病院併診の形で複数主治医として治療を行っております。特に、入院を希望される場合などは、それが可能な連携先施設を積極的にご紹介させていただいております」と説明し、余命告知については「希望されない場合は、説明を行うことは決してありません」。

 娘が胃がんと闘った経験から高知がん患者会「一喜会」を創設した安岡佑莉子会長(61)は「がん患者とその家族は精神的に参っている。普通の言葉を言っても傷つく。医師の言葉や仕草には配慮が必要。頑張っていこうという心の免疫力がつぶされると、命を縮めてしまう」と指摘します。
(略)

高知医療センターと言いますと、かつて高知新聞が「医師が危ない」という一連の特集記事を組んで全国的にも話題になったくらいな施設ですが、要するにこちらも世の基幹病院のご多分に漏れず、医者は人間扱いをされることもなく日々生き抜くことでで精一杯であるという、心身ともに他人を暖かく思いやるような余裕など全くない状況にあるわけですよね。
まさにがん患者には特別の配慮が必要であるからこそ、どこででも出来る標準治療であるなら医者の心に余裕のない同センターなどではなく、きちんとした人らしい対応が出来る施設に移っていただく事こそが思いやりというものだと思いますけれども、現場の医療従事者の思いは全く相手には伝わっていない上に、こうして毎日新聞によって全国に「曲解」が広められているわけです。

田舎では公立の基幹病院で亡くなるのが「できるだけのことをして看取った」という家族にとってのステータスになるようなところがあって、こんな症例はどう見ても地元の先生にみてもらった方が本人のためにもいいんじゃないかという場合でも親戚への見栄が悪い、なんとしてもこちらで入院させてくれとあの手この手のツテを頼ってねじ込まれる場合も多いですよね。
ところがそうした施設ではこんな状況ですから現場の医者もスタッフも対応に余裕がない、患者本人にとっては人生最後の時間を長年住暮らした家から遠く離れた見ず知らずの病院に島流しにされ、「こんな病院で死にたくない!」と一人泣き叫んでいるような状況であるわけで、そんな医療に対する妙な「勘違い」は少なくとも患者本人のためになることは決してないはずです。
そうであるからこそ正すべきは何を医療の、とりわけ正直先の見えている終末期医療の目的とするのかという認識の誤りであって、マスコミの仕事はそんな誤解を是正するような啓蒙的記事を書くことではあっても、「患者は病院に見捨てられた!」なんて心得違いを増幅するような記事を垂れ流すことではないはずだと思うのですけれどもね。

もっともこれまた毎日新聞とすれば、誤解が誤解を呼び怨恨の連鎖が広まっていくような事態へと話が進んだ方が商売のためには都合がよいと、そんなしたたかな計算もあるのかも知れませんが(苦笑)。

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