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2010年6月11日 (金)

新たな伝説がまた一ページ 沖縄県国頭村安田地区の場合

全国どこにでもあるような話題が、全国に知られた話題となるには何かしらの理由があるものですが、最初からそうと認識されているものとは限らず、時系列を追って行くと初めて「何故こういう結果になった?」と開いた口がふさがらなくなるという場合もあるようです。
今を去ること数年前、沖縄県の片隅で最初の動きが起こった時にも、後に全国区の話題となりそうな気配は皆無と言っていいくらいにありふれた話だったようですね。

安田・古宇利の診療所休止/県病院局方針  /沖縄(2006年12月12日沖縄タイムス)

 県は来年4月をめどに国頭村安田、今帰仁村古宇利の二診療所を休止する方針であることが11日、分かった。交通の利便性向上や県立病院本体の体制充実が理由で、県病院事業局は今後、地元の意向を聞いて調整し、年度内に決定する。最も近い病院まで車で三十分以上かかる国頭村東海岸の住民らは「安心して暮らせない」などと存続を求めていく考え
一方、古宇利大橋の架橋で本島へのアクセスが確保された今帰仁村古宇利の住民からは「存続が望ましいが県が決めること」と一定の理解を示す声もあった。
 国頭村議会では「安田診療所の存続を求める要請決議案」を12日の定例議会に提案することを決めた。地元安田区は11日夜、臨時総会を開き、診療所存続を求める署名活動を展開することを決めた。
 同事業局の當真正和次長は「休止」の理由について、道路網の整備や架橋により交通の便が改善されたことなどを挙げ、「陸の孤島といわれた地域も道路事情がよくなった。一方で名護市救急診療所の廃止など県立北部病院の体制は厳しい。医師の過重労働を軽減し、病院本体の体制を強化することで、北部地区全体の医療を充実させる」と述べ、地元の理解と協力を求めた。
 同事業局によると、両診療所の患者数は1日4-5人、診療所の体制はそれぞれ医師、看護師、職員1人ずつの3人体制。現在、県立病院付属の診療所は18カ所。これまでに伊計島、宮城島、浜比嘉島、池間島や久志、奥、平良、伊原間診療所などが道路網の整備改善などで休止となった。
 県側に存続要請をした国頭村の上原康作村長は「台風など異常気象時に道路が寸断されることがあり、依然として陸の孤島の状況がある。住民が安心して住めなくなり、ますます過疎化が進んでしまう」と憂えた。知念茂夫安田区長は「車を持っていない高齢者も多く、診療所があるだけで安心できる。住民に説明もなく、休止を決めることは納得できない。代替案を提示するなど住民の理解が得られる方向性を示してほしい」と話した。
 一方、今帰仁村古宇利の喜納清憲区長は「ワルミ架橋が整備されるまでは存続させてほしいというのが本音だが、財政問題もあり、県が決めることだから仕方がない」と話した。

この国頭村安田区というところ、かつてヤンバルクイナの保護で朝日新聞の「明日への環境賞」を受賞したというくらいで、とにかく主要道からも外れたどん詰まりの地区であることが地図を見るだけでも分かりますよね。
一日4~5人の患者のために医師、看護師、職員を専属で張り付けているというのですからさぞや暇を持て余すだろうことは想像に難くありませんが、こうした僻地の「医師不足」の実態なるものが別に同地区だけの話ではないことは再度繰り返しておきます。
いずれにしてもこういう過疎(ただし医療資源は過密!)地域は今や全国どこでもありふれた存在ですし、そこの診療所が閉鎖するなんて話もこれまたありふれているわけですが、当然ながら?同地の村議会としてもやはりありふれた対応をしたということのようです。

村議会、存続求め決議/診療所休止(2006年12月12日沖縄タイムス)

 【国頭】県が国頭村の安田診療所を休止する方針であることを受けて、同村議会は12日、12月定例会最終本会議で、診療所の休止は地域住民の不安を増大させるとして「安田診療所の存続を求める要請決議案」を全会一致で可決した。
 決議では、「安田診療所が長年にわたって地域住民の治療をはじめ健康維持増進など地域医療の向上に果たしてきた役割は計り知れない」と強調。
 基幹道路である県道2号などは台風や異常気象時には倒木などの道路災害が発生し、交通機能が遮断。同村東海岸が孤立するなど住民の不安や苦悩はいまだ解消されておらず、診療所の休止または廃止は、地域住民に大きな不安を増大させるものと指摘する。その上で、「へき地の医療衰退につながらないよう医師の確保をはじめとする地域医療の充実と強化が図られるよう安田診療所の存続を要請する」としている。

「安田診療所存続を」/国頭村議会 県に要請 /沖縄(2006年12月14日沖縄タイムス)

 県立の国頭村安田診療所の休止計画をめぐり、同村議会の仲井間宗明議長らは13日、県庁に知念清県病院事業局長を訪ね、診療所存続を求めた。仲井間議長は「診療所がなくなれば緊急医療の確保ができない」と訴えた。知念事業局長は「休止に対する理解を得るためあらためて話し合う機会を持ちたい」と回答した。
 仲井間議長らは「診療所の休止は生命の存続にかかわる。一律廃止ではなく、へき地医療の強化を図ってほしい」と要望した。
 要請団は12日の定例会最終本会議で可決した要請決議を県当局と県議会に提出。診療所の閉鎖が「過疎化に拍車をかける」などとして、存続を求めている。
 県は2007年4月1日付で診療所を休止する方向だ。同事業局は(1)県立病院の赤字改善(2)県立北部病院を拠点とした北部圏域全体の医療強化(3)医師や看護師の負担軽減など―を休止理由を説明している。

ここで「その遊んでいる医師と看護師が他所にいればどれほどの人命が救われているだろうか」とか、「県道が潰れるような異常事態に診療所一つあったところで緊急医療の何が変わるわけでもないのでは?」なんて冷静なツッコミを入れても仕方がないということは、当「ぐり研」に来ていただいているような皆様方には今さら言うまでもないことではあると思います。
それでも県当局の方では何くれと地元の理解を得るべく努力はしたようで、地元が話し合いすら拒否の強硬姿勢を崩さない中、「県側の事情も聞いてほしかった」という声が虚しく響くとはこのことですけれども、これも言ってみれば全国どこででも聞くようないつもの話といった感はあるところです。
それでも巡回診療を提案してみたり、地元医師会なども協力してヘリを飛ばしたりと、地元の言うまさかの時の対策も含めて様々な手を打ったのは立派だと思いますが、離島僻地の多い沖縄のような環境ですとこういった作業は手馴れているということもあるのかも知れませんね。

安田診療所説明会、住民一人も出席せず(2007年2月7日琉球新報)

 4月から国頭村の安田診療所を休止する方針の県病院事業局は6日、安田公民館で2回目の説明会を呼び掛けたが、休止に反対し診療所の存続を求める区民は出席しなかった。休止を前提とする説明会を拒否する姿勢の住民側に対し、同局側は文書を配布して休止への理解を求めることにしている。
 午後7時から予定された説明会では同局の當眞正和次長らが診療所の休止とその後の医療体制を説明するはずだったが、住民は1人も会場に姿を見せなかった。
 當眞次長は「話を聞いてもらえず残念。存続を求める気持ちはわかるが、県側の事情も聞いてほしかった」と話した。今後、診療所の休止理由と休止後の医療確保について配布文書で説明し、住民からの要望を受けたいとしている。
 安田区の知念茂夫区長は住民らの不参加を「診療所の存続を求める住民らの気持ちの表れであり、今後も方針は変わらない」と強調した。同区は来週にも村内や郷友会が集めた約1300人の署名を同局に提出する予定。
 同事業局は1月24日にも説明会を開いたが、住民側が反発、説明に入れなかった

県、安田で巡回診療へ/診療所休止受け /沖縄(2007年5月9日沖縄タイムス)

 国頭村安田地区にある県立安田診療所が今年4月休止したことに伴い、県病院事業局は5月下旬から、県立北部病院からの医療スタッフ派遣による月1回の「巡回診療」を始める予定であることが9日、分かった。
診療所閉鎖で影響を受ける高齢者らの緩和措置として、約1年間の実施としている。だが、安田区は診療所存続を強く求めており、「巡回診療」に反発、診療場所となる公民館の貸し出しを拒否する方針だ。(黒島美奈子)
 同病院から派遣されるのは医師1人、看護師2人、事務員1人。月1回、同区内の公民館で住民を集めて診療する。
 同地区に住む65五歳以上の高齢者は約60人。巡回診療は主に、これまで診療所に通っていた慢性疾患の高齢者を対象に、血液検査など簡易な医療検査を行い、処方する。診察で異常が見つかれば、病院につなげる。
 県は巡回診療実施に向けて8日、村と同区に対し、区内の対象患者数の把握を依頼。早ければ5月下旬から、診療をスタートさせる。
 県内で県立病院スタッフによる定期的な巡回診療は東村嘉陽地区、宮古島市池間地区、石垣市伊原間地区などで実施しているが、緩和措置としての実施は極めて異例。同事業局は「既に安田区には近隣地区の診療所から週1回、無料送迎バスを出して診察している。今回の巡回診療は、閉鎖による住民の動揺を最小限にとどめるため」と説明している。

「存続審議中」と区反発

 安田診療所休止に伴う巡回診療について、村安田区の知念茂夫区長は「県議会で診療所存続について継続審議中であり、区としてはあくまで存続を求める。到底、受け入れられない」と反発した。区は公民館の指定管理者となっており、診療のための貸し出しはしない方針だ。
 上原康作村長は「村は存続を求める。診療所は実際には休止しており、巡回診療が必要かどうか、区民の判断を見たい」との立場を示した。 同区では、独自に医師確保を模索しており、診療所再開に向けた活動を続けている。同地区評議員の中根忍さんは
診療所は休止であり、県議会でもいまだ閉鎖の是非を継続審議中と聞いている。そんな中で一方的な巡回診療への切り替えは住民として見過ごせない。議会軽視の対応だ」と憤慨した。

北部医師会が急患ヘリ 恩納以北カバー   /沖縄(2007年6月8日琉球新報)

 名護市の北部地区医師会は6月中旬から急患搬送ヘリコプターの運用を始める。同医師会病院の道向かいに土地を確保、ヘリポートを整備中で運用開始は16日を予定。県立北部病院への搬送も可能にするため、同医師会は県に名護市の県農業試験場内のヘリポートの貸与を要請、県は7日までに貸与する方針を固めた。
 急患ヘリは恩納村以北の本島と伊是名、伊平屋、伊江村を含む北部圏全域をカバー。伊是名、伊平屋も片道15分内外で搬送が可能になり、搬送時間はこれまでより大幅に短縮される。
 救急体制は北部地区医師会病院と県立北部病院が連携。医師会病院には循環器内科、心臓外科、消化器救急、産婦人科関係の患者を搬送し、県立北部病院には脳神経外科、小児科、多発外傷の患者を運ぶ。
 2005年4月から今年4月30日までの約2年間で異常分娩などで北部からうるま市の県立中部病院に搬送された妊婦患者は169人。急患ヘリはこうした患者については中部病院のヘリ拠点に約15分で搬送する。
 同医師会は既にドクターヘリ事業を全国的に手掛ける民間ヘリ会社と委託契約。ヘリは4人乗りで必要がある場合は医師も同乗する。運用は午前9時から午後5時まで。運航の所要時間は片道、救急車で1時間―1時間半かかる国頭村辺戸や安田で12、3分。東村は7分、本部町と今帰仁村、瀬底島、宜野座村は4分、金武町と恩納村は10分。
 県立北部病院への搬送は救急車で7分の位置にある県農業試験場内のヘリポートを使用。ウリミバエ対策のヘリ用だったが、1993年以降は遊休化していた。県は北部広域市町村圏事務組合にヘリポートを貸与、同組合は同医師会に運営を委託する。
 同医師会病院救急ヘリ運航調整委員会の小濱正博委員長は「万全な体制が整った。時間がかかるために失う命を取り戻す。救命医療のレベルは格段に上がったが、搬送時間だけがずっと未解決だった。中南部と異なり、救急医療の環境が十分ではない北部の医療のために、この体制を未来永劫続けられるよう努力したい」と話している。 県内ではほかに浦添総合病院が2005年から急患ヘリを運用している。 (新垣毅)

ちなみにこのドクターヘリ、その後医師会からNPOに運営が引き継がれたということですが、運行実績自体は非常に良好で多くの人々のお役に立っていたということで、地域医療サポートの成功例として全国放送でも取り上げられるようなちょっとした話題となっていました。
ところがこれまた例によって年間約一億にものぼる運行資金などがネックとなって一度は廃止決定という事態となりましたが、幸いにもNPOが主体となって活動が再開され現在に至っているということですから、これはこれで良かったということですが、どうもその実際のところは極めて綱渡りに近い個人の献身的努力に支えられている側面もあるようですね。

北部のドクターヘリ最終日 /沖縄(2008年7月15日NHK)

 名護市を拠点に沖縄本島北部の救急搬送を行ってきた民間病院の「ドクターヘリ」が病院の経営の見直しなどを理由に15日で1年あまり続けてきた運航を一時休止することになりました。
 医師が乗り込んで治療をしながら搬送にあたるヘリコプター、「ドクターヘリ」について名護市の北部地区医師会病院は、去年6月から独自に運航してきましたが、病院の経営の見直しなどから15日で一時休止することになりました。
 最終日の15日も国頭村のホテルでベッドから転落し頭を打った1才のこどもを病院に搬送するなどこの1年あまりで236件の搬送をしてきました。
 休止を前にNPO法人による運航の継続を目指している小濱正博医師らがヘリポートで記者会見を開きました。
 この中で、小濱医師は「休止は残念だが一般の人の寄付や企業・行政の協力を得て9月初旬には運航を再開していきたい」と述べ、これまでに600万円の寄付が集まったことを明らかにした上で今後も幅広く協力を呼びかけ、再開を目指す考えを示しました。
 そのうえでヨーロッパなど民間が自主努力で運営しているドクターヘリの仕組みを参考に継続的な運用ができる体制づくりに取り組む考えを示しました。

北部救急ヘリ存続を/医師らフリマで訴え /沖縄(2008年7月6日沖縄タイムス)

【北部】資金難が続く北部地区医師会病院の「救急ヘリ」の運営を引き継いだNPO法人「MISH(救急ヘリ搬送事業)サポート」設立準備委員会の医師や看護師が5日、名護市内の大型スーパー構内で開かれたフリーマーケットに出店し、支援を呼び掛けた。
 看護師らが貝殻を使って作成した1個80円の携帯ストラップや、コップなどを、買い物客が次々と買い求め、募金に応じながら「頑張って」と激励した。
 年会費千円の賛助会員の申し込みをした松田勝さん(57)は「国頭村安田に85歳の母親がいる。まだ元気だが、救急ヘリがないと万一のけがや病気で手遅れになりかねない」と話した。
 若い人たちの協力も目立ち、伊江小六年の喜納杏李さんは「伊江島に住んでいるので救急ヘリは絶対に残してほしい」と訴えた。
 同NPOでは、個人や企業、行政にも幅広い支援を求めている。

沖縄北部ドクター・ヘリ導入の矛盾(2009年3月19日ブログ記事)より抜粋

3月4日 沖縄テレビ放送
「(名護)北部地域をカバーする救急ヘリの運航再開を目指すNPO法人・MESHサポートに対し、名護市はアメリカ軍の再編交付金から2千万円の補助金を支出する方針を固め、今日議会に提案しました。」

この報道は、先日のたしかNEWS23でもあっていたから、ご覧になられた方もおありでしょう。

この時の報道は、NPO法人・MESHサポートの医者が、沖縄北部医療にドクターヘリの導入に尽力されて、やっと導入と民間賛助金で半年の5000万円の運営費がまかなえられた

とするもので、そのお医者さんは、自分でヘリ操縦免許を取得するためにオーストラリアへ約1年間の操縦教習を受けられたそうだ。
「命」を守ろうとする彼の献身的な使命感には本当に頭がさがります。

沖縄本島は、小さい島みたいに思われていらっしゃる方々も多いと思いますが、国道58号を那覇から北端の辺戸岬まで車で行くと、約4時間はかかります。
そして、離島の伊江島などの大きな島があり、その殆どが無医村で緊急医療に対応していません。

その沖縄北部医療体制に、ドクターヘリが導入されたことは、大変喜ばしいことです。
(略)

いやいやいや大変喜ばしいことって!医者にヘリの操縦までさせるなんてちょっとそれあり得ないし!て言うか医者に操縦させてたんじゃドクターヘリの意味ないでしょうJK!
まあこういうトンデモ話がさくっと飛び出してくるあたりが僻地の僻地たる所以なのかも知れませんけれども、今回の本題としてはいささか外れますのでこのあたりにさせていただいて、その長らく閉鎖されていた安田区の診療所がこのたびめでたく再開されることになったというニュースが飛び込んできたのがつい先日のことでした。

3年ぶり再開 住民安ど 国頭村立東部へき地診療所開所 /沖縄(2010年6月2日沖縄タイムス)

【国頭】旧県立安田診療所が休止したことを受け、国頭村営による診療所の再開を目指していた同村安田の「村立東部へき地診療所」が1日、3年2カ月ぶりに診療を始めた。開所式には、関係者や地域住民らが集まり、再開を祝った。
 診療所は関係者のテープカットで開所。楚洲あさひの丘へき地保育所の園児12人がエイサーを披露した。
 診療所に赴任した熊本県出身の中路丈夫医師(65)は「期待に気が引き締まる思い。敷居が高くない、患者さん主体の医療を目指したい。どうぞ気楽に利用してください」とあいさつ。
 神山担治安田区長は「毎日不安な状況の中で生活していた地域住民にとって、これ以上の喜びはない。診療所が地域の健康を守るだけではなく、へき地の活性化につながることを期待している」と述べた。
 国頭村奥の宮城香さん(32)は「子どもが3人いるので、医師がいるのといないのとでは全然安心感が違う。今まで1時間かけて病院に行っていたが、診療所ができてすぐ対応してくれる」と喜んだ。
 今後、診療所の区域内とする奥、楚洲、安波区を無料送迎バスが運行し、各区で中路医師による往診も実施される。
 旧県立安田診療所は、道路整備や県立北部病院の機能強化を理由に休止。同村が村営による診療所の再開を打ち出し、医師探しが続いていた。

安田に医師 住民歓迎 国頭村立診療所 中路さんが移住(2010年4月13日沖縄タイムス)

 【国頭】村営による診療所の再開を目指し、医師探しが続いていた国頭村安田の「国頭村立東部へき地診療所」に12日、赴任することが決まった中路丈夫医師(65)=熊本県=が引っ越し、村民の歓迎を受けた。中路医師は、県への診療所開設届けや九州厚生局の保険医の申請手続きなどを経て、6月1日をめどに診療を始める

 県の医師確保プロジェクトの紹介などを経て中路医師の赴任が3月に決定。同日、村に転入届を提出し、同診療所の医師住宅に引っ越した。安田小学校の児童や住民らが出迎え、横断幕を掲げて歓迎した。

 中路医師は「医者になって40年経つが、こんなに地域に歓迎されたのは初めて。地域の人たちが必要とした医療をしたい」と抱負を述べた。

住民にとっては確かにこれ以上の喜びはないというくらいの一大ニュースで、記事からも地元民の歓迎ぶりがありありと眼に浮かぶようですよね。
「65歳」の医師であるとか「気楽に利用してください」宣言だとか、何かしら今後の展開がこれまた眼に浮かぶようなテンプレが満載という気がしないでもないところなんですが、今回何よりすごいなと思ったのは周囲のそうなるであろうという期待?すら遥かに超えた斜め上の展開が、この診療再開のわずか数日後に待ち受けていたということです。

開所5日で医師帰省 国頭へき地診療所 村との契約で不信感(2010年6月10日沖縄タイムス)

 【国頭】1日に開所した国頭村立東部へき地診療所の中路(なかじ)丈夫医師(65)が、村との雇用契約が結ばれていないことを理由に実家のある熊本県に帰省し、診療所に医師不在の状態が続いていることが9日、分かった。中路医師は1日から診療を開始したが、5日に帰省。医師は取材に対し、「再三にわたり要求していた雇用契約が結ばれず、身分が保障されない状態が続いた。村への不信感がある」と述べた。

 9日開かれた村議会6月定例会で、議員の質問に対し、宮城馨村長が10日に熊本へ行き、同医師と会うことを明らかにしたが、問題の経緯について具体的な説明はなかった

 宮城村長は取材に対し、「対応の遅れがあり、調整不足だった。診療所に戻ってもらえるよう誠意をもって話し合いたい」と述べた。村側は村営診療所の開設に向けて十分なノウハウがなく、設備の遅れなどがあったとしている。

 中路医師は、診療所に戻る可能性について「村とやっていけるかどうかは分からないが、地域住民に申し訳なく、結論は出しかねている」と話した。

 村は県立安田診療所の休止後、村営による再開を目指し医師探しを続けていたが、中路医師の着任が決まり、今月から3年2カ月ぶりに診療を再開していた。

いやあ、正直この展開は予想していませんでしたが…もしかしてネタですか?
一応参考までにということですが、労働基準法ではこういうことが定められています。

労働条件の明示
第十五条

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない

この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない

(2)前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる

これらの条文を見ても労働基準法で労働条件を決めて契約を結ぶということは、一つにはそれに違反した場合に労働者側が「それは話が違う!」と契約を解除することが出来るという労働者保護の意味があるということですよね。
そしてこれは医療業界にはしばしばある話ですが、例えば万一にも何かしら医療訴訟のようなことに巻き込まれた場合に、村と契約しての業務ということであれば訴える先は医師個人ではなく村となり、結果として村が医師を守るという形になるということです。
要するに契約を結ばないということはこれらの話をそっくり裏返しに捉えるべきなのか…というように見られても当然なわけですから、それはさすがに世間並みの情報に疎いかも知れない中路医師(65)としても「村への不信感」云々を口にも出そうという話ですよね。

対応の遅れだとか調整不足だとか言いますけれども、昨日今日の話でもなく既に三年もそれを目指してやっている仕事に関して、ようやく来た医者に何度も要求されてもまともな対応一つ出来ないというのであれば、意図的なものであれ単なる過失であれ当事者能力の欠如は言われても仕方がないところだとは思います。
村では今まで医者とはどこからか勝手に送られてくるものという認識が当たり前であったのかも知れませんが、ノウハウがないということであれば貴重な公のお金をつぎ込んで突っ走る前に勉強しておくのが当たり前ですし、全国にこうした事例は履いて捨てるほどあるわけですから、その意志さえあれば学ぶ対象には全く不自由しないはずなのですが、ねえ…
今後中路医師との再交渉がどのような結果となるかは未だなんとも言えませんけれども、失礼ながらこんなところで今どき働いてくれようという貴重な人材がまた一人こうして失望と共に立ち去っていくと言う現実を見るにつけ、先日の上小阿仁村の事例などと同様「あなたの村は単なる僻地ですか?それとも心の僻地ですか?」と問いかけたくなるような話ではありましたね。

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コメント

中路医師は4月に現地入りして以来、国頭村側は(宮城馨村長はじめとして)、
当初約束した診療に最低限必要なレントゲン、心電計、血球計算機などの診療機器
設置を行わなかった。
また、その事に対する説明も虚言も交え2点3点するばかり、1ヶ月たっても
発注すらしていなかった。
再三の要求に2ヶ月もたった開所式直前にばたばたと設置された。 しかし購入、
やリース契約でもなく、どうやら業者が展示に貸し出す例の「デモ器」が設置された
ようです。?

また、雇用契約については宮城馨村長を交えた再三の話し合いにも関わらず、雇
用契約は結ばれず、村側は6月に行われた開所式では医師に対して異例の一時的な
委嘱状をもって対応した。

開所式後、中路医師の診療が開始されててもなお、雇用契約が結ばれなかったよう
だ。診療を開始してもなお、雇用関係が結ばれない事から、不信感を募らせ帰郷を
決断したとされている。 
当然それまでの給与も赴任手当なども一切支払われていない。
http://kikuchishi.exblog.jp/tags/%E5%9B%BD%E9%A0%AD%E6%9D%91%E7%AB%8B%E6%9D%B1%E9%83%A8%E3%81%B8%E3%81%8D%E5%9C%B0%E8%A8%BA%E7%99%82%E6%89%80/

投稿: | 2010年6月11日 (金) 15時21分

“レーシック被害”早期解明を
東京・銀座にあった眼科でレーザーを使って視力を矯正する「レーシック」手術を受けて、角膜炎などに感染した患者たちが、真相が十分解明されていないと訴えて、検察庁や厚生労働省などを訪れて捜査や調査を早期に進めるよう要請しました。
この問題は、東京・銀座にあった「銀座眼科」でおととしから去年にかけて、レーザーを使って視力を矯正する「レーシック」手術を受けた患者70人以上が、角膜炎などに集団感染したものです。
患者たちは、去年7月、元院長を刑事告訴するとともに、医療の実態を調査するよう厚生労働省に求めましたが、被害が明らかになってから1年以上たっても真相が十分解明されていないとして、11日、東京地方検察庁や厚生労働省などを訪れて、捜査や調査を早期に進めるよう要請しました。
患者たちは会見で、「私たちは今も後遺症に苦しんでいます。2度とこのような思いをする人を出さないためにも実態を明らかにして欲しい」と訴えました。
「銀座眼科」は、すでに廃止されていますが、衛生管理が不十分だった疑いが強まったとして、去年8月、業務上過失傷害の疑いで元院長の自宅などが警察の捜索を受けています。
また、患者55人が元院長などに賠償を求めている民事裁判が東京地方裁判所で続いています。

06月11日 19時11分

投稿: io | 2010年6月11日 (金) 22時38分

えーと、更に斜め下に潜る展開として、どうやら村側は「公設民営」を求めていて、医師側は「村営被雇用」だと思っていた、というのがチラ裏情報で上がってますねぇ。
そりゃ、1日4-5人で民営の診療所は成立しないでしょう。2-30人でもきびちいですよ。

投稿: Seisan | 2010年6月12日 (土) 12時22分

こんなとこで民営なんて無理だって
条例で最低でも一点百円くらいにでもしないと

投稿: | 2010年6月12日 (土) 16時00分

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